トヨタ自動車-豊田章男・新社長が始動-
(2009/06/26 毎日新聞)
6月23日の株主総会後の取締役会で創業家から14年ぶりにトップに就いたトヨタ自動車の豊田章男・新社長(53)は25日、東京都内で就任後初の記者会見を開いた。2010年3月期も2期連続の巨額赤字を見込む「どん底からの船出」(豊田社長)に7月から1年間、自身の役員報酬を3割自主返上するなど、再生への意気込みを示した。「原点回帰」を掲げ、エコカー(環境対応車)強化や新興国での販売拡大、コスト削減で2011年3月期の黒字転換を目指すが、急成長で大きなひずみを抱えた巨艦・トヨタの構造改革は難作業。創業家の求心力が試される。
「いくら利益を出すかではなく、どんな車をいくらの価格で出せば、顧客に喜んでもらえるかが重要だ」
25日の会見で豊田章男社長は、収益優先の経営から顧客目線を重視した経営にかじを切る方針を強調した。
トヨタは米国など先進国での販売増加で03年以降、業績を急拡大。06、07年度には営業利益が2兆円を超え、08年には米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて世界販売首位になった。しかし、利幅が大きい大型車・高級車に偏るひずみも生じ、世界不況での傷口を深くした。
豊田社長はこの経緯を「大変な勢いで成長したが、身の丈を超えた仕事となり、トヨタの強みが発揮できなかった」と指摘。原価低減による「良品廉価」という原点に戻ることで経営を立て直す考え。
自らの決断で最廉価モデルの価格を旧型より約30万円も下げた3代目プリウスはその実例。発売1カ月で18万台超の受注を集め、5月の国内新車販売(軽自動車を除く)トップとなった。しかし、プリウスがカローラなど主力車の需要を食いつぶしているのも事実で、5月のトヨタ車全体の販売は前年比2割超も減っている。「良品廉価」をプリウス以外の車種に広げることが課題となる。
また、再生のカギとなる中国など新興国戦略で、豊田社長は「総花的な商品構成を改め、地域ニーズに合った商品を開発・提供する」と説明。中間層向けファミリーカーの投入などで巻き返す戦略を描く。しかし、中国ではトヨタの販売シェアはGMの約半分の6%(08年)。インド、ブラジルでは3%しかなく、新興国シフトが収益に貢献するには時間がかかりそうだ。
さらに、国内外での過剰設備・人員体制も問題となる。トヨタの年間生産能力1000万台に対し、09年度の世界販売計画は650万台。豊田社長は雇用重視のトヨタウェイを意識し「需要回復時に備え、工場は閉鎖しない」とするが、景気動向次第では収益回復どころか赤字膨張の要因になりかねない。
「『産業報国の実を挙ぐべし(良いものを作り、社会に貢献する)』との(トヨタグループ創始者)豊田佐吉の遺訓に立ち返る」。豊田章男社長は25日の会見でアピールした。
トヨタ自動車の事実上の創業者、喜一郎氏を祖父に、1982~1992年に社長を務めた章一郎氏(現・名誉会長)を父に持つ章男氏は1984年の入社以来、「将来の社長候補」と言われてきた。しかし、53歳でのトップ就任には、2010年3月期に8500億円の営業赤字を見込まざるを得ない歴史的な経営悪化が影響している。
1995年以降の奥田碩氏(現・相談役)ら非豊田家トップによる拡大路線が世界不況で挫折。業績回復にはグループ一体の大胆な構造改革を進める求心力が必要。そこで「トヨタグループの旗」(奥田相談役)である豊田家の章男氏に社長を頼む“大政奉還”に動いたと見られている。
09年1月の社長内定時には「豊田の姓に生まれたのは自分の選択ではない」とはにかんでみせた章男氏も、今では求心力の必要性を痛感している様子。25日の会見では「豊田の姓のお陰で多くの人に会い、指導を受けた。社業を通じて恩返ししたい」とトヨタ再生に「豊田家の威光」の活用を辞さないしたたかさをのぞかせた。
豊田社長は、「懸命に原価改善の努力をし、固定費の削減を少しでも上積みしたい。3期連続の赤字を回避するため、できる限りの手を打つ。営業利益の大幅赤字は、じくじたる思い。嵐の中でスタートを切るが、私を含め株主総会前の代表取締役9人は、賞与ゼロに加え月額報酬の一部自主返納でけじめをつける」と、7月から1年間、3割を自主返納するとした。
マツダ-ミニバン「ビアンテ」にアイドリング停止機能を搭載-
(2009/06/26 日経)
マツダは25日、ミニバン「ビアンテ」を一部改良して発売した。エンジン排気量2000ccの主力グレード「20S」の前輪駆動タイプに、信号待ちなどの停車時に自動でアイドリングを止めて燃料を節約する機能「アイ・ストップ」を搭載した。これにより燃費は1リットルあたり13.6キロメートルと7%改善。「エコカー減税」による自動車取得税・重量税の軽減率が50%から75%に拡大したとしている。
「20S」の前輪駆動タイプには、ほかに横滑り防止機構も標準装備にしたが、価格は249万9000円に据え置いた。このほかのグレードも含めた価格帯は213万1500~278万8000円。
「アイ・ストップ」は停車から2秒程度でエンジンが停止し、再び発進する際に約0.35秒で再始動する仕組み。信号待ちなどの間にエンジンを止めることで、ガソリンを節約する。
中国電力-電気自動車用の急速充電器を7月中旬に発売-
(2009/06/26 日経)
中国電力は7月中旬、子会社のテンパール工業(広島市)を通じて電気自動車用の急速充電器の販売を始める。他社製品に比べて容積が1~2割小さいのが特徴。価格は350万円で、設置工事費用が別途必要。三菱自動車の「iMiEV」の場合、約30分で電池容量の80%分を充電できるという。今後発売されるすべての電気自動車に対応する。
車両の充電池と情報をやり取りし、充電状況などを画面で把握することができる。官公庁や工場、オフィスビルなどの事業所、大型スーパーなどに営業し、初年度50台の販売を目指す。充電器本体の購入者には最大175万円の国の補助が付く。
中国電力は06年10月に三菱自動車と電気自動車の共同研究を開始。今年度は電気自動車30台を営業用などに購入予定で、急速充電器も新たに9台配置する。