※参考記録

日本百名山山頂宙返りを敢行中の【雪崩★マン】が綴る社会学的山岳エッセイ!

埼玉の名峰「両神山」vol.2

2002年05月08日 | 山【mountain&climbing】
 山頂は岩肌むき出しで男性的。でも眺めが最高に素晴らしく、360度の大パノラマ!!
この日はガスがかかっていたが、天気がよければ富士山や日本アルプスなども見える。
奥秩父の山はほぼ見え、東京都最高峰の雲取山、甲武信ヶ岳、金峰山、瑞牆山。
西へ目を転じると八ヶ岳連峰もうっすらと。
また付近はヤシオツツジの群生地で、ちょうど花開いており、
深桃の美しい花を見せてくれた。

 着いたときは20名ほどの登山者でごった返していたが、
風景の写真を撮りながら彼らが下山するのを待ち、
まもなく私だけに。早速お昼だ。秩父のコンビニで買ってきたおにぎりやらサンドイッチやらを頬張る。
優雅な気分で腹ごしらえをしていると、にわかに後ろが騒がしくなった。
先ほどのご夫婦がやってきたのだ。
専ら喋ってはしゃいでいるのはご主人のほう。
「お疲れさま。ようやくやってきましたね。」と声をかけると、興奮気味に
「いやァ、鎖怖かったよ。あれ使わないで下りる方法ないの?」と。
あるわけない…。
 彼の興奮はおさまらず、写真を撮りまくっているが、カメラの使い方がよくわからず、また私がレクチャー。
何のことはない。日付を入れたり、フラッシュを強制発光にしたり、といったことだった。
最高点は尖った岩場で、立つと足がすくむ人もいるようだが、私は快感。
仁王立ちしたポーズで写真を撮ってもらった。
一方彼はというと、奥さんはさっさとポーズを取っているのだが、なかなか最高点に立てず、
仕方なく岩にへばりつくようなへっぴり腰で写真に収まった。
それにしても凄い枚数の写真を撮っていた。ここだけで20枚くらい撮っていたんじゃないかな。
案の定、しばらく撮ったらフィルムが無くなり、たいそう悔やんでいた。
私が「では撮りますよぉ、はいチーズ。」と言うと、
彼は「はい、グーッ」と言い、口を真一文字にして誇らしげな表情をする。
彼の表情と“グーッ”(写真を撮られる際そんなこと言うのは彼だけだろう)
の由来を思うとおかしかった。
 とにかく愉快で陽気でお喋りで楽しい人だった。
いつも傍らで奥さんが柔和な笑顔をうかべて…。

 しばらく歓談したのち、私は先に下山することに。
 下山し、両神村営の温泉「薬師の湯」で汗を流して帰ってきた。

 山では毎回印象的な人に出会う。
もちろんいろんな山にいろんな季節に登るので、全く人に会わなかった山もある。
会った人のなかには、その後友達付き合いまで発展した人もいる。
ただ残念なことに、若い人が少ない!

 「中高年の登山ブーム」といわれるが、確かにその通りだと実感する。
私は出会う人からいつも「お兄さん」と呼ばれ、「学生さん?」と聞かれる。
31歳だと答えると皆一様に驚く。普段から年齢より若く見られがちだが、山ではそれが際立つ。
つまりそれだけ若い人が少ないということ。
たまに大学のワンダーフォーゲルや登山部らしき連中に会うが、
ちょうど私くらいの年齢の人が一番少ない。
若い体力のある人達の娯楽のひとつにならないのは非常に残念。
私は今後はフリークライミングやバックカントリーも楽しみたいと思っているのに。

 それからひとつ気づいたことだが、ファッションがダサい!
 ハンチング帽にウールなどのネルシャツ。
ベージュのパンツにゲートルのような厚手のソックス、茶色の重厚な登山靴。
各人にこだわりがあって結構。上記の例に挙げたモノの機能性や利便性を否定するつもりも無い。
ただ、皆これでは個性が無いじゃないか!こういうスタイルを年寄りがやっているから
若い人達は登山が楽しいとは思いにくいんじゃないか。
 その点私は違う!カラーコーディネイトは怠らない。
今回は「ブルー」が基本。そしていつもの私の基本は、冬山以外は「バンダナ」。
昼でもバンダナァ…(T_T)/
今回は上下「ナイキACG」でキメた。暑くなることを予想し、
インナーはPIKOの長袖Tシャツ(紺色)。
バンダナも紺。アウターのナイキはナイロン製で上はブラック&ブルー!下はハーフパンツで黒。
靴はサロモンのグレー。ザックはカリマーのグレー。統一されているでしょ。

 私は道具にはこだわる。機能もファッション性も。
その上で、例えば3シーズンなら上下スウェットでもOKと思う。
だからユニクロのジャージやトレーナーでいいと。
その一方で、道具にかける金には惜しまない。非日常の場面で出くわす緊急事態には
道具の持つ機能を100%発揮しなければならない場合があるから。

 ま、そんなこんなでみんな!山登ろうぜ!

