健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

紫苑

2013年02月13日 | 健康
○紫苑(しおん)

 朝鮮半島から中国北部、モンゴル、シベリアにかけて分布するキク科の多年草シオン(Aster tataricus)の根を用いる。中国では軟紫菀ともいう。これに対しキク科のオタカラコウ(Ligularia fischeri)などの根を硬紫菀あるいは山紫菀といつて区別する。

 シオンは日本にも古くから伝えられ、平安時代にすでに観賞用として植えられており、また九州や中国地方では野生化している。一般に中国では薬用として、日本では観賞用として栽培されている。秋に直径2.5cmくらいの藤紫色の花が咲き、また根が紫色がかっているため紫苑という。朝鮮では若芽を煮て乾燥し、野菜として利用している。

 根にはサポニンのシオンサポニンやフリーデリン、シオノンなどが含まれ、薬理的に鎮咳・去痰作用、抗菌作用が認められている。漢方では止咳・去痰の効能があり、咳嗽や喘息、血痰、喉痺に用いる。おもに慢性の咳嗽に用い、とくに痰が多く、痰の喀出が悪かったり、血痰の混じるときに応用される。慢性気管支炎や気管支喘息などで呼吸困難や喘鳴のみられるときは射干・麻黄などと配合する(射干麻黄湯)。風邪や気管支炎などで咳嗽が強く、痰の多いときには百部・桔梗などと配合する(止嗽散)。

地黄

2013年02月07日 | 健康
○地黄(じおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を用いる。ジオウにはアカヤジオウ(R.glutinosa var.purpurea)とカイケイジオウ(var.hueichingensis)の2つの系統がある。

 カイケイジオウは河南省懐慶を主産地とする品種で、アカヤジオウよりやや大型であり、根の一部が肥大するという特徴がある。日本で単にジオウといえばアカヤジオウのことをいい、古名をサオヒメともいう。日本でも、古くはアカヤジオウが栽培されていたが、昭和30年代よりおもにカイケイジオウが栽培されるようになり、必要量のほとんどを国産品で賄っていた。しかし、現在では北海道、奈良、長野県などで僅かに栽培されているのみである。近年、武田薬品によってアカヤジオウとカイケイジオウを交配した新品種、フクチヤママジオウが開発されている。

 現在、日本市場に流通している地黄のほとんどは輸入品で、その多くは中国産の懐慶地黄である。ところで生薬としての地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別される。生地黄は採取後3ヶ月以内の新鮮な根のことで、乾燥した砂の中で保存したものであり、乾地黄は日干し、あるいは過熱した乾燥させたものであり、熟地黄は新鮮な根を酒などで蒸した後で乾燥させたものである。

 日本産の新鮮なものを生地黄というが、市場には出回っていない。現在、日本薬局方ではジオウのみ規定しているが、生地黄は流通しておらず、乾地黄と熟地黄の2種類が流通している。かつて日本漢方ではあまり熟地黄を用いなかったため、地黄といえば乾地黄のことを指す。一方、中国では生地黄と熟地黄が流通しているが、中国では生地黄を鮮地黄(鮮生地)と干地黄(干生地)に区別しており、中国で流通している生地黄と日本に輸入されている乾地黄は、ほぼ同じものと考えられている。ちなみに金匱要略では生地黄と乾燥地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。

 地黄の成分にはイリドイド配糖体のカタルポール、レオヌライド、レオニオサイド、糖類のスタキオース、マンニトール、アミノ酸のアルギニンなどのほか、βシトステロール、カロテノイドなどが含まれている。地黄エキスやカタルポールには血糖降下作用や緩下、利尿作用などが認められている。生地黄から熟地黄へ修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、生地黄のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加する。

 漢方的にも区別され、生地黄、乾地黄、熟地黄へ移行するにつれ、性味は苦甘から甘へ、大寒から微温へと変化し、効能に関しても生地黄は清熱・涼血、乾地黄は清熱・養血、熟地黄は滋陰・補血と移行する。

雌黄

2013年02月06日 | 健康
○雌黄(しおう)

 温泉や火山付近の低温熱水鉱脈に産出する硫化ヒ素鉱、雌黄(Orpiment)である。通常、雄黄や輝安鉱などとともに産する。

 雄黄と雌黄はいずれも硫化ヒ素であるが、雄黄はAs4S4であるのに対し、雌黄はおもに三硫化ニヒ素As2S3を含む。しかし従来、雄黄や雌黄、鶏冠石などの用語は混乱しているため、ここでは中薬大辞典の内容に従う。

