トヨタ自動車-成長一転し営業利益半減へ・期間従業員も1/3へ-
(2008/11/07 日経Automotive Technology・日経・フジサンケイビジネス・朝日新聞)
トヨタ自動車は08年上半期(4~9月)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比6.3%減の12兆1904億円、営業利益は同54.2%減の5820億円、当期純利益は同47.6%減の4934億円と減収減益となった。
世界での販売台数は425万台で、前年同期と比べて1.2%(5万1000台)減少した。地域別で見ると、中南米やオセアニアなどその他地域が前年同期比7万7000台増、アジアが同5万8000台増、日本が同1万台増となり販売台数を伸ばした。その一方で、主力の北米が同14万台減、欧州も同5万6000台減となった。
08年度通期の見通しは、売上高が前年同期比12.5%減の23兆円、営業利益は73.6%減の6000億円、当期純利益は68%減の5500億円を見込む。
通期の販売台数は、前年同期と比べて67万3000台少ない824万台と想定する。内訳は、中南米やオセアニアなどのその他地域が1万3000台増、アジアが3万4000台増であるのに対し、北米で53万8000台減、日本で10万8000台減、欧州で7万4000台減と想定する。
同社副社長の木下光男氏は「08年8月に開催した前回の決算発表の後だけでも、リーマンブラザースの破綻、1ドル90円台の円高、株価最安値などが続いた。どこで景気が安定するのかは分からない。アメリカの景気が回復すれば自動車業界が勢いを取り戻すきっかけになると考える。09年末ころには自動車業界の景気のベクトルが上向きになると思いたい」と説明する。
一方で、トヨタは大幅減益でも今期の研究開発費の下方修正は見送り、9200億円と前期並みを確保する。
経営環境が悪化し、燃費基準や排ガス規制の厳格化で開発負担が増す中で「プロジェクトを精査し、成長に不可欠なところに重点投資する」(木下副社長)方針。
世界的に需要減が続くとはいっても、ハイブリッド車や小型車への需要シフトは加速するとみられる。「全方位の環境戦略」は回復に向けた最大のキーワード。なかでも次の成長をけん引する環境技術として重視するのが、家庭用電源で充電できる「プラグインハイブリッド車(PHV)」で、09年末の実用化に向けて日米欧で試験を展開中。
ただ直近では、現在約6000人を雇用している国内工場の期間従業員が09年3月末までに3000人程度に半減するとの見通しを明らかにした。すでに新規採用を抑えており、契約切れなどによって期間従業員のの雇用人数が減るため。世界的な景気減速を受け、欧米の自動車販売が急減、欧米向け輸出が多い国内工場を中心に稼働率が大きく落ち込んでいることが背景にある。
トヨタは今年6月に期間従業員の新規採用を凍結し、契約の更新も手控えているもよう。3月に単月平均で約8800人だった雇用人数は10月には6000人に減った。このまま国内生産が上向かず新規採用を止めた状態が続くと、来年3月には雇用人数は3000人となり、1年間で3分の1に減る見込み。
トヨタ本体の今年度の国内生産台数は前年度比で1割程度減る見通しとなっており、輸出車や大型車が多い田原工場(愛知県田原市)や元町工場(同豊田市)で特に生産台数が急減している。
ニコン-08年度上期は増収減益・デジカメ好調で半導体装置は不調-
(2008/11/07 日経マイクロデバイス)
ニコンの08年度上期(08年4月~9月)決算は増収減益となった。売上高は前年同期比9.3%増の4871億4100万円,営業利益は同14.5%減の540億6900万円,純利益は同2.4%減の336億2400万円である。発表した取締役 兼 副社長執行役員 兼 CFOの寺東一郎氏は,「為替の影響と,棚卸資産の評価に関する会計基準の変更の影響を除けば,実質的な増益」である点を強調した。為替の影響は,売上高で241億円,営業利益で88億円のマイナス,会計基準の変更による影響は営業利益で80億円のマイナスである。
