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ブログ版 シュプリッターエコー

赤木美奈展 饕餮

2020-08-08 03:43:00 | 美術
「饕餮」の読みは「とうてつ」。
中国の伝説上の怪物の名です。
あらゆるものを貪り食う悪神だったのが、いつか災いも喰らう魔除けの役割も持つようになったそうで、このコロナ禍の世にこそ「描かねばならない画題だ」と赤木さんは書きます。



正体不明の、めいめいの境目も判然としない生き物、植物、そして作家の偏愛する粘菌がひしめきあう画面からは、むしろ死の臭いが濃厚に立ちのぼってきます。
画廊のオーナーによると、山野で拾った動物の骨を挽いて混ぜた絵の具が使われているのだとか。
実際、骨そのものに彩色した作品も展示されているのです。



だとしても、これは死の爆発的繁茂。
その筆致は力強く、ここでなされているのは死と生とがないまぜになった混沌のエネルギーの探究です。
蛆虫に、ウィルスに、私たちもまた食われるものであるということを否応なく思い出させ、喰らい喰らわれ、全体としてただとめどなく続いていく怪物じみた生命というもののイメージが、見る者に迫ってきます。

「赤木美奈展 饕餮」は神戸・元町の歩歩琳堂(ぶぶりんどう)画廊で8月12日(水)まで開催。木・金曜日は定休。

歩歩琳堂画廊のFacebook https://m.facebook.com/buburindou/
電話 078-321-1154

(takashi.y)