健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

急性子

2012年07月17日 | 健康
○急性子(きゅうせいし)

 インドから東南アジアが原産であるツリフネソウ科の一年草ホウセンカ(Impatiens balsamina)の種子を用いる。ホウセンカの全草も鳳仙あるいは透骨草として生薬に用いられる。日本には室町時代に中国から伝えられ、漢名がそのまま和名となった。

 熟した果実は少しでも触れると果皮が裂開して種子が飛び散るしかけになっている。種子には脂肪酸のパリナリシンなどが含まれ、子宮収縮作用があると報じられている。

 漢方では軟堅・去瘀の効能があり、無月経、噎膈、腹部の腫瘤や死胎の排出に用いる。民間では陣痛の誘発薬としても利用されていた。また咽に骨が刺さったときに急性子を噛んで飲み込むとよい。

 近年、中国ではフィラリアや食道癌の治療効果が研究されている。全草の鳳仙には去風湿・止痛の作用があり、関節痛や脚気に、根の鳳仙根には活血・消腫の作用があり、打撲傷などに用いられる。近年、ホウセンカ抽出成分、インパチエノールに育毛効果があると報告されている。

韮子

2012年07月16日 | 健康
韮子(きゅうし)

 東アジア原産で、中国、東南アジア、日本などで栽培されているユリ科の多年草ニラ(Allium tuberosum)の種子を用いる。葉も韮白あるいは韮葉と称して薬用にする。

 ニラは中国で栽培されていた最も古い野菜のひとつで、日本へも古い時代に渡来して野生化したもので古事記にはカミラという名で呼ばれている。葉に特有の強い臭いがあるため戦前はあまり利用されなかったが、戦後にギョーザなどの中国料理が普及するにつれて急速に需要が増えた。

 ニラの葉は刺激性の成分である硫化アリル類のほか、ビタミンA・B2などを多く含み、栄養価も高い。禅寺では「淫を発する」とされる五葷のひとつで、持込みが戎められている。

 漢方では種子に肝腎を補い、腰膝を温め、補陽、固精の効能があり、インポテンツや頻尿、遣尿、下半身の冷え、下痢、帯下などに用いる。インポテンツや早漏には杜仲・巴戟天などと配合する(賛育丹)。民間では腰痛や頻尿のときに種子を水で服用する。またニラの葉(韮菜)にも温裏・強壮作用の効能があり、腹痛や下痢、疲労にはニラ雑炊を食べるとよい。またニラの生葉汁を鼻血や日射病のときに服用したり、切り傷やかぶれなどに外用する。

九香虫

2012年07月14日 | 健康
○九香虫(きゅうこうちゅう)

 中国の揚子江以南の地域に分布するカメムシ科の昆虫ツマキクロカメムシ(Aspongopisu chinensis)の乾燥した全虫を用いる。主産地は雲南・四川・貴州・広西省などである。

 体長2cm前後、幅1cmくらいの紫黒色のカメムシの一種で、後肢の基部に臭孔があり、強烈な臭気を放つため打屁虫とか酒香虫などの名もある。日本でもカメムシをヘクサムシとかクサガメと呼んでいる。なおカメムシの名は虫体が亀の甲に似た六角形をしていることに由来する。一般に瓜類や柑橘類の害虫として扱われている。

 冬季間は成虫のまま石の下などで越冬するため、採取は晩秋に行う。熱湯の中に入れて殺し、日乾あるいは焙って乾燥する。薬材の九香虫は乾燥しているが油性があり、質は脆くて切断すれば茴香のような香りがある。

 成分にはトランス-2-ディセナル、オクテナル、ヘクサナルなどが含まれている。漢方では理気・止痛・温中・壮陽の効能があり、胸や腹の痞満や痛み、足腰の衰え、インポテンツなどに用いる。

牛角鰓

2012年07月13日 | 健康
○牛角鰓(ぎゅうかくさい)

 哺乳動物のウシ科のウシ(Bos taurus domesticus)の角を牛角、スイギュウ(Bubalus bubalis)の角を水牛角といい、その中の骨質角髄を牛角鰓という。近年、牛角鰓は犀角の代用として用いられる。

 牛角鰓の作り方は、ウシの角から角髄を取り出し、数日間水に漬け、きれいに洗浄して乾燥する。ウシの角と同じ形のまま中空で、表面は灰色~灰黄色、小さい無数の穴があり、ザラザラとした硬いものである。中国ではおもに江蘇省に産する。