カメラと交換用レンズを扱う映像事業は,米国発の金融危機の影響が懸念される中でも,増収増益となった。売上高は前年同期比24.8%増の3372億500万円,営業利益は同8.3%増の419億8600万円と,いずれも過去最高を達成した。コンパクトデジタルカメラの出荷台数は同46.7%増の591万台,デジタル一眼レフカメラは同27.2%増の187万台と好調だった。
半導体や液晶パネル製造用の露光装置を扱う精機事業は減収減益となった。売上高は前年同期比16.5%減の1172億800万円,営業利益は同43.0%減の121億6200万円となった。液晶パネル向けは回復したものの,半導体向けは主にメモリーメーカーの設備投資の抑制の影響を受けた。液晶パネル用の販売台数は前年同期の24台から37台に増加する一方,半導体用は前年同期の78台から42台と大幅に減少した。
半導体用のうち,新品の販売台数は前年同期の68台から32台と半分以下に減少した。中でも,ArF(ドライ)露光装置が前年同期の36台から6台に減少したことが大きい。一方で,ArF液浸露光装置は前年同期の3台から8台に増加した。
顕微鏡や測定器,半導体検査装置を扱うインストルメンツ事業は赤字。売上高は前年同期比11.9%減の231億7100万円,営業損失は12億8300万円である。半導体メーカーの設備投資の抑制の影響を受けたとする。
08年度通期(08年4月~09年3月)の見通しは、売上高が前年同期比1.7%減の9400億円、営業利益は39.3%減の820億円、当期純利益は37.7%減の470億円を見込む。
このうち精機事業は,売上高が前回予想から450億円マイナスとなる前期比15.4%減の2450億円,営業利益が前回予想から260億円マイナスとなる前期比58.4%減の180億円に下方修正した。この前提となる露光装置市場の規模として,半導体用が前回予想の400台程度から300台程度(前期は564台),液晶パネル用が同110台程度から100台程度(前期は70台程度)に下方修正している。
半導体露光装置は,ロジックLSI向けはまだ堅調だが,メモリー向けは08年の夏以降,長引く市況悪化の影響によって,メモリーメーカーの設備投資の見直しが現実の動きとして出てきたため,前期の564台から約半減となる。液晶パネル露光装置も,上期は回復したが,米国発の金融危機の影響で,台湾メーカーを中心に設備投資への影響が出てきたとする。
半導体露光装置の通期販売台数予想は,前回予想の105台から30%以上マイナスとなる74台に下方修正した。前期は146台だった。このうち,ArF液浸露光装置は前回予想の25台から20台に,EUV(extremeultraviolet)露光装置も前回予想の2台から1台に,それぞれ下方修正した。
パイオニア-薄型テレビのの欧米生産から撤退・生産は外部委託へ-
(2008/11/07 日経・日刊工業新聞)
パイオニアの小谷進・次期社長(16日就任)は6日、日本経済新聞などの取材に応じ、経営悪化の原因であるテレビ事業を縮小し、経営再建を進める方針を示した。「今期の世界販売計画である約40万台を下回っても利益が出る仕組みを考える」と述べ、低採算の市場や販路から撤退する考え。欧米では組み立て工場を閉鎖し、製品をEMS(電子機器受託生産サービス)会社から調達する。
パイオニアは今春にプラズマパネルの自社生産から撤退することを決めたが、テレビは販売台数を倍増させる計画だった。小谷氏は「構造改革により固定費が軽くなっており、台数にはこだわらない」と述べた。
撤退する市場や販路については来年2月までに決める方針。欧米ではEMSを活用するほか、米国へは日本からの輸出も検討する。
パイオニアは薄型テレビを市場の近くで組み立てる体制で、米パイオニアエレクトロニクステクノロジー(カリフォルニア州)と英パイオニアテクノロジー(ウェストヨークシャー)の2社で生産を続けている。欧米での生産はパイオニア全生産量の8割以上を占める。海外の組み立て生産中止によって固定費を圧縮できるため、外部委託に踏み切る。現在、英米2拠点を閉鎖するため、労働組合と協議している。
英拠点閉鎖後、日系テレビメーカーの欧州工場に組み立てを委託する。米国向けは静岡工場(袋井市)から輸出して供給する。
