健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

梅肉エキスについて

2005年11月10日 | 健康
○梅肉エキス

 梅は原産地中国の医薬書の古典「神農本草経」にもその薬効が説かれており、この時代から健康に役立つ食品として知られていた。日本には奈良時代に伝わり、平安時代には当時の医薬書である「医心方」にのどの渇き、息切れなど梅干しの効用が記されているが、一般大衆に広く普及したのは江戸時代の初期である。

 梅の薬用効果を強化したのが梅肉エキスである。この原型は中国の烏梅(梅の実をいぶしながら乾燥させたもの)にあり、これをさらに発展させたのが日本独特の梅肉エキスで、江戸時代の医療書「諸国古伝書秘方」には当時の製法が記され、その効用については、赤痢、腸チフスに該当する伝染病や、食中毒、吐き下し、下痢、便秘、消化不良などが示されている。

 経験的にも学術的にも梅(梅肉エキス)の効果が再認識されてきた中で、農林水産省食品研究所と(財)梅研究会が行った共同研究では、毛細血管と同じ孔経7ミクロンのフィルターを血液が通過する時間を測定した結果、梅肉エキスを加えると通過時間が半分(約30秒)に短縮される血流改善効果が明らかにされ、ムメフラールと名づけられた新規物質も見出されて、生活習慣病の改善に役立つことが期待されるようになった。

 そのほか、医学的見地からも認められる効用をまとめると次のようになる。①血液を弱アルカリに保つ浄血作用があり、新陳代謝を活発にして諸器官を正常化する。②クエン酸の働きで疲労物質である乳酸の発生を抑え、体の活性化、老化防止に効果的である。乳酸が蓄積されると動脈硬化、高血圧、肝臓病など老化現象を起こす。③血液を弱アルカリ性に保つので老化防止に有効である。さらにクエン酸が「若返りホルモン」といわれる唾液腺ホルモン(パロチン)の代謝を活発にさせるので、二重の老化防止効果がある。④梅に多く含まれている有機酸のピクリン酸が肝機能を高める。⑤体内からの美容効果のほか、整腸作用に優れ、便秘や下痢に効く。梅に含まれているカテキンは腸の働きを活発にする作用があり、便秘、ニキビや肌荒れに効果的である。⑥殺菌作用が強く、腸チフス、コレラ、赤痢菌のほか、抗生物質の効かないMRSAや、病原性大腸菌O-157などにも非常に強い殺菌・抗筋力を発揮する。⑦梅肉エキスは各種有機酸の相乗作用で胃液の分泌を抑え、胃潰瘍を予防する。

 梅肉エキスを使った健康食品は、錠剤、粒・顆粒・ペースト・ドリンクなど様々なタイプのものがある。

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マカについて

2005年11月09日 | 健康
○マカ

 マカはアブラナ科に属する多年草で、性質は強靭、世界で最も標高が高いペルー山中4000mの高地で栽培されており、仲間のカブと同様の膨らんだ根は辛さと甘さを抱き合わせた風味があって、焼く・蒸す・煮込みなどして食べる。1ヶ月前後自然乾燥させたものは、牛乳などで煮てポリッジにする。また、発酵飲料マカチャーチャの原料にもなる。

 かつて征服者のスペイン人が持ち込んだ馬や羊の繁殖に行き詰ったとき、原住民の忠告に従って餌にマカを与えたところ眼をみはる結果を得たことから、ペルーの高麗人参と呼ぶようになったとも伝えられる。

 マカはアンデス地域で数千年から栽培され、滋養食材として貴族の間で重宝されたきた。その後、一時絶滅の危機に直面したが、1980年代に入って、住民の健康維持にとって有益な食用及び薬用の植物であることが再認識され、ペルー政府の肝いりで増産が奨励されてきた。

 乾燥マカは米はトウモロコシ、あるいは小麦に勝る栄養成分を持ち、その上、アルギニン酸やリジンを初めとする必須アミノ酸も豊富である。鉄分とカルシウムはジャガイモ以上含有され、不飽和脂肪酸はリノール酸、リノレン酸、パルミチック酸など、さらにカリウム、リン、亜鉛、銅、マンガンなどの微量元素も多く含まれて、まさに栄養の缶詰といっても過言ではない。