 成分は炭酸カルシウム、リン酸カルシウムを含む。漢方では止血・止瀉の効能があり、鼻出血、下血、性器出血、下痢などに用いる。

ギムネマ葉

2012年07月12日 | 健康
○ギムネマ葉(ぎむねまよう)

 インド南部、東南アジア、中国の南西部に分布するガガイモ科の常緑つる性植物ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉を用いる。中国ではこの植物の茎を武靴藤という。

 ギムネマ葉はインド伝承医学アユルヴェーダの中で2000年以上も前から糖尿病の薬として利用されていた。ギムネマ葉を噛んだ後、1~2時間は甘味だけが感じられなくなることから、19世紀半ばからヨーロッパにも知れ渡った。1887年には有効成分が抽出され、この甘味抑制物質は酸性を示すことからギムネマ酸と名付けられた。

 葉にはギムネマ酸のほか、ヘントリアコンタン、プロトカテキュ酸などが含まれている。ギムネマ酸には甘味抑制作用のほか、抗う蝕性作用、小腸におけるブドウ糖吸収抑制作用、血糖値の上昇抑制作用などが認められている。この甘味抑制作用や腸管吸収抑制作用は数時間で回復する。

 これらの作用により糖尿病の治療および予防に利用できるのではないかと注目されている。しかし大量に服用すると、甘味以外の味覚にも抑制作用がみられ、血糖値はかえって上昇することが報告されている。近年、日本では食品や飲料などの中にギムネマ酸を添加したさまざまな健康食品が開発されている。ちなみに中国では武靴藤を腫れ物や乳腺炎などの化膿性疾患の治療に用いている。

亀板

2012年07月11日 | 健康
亀板(きばん)

 本州の中部以南、朝鮮、中国などに分布するイシガメ科のクサガメ(Chinemys reevesii)の甲板、主として腹甲を用いる。ちなみに別甲はスッポンの背の甲羅を主に用いる。

 中国では揚子江流域で多く産する。クサガメは小川や沼などの淡水に生息し、全身が茶褐色ではっきりとした亀甲があり、甲長が約15cm、体臭があるのでその名がある。小ガメはゼニガメ(金線ガメ)として知られている。

 殺して肉を除いた後、腹甲を洗って乾燥したものを血板といい、腹甲を湯で煮てから乾燥したものを湯板という。血板のほうが光沢があり、品質が良いとされている。亀板を煮詰めて固形の膠にしたものを亀板膠という。

 漢方では補陰・清虚熱・強筋骨・補肝腎の効能があり、おもに慢性の消耗性疾患、老人性疾患、虚弱体質に用いる。亀板膠は補陰・補血・止血の効能があり、陰虚による発熱やアトピー性皮膚炎などの乾燥肌、子宮出血などさまざまな出血に用い、滋養作用は亀板よりも優れている。

キナ皮

2012年07月10日 | 健康
○キナ皮(きなひ)

 アンデス山中を原産とするアカネ科のアカキナノキ(Cinchona pubescens)などの枝や幹、根などの樹皮を用いる。ペルー住民は古くからキナノキの樹皮をマラリアなどの熱病に用いていた。これが17世紀にヨーロッパに伝えられたマラリアの特効薬や解熱薬として有名になり、需要が増加した。

 しかし南米は列強によって分割され、キナの輸入が難しくなってきたため、各国が熱帯の植民地での栽培を試み、1854年にオランダ人はジャワでの移植に成功した。現在はアカキナノキを台木とし、キニーネ(quinine)含有量の多いボリビアキナノキ(C.ledgeriana)を接木して栽培される。20世紀初頭、マラリア患者の心房細動がキニーネの服用で軽快するという経験から、抗不整脈薬として開発されるようになった。

 キナ皮にはキニーネ、シンコニン、キニジンなどの多数のアルカロイドが含まれ、キニーネには抗マラリア、陣痛促進作用、解熱作用、キニジンには抗不整脈作用がある。明治時代には万能薬的に用いられ、戦時中にはマラリアの治療に盛んに利用された。

 今日でもキニーネ塩酸塩やキニーネ硫酸塩は抗マラリア剤として用いられている(1930年には合成抗マラリア薬が開発された)。またキニジンは不整脈治療剤として用いられているが、近年、合成されるようになった。キナ皮はヨーロッパでは強壮剤、解熱剤、健胃剤として利用するほか、民間では創傷や皮膚の潰瘍に外用する。

橘皮

2012年07月09日 | 健康
○橘皮(きっぴ)

