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桜と絵本と豆乳と

何かにハマる一冊

2021年01月20日 | 読書
 少し古い雑誌の文庫書評コーナーを見て、関心が湧いたので取り寄せてみた。この著者は以前週刊誌で連載を持っていたので、目にしていたがさほどの関心はなかった。それでも1,2冊は単著を読んだかもしれない。エッセイストとして名が知られているし、この題名のインパクトはなかなかではないかと思わせる。


『入れたり出したり』(酒井順子  角川文庫)


 本編の冒頭の章が、この書名となっている。買い物帰りに著者はふと思う。「あー、人生っていうのは入れたり出したりの連続で過ぎていくのだなァ…」。ただこういう入り方や設定はありがちと言えばありがちではないか。例えば「人生というのは開けたり閉めたりの連続」または「走ったり休んだりの繰り返し」など。


 もちろん展開構想があっての切り出しには違いない。しかし、二律背反は大袈裟なれど、二つの対照的な動作、物体、概念をテーマにするのは珍しくはない。要は、何を取り上げるか、だ。この著では「燃えるものと燃えないもの」「一位と二位」「大と小」「旅と旅行」「〇と□」…と対比・類比が実にバラエティ豊かだ。



 28のテーマがあり、人によってハマルものが必ずある。個人的に「露出と隠蔽」が面白かった。人間は露出好き(趣味や体質と言い換えていいかもしれない)とそうでない者に分かれる。「身体的」「精神的」両方の場合も片方の場合もある。こんな駄文を書く者は露出好きかもしれない。ただ、色っぽいのは隠蔽だろう。


 「入れたり出したり」も結局「出し入れ行為は快感」というまとめ方になるが、性行為の連想のみには止まらない。経済活動はまさにその感覚を求めているではないかと言われれば、頷かざるを得ない。さてこの本全体を貫く考え方は、プロローグの「分けると混ぜる」にあるのではと読みつつ考えていた。続けてみたい。