 現在最も一般に認められている機能としては、①活力増強、集中力・記憶力の向上、ストレス疲労の軽減、性生活の円滑化、②更年期障害の除去、月経不順の正常化、精子・卵子の増殖など不妊症の解消を含む生殖機能の促進効果、③免疫賦活作用、抗酸化作用、抗ガン作用などがあるとしているが、これらは特定成分の直接的効果ではなく、数種類のアルカロイド、ステロイド、テルペノイド、サポニン、タンニン、アントシアニン、イソチオサイアネート、グルコシノレートなど、第二代謝物が下垂体を刺激した結果、内分泌腺の活動が活性化されるためとも考えられる。

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ギムネマ(シルベスタ)について

2005年11月08日 | 健康
○ギムネマ(シルベスタ)

 インドには2000年以上にもわたって伝わるアーユルヴェーダと呼ばれる伝承医学があり、それは天然自然の動植物や鉱物を巧みに用いた医療法、病気予防法の一大体系であるが、その中に糖尿病、健胃、利尿、強壮に効く生薬としてメーシャシュリンギーが伝えられる。

 現地名でグルーマールと呼ぶこの薬草は、ラテン名でギムネマシルベスタといい、インド中南部を中心に、東南アジアからオーストラリアを含む広範な地域に自生するガガイモ科の蔓性多年草である。蔓は木に絡むようにして3~4mに伸びるが、その成熟した葉を採集して乾燥させたものが、ギムネマ茶の原料となる。

 ギムネマの葉には特有の匂いと苦味があるが、この葉を噛んでしばらくしてから砂糖をなめると、不思議なことに全く甘みを感じなくなってしまう。この不思議な作用を始めてヨーロッパに伝えたのは19世紀中頃、イギリスの軍人であったが、その後今から100年前ほど、同国の科学者フーバーがこの奇妙な作用を持つ物質の抽出に成功してギムネマ酸と名づけた。

 近年、ギムネマ酸がトリテルペンを骨格としたグルクロン酸を持つ配糖体であることがわかり、甘みだけが消えてしまう理由は、このブドウ糖に似た構造を持つグルクロン酸が、舌の甘みを感ずる部分にある甘味受容体に結合して、後から来る砂糖を受け付けなくするからではないかと考えられている。

 ギムネマシルベスタが糖尿病の改善に効果を発揮することは多くの実験で認められているが、その作用機構もこれと同じで、ギムネマ酸がブドウ糖を輸送する担体と結合して糖の吸収を防げるからではないかという考えがある。

 糖尿病には、血糖を抑える働きをするインスリン(膵臓で作られるホルモン)の不足によるもの(Ⅰ型糖尿病)と、多色と肥満によって起こる成人型のもの(Ⅱ型糖尿病)とがあるが、いずれにしても過食と糖分摂取を控える食事療法を長期間続けなくてはならない。この場合は、食べても腸管からの糖分の吸収が抑制されれば、節食したことと同じ効果が得られるわけだが、ギムネマ酸にその働きがあることが実証された。ギムネマ酸のこの吸収抑制効果によって血糖値が下がると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌量が減り、それがひいては膵臓の負担を軽くして回復を促進することも期待できるのである。

 ギムネマ酸によって糖分の吸収が少なくなるということは、成人病(生活習慣病)の温床とされる肥満を抑制する上でも効果的であることは言うまでもない。

 糖尿病にせよ、肥満にせよ、強壮にせよ、実際的には長い時間をかけて対処しなくてはならないものであり、継続するためには手軽に飲めるお茶タイプのものはありがたい。ギムネマ茶はギムネマシルベスタの乾燥葉を焙煎した番茶状のもので、こうすることによって苦味も消えて風味が増し、ウーロン茶感覚で飲み続けることができる。また最近では、お茶以外にもエキスを粉末、顆粒、ゼリー、ペースト状に加工した健康食品も出ている。

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小麦胚芽について

2005年11月07日 | 健康
○小麦

 日本人の主食として、米と並んで多く摂られているのが小麦である。ざっと見渡しても、パン、うどん、中華麺、そうめん、ひやむぎ、スパゲティ、マカロニなど、朝食や昼食の主役となるものは小麦を原料にしたものが多い。このほか、麩や餃子・焼売の皮なども小麦である。

