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雑感や書評など

村上春樹「アフターダーク」

2006-10-15 20:43:08 | 書評
和解への助走?


「残念ぇーん、アジア人が受賞するのは、しばらく後ですから!」
と、流行のフレーズを使わせてもらいました。

村上春樹のノーベル文学賞のことです。

Wikiのノーベル文学賞

と思ったら、今年はトルコ人がとってるじゃん。

アジア人が受賞するなら今年だったんだな。

2000年には高行健だし、1994年は大江健三郎だ。

村上春樹がとれるのは、2010年ごろになりそうだな。


もっとも、村上春樹独特のスノッブな小道具が、最終的には、どう評価されるのか…………。
村上春樹自身は、賞よりも、自分の世界を大事にするようなタイプだから、学者・玄人受けしそうな、所謂「純文学」性の高い作品は書かんだろうし。

まぁ村上春樹は、健康な生活を送っているようだから、そのうち受賞できるんじゃないですかね?

それよりも、村上春樹以後で、世界で評価されているような作家がいないのが気になるなぁ…………。


それは、ともかく。

村上春樹の「アフターダーク」を読了。

長さとしては、「国境の南、太陽の西」、「スプートニクの恋人」と同じくらい。
大長編の間に挟まれる、サクッと読める長編です。

評価としては、面白かったです。しっかりとした物語。読みやすいけど安っぽくない文体。適度な長さ。


感想としては、「村上春樹、年をとったなぁ…………」。

作者が第三者の視点として物語は進み、群像劇だけれども、中心は二十歳前後の少女と少年。

村上春樹らしく、性的な表に裏に話が充満しているけど、この中心の少女と少年には、そういう関係が希薄でね。

「昔の村上春樹だったら、こういかんだろうなぁ」
と思うこと、しばしば。

物語の視点が第三者であることもあいまって、作者が微笑ましく少年少女の成長を描いているように思えてね…………、
「村上春樹、年をとったなぁ…………」
と思ってしまったわけです。


それに、物語に血縁が深く入りこむようになったね。
「海辺のカフカ」も、そうだったけど。

少年が進路を決める背景には、詐欺師的な父親の影がチラつくし、少女の、どことなく影を背負った生き方には、強烈な美貌を持つ姉の影響が間違いないし。

で、最終的には、二人とも、それを「理解しよう」とし始めている。

和解までは進まないけどね。

「村上春樹、年をとったなぁ…………」
昔ならこうは、いかんでしょ。


で、ラストで少年少女が結ばれることはないけれども、再会を臭わすものになっている。
「村上春樹、年をとったなぁ…………」
昔は関係性が断絶・破滅で終わっていたもんなぁ。


村上春樹の感想。
村上春樹「海辺のカフカ 上巻」
村上春樹「海辺のカフカ 下巻」


アフターダーク

講談社

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