オレンジ色の紫陽花

携帯から軽快に綴るおいらの日々。
…だったのだが、ツイッターのまとめブログに変更。極稀にこっち単独の記事もある、かも。

ぼんくら(上・下)

2007年01月24日 09時49分48秒 | ほぼ、文庫本
ぼんくら(上・下)/宮部みゆき/講談社文庫

キーワード/出奔した差配、店子、地主、煮売屋、若い差配、家移り、回向院の茂七

なにがぼんくらなんだと思えば、同心にしてはすべてにおいて面倒臭がりの平四郎のこと。
てことに気がつくまで、少し時間がかかった。
最初のいくつかが、鉄瓶長屋を舞台にした捕り物の短編で、一章に一つの事件をとりあげる。
宮部みゆきの時代物は、「あかんべえ」みたいな長編もあるが、おいらには短編集の方が馴染みがある。
本書もてっきりそうだと思っていたのに、なんとまあ、その短編部分は前振りだったという。
こりゃまた念の入ったことで。
ただ、おいらなんぞは、前振りですっかり短編を読むアタマ、になっていたから
長編部分にくると、先の展開が待ちきれなくて随分と走って読み飛ばした。
ぼんくらで面倒臭がりの同心・平四郎が、どうして、いい働きぶりだと思ったら、
なんのことはない、おいらの読むのが倍速か三倍速になっていただけだという…。
作中の人物はみな、それぞれに愛すべき個性的な人達ばかりで、今風に言うなら「キャラ立ち」している。
宮部みゆきの時代物の、こういうところがたまりません!
主人公の平四郎は、面倒臭がりの同心てところで、どうにも高橋英樹が離れないんだけど
いやそれはちとお年を召されすぎだよなあ。
それよりも年若い差配さんが、谷原章介ぽくて。
いやいや、もうちょっと不器用そうな人がいいんだけど、
といって、原田龍二でもないなあ。
長屋の心だと平四郎に言わしめた、煮売屋のお徳は、本書ではすっかり肝っ玉おばちゃんだが
鷲尾真知子なんていいかも。もうちょっと若くてもいいけど。
ほかにも…あげるとキリがない。
いやあ、それにしても長編部分の謎解きは難儀した。謎はごく単純、謎解きする必要はないくらい。
けど、複雑。
事の真相が、ではなく、人間という生き物が。
話の結末は、両手を上げて万々歳、とはいかないけれど、
暗闇の中の一本の蝋燭ほどの「光明」が残されたのかもなあ。