すぷりんぐぶろぐ

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野が野でなくなり

2009年10月30日 | 雑記帳
 地域の方をゲストティーチャーに招いての授業があった。
 その昔、田んぼへの用水事業に尽くした偉人のことがテーマだったのだが、お話の中にこんな一言があった。

 「このあたりは、昔、『ノ』と呼ばれていたんですよ」

 このあたりとは今学校のあるいわば地区の中心地のことで、「ノ」とは「野」のことである。

 そういえば、私の家にもこの地区に親類がいた。
「野に行ってくる」
「野のツァ(オジサンというような意味)」
 などという昔の家の者の声がよみがえってくるようだった。

 田んぼが広がっていたわけでなく、野原になっていた場所にたくさんの家が立ち、役所や様々な施設が出来上がっていたことは、全国どこでも似たものだろう。
 しかしそうであっても、現実に今自分のいる場所がかつて荒涼とした野原だったと想像してみることは、結構心が躍る。

 人はどんなふうにして、野原を均し、そこに道や建物を作り上げていったのか…。
 つくづく昔の人は偉いものだなあ、という気持ちが湧き上がってくる。
 まさしく「野」という字にふさわしい人々がそこに居たのだ。

 野が野でなくなり、そういう地名で呼ばれなくなり、人はだんだんと野から遠ざかっていく、という現実を考えさせられた。