 中国ではミカン科のオオベニミカン(Citrus tangerina)やコベニミカン(C.erythrosa)などいくつかの柑橘類の成熟果実の果皮を橘皮という。日本ではウンシュウミカンの成熟果実の果皮を陳皮あるいは陳橘皮といい、とくに新鮮なものを橘皮という。

 一般に橘皮の古くなったものを陳皮というが、中国では陳皮とあまり区別していない。日本でも橘皮はあまり用いられず陳皮で代用されることが多い。現在、流通している橘皮のほとんどは中国産であるが、日本産の陳皮のほうが中国産の橘皮よりも新しいことがしばしばある。橘皮の成分や効能はほとんど陳皮と同じである。

 金匱要略には橘皮の配合される処方として胸が苦しいときに用いる橘皮枳実生姜湯、しゃっくりに用いる橘皮竹茹湯などがある。なお中国では成熟した果実の皮の白い肉質を除いた外側だけの果皮を橘紅、その白い肉質の部分を橘白、内果の周囲にある網状の維管束の部分を橘絡、種子を橘核といい、別々に使用される。

 橘紅は橘皮よりも香りと温燥の性質が強く、おもに肺寒の咳嗽に用いられる。橘白は健胃薬として、橘絡は去痰薬として、橘核は止痛薬として応用されている。ちなみにウンシュウミカンの果肉に含まれる色素、βクリプトキサンチンに抗腫瘍作用、脂質代謝改善作用のあることが報告され、注目されている。

吉草根

2012年07月07日 | 健康
○吉草根(きっそうこん)

 北海道から九州、朝鮮半島、台湾に分布するオミナエシ科の多年草カノコソウ(Valeriana fauriei)の根および根茎を用いる。中国ではカノコソウなどの根茎がクモの足に似ているため蜘蛛香という。

 根には精油が含まれ、甘松香に似た芳香があるため、和の甘松香ともいわれている。同属植物のセイヨウカノコソウ(V.officinalis)の根は、薬用のワレリアナ根(バレリアン:Valerian)として知られる。

 日本では江戸時代に蘭方医学の影響により、ワレリアナ根の代用生薬としてカノコソウが知られるようになった。日本薬局方にもカノコソウの名前で収載されている。日本の市場品はほとんど北海道で栽培されている北海吉草といわれるエゾカノコソウである。日本産の吉草根はワレリアナ根よりも精油を多く含み、優秀な品種とされている。

 カノコソウの根茎は精油8%を含有し、成分にはボルニールイソバレレイトやケッシルアルコールなどが含まれ、鎮静作用などが認められている。吉草根やワレリアナ根のチンキは鎮静、鎮痙薬として動悸やヒステリー症状、あるいは虚脱状態の興奮剤として用いられる。現在、市販されている婦人用保健薬などによく配合されている。

枳実

2012年07月04日 | 健康
○枳実(きじつ)

 日本ではミカン科のダイダイ(Citrus aurantium)やナツミカン(C.natsudaidai)などのミカン類の未成熟果実を枳実という。中国ではおもにカラタチ(Poncirus trifoliata)やダイダイなどの果実が用いられている。枳実よりも多く成熟直前の果実を枳殻、また成熟した果実の果皮をダイダイは橙皮、ナツミカンは夏皮と称している。

 本来、枳実は風などにより落ちた未成熟果実を拾い集めたものをそのまま、あるいは横割りにして天日で乾燥したものである。古いものをよいとする半夏・陳皮など六陳と呼ばれるものの一つとされている。

 枳実には芳香性のリモネンを主成分とする精油やフラボノイドのヘスペリジン、ナリンギンなどが含まれる。薬理的には胃腸の非生理的な収縮を抑制し、蠕動を強め、リズムを整える働き、さらに抗炎症作用、抗アレルギー作用などが認められる。

 漢方では理気・健胃・消積・去痰の効能があり、気を行らし、気の滞りによる硬結や痰による胸を痞えを消す作用がある。臨床的には胸満感や胸痛、腹満感や腹痛、便秘、食積、浮腫、胃下垂、脱肛などに応用される。また可能性炎症にも硬結を解する作用があるとして用いられる。

 米国ではダイダイの未熟果から抽出したエキス(シトラス)が、ダイエット素材として注目されている。シトラスに含まれているシネフリンなのサーモアミンが、交感神経系に働きかけ、脂肪細胞を刺激して脂肪酸を遊離して燃焼しやすくする働きがあると説明されている。