 雌黄は全体がレモン色をした不規則な塊で、脆くて砕けやすく、特異な臭いがある。成分には三硫化ニヒ素が含まれ、抗菌・抗真菌作用が認められている。有毒であるため舐めてはならない。

 漢方では雄黄と同様に殺虫・解毒の効能があり、おもに粉末を外用薬として疥癬や頑癬、化膿疹、虫や蛇の咬傷などに用いる。また内服として胃痛、咳嗽、癲癇などの治療に丸剤が用いられていた。しかし現在では有毒のため薬としての使用が禁止されている。

刺い皮

2013年02月05日 | 健康
○刺猬皮(しいひ)

 中国各地の山林や草原に生息しているハリネズミ科の動物、ナミハリネズミ(Erinaceus europaeus)あるいはダウリアハリネズミ(Hemiechinus dauuricus)の皮を用いる。

 これらハリネズミは夜行性でおもに昆虫や小動物を食べている。体長は約20cm、1.5~2cmの硬くて鋭いとげで背部が密に覆われている。敵にあうと体を丸めて、とげの球になる。

 冬眠時に捕獲しやすく、捕られたハリネズミの皮を剥ぎ、裏返して石灰を薄くまき、風通しのよいところで陰干しにする。一般に用いるときには炒めたものや焼いて灰にしたものを粉末にして用いる。

 漢方では収渋・止血の効能があり、嘔吐や下痢、腹痛、下血、遺精に用いる。とくに痔の治療薬として有名で、槐角・地楡などと配合する(舒痔丸)。

三稜

2013年02月02日 | 健康
三稜(さんりょう)

 日本の各地、東アジアにかけて分布し、池や沼などの浅い水中に生えるミクリ科の多年草ミクリ(Sparganium stoloniferum)やエゾミクリ(S.simplex)、ヒメミクリ(S.stenophyllum)の塊茎を用いる。しかし、中国東北部や内モンゴル自治区、西省などでは沼沢地の水中に生えるカヤツリグサ科の多年草ウキヤガラ(Scirpus fluviatilis)の塊茎を三稜として用いている。

 ミクリとウキヤガラはともに茎の断面が三角形である三稜という名があるが、花や葉はまったく異なる。これらを区別するため生薬名では荊三稜と黒三稜と呼ばれている。ところが、生薬名ではミクリ(植物名:黒三稜)のほうを荊三稜、ウキヤガラ(植物名:荊三稜)のほうを黒三稜といい、中国の植物名生薬名が全く逆になっている。

 三稜として日本ではウキヤガラがよく知られているが、中国ではおもにミクリが用いられている。また日本に輸入されている三稜もおもにミクリの荊三稜である。成分や薬理作用は明らかではないが、一般に区別されずに用いられる。

 漢方では活血・理気・消癥・止痛の効能があり、腹部の腫痛や腹痛、胸痛、月経障害、打撲傷などに用いる。主に瘀血や気結、食滞、積聚など滞って腫瘤になったものを除く、つまり「堅いものを削る」作用があるといわれている。

 三稜と莪朮とはともに消積の効能がありよく似ているが、活血・去瘀の作用は三稜が強く、理気・止痛の作用は莪朮が強い。両者を合わせると活血・理気の作用はさらに強まるため、しばしば併用される。

 小児で寄生虫などにより腹中にしこりが触れ、熱のみられるときには柴胡・胡黄連などと配合する(浄府散)。腹中にしこりが触れ、腹痛や腰痛のみられるときには陳皮・香附子などと配合する(大七気湯)。越中富山の名薬として知られる反魂丹に配合され、今日でも小児の疳虫などの家庭薬にも配合されている。

山羊血

2013年02月01日 | 健康
○山羊血(さんようけつ)

 中国東北部および内モンゴルの山中に生息するヤギに似たウシ科の動物ゴーラル山羊・青羊(Naemorhedus goral)の血を乾燥したものを用いる。ゴーラルは体長約1m、雄雌とも短いまっすぐな角を持ち、全体の色は灰褐色である。多くは高山の森林に棲み、山頂の岩場などでよく見かけられる。

 ゴーラルの角は山羊角、肉は山羊肉、肝臓は山羊肝として薬用にされる。山羊血は捕獲した後、抜いた血を鉢に入れて日干ししたものである。乾燥血は塊状または片状で、濃く褐色で光沢がある。水の中に少量の血を入れて、碗の底から糸状に上昇し、拡散しないものが本物とされている。

 漢方では活血・止血の効能があり、打撲傷や骨折、吐血や鼻血、狭心痛などの治療に用いる。一般に粉末にしたものを酒で服用する。ちなみに山羊角は小児のひきつけ、山羊肉は疲労や体力の低下、山羊肝は夜盲症の治療薬として知られる。