健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

おうごん

2012年03月17日 | 健康
○黄芩(おうごん)

 朝鮮半島、中国、モンゴルなどに分布するシソ科の多年草コガネバナ(別名コガネヤナギ Scutellaria baicalensis)および同属植物の根を用いる。日本では江戸時代に朝鮮から種子を輸入し、小石川御薬園で栽培されたのが始まりで、今日でも薬用や観賞用として栽培されている。

 コガネバナは葉が狭いのでコガネヤナギともいうが、コガネとは根が黄色いことを指すもので花は紫紅色である。根の断面は濃い黄色で中に赤褐色の芯があるが、古い根の内部は黒く空洞状となっており、枯黄芩または枯芩と呼ばれている。

 根にはフラボノイドのバイカリン、バイカレイン、オウゴニンなどが含まれ、バイカリン、バイカレインには利胆、抗炎症、抗アレルギー、降圧、利尿、鎮静作用などがある。また黄芩エキスでは抗微生物、解熱、鎮痙、抗動脈硬化作用なども報告されている。

 漢方では清熱・燥湿・解毒・安胎の効能があり、咳嗽、下痢、黄疸、膀胱炎、吐き気、皮膚化膿症、胎動不安などに用いる。黄芩は代表的な清熱燥湿薬のひとつで呼吸器、消化器、泌尿器などの炎症や熱性疾患に幅広く応用され、とくに肺熱(呼吸器感染症)を清するといわれている。また頭痛やのぼせ、不眠など頭部に熱が上がっている肝陽上亢の状態や、妊娠中の胎動不安や切迫流産のときにも用いる。

黄狗腎

2012年03月16日 | 健康
○黄狗腎(おうくじん)

 食用である。イヌ科のイヌ(Canis familiaris)の雄の睾丸、陰茎を用いる。牡狗陰茎、狗鞭、狗腎、あるいは広東省広州産が有名なため広狗腎ともいわれる。ただし単に狗腎といえば腎臓を指すこともある。ちなみに海狗腎といえばオットセイの陰茎・睾丸のことである。

 犬の種類は非常に多いが、一般に柴犬のような家犬が飼育されている。そのほか中国ではイヌの肉は狗肉、胃の中の結石を狗宝として薬用にしている。冬に陰茎と睾丸を切り取って、まっすぐにして乾燥する。乾燥した陰茎は長さ12cmくらいで、3~4cmの楕円形をした睾丸が輪精管とつながっている。

 漢方では補陽・強壮の効能があり、インポテンツや帯下などの症状に用いる。滋養・強壮薬の至宝三鞭丸に含まれる三鞭とは黄狗腎と海狗腎、および鹿の外生殖器である鹿鞭のことである。なお狗肉には温腎・滋養の効能があり、狗宝には降逆・開欝・解毒の効能がある。

黄耆

2012年03月15日 | 健康
○黄耆(おうぎ)

 中国の東北、華北地方、朝鮮半島などに分布するマメ科の多年草キバナオウギ(Astragalus membranaceus)、または中国東北部から蒙古にかけて分布するナイモオウギ(A.membranaceus var.mongholicus)などの根を用いる。品質の良いものは外部が淡褐色、内部は黄白色で、甘くて香気があり、断面は繊維性で毛状となっている。とくに山西省綿山に産する綿黄耆は上質とされている。日本の本州中部以北や朝鮮半島などに分布するマメ科のイワオウギ(Hedysarum vicioides)を和黄耆と称し、かつては黄耆の代用にされたこともあるが、現在では使用しない。また中国ではイワオウギの近縁植物である多序岩黄耆の根を晋耆あるいは紅耆といい、黄耆の一種として用いている。晋耆は品質良好とされるが、日本薬局方では黄耆から除外されている。

 黄耆の成分にはイソフラボノイドのホルモノネチン、トリテルペンサポニンのアストラガロシドのほか、コリン、ベタインなどが含まれ、黄耆エキスには利尿、強壮、降圧、抹消血管拡張、抗アレルギー作用などが報告されている。近年、黄耆の降圧作用のある成分としてγ-アミノ酪酸(ギャバ、GABA)が注目されている。また最近の研究で、免疫機能を高める効果が注目されており、T細胞やNK細胞を活性化することが認められ、エイズ(免疫不全症候群)や癌に対する効果が期待されている。

