カレーなる日々 / शानदार दिन

インドの日常を中心に日々を綴っています。

「破獄」吉村昭

2024年04月25日 21時25分59秒 | 本 / BOOKS

インドから帰国して早3年目。
日本語の活字に飢えていた私は大沢在昌と東野圭吾の小説を
交互に読んで来たのだった。両者ともに100作品を超えるが、
終わりが近くなってきたので次はだれにしようかと思っていた。

ある日、吉村昭がボクシングをテーマに何作か書いている事を知った。
そこで次は吉村作品を読もうと決めたのだったが、
ボクシングの小説は短編だったため1冊ではなく作品集になっていた。

で、脱獄をテーマにしたこの作品を1冊目に選んだのだった。
小説の中では佐久間清太郎と言う仮名になってるが、
白鳥由栄と言う実在する人物がモデルだ。

1907年に青森県に生まれた白鳥は1933年強盗殺人を犯し、
青森刑務所に投獄される。劣悪な環境に抗議するために1936年脱獄。
1941年に秋田刑務所に投獄されるが翌1942年またもや脱獄する。
3か月の逃亡生活の末、世話になった看守の元に自首し、
脱獄した者がいない網走刑務所に投獄される。

脱獄2回の白鳥は、ここでも厳しく管理された事と極寒に耐え切れず、
脱獄を決意し1944年、3度目の脱獄。

終戦まで身を隠すが、盗みに入った農家で見つかり、
逆に家人を殺してしまい札幌刑務所に投獄される。
ここでも厳しい監視と待遇に腹を立て1947年に脱獄する。

2度の殺人と4度の脱獄と言う凶悪犯であるが、
人情にもろいところがあり、最後につかまった時は職務質問され、
煙草を与えられた事から自分が逃亡犯であると名乗っている。

投獄された府中刑務所では特別な扱いをせず(賭けであったそうだ)、
他の受刑者同様に扱った事から模範囚となり1961年に仮釈放された。

出所後は故郷からも家族からも疎遠となったため、
府中刑務所の所長宅を毎年正月に訪ね、土木作業員として働らき、
1979年に病死。

脱獄できた理由としては計り知れない怪力であった事と、
関節を自由に外せる得意体質だった事がある。

また戦争中と言う事もあり刑務官が不足していたり、
国民全員が貧しく食糧や生活事情も悪かった事も逃走できた理由である。

虚言癖があり看守の心をコントロールするのも上手かった。
脱獄が劣悪な環境や自身に対する仕打ちに反抗であり、
良くしてくれた人には心を開く一面もあったようだ。

 

1985年に緒形拳、2017年に山田孝之主演でTVドラマ化されている。


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