 このように、もっぱらパン類や麺類として摂取される小麦だが、小麦成分を健康機能素材として利用した加工食品もある。古くから知られているのは小麦胚芽や小麦胚芽油だが、最近は小麦タンパク質も注目されている。小麦の水溶性タンパク質である小麦アルブミンは、ヒトの唾液や膵液に含まれるデンブン消化酵素(アミラーゼ)の働きを穏やかにする。そのため、食事の中に含まれる糖質の大部分を占めるデンプンの消化吸収を遅らせ、急激な食後血糖値の上昇を緩和する作用がある。この機能性に着目して、小麦アルブミンを含んだ粉末野菜スープなどが特定保険用食品として商品化されている。このほか、大腸ガンの予防効果が期待される食物繊維として小麦フスマもよく知られている。

○小麦胚芽

 パンの原料である小麦は、本来栄養のバランスがとれえた穀物であるが、パンは胚芽を取り去った小麦粉だけで作るので、かたよった栄養になってしまう。「玄米」の項で述べたように、穀類の外皮(糠)や発芽部分(胚芽)はタンパク質や脂肪、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれ、栄養価値は大きいが、消化が悪くて食用に不向きなので、あまり使われていない。こうした欠点を除き、小麦の胚芽の持つ栄養を生かしたのが、健康食品の小麦胚芽である。

 小麦胚芽は、小麦の粒にある胚芽部分を集めて食べやすくしたもので、白米(精白米)の20倍のビタミンB1、B2が含まれている。そのほかにもビタミンE・B12などが豊富なのが特徴。とくに、ビタミンEは小麦胚芽油でもよく知られているように、その効果は大である。血液の循環をよくし、脳に十分な酵素を補給したり、新陳代謝に必要な酵素の働きを促したりするほか、細胞の老化を防止する、などに役立つ栄養である。

 ビタミンB群の重要さにも注目すべきものがある。B1が不足すると、たとえば脚気になりやすくなる。これは「疲れやすい」「根気がない」といった症状を呈するもので、戦前は栄養不足のために、かなり多く見られた疾病である。ところが一時はほとんど影をひそめたこの病気が、食生活が豊富といわれえる近年、再び、見られるようになり、ビタミンB1不足の子供たちが急増しているという調査が発表され、各方面から注目された。

 こうしたビタミンB群不足を補うのに、小麦胚芽は格好の栄養食品なのである。その効用は、①ビタミンB1やB2が多く糖質の代謝が円滑に進むので、便秘も解消し、痔も治る、②カルシウムの吸収率を高め、さらにビタミンEが心筋の働きを強化し、毛細血管の新陳代謝を促進するので、心臓病、喘息に効果がある、③疲れやすく、寝つきの悪い人にはビタミンB2、B6不足の人が多いので、こうした人の栄養補給によい、④ビタミンやミネラルは関節リューマチに効果があるなどである。

小麦胚芽の商品一覧

グルコサミンについて

2005年11月06日 | 健康
○グルコサミン

 グルコサミンは、構造的には糖とアミノ酸(タンパク質の構成成分)が結びついた代表的な天然のアミノ糖の一種で、人の体では細胞同士や組織同士を結びつける結合組織として、特に軟骨、腱、爪、皮膚などに広く分布している。カニやエビなど甲殻類の外殻を形成するキチン質のほか、ムコ多糖などにも含まれるが、機能性食品としてはキチンを塩酸または硫酸で加水分解して単離、精製して作られる。水には易容性を示す。

 キチン・キトサンの食効に関する基礎研究や応用を追いかける形でヨーロッパからアメリカへとグルコサミンの研究開発が広がった背景には、細胞の若返りといった美容効果、壮健効果への期待はもちろんとして、関節症に対する有効性という大きなニーズが横たわっていた。というのは、高齢化、肥満、運動不足といった現代人の抱える不都合な因子のために、全員いたるところの関節内で軟骨の磨耗、炎症が起こっており、特に腰や膝の慢性関節炎に罹患するケースが増え続けているからで、そのため軟骨の構成成分であるグルコサミンやコンドロイチンに脚光が当てられたのである。ちなみにわが国の関節症患者は約80万人、その8割は女性である。