 アメリカではアストラガルスという名で健康食品にも利用され、アンチエイジングや男性用強壮剤として利用されている。日本でもオウギの葉をペイチー茶と称し、健康茶として市販されている。漢方では補気・利水消腫・止汗・托毒の効能があり、疲労倦怠、胃腸虚弱、内臓下垂、浮腫、盗汗、自汗、皮膚化膿症などに用いる。

黄瓜

2012年03月14日 | 健康
○黄瓜(おうか)

 インド北部のヒマラヤ地帯の原産で現在では世界中で栽培されているウリ科のつる性多年草キュウリ(Cucumis sativus)の果実を用いる。日本には平安時代にすでに渡来していたが、長い間、完熟して黄色くなったものを食べていたとされる。キュウリとは黄瓜のことである。かつてキュウリは苦味が強かったためか、評判はあまりよくなく江戸時代の末期ごろまでは普及しなかった。

 果実の苦味質はククルビタシンCで、そのほかビタミンA・C、イソクエルシトリンなども含まれる。イソクエルシトリンには利尿作用があり、ククルビタシンCは抗腫瘍作用が報告されている。薬用には新鮮な果実を用いる。

 漢方では利水・止瀉・解毒の効能があり、熱病や浮腫に用いられる。日本ではつるを切って得られる浸出液をキュウリ水、つるを乾燥させたものをキュウリズル(胡瓜蔓)として用いている。キュウリズルには熱をとり、口渇を抑え、利尿する効能がある。キュウリ水も口渇や浮腫、二日酔いに用いるほか、火傷やあかぎれ、汗疹などの外用薬としても利用されている。

王瓜仁

2012年03月13日 | 健康
○王瓜仁(おうかにん)

 日本の本州、四国、九州、台湾、中国に分布するウリ科のつる性多年草カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)の種子を用いる。カラスウリは王瓜あるいは土瓜とも称し、王瓜仁は土瓜仁とも呼ばれる。根も薬用にされ、土瓜根という。なお同属植物のキカラスウリ(T.kirilowii var.japonica)は栝楼と称し、漢方薬としては、この栝楼仁栝楼根の方が重要である。

 カラスウリの種子の中央には特徴的な帯状の隆起がある。種子の成分としてはトリコサント酸などの脂肪酸や有機酸などが知られている。官報では清熱・涼血の効能があり、肺結核などによる喀血や鼻血、下血、黄疸などに用いる。なおカラスウリの果汁や果肉はしもやけやあかぎれの外用薬として用いられる。

延命草

2012年03月12日 | 健康
延命草

 北海道から四国、九州、朝鮮半島などに分布するシソ科の多年草ヒキオコシ(Isodon japonicus)の茎葉を用いる。長野県、新潟県、石川県、富山県などを主産地とする日本の民間薬で、中国では知られていない。生薬名を延命草というが、漢名ではない。弘法大師が腹痛で倒れていた行者を回復させたという故事にちなんでヒキオコシとか延命草という名がある。

 茎葉には苦味成分のジテルペノイドのエンメイン、イソドカルピン、ノドシン、オリドニンなどが含まれ、エンメインやオリドニンには抗菌作用、抗腫瘍作用などが報告されている。日本では苦味健胃薬として家庭薬などに配合され、消化不良、食欲不振、腹痛などの治療に用いられている。ただし苦味質はアルカリによって容易に分解するため、重曹などとの配合は適さない。

 戦時中に供給が不足したゲンチアナの代用品として小豆島の寺院で栽培されていたヒキオコシが有名となり、全草を粉末とした延命草末が苦味健胃薬として全国で用いられるようになった。

鉛粉

2012年03月10日 | 健康
○鉛粉(えんぷん)

 酢酸鉛に炭酸塩を加えると生成する鉛白を鉛粉という。鉛に酢酸を加熱した蒸気を作用させると酢酸鉛となり、さらに二酸化炭素が反応して白色の塩基性炭酸鉛2pBCO3・Pb(OH)2の粉末ができる。古くから知られている白色顔料であり、ペンキや油絵の具のシルバー・ホワイトなどに用いられる。しかし有毒であり、硫化水素によって硫化鉛PbSとなって黒変する欠点がある。

