吉村昭の昭和の戦争シリーズの第5巻目。
1巻目が戦闘機の話、2巻目が戦艦の話、3巻目は潜水艦の話、
4巻目がこれは脱走兵と捕虜たちの話、
5巻目はタイトル通り「沖縄そして北海道で」。
沖縄戦は1945年(昭和20年)3月26日に始まり、
6月23日に終わるまで激戦となった。
アメリカ側の死者と行方不明者が20,195人、
日本側は188,136人・・・・。
沖縄県出身の兵士が122,228人、民間人28,228人で、
沖縄県の人口の1/4が犠牲になった。
「殉国」は中学3年生志願して陸軍二等兵となった14歳の少年の話、
同級生の半分が犠牲になり、本人はお国の為に死ねなかった事を
最後まで悔いていた。
沖縄戦までにフィリピンのルソン島や硫黄島も攻略されており、
アメリカ軍は1200隻以上の戦艦で沖縄本島を包囲し、
500機を超える戦闘機や爆撃機で攻撃した。
主に通信伝令を与えられた少年兵は、
アメリカ軍の砲撃や爆撃、機銃掃射にさらされ、
だんだんと兵士らしくなっていく。
怪我人や犠牲者が増えて行くと、
死体を見る事にも慣れ、
生きてお国の為に命を捧げる事に飢えて行く。
圧倒的な武力による凄まじい攻撃に地形が変わってしまった沖縄で、
彼は壮絶な彼自身の戦いを経験しながら生き残る。
5巻まで読んでみて、沖縄戦のくだりが最も凄惨であった。
文章で表現する事もはばかられるほどだった。、
「脱出」は北海道、樺太で生き残った少年の話である。
1945年8月9日にソ連は日本に対して宣戦を布告し、
11日から戦車と航空機による攻撃を開始した。
14日にポツダム宣言を受け入れ15日に終戦となったのだが、
ソ連による攻撃は続き、樺太から北海道に向けて脱出する
民間人の話は、命からがらという表現では足らないほどの
壮絶なものだった。
脱出した民間人や兵士が乗った船がソ連の潜水艦に攻撃を受け沈没、
投げ出された人々が助かるためにとった行動、
その人々を救出した人々、流れ着いた死体を処理した人々も
地獄を見たのだった。
文字や文章から伺い知る物事は実際の出来事より少ないと思う。
戦後約80年ではあるが、時々思い起こして祈りを捧げ、
今に感謝する事が必要だと感じた。、