埼玉の名峰「両神山」vol.1

2002年05月08日 | 山【mountain&climbing】
*両神山山頂にて

 G.W.最後の日に埼玉の名峰『両神山』に登った。

 ここに書いたことはなかったが、私は登山が大好き。
生活の中心は山、というのは大げさだが、
山のことをベースに考えて生活しているし、今後もそうだ。

 前日急遽計画した。山小屋泊も考えたが、東京から近いので日帰りを選択。
普段から「遅寝遅起き」が板についている私は早起きをしなければならなかったが、
朝5時半に起床。6時半に出発。登山口までの交通手段はバイク。
近いと思っていたが意外や意外、かなり遠かった。
自宅の練馬から新青梅街道→所沢街道を通り、
所沢、そして飯能までは順調にやってきたし、時間も予定通りだった。
朝早いせいか道は空いている。
しかしここから秩父までが遠かった。国道299号はなァ~にもない道。
でも高麗川沿いの風景はなかなか気持ちがよかった。
秩父以降も遠かったが、山が近づくにつれ気分が高揚したので早く着いた気がする。
途中コンビニでお昼ご飯を買い、登山口着は9時半。10時から登頂開始!

 私の登山はたいてい登山地図に記載されているコース標準タイムの70%
の時間で行程を走破する。走るわけではないが。
今回は標準が約6時間。ということは約4時間半ということだ。
「目標タイム」ではない。目標を設けると無理をし、思わぬ事態を招くこともあり得るからだ。
山は街ではない。自然の中へ、しかも高度のあるところへ行くのだから天気予報もあてにならない。
何もかもが「非日常の世界」。万全の準備をして、相当の“緊張感”をもって臨む必要がある。
今回は首都圏の山で、しかもG.W.ということでたくさんの登山者がおり、遭難の危険はなかったが、
丸一日歩き通して、一人の登山者にも会わないということもある。
この日は登山口の駐車スペースは車がいっぱい(といってもたいして広くはない)。
ここまで両神村営のバスも運行されており、車の数と合わせて見積もって今日の入山者は約100人ってとこか。
ということはあまり多くないね…。別の登山口もあるが、
メインルートはこちら。
こちらというのは両神村の「日向大谷」である。

 両神山(1723m)は奥秩父の代表的な「日本百名山」である。
山頂の地籍は埼玉県秩父郡両神村、大滝村、小鹿野町の境にあり、
「秩父多摩甲斐国立公園」の北端である。
東京近郊の山では珍しく岩骨がむき出しになった鋸歯状の山。
東京から近いうえに鎖場があり、刺激も多く、
ビギナーにも親しみやすい山だ。登山ガイドなどを見ると
「山小屋一泊二日」が標準的な山行プランだが、
私のような超健脚者でなくとも「日帰り」が“当然”の山だろう。
しかし無理するくらいなら山小屋泊!

 しばらくは沢沿いを登る。ただこの山、層状チャートという硬い岩石でできており、
隆起後の侵食で骨格だけが残ったもので、道は岩を砕いた状態。つまり歩きづらいのだ。
しかも道は終始樹林帯の中で、山頂付近に出るまで眺望も悪い。
両神山は『信仰の山』なので御堂や御地蔵様、石碑がいっぱいある。
この際これらを楽しむことにしよう。
 私の場合1時間ちょっとで中腹の清滝小屋に着いた。ここで標高約1200m。
ログハウス風の洒落た小屋。平成元年に焼失したが、その後新築された。
この小屋は「村営」のため、一泊二食付で5000円という山小屋にしては破格の安さ。
しかも綺麗!
 小屋からはさらに急登となる。産泰尾根に出ると木梯子や鎖場が出現。緊張感が高まるが、意外に呆気ないものだった。
しばらくして両神神社本社。山犬の「大口真神」も座している。
登山の無事を祈願して10円を賽銭箱へ。
 主稜線へ出ると山頂付近がちらちらと見えてくる。
この辺りの鎖場で50歳過ぎくらいのご夫婦に会った。
登山者に会うと私はいつも積極的に自分から快活に挨拶をするが、
このときはご主人のほうから挨拶され、話しかけてきた。
聞けば朝7時に登り始めたという。私は10時過ぎ。
おしゃべり好きで最近登った山や自分は高所恐怖症であることなどをとうとうと喋った。
私は鎖に手をかけたまま彼の話に耳を傾け、終いには生意気にも鎖場の登り方もレクチャーしてあげた。
数m先で奥さんが苦笑いしていた。彼らを追い抜き、稜線を進むと、頂上直下の最後の鎖場が登場。
鎖場は交互通行ができないので、下りてくる数名を待ち、そして山頂へ。
1時前に着いた。登り約2時間半。ちなみにガイドブックによる標準タイムは3時間半。