 鉛白はすでに平安時代の貴婦人が白粉として用い、江戸時代には京白粉の名で知られ、塩化第一水銀の伊勢白粉(軽粉)とともに広く普及していた。このため江戸時代の遊女や役者たちが鉛中毒に悩まされたといわれる。またその毒性が胎児や乳児にも影響するため、昭和9年に化粧品に入れることが禁止された。

 漢方では駆虫・解毒・生肌の効能があり、寄生虫症や腹部の硬結、慢性下痢、マラリア及び皮膚疾患などに用いる。かつて腹痛や硬結、下痢などの治療に内服としても用いられたが、今日では外用薬として疔瘡、湿疹、潰瘍、火傷、脇臭などに用いられる。皮膚化膿症の外用薬にもしばしば炭酸鉛が配合されている。

鉛丹

2012年03月09日 | 健康
○鉛丹(えんたん)

 鉛(黒色鉛)を鉄の鍋に入れて動かしながら長時間加熱(300~400℃)し、空気中の酸素により酸化されて得られる赤色の結晶性の粉末を鉛丹という。黄丹あるいは光明丹ともいい、主成分は四酸化三鉛でPb3O4あるいは2PbO・PbO2と記される。一般には赤色顔料として鉄材のさび止めに用いられるほか、鉛ガラスの原料や陶磁器のうわ薬として用いられる。

 漢方では解毒・生肌の効能があり、おもに外科の要薬として疔、瘡蓋などの皮膚化膿症や湿疹、潰瘍、外傷、蛇咬傷などに外用される。また日本では江戸時代から疔瘡など皮膚化膿の吸出し薬として知られる雨森無二膏、あかぎれや打ち身、筋肉痛の貼り薬として知られるあかぎれ膏や万金膏などにも配合されている。

 傷寒論の柴胡加竜骨牡蠣湯には鎮静の目的で鉛丹が配合されていたが、一般に省略されたり、生鉄落や代赭石で代用される。また、かつてマラリアや癲癇、下痢などの内服にも

えんそ

2012年03月08日 | 健康
○鼴鼠(えんそ)

 モグラ科ニオイモグラ属のニオイモグラ(Scaptochirus moschata)などモグラ全体のあるいは肉を用いる。モグラは体調15~20cmで茶色ビロード状の毛で覆われ、耳介はなくなり、目は退化し、シャベル状の大きな手と細い尾が特徴的である。一生地下の中でトンネルを掘って生活し、地中のミミズや昆虫、植物の根などを食べる。

 生薬では黒焼きにして粉末にした鼴鼠霜(別名:土竜霜)を用いる。漢方では解毒・止咳などの効能があり、腫れ物などの皮膚病、痔、喘息などに用いる。咳が止まらず、諸薬の効果がないときに単独で用いる(勝聖散)。梅毒などによる皮膚病や胎毒などには軽粉・赤小豆などと配合する(鼴鼠丸)。また黒焼きを皮膚病の患部に塗布する。

延胡索

2012年03月06日 | 健康
○延胡索(えんごさく)

 浙江省をはじめとする中国各地で栽培されているケシ科の多年草エンゴサク(C.ambigua)、本州、九州、朝鮮半島、中国東北部に分布するヤマエンゴサク(C.lineariloba)など同属植物の塊茎を用いる。なおジロボウエンゴサク(C.decumbens)の塊茎や全草を中国では夏天無と称している。延胡索はかつて玄胡索という名であったが、宋代の眞宗の諱を避けて玄を延に改め、以来、延胡索と呼ばれるようになった。

 エンゴサクの塊茎にはアルカロイドのコリダリン、テトラヒドロパルマチン、コリブルビン、プロトピンなどが含まれ、コリダリンやコリブルビンには弱い麻痺作用、テトラヒドロパルマチンには鎮静・鎮痛作用が認められている。

 漢方では活血・理気・止痛の効能があり、胸痛、腹痛、脇腹部痛、月経痛、打撲痛などに用いる。延胡索は気血の流れを促進するため、「血中の気、気中の血を行らせる」といわれている。また止痛薬として気滞や血瘀による痛みに効果があり、「一身上下の諸痛を治す」といわれ、特に胃痛や月経痛の治療に優れている。日本でも胃薬や婦人用保健薬などの家庭薬にしばしば配合されている。止痛作用は乳香・没薬などよりも強く、酢で炒めれば止痛効果はさらに強くなる(醋延胡索)。