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鍵を見つけられないまま

2017年03月30日 | 雑記帳
 とある役所に出向いて、とある部署の一室を訪問した。
 今までに一度も入ったことがなかったスペースだったので、持ち込んだ書類を見てもらっている間に、ついキョロキョロしてしまう。

 係の方の机上にゴム印の入った箱があり、部署に関わる名称や地区名などの印が、やや無造作に置かれてあった。
 かつては学校でも、氏名印や成績に関する印などが使われていて、少し懐かしい気持ちが湧く。



 ふと見ると、実に興味のそそられる、少し大きめの印が横になっている。

 「第1の鍵」

 そして、少し離れた隣には、

 「第2の鍵」


 なんだ。

 ゴム印にする必要性があるものだろうか。
 つまり、一度に何度も押す、しかも押すスペースが決まっているようなもの…
 
 そもそも「~~の~~」という表記が、ゴム印らしくない気がする。

 では英語にしてはどうだ。

 「ファーストキー」
 「セカンドキー」

 あまり意味がないか。
 何かの鍵の順番を示すことは間違いないが、それであったら、「鍵番号」という欄を作り、その枠内に「1」とか「2」とか書けば済むのではないか。

 「第1の」「第2の」と書く意味は、はたしてなんだ。

 偉そうである。

 きっと、重要なことをアピールするために、ただの「1」「2」ではなく、「第1の」「第2の」と付けた。

 順番だけは間違わないように強調したのだろうか。
 普通の金属ではなく、貴重な材質を使って作っている鍵だろうか。
 もしかしたら一つの錠を開けるために、違う種類の鍵を順番に使うのかもしれない。
 そうしないと開かない部屋には、いったい何があるんだ…

 と、もはやゴム印の問題から、その鍵自体まで妄想が及ぶ。


 「はいっ、これでいいですよう」

 係の男性から声をかけられる。

 「あの、この第1の鍵って…」などとは訊けない。

 「ありがとうございました。」
 と何事もないように、にこやかに御礼を述べる。


 この件に関する「鍵」を見つけられないまま、退室することになる。

 あの箱の中に、「第3の鍵」と書かれた印があるかどうかも、定かでないまま…。



 と、今読んでいる宮沢章夫のエッセイ風に、どうでもいいことを書いてみました。