海外では販売体制も見直す。販売経路は量販店を選別して専門店を厚くするほか、販売会社の拠点集約など検討する。生産と販売の見直しで260億円の費用削減を見込む。
パイオニアはプラズマパネル生産を09年2月までに終了し、パナソニックから調達する計画。これにそって山梨工場(山梨県中央市)は08年9月末ですでに閉鎖し、鹿児島工場(鹿児島県出水市)は08年11月中、静岡工場(静岡県袋井市)は09年2月に終了する。
アルプス電気-08年度上期は大幅減益・すべての事業が先行き不透明-
(2008/11/07 日経エレクトロニクス)
アルプス電気は,08年度4~9月期の決算を発表した。売上高は対前年同期比6.7%減の3317億9900万円,営業利益は同63.9%減の47億5600万円だった。純損益は前年同期の赤字から回復し,8億3000万円の黒字を計上したが,これは前年同期にHDD用磁気ヘッドの生産設備譲渡に伴う減損損失などを計上していたためという。自動車の販売の落ち込みなどを受けて,「電子部品事業」と「音響製品事業」がいずれも振るわず,全社の業績が減収減益に終わった。
主力の電子部品事業は,売上高が対前年同期比9.7%減の1815億円,営業利益が同75.8%減の11億円。携帯電話機市場の鈍化や世界的な自動車販売の低迷によって,減収減益となった。減収に最も響いたのは,HDD用磁気ヘッド事業の終息による減収だが,次に響いたのは車載電装事業の減収という。車載電装事業の売上高は対前年同期比11.0%減の477億円。同事業は第1四半期に黒字だったものの,第2四半期は赤字に転じ,4~9月期を通すと若干の赤字になったという。北米市場の大型車を中心に自動車の販売台数が激減しており,米国自動車メーカー向けモジュール製品などの売り上げが減った。コン
ポーネント事業も振るわず,売上高は対前年同期比19.9%減の489億円。携帯電話機向けのスイッチやメモリーカード用のコネクター,車載用センサーなどの売り上げが減少した。情報通信事業,ペリフェラル事業の売上高は前年同期に比べていずれも減少したが,第1四半期の赤字から第2四半期には黒字に回復したという。
子会社のアルパインが担う「音響製品事業」の売上高は,対前年同期比5.0%減の1222億円,営業利益は同81.1%減の10億円。音響機器事業でCDプレーヤーなどの主力商品の価格が下落したほか,情報・通信機器事業でカーナビの売り上げが減少したことなどが響いた。
物流サービスなどを手掛ける「物流・その他事業」の売上高は,対前年同期比7.7%増の280億円,営業利益は同21.0%減の25億円だった。
08年度通期の業績予想については,見直しを見送った。「9月末ころからすべての事業の先行きが非常に不透明になった」ことが要因という。下期の売上高は全般的に悪化する方向で,「電子部品事業では,どの分野もおしなべて低調」とみる。特に車載電装事業の落ち込みが大きいと予測する。電子部品事業の第3四半期の売上高は第2四半期を下回る見込みで,赤字になる可能性もあるとする。第4四半期については「まったく見えない状態」と説明した。
事業環境が厳しくなる中で収益を出す方策に関しては,固定費の削減を加速することや,商品構成を付加価値が高い商品に入れ換える方向へシフトしていくことなどを挙げた。
米国の電力事業者-高機能型電力メーター導入の動き-
(2008/11/07 日経エレクトロニクス)
家庭や事業所の電力使用量を計測する「電力メーター」。この電力メーターに,無線通信機能や家庭内の機器を制御する機能を組み込もうという動きが,米国の電力事業者を中心に盛り上がりをみせている。電力メーターを高機能化し,家庭の機器のエネルギー利用の監視や制御に利用することを目指している。
中でも,環境先進地域である米カリフォルニア州で非常に動きが活発。カリフォルニア州北部で最大手の電力/ガス事業者であるPG&E社(Pacific Gas and Electric Company)は,管内の約1500万台のメーターを,09年から順次高機能型メーターに更新していくという方針を明らかにした。「PG&E社は2009年~2010年に,高機能型メーターをまず150万台導入する。その後順次,更新していく予定」(PG&E社の無線技術コンサルタント)。カリフォルニア州南部地域で大手のSouthern California Edison社も,約500万台の更新計画を示している。この他,カリフォルニア州以外でも,テキサス州など複数の地域の電力事業者が2010年前後から導入開始を想定している。