 欧米では、製造過程で加水分解に硫酸を用いる硫酸塩グルコサミンを用いた製品や研究成果が多く、わが国では塩酸を用いた塩酸塩グルコサミンの研究も盛んであるが、関節症(変形性関節症及び類似症)に対する機能はどちらにも優れたものがあり、甲乙付けがたいことも明らかになった。現在は、その摂取法や他の機能性成分との効果的な組み合わせに関心が移行し始めている。

 もうひとつ別の面からの研究として、グルコサミンがガン細胞から出る「やせる毒素」を阻害して食欲不振を改善し、ガンによる衰弱を防ぐとする奥田拓道(愛媛大学医学部)らの報告がある。

 その毒素は米国の学者グリーンシュタインの発見した「トキソホルモン」で、ガン細胞が分泌するこの物質によって、脂肪細胞の脂肪が分解されることを、奥田らはザルコーマ180ガン細胞を移植したマウスによって確認した。さらに、ガン細胞から精製したトキソホルモンをマウスの脳側室に注入すると、急激に食餌量が低下することが確認され、それが脳の満腹中枢を刺激する結果であることも明らかになった。すなわち、ガンに罹った患者が急激に痩せるのは、トキソホルモン(ガン毒素)のために脂肪細胞内の脂肪がどんどん分解されていく一方、食欲不振に陥るためである。

 この場合、実験に用いられた種々の物質の中で、グルコサミンだけがトキソホルモンの作用を阻害して、脂肪細胞内でいたずらに脂肪が分解されることを抑え、また満腹中枢の興奮を抑える働きを持つことが確認された。すなわち、グルコサミンには、ガンによる急激な痩せと、それによる衰弱を食い止める働きが期待されるのである。

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AHCCについて

2005年11月05日 | 健康
○AHCC

 AHCCは、一口にいえばキノコに由来する機能性物質ということになる。高度なバイオ技術によって培養された複数のキノコ(坦子菌類)の菌糸体から抽出されたもので、1981年に北海道に本社を置くアミノアップ化学によって開発された。キノコらしくないAHCCというネーミングは「A=Active(活性化された)HC=Hemi-Cellulose(ヘミセルロース)C=Compound(調合する、集合体)」という意味が織り込まれている。

 菌糸体抽出物質であるAHCCは、当初からその抗腫瘍活性に期待が寄せられたが、それは開発当時すでに、カワラタケというキノコの培養菌糸体から得たクレスチンが制ガン剤としての医薬品の認可を受けて市販されており(1977年)、シイタケの子実体から得たレンチナン、スエヒロタケの液内培養生産物から得られるシゾフィランが、ともに抗ガン剤として医薬品の認可を受ける前夜であったからである。

 しかし期待の中で生まれたAHCCの大きな可能性が、わが国でしっかり認識されるチャンスを作ったのは、アメリカの免疫学者で臨床医でもあるマンドー・ゴーナムである。ゴーナムは自ら末期ガン患者(多発性骨髄腫、頚部ガン、乳ガンなど)13人に対してAHCCを用い、全員が治癒もしくは軽快したという3年間の治験を、1993年10月に東京で発表し、医師や研究者に驚きを持って迎えられたのである。以後、各地の医療現場でも積極的に研究されるようになった。

 キノコの抗腫瘍活性のほとんどは、含まれている多糖類(β-D-グルカン)に由来しており、その分子構造のわずかな違い、あるいはそこに一定のタンパク質が化合しているか否かによって、活性の差が生ずることがわかっている。AHCCが見せる強い抗腫瘍活性も、活性ヘミセルロースやβ(1-3)D-グルカンといった多糖体と、単離できない生体機能調節物質とが、相乗的に効能を発揮するのであろうと推察されている。

 このような抗ガン性に止まらず、B型及びC型のウイルス性慢性肝炎、糖尿病、慢性関節リウマチ、自律神経失調症など、治療の難しい疾患に用いて有効性があったとする報告も多い。このような難治性の病気が改善したとき、理由は未解明でも明らかにその健康回復に寄与した物質を医学的にアダプトゲンというが、AHCCはまさにその名にふさわしいものといえよう。


