すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

大暑に並び、笑い、急いで帰る

2018年07月25日 | 雑記帳
 日曜夜、素麺塾から宿に近い君津駅前までさくら社の横山社長に送っていただく。ふと足の異状に気づく。長く座っていて痺れただけと思ったが、なかなか痺れが取れない。もしかしたら…と変な想像が働く。長時間の高温もあるかととたんに不安になる。明日はどうするか、ホテルのベッドで様々な場合を想定した。


 翌朝、痛みはあるが痺れはかなり取れ、脳の異常(笑)もないようなので、予定通り、上野鈴本演芸場で寄席を観ることに決めた。のんびりと総武線で東京へ、乗換えて御徒町駅。開場1時間前だが既に多数が並んでいる。平日の昼席でこれだけ入るのは、やはり人気噺家が主任だからか。昼食を調達してから列へ加わる。



 演芸場では暑さに配慮し30分早く切符を発売、開場した。3列目のいい場所が取れる。隣には制服姿の若者たち。どうやら高校生のゼミ?らしく、引率教師らしい方が「原稿用紙1枚の感想か、または別の表現で用紙1枚仕上げる、漫画でもいい」などと低い声で確認している。時代はこんな感じで動いていると思う。


 柳家喬太郎が主任で、柳家一門が多い番組となった。落語はそれなりだと普通の感想を抱く。つまり名の通っているベテラン文楽、一朝などは味わいがあるし、権太楼、白酒という一流どころは聞かせ所を心得ている。それ以外は仮に真打であってもそれなりの表現しか出来ない。毎日のように実力が晒される世界だ。


 去年、横手の落語会へ来たマジシャン伊藤夢葉が、また鞭を持って登場した。あの折とネタは酷似していたが大いに笑える。いわば「見せずにかわす手品」とでも言おうか。その場の空気感を支配する話術を堪能した。主任喬太郎の演目は、相撲と絡めた古典「花筏」だ。古典嫌いと言いつつ十分に喬太郎流が冴える。


 4時半過ぎて終了後、痛い足を引きずりつつ急いで駅へ向かう。炎天下の熱風が凄い。これが39℃か!空港まではぎりぎりなので一心不乱に電車を乗り継ぐ。なんとか定刻前に保安場を通過できた。機内でほっと一息、少し経つと「18時半現在、秋田空港は24℃」というアナウンスが聞こえる。わが故郷は気温も平穏だ。

ほんの少しの差が…

2017年03月06日 | 雑記帳
 週末は横手市の落語会へ。なんと30周年記念興業、第64回というから凄い。主催者はじめ関係者に敬意を表したい。生半可な気持ちでは出来なかったと思う。嬉しいことにいろいろなプレゼントもあった。私が運よく手に入れることができたのは、柳亭市馬のサイン。協会会長のものをいただけるなんて、実に幸せ。



 二つ目に昇進したばかりの三遊亭伊織がトップ。演目は「転失気(てんしき)」である。知ったかぶりをする和尚と小僧の噺。寄席で何度か聞いたことがある。「ああ、オベダフリの話だな」とすぐにわかり、生意気にも批評者モードに…。小僧のオトボケ感の表現に改善の余地ありだな。でも滑舌がよく聞きやすかった。


 続いてこの会のプロデュースをしている三遊亭歌武蔵。何度も足を運んでいるそうだ。歌武蔵の噺は以前も聞いたことがある。お決まりの相撲ネタから始まり、演目は「試し酒」である。安定感のある高座だった。ハイライトは飲みっぷり、酔いっぷりの芸。上手だったが以前聴いた権太楼と比べるとほんの少し…。


 マジシャン伊藤夢葉が「鞭」を持って登場。あんなに間近に鞭を見たのは初めてかもしれない。しならせた時の音は想像以上だ。結局、手品に鞭を使うわけでなく、さっと仕舞う。そうした「裏をかく、かわす」話術が実に巧みだった。客席を手玉にとるような、寄席で積み上げてきた芸を十分に堪能させてもらった。


 トリは古今亭志ん丸。初めて聴く噺家だ。演目は「野晒し」。有名な噺だが高座で聴いたことがあったか…かなり前に志の輔が演じた姿が頭に浮かぶような違うような。「野晒し」は難しいと正直感じた。八五郎の妄想をどんな調子でやるか、それを受ける側の間合いをどうはかるか、ほんの少しの差が世界を分ける。