PG&E社などが導入する新型メーターには,ネットワークを経由した遠隔管理機能と,近距離無線による家庭のエアコンや照明器具,各種センサーと接続する機能を備える予定。個々の家電機器の電力利用量を把握できるほか,将来的には電力事業者がメーターを介して家庭のエアコンの温度設定を変更するといった用途にも利用できる。このため新型メーターには,近距離無線を介して家電機器を制御するための,専用の家電制御用ソフトウエアが組み込まれる。
PG&E社など,米国の電力事業者が目指しているのは,家庭や事業所における電力需要ピークのシフト。
米国の電力事業者は,地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出量に関して,厳しい削減要求を政府から突き付けられている。このため,温室効果ガスを大規模に放出する火力発電所などの稼働を抑える目的で,電力需要ピーク値を減らしたりシフトさせたりする取り組みが,緊急の課題となっている。
電力需要のピーク・シフトを実現する手法として期待されるのが,需要側の制御。近距離無線機能を搭載したメーターの導入は,積極的な需要制御の手段の一つと位置づけられている。例えば,高機能型電力メーターが集めた情報を使えば,家庭の個別機器の電気使用量を利用者に提示することも可能になる。これを使い,「月々の電気料金を減らしたい」という利用者のニーズに訴えかけながら,電力需要ピークを低減するという考え方。これに加え,利用者に対してエネルギー利用のコンサルティング・サービスを提供することも可能であり,電力事業者にとっては,ユーザーへのサービス品質を高めるツールとしても利用できる。
高機能型電力メーターの利用によって,果たしてどの程度電力需要のピーク・シフトに効果があるかは未知数。ましてや,温室効果ガスの削減効果となると,さらに複雑な要素が関連してくる。ただし,こうした高機能型電力メーターが登場し,それが大量に導入されるとすれば,エレクトロニクス・メーカーにとっては新たな大市場の到来となる可能性もある。既に,こうした電力メーターの高機能化を市場拡大のチャンスとし,欧米の無線通信用ICメーカーの中には,電力事業者に対して積極的な売り込みを始めているところもある。電力メーターに組み込まれるだけでなく,宅内機器を制御するとなれば,多数の機器に無線ICが搭載されることになり,市場も巨大なものとなりそうだ。
宅内の家電機器を制御するというほどではありませんが,電力メーターに無線機能を組み込むという動きは日本国内でも始まっている。例えば関西電力は,管内の約1200万台に及ぶ電力メーターを,通信機能を搭載した高機能型に順次切り替えることを08年9月に発表した。「新計量システム」と呼ぶもので,無線通信や電力線通信機能に対応させて,遠隔によるメーターの検針を可能にする。この際に利用する無線通信は携帯電話のような広域型ではなく,比較的近距離の通信技術。複数の家庭の電力メーターを近距離無線で数珠つなぎにして,検針データをバケツリレーのように伝送するマルチホップ型通信を採用予定。関西電力はこの新計量システムを使い,利用者に対してエネルギー利用の効率化など,コンサルティング・サービスを展開することも視野に入れている。
電力メーターに家庭内の機器制御機能を組み込んで,電力需要ピークをシフトさせるという試みは,日本国内の電力事業者が以前から積極的に取り組んでいた。例えば四国電力の「OpenPLANET」と呼ぶ構想はその先駆けとも言える。また家電メーカーおよび電力事業者が,家庭の設備系機器のネットワーク制御を狙った「エコーネット規格」をまとめている。つまり日本には,関連するノウハウを数多く蓄積している事業者や機器メーカーが少なくない。海外で立ち上がる電力メーター高機能化の波は,国内メーカーの技術や製品を世界に売り込む好機とも言えそうだ。