大豆(イソフラボン)について

2005年11月04日 | 健康
○大豆

 マメ科の一年生植物の種子で、五穀の一つに挙げられるほど日本人の大事な食糧源とされてきた大豆は、そのまま煮豆などにされるほか、豆腐、湯葉、揚げ、納豆、味噌、醤油などに加工されたり、大豆油の原料となるほど利用範囲は驚くほど広いが、これら多彩な大豆加工食品が生まれる主役を担っているのは、大豆に35~44%も含まれる、大豆タンパク質である。それ故に”畑の肉”と称される大豆だが、大豆にはタンパク質以外にも数多くの有効成分が含まれており、最近の研究から多彩な健康機能性が明らかにされている。

 現在、日本人の1日1人当たりのタンパク質摂取量は80gで、動物性タンパク質が55%、植物性タンパク質が33%となっている。植物性タンパク質では、米や小麦などの穀物タンパク質が多く(タンパク質全体の24.3%)、次いで大豆などの豆類が8.6%となっている。

 一般的に動物質タンパク質の必須アミノ酸組成はヒトのアミノ酸必要量のパターンに近く、植物性タンパク質よりも良質であるとされている。動物性タンパク質の摂取比率が下がり、逆に植物性タンパク質の比率が上がると、不足するアミノ酸(制限アミノ酸)が生ずる可能性も出てくる。しかし、動物性タンパク質を多く摂取すると動物性脂質の過剰摂取が起こり、別の健康障害を引き起こしかねない。『第六次改定・日本人の栄養所要量』では、動物性タンパク質比率を40~50%の範囲に保てば、飽和脂肪酸の過剰摂取を避け、食事として摂取するタンパク質の質も確保することができると指摘している。

 現状日本人の動物性タンパク質の比率は55%とやや高めである。豆腐や納豆といった身近な大豆食品を多めに摂ることで、日常的にこの比率を改善していくことが可能だろう。また、牛乳の代わりに豆乳を利用すれば、中性脂肪の摂取量を減らし、動物性タンパク質の比率を下げることにもつながる。

 さて、大豆タンパク質の健康機能性で最近注目されているのは、血清コレステロールの低下作用である。脱脂大豆から得られた分離大豆タンパク質を使った動物実験やヒト試験では、①コレステロール値の高い人に対しては総コレステロール値を下げる、②正常なコレステロール値の人に対してはコレステロール値を下げない、③悪玉コレステロールであるLDLやVLDLだけを選択的に下げ、善玉コレステロールのHDLは下げない、などの効果が得られている。分離大豆タンパク質を活用した食品は多数出回っており、ソーセージ、からあげ、ミートボール、ハンバーグ、乾燥スープ、清涼飲料水などが特定保健用食品として販売されている。

 なお、アメリカでは1999年11月、FDA(食品医薬品局)が大豆タンパク質を含む食品に対して「飽和脂肪酸とコレステロールを低減させることで心臓疾患のリスクを減らす」といった効能をラベルに明記してよいことを許可している。規定によれば、一食相当6.2gの大豆タンパク質を含み、余分な油脂を含まないことが最低の条件になっている。

 大豆の胚軸に多く含まれる。大豆サポニンには過酸化脂質の生成を抑制し、高血圧・動脈硬化を改善する効果が認められている。また、フラボノイドの一種である。大豆イソフラボンは、乳ガンや前立腺ガンを予防するほか、骨粗鬆症の予防にも効果があるという研究報告が出ている。さらに、大豆に多く含まれるレシチンにはコレステロールが血管壁に沈着するのを防ぐ働きがあることも知られている。

      

イチョウ葉について

2005年11月03日 | 健康
○いちょう葉

 イチョウの出現は約2億5000年前(古生代中葉~末期)であるとされる。十数種類が地球全域にわたって繁殖したが、6000万年前の大氷河期に一属一種を中国の南部地帯に残して絶滅したと考えられている。残されたその樹種が11、2世紀頃に中国からわが国へもたらされ、江戸時代中期(1700年頃)に長崎に滞住したドイツ人医師によってヨーロッパへ紹介されたという。

