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上浦ヴィクトリア展(2020年9月14日~19日)

2020-09-20 22:14:00 | 美術
9月19日(土)、大阪・西天満のOギャラリーeyesにて開催中の上浦ヴィクトリアさんの個展に伺った。フライヤーを見て是非他の作品も見たいと思った次第だった。

会場に入るとすぐ、正面に配置された大きな絵が目に飛び込んで来る。「母の中であなたはまだ生まれたての子鹿」

草を食もうと屈んだ子鹿の身体から、突如伸び上がる空色かつ薔薇柄の首と女の子の頭部。触れれば少し硬い毛並みや体温まで感じられそうなほど写実的な子鹿と、非現実的な首と頭部のコラージュに思わず眩暈を覚える。いわゆるキメラというものか。頭部だけの女の子はフライヤーの子と同じなので上浦さんのお嬢様なのだろうとはすぐ分かったが、すると首の途中の白い犬は飼われているワンちゃんですか?と尋ねると、特に犬は飼っていないとの回答に再び眩暈を覚える。何故そこに犬を描かれたのか?理屈で考えるのは恐らく野暮というものなのだろうと思い、突き詰めるのは止めた。
絵をよく見ると、子供の落書きのような謎の生き物(?)が散りばめられるように描かれている。「これは…?」と尋ねると、まさしく子供(3歳)の絵を描き移したものらしい。現実と虚構とを混在させる作品に、日常の「当たり前さ」に凝り固まった精神を揺るがされる。夢に出て来そうな衝撃を覚えた。

次の大きな作品、「オオカミとスイミー」。

絵の中心に主題たる狼の横顔を据え、それを囲むように幾つもの作品が描かれている。複数の作品を一枚に纏めてしまったかのような印象。絵心の無い私からすると、どう考えればこのような作品が産み出せるのか皆目見当が付かない。上浦さんが仰るには「絵の6割方は頭の中でヴィジョンがひらめくんです。描き進めている内に、こう描いてみようと思ったりして広がっていく感じですね。」とのこと。
ところで、狼の下に描かれている白い紙のようなものは…?と訊くと、やはりお嬢様の絵を描き移したものらしい。

ともすれば子煩悩とも揶揄されかねない母の愛。二人目の出産後初の個展ともあって、誕生の喜びとすくすくと育つお嬢様への愛に溢れた個展となったのだろう。

さてフライヤーの作品「強くなくてもいい」。

この構図を一目見て、私は中世ヨーロッパで伝承されてきた刺繍によく使われる菱型の図案を思い出した。

菱型の天辺には大抵花が描かれている。すなわち女性器のモチーフであり、子孫繁栄や農作物の豊穣を意味するものらしい。上浦さんの作品は菱型ではなく円形とは言え、子供の絵が真ん中に配置されているところから誕生を意味しているのでしょうか、と遠慮気味に聞いてみたところ、そんな意味は無いとすぐに否定されてしまった。こじつけ過ぎるのは自分の悪い癖だ。ましてや女性に質問するべき内容では無かったかもしれない(遠慮気味に言ったにしても)。

それにしても、どの顔を見てもお嬢様は笑顔ではなくムッスリとむくれている。案外、わざと嫌がることを言ってむくれる娘のその表情を愛らしく感じられているのかもしれない。
後で上浦さんのプロフィールを調べたところ、「真面目にふざける」を制作主題としているとのこと。お茶目な方だ。

(アサオケンジ)



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