Union Station, AMTRAK
Los Angeles, California, January 28th, 2000
9.Union Station
駅に戻り切符($1.35)を買い、再び Red Line に乗車して逆の終点の Union Station で下車する。地下通路を通り上がったところは AMTRAK の Union Station である。
4年前は鉄道で旅した。サンフランシスコ (San Francisco Ferry Bldg, CA) を連絡バスで朝の7時に出発、ベイブリッジを渡りオークランド (Oakland-Jack London Sq, CA) へ。8時にシアトルからの列車 Coast starlight で、夜の8時にロサンゼルス (Los Angeles-Union Station, CA) に着くはずだったが、列車は遅れて夜の9時半頃に到着したと思う。
単線非電化で貨物列車と交換(列車の行き違い)で信号所で止まったりもした。すれ違う貨車を数えたが100を超えてもまだやってくるので数えるのを止めた。大きな峠を越えたり、太平洋に沿って走ったりするが、大きな街も少なく単調な車窓で、退屈な12時間(遅れたので13時間強)だった。座席は2等でも日本のグリーン車よりもゆったりした造りだ。
オークランドで車掌に切符を見せて指示された席は進行方向左側で通路側。海側(進行方向右側)の窓側が良かったのでがっかりした。この時は英語力が無い上に初めての海外旅行でもあり、車掌に席を変えてくれという芸当は出来なかった。私の席の隣(窓側)に若い白人女性が座っている。西洋人の年齢はよく判らない。10代のようにも見えるし、20代のようでもあるし、30代かも知れない。この列車は夜行列車でもあるので、座席で寝ていたらしく毛布を被っている。寝起きの若い女性の隣に無口な(英語が離せないからだが)東洋人男性がやってきた訳だが、怪しまれないように、とりあえず Hi と声を掛けておく。その後、9時間も隣の席にいて話し掛けなかったので充分怪しい。彼女がサンタバーバラ (Santa Barbara, CA) で降りる前になり、展望車からの海の眺めが良いから行ってみては、と教えてくれる。なかなか親切ではないか。9時間も黙っていないで、話せないなりにも何か話しておけば良かったと悔やむ。南欧風の街の中に彼女が消えて行く。
しばらくして日本人旅行者が話し掛けてきた。日本語に飢えていたので話しこむ。といっても、なんだかんだで日本語を使わなかった日は無いのだが。日本の大学生男性でアメリカ全土で使える鉄道パスを持って旅をしているという。ひとしきり話して彼は他の車両へと去った。この列車には幾人の日本人が乗っているのだろうか。
次に白人男性が話し掛けてきた。流暢な日本語である。University of California, Berkeley (UCB) の学生で日本には行った事が無いという。日本に住んでいて日本語を話そうともしないアメリカ人も多いのに。我が故郷には米海兵隊のベースがあり、外人とは海兵隊員またはその家族という図式であったので、普通のアメリカ人が我が故郷を知っているかの聞いてみた。彼は知らなかった。まあ、そうだろう。
何を話したか忘れたが、LAに到着するまで話していた。3時間以上も日本語で話しまくっていたせいか、降りる前に近くの席に座っていた白人の老夫婦が私に中国人かと聞いてきた。日本人だと答える。友人が迎えにきていたUCBの学生と駅で別れ、タクシーで前出のホテルへ向かった。運転手と野茂投手の話をした。
話は戻る。前回は夜の到着で、そそくさと後にした駅だったが、今回はまだ午前中である。列車でサンディエゴへは行けなくなったが、せめて構内を散策しよう。昭和8年(1933)に完成したという古い駅舎だが、待合室は重厚で快適そうだし、売店やレストランもお洒落な感じがする。しかし自動車かつ航空機の社会なので、日本の大都市の主要駅と比べて列車本数が随分と少なく、そんなに旅客は多くない。かつては鉄道全盛の時代もあったのだろうが。
改札は無く、自由にプラットフォームへ行くことが出来る。地下鉄と違い電化していない。また、ゆったりとした鉄道の旅をしてみたい。サンディエゴへは行かないが、明日はサンフランシスコへ移動しなければならない。4年前の逆のルートで行ってみようかと思う。切符売り場へ行くが、お目当ての列車の切符は買えなかった。バスという手段もあるが、乗り場の治安が悪いとの情報もある。残念だが航空機を利用しようと思う。せっかくなので、昨日世話になった American Airlines を使おうと思う。
切符売り場には列車案内のコンピュータ端末がある。日本語が選択できるので使ってみるが、直訳なのかまるで意味が解らない。日本にも同様の端末があるが、外国語は意味が解るように作っているのだろうか。日本人の親子連れがやってきて、やはり件の端末を使っている。駅を見に来ただけで列車に乗る訳でも無さそうだ。さて、名残惜しいが、再びここから列車の旅が出来る事を願いつつ、駅を後にした。 (つづく)