 古くから中国でもわが国でもイチョウに薬効を認め、外種皮を除いた種子の銀杏(漢方では白果仁)は鎮咳、去痰、夜尿症、頻尿によいとし、民間療法では葉を煎じて心臓病(動脈硬化)に用いたりしてきた。しかし、ドイツで開発されたイチョウ葉エキスは、高年者のボケ防止、血流循環改善(血行促進)剤などとして高く評価され、先導役のドイツをはじめ、フランス、イタリア、スイス、オーストリア、さらに台湾や韓国などでも医薬品とされ、アメリカやイギリスでも非常に有望なサプリメントとして扱われている。とくにアメリカの医療関係者によって、イチョウ葉エキスが痴呆症やアルツハイマー病に有効であるとの報告が行われた1997~98年以降は、その影響が世界的に及んだ感がある。

 イチョウ葉の有効成分としては、30種類以上にものぼるとされるフラボノイドがある。フラボノイドは植物に含まれる色素成分で、種子の発芽や成長の調節物質であるとともに、太陽の紫外線を吸収し内部組織を保護する作用などが考えられており、人体に入ると毛細血管の保護、活性酵素を抑制する機能などを発揮するが、とくにイチョウ葉には二重フラボン(ギンケラチンやイソギンケラチンなど)が含まれ、他の植物のフラボノイドに比べ血液循環効果が数倍強いとの研究もある。

 イチョウ葉に特有の成分であるギンコライドは、化学的にはチルペン類に属する有機化合物で、血小板活性化因子(PAF)の働きを阻害し、毛細血管の拡張と血行促進、血栓防止、血圧の調整、脳の血流量の増加、老廃物の排泄を促進する作用があり、老人性痴呆症に有効であると考えられている。

 ほかにも毛細血管を強化するルチン、血圧投下作用のあるケルシトリン、肝臓機能を高めるシリマリン、血管を拡張し血流をよくするテポニンなども検出され、これらが相乗的に働くことによって、生活習慣病や高齢化に伴う不定愁訴、退行性痴呆症、慢性脳血管障害、虚血性抹消循環不全、心不全、平衡障害などにまでその効果が及ぶと考えられる。


桑の葉について

2005年11月02日 | 健康
○桑の葉

 桑はクワ科の落葉高木で、漢方では冬に採取した根皮を「桑根白皮」「桑白皮」といい、消炎・去痰・利尿などに用いている。また、葉を集めて乾燥したものは「桑葉」と呼ばれ、これも生薬として使われている。桑の葉はとくに晩秋の霜に当たったものが良品とされている。

 桑の乾燥葉100g 中にはキャベツの60倍のカルシウム、総カロチンはホウレンソウの約10倍、血圧を下げるγ-アミノ酪酸も300~400mg と豊富。シトステロールなどの殺菌・消炎作用を持つステロール類、カビを抑える作用を持つカプロン酸、サリチル酸メチルなどが含まれる。

 桑の葉を煎じて飲んでいると、血圧が下がったり、肥満を予防する効果があることは古くから経験的に知られてきたが、桑の葉には高血圧・高脂血症・糖尿病・ガンなどの生活習慣病を予防するすぐれた効果があることが、1992年から5年間にわたって神奈川県衛生研究所などが参加して行った「機能性食品の共同研究」(96年、神奈川県科学技術政策推進委員会発表)で明らかにされている。

 それによると、桑の葉から抽出したエキスを使った動物実験の結果、①コレステロール値、中性脂肪値の改善(ウサギの実験)、②肝臓の脂肪と機能の改善(マウスの実験)、③血糖値の上昇を抑え糖尿病を予防する(ラットの実験)、④インスリンの分泌不足とイスタリン分泌細胞の破壊を防止する、⑤体脂肪を抑制、脂肪の排泄量を増やす(ラットの実験)、⑥正常血圧には影響を与えずに高血圧を下げる(ラットの実験)、⑦緑黄色野菜や緑茶と同様に、ガンの予防に効果がある(ラット・マウスの実験)などが確かめられている。また、肥満を防止し内臓脂肪を抑制してダイエット効果のあることが、群馬県医療短期大学の下村らの研究によって報告されている(1996年、日本肥満学会)。

