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いびつな国に住んでいる自覚

2018年02月25日 | 読書
2018読了19
 『成長から成熟へ~さよなら経済大国』(天野祐吉 集英社新書)


 この新書「読んだかも」と一瞬思った。開いたら結構新鮮な気持ちで読むことが出来たので買い求めたが、結局後で思い出すだらしなさだ。「広告に目を凝らす心構え」と書きつつも、ちっとも心構えができなかった証拠ではないか。やれやれ。冒頭、世の中がいびつに「歪んでいる」事実の5例をもう一度叩き込む。


 「マスク」「原発」「テレビショッピング」「福袋」「リニア新幹線」。いわば、この国のいびつさの象徴として、この事例を挙げたのだが、ここで何がおかしいのか気づかなければ、だいぶ心身が疲弊して、溺れかかっているのかもしれない。もちろん自分もその一員。言われてみればとその黒々した部分に気づかされた。


(20180223  今日も凍りつくガラス窓)

 「大量消費社会」に対する問題提起の本である。広告のスペシャリストとしての視点から、その歴史や意義について詳しく語られている。キーワードは、広告する側から言えば「欲望の廃品化」「センスの差異化」となるが、それらの果てに「成熟社会」はまだ遠い。「脱成長」への眼差しが多様であり、苦い現実がある。


 紹介されたドキュメンタリーには驚いた。電子廃棄物が第三世界の国へ中古品を装って輸出され、ゴミ捨て場になっている。自然破壊だけでなく「くず鉄」拾いにくる子供たちの事故も多いという。グローバル化の陰は思っている以上に濃い。大量生産、消費を支えた「計画的廃品化」のつけを押し付ける現実である。


 広告の変遷のなかで、活字メディア・映像メディアの比較が実に興味深かった。どちらを主に育つかで考え方・感じ方を身につけるうえの違いがあるそうだ。テレビの特性として「参加性が高い」ゆえに「ウラ」が好まれるという論述にも納得した。そんな視点で今の五輪報道をみると、確かにと納得することも多い。