屋久島を題材にした小説を捜していて見つけた作品。
2023年発行の樋口明雄の小説。
林芙美子の「浮雲」は屋久島滞在時に書かれたものであるが、
屋久島を題材にしたわけだはなく。
物語が終結したのが屋久島だっただけである。
屋久島の良さと言うか特徴に重きを置かれていなかったので、
読み終わった時に物足りなさが残った。
この小説は良かった。
この小説は屋久島を題材にしており、
ほとんどが屋久島で起こった事であり、
私が訪れた屋久島の特徴がそのまま描かれており、
読みながら記憶がよみがえってきた。
舞台が屋久島でなければならなかった、
屋久島でなければ成り立たなかった、
(他にあるのかもしれないけど)
屋久島を書いた小説の中で一番だろう。
前置きが長くなったが、
すごくいい! と思える小説だった。
何の罪もない屋久島が突然、事件に巻き込まれる。
それも大掛かりで組織的で、時代を変えるような、
世界の一部を巻き込んだ大事件。
日本の近くにある危険なK国に、
国を根底から変えるような政治的な事件が起こる。
その一端を担がされるかのように、
屋久島にテロリスト集団が送り込まれる。
屋久島の一部が破壊され、罪のない島民が犠牲になる。
島を占拠せしめんとするテロリストは、
島民を人質にして日本政府に無理難題を要求する。
それはアメリカをも巻き込む大事件に発展していく。
ストーリーには屋久島の安房の町や縄文杉のあるエリア、
私の記憶に残っているところが出て来る。
島の出身者である山岳ガイドや警察官の行動、
住民たちの島を守ろうとする気持ちなど、
地の利を使ってテロリストと対峙するところ、
手に汗握る攻防が見どころである。
テロリストって言うとそれほどピンとこないけど、
実際に武器を手にして戦争や紛争に参加した人間って、
その手で命を奪った事がある人ってやっぱり普通の人間とは違う。
気持ちの根底に座った物がある。
殺らなきゃ殺られる、そんな状況になって、
そんな状況を乗り越えて生きているわけだから。
屋久島の自然が破壊されるところは心が痛んだけど、
フィクションだからね。
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