 これら一連の研究の中でとくに注目されたのは、血糖値を抑制し糖尿病を予防する効果で、その機能性成分として桑の葉に特異的に含まれる1-デオキシノジリマイシン(DNJ)の作用が明らかにされた。DNJは、糖質を分解するα-グルコシターゼという酵素の働きを阻害し、ブドウ糖の吸収を阻害することによって血糖値の上昇を抑制すると考えられている。この効果は糖尿病発症ラットで確認され、神奈川県衛生研究所では、ヒト成人においても同様の効果があることを報告している。このDNJ は桑の葉以外の植物には見出されておらず、桑葉には乾燥量で約0・1%のDNJが含まれている。

 健康食品としての桑の葉は、お茶として飲用するティーパック、エキスを固めた粒状タブレット、顆粒粉末など、さまざまなタイプのものが市販されている。


クマザサについて

2005年11月01日 | 健康
○くま笹

 クマ笹はイネ科の笹の一品類で、葉の緑が白くなる(隈ができる)ために隈笹とも書くが、冬眠から覚めた熊が好んで食べて体力の回復をはかるところから熊笹としてよく知られている。

 その成分を見ると、100g中にタンパク質13g、脂肪3g、カルシウム360g、ビタミンB1・0.4mg、B2・0.5mg、ビタミンKが1.8mgも含まれている。さらに神秘的ともいえる多様な働きをもつ葉緑素は80mgと多く、マグネシウムやリン、鉄などのミネラルも豊富である。このうちでビタミンKは、血液を固めるのに必要なプロトロンビンを増やす作用により、血液中のカルシウムイオンを増やし、酸性体質をアルカリ性体質にする。

 クマ笹のエネルギーの素は、タンパク質(アミノ酸)のほか、葉緑素、笹多糖体にあるといわれている。笹多糖体は、弱った細胞膜に働きかけ、細胞を丈夫にする。細胞膜を強化するので、あらゆる病気に効果を示す万能選手で、ガンにも効果があると注目されている。こうした効用はとくに緑色の濃いクマ笹の若葉(1年物)が強く、煎じて常用すると強壮、血圧の安定、さらに結核、喘息、カゼなどに効くことが伝承されてきた。また、クマ笹の若葉と紅花を一緒に煎じると、いっそう効果を発揮するとされる。

 さらにクマ笹のエキスでは、慢性肝炎、胃潰瘍、白内障などのほか、口内炎や胸やけには即効性のあることも確かめられている。また、ガンの予防作用については、九州大学農学部の村上浩紀、山藤一雄が、クマ笹の葉から採り出したリグニンという高分子化合物に、動物実験で制ガン作用を認めたと報告している。一方、笹の防腐作用をつかさどる多糖類の一つパンフォリンにも、生体の免疫力を強くしてガンの増殖を抑えること、なおかつ正常細胞に対する害がないことなどがわかり、その効用が期待されている。

 このように多彩な機能成分を豊富に含むクマ笹であるが、最近、植物の有効成分を壊すことなく、しかも効率よく採り出す技術が開発され、クマ笹エキスの抽出にも使われている。新しい抽出法は、「循環多段式加圧抽出法」(菊地式抽出法)と呼ばれ、最初に100℃以下の熱水抽出によって主としてミネラル、ビタミン、アミノ酸を採り出した後、加圧のレベルを何段階かに変えることによって、さらに数多くの多糖成分を抽出するという方法である。東京慈恵会医科大学名誉教授の近藤勇らは、この抽出法によって得られたクマ笹エキス(AHSS)をピロリ菌に使い、それによって菌が死滅することを発見した。しかも「ピロリ菌の鞭毛を溶かす」という、これまでのピロリ菌研究では報告されたことのない除菌現象であったため、国際ピロリ菌学会でも注目されたのである。

 慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の発症に大きく関わっているとされるヘリコバクダー・ピロリ菌だが、日本では50歳以上の70%以上がピロリ菌感染者であるという報告もあり、ピロリ菌対策が本格的に始まっている。しかし、抗生物質を使った除菌のため耐性菌の問題も大きなネックとなっている。近藤らの研究結果は、クマ笹エキスが植物由来の天然物質であることから、抗生物質が直面している耐性菌問題にも新しい展望を開く可能性を秘めているといえよう。

  ハイブリッドAHSS