すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

池澤夏樹「夏の朝の成層圏」

2006-10-18 21:48:03 | 書評
娘は声優


池澤夏樹の「夏の朝の成層圏」を読了。

長編デビュー作、とのこと。

確かに、ちょっと生硬な点もあり。

文章が読み難いというわけではなく、全体的にストーリーの運びが、観念に流れてしまうきらいがあるかなぁ~という感じ。

が、それは今の池澤夏樹にも、あることか。


それは、ともかく。
面白かったです。

特に前半の無人島でのサバイバルなんかは、…………なんでか面白い。

こういう「ただただ、凡人が必死に生きるという過程」を、さいとうたかおの「サバイバル」もだけど、ちゃんと力量のある作家がやると、なんでか面白いんだよな。


で、ある程度、生命の維持が容易になってきたあたりからは、文明と自然の対立という池澤夏樹らしいテーマが顔を出してきます。

ここら辺も、つまらないわけじゃないけど、ちょっと自己主張が強すぎて、物語が犠牲になっているかなぁ…………と思わないでもないです。


まぁ池澤夏樹の他の作品を楽しく読める人は、これも期待に違わず、読めると思います。


夏の朝の成層圏

中央公論社

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