※参考記録

日本百名山山頂宙返りを敢行中の【雪崩★マン】が綴る社会学的山岳エッセイ!

大雪山系大縦走!(おまけ2)~ノンちゃんと若奥さん

2006年12月26日 | 山【mountain&climbing】
 ふと目を転じると
昨日から気になっていた犬(ヨークシャーテリア)
僕に近づいていた。
まだ1歳になっていないくらいの可愛らしい
でも落ち着きの無い犬で、若い夫婦が連れていた。
奥さんが何度も
「ノンちゃぁ~ん、ダメよ」
と言っているのを聞いていた。

 僕が手を出すと“ノンちゃん”はペロペロと舐めてくれた。
後ろから「ノンちゃぁ~ん」と叫びながら
奥さんがやってきた。
「すみませぇーん」と言いながらノンちゃんを抱える彼女は
見るからに素朴で素直そうな“北海道の娘”だった。
「何処から来たんですか?」
(*このときの「何処」は居住地である。つまり答えは「東京」♪)
と聞かれ、僕が答えたところから会話が始まった。
暫し談笑することにする。

 話せば彼女は本当に素朴な女性だった。呆れるほど…
以下内容を掻い摘んで書く。

彼女:パンダって可愛いですよね♪あのタレ目が。
僕:あれは黒い模様で、目は垂れてないですよ。
彼女:ええーっ!!そうなんだ?!知らなかったぁ!!
僕:(~◇~)……。

彼女:パンダってフワフワしていてぬいぐるみみたいですよね♪
僕:パンダは熊の仲間なのでデッカくて、毛はたわしみたいに剛毛ですよ。
彼女:ええーっ!!そうなんだ?!知らなかったぁ!!
僕:;(´Д`);……。

彼女:昔、B'zが旭川でライブやったんですけど、ノリが悪かったらしくて
  「北海道の人はノリが悪くて嫌だ」って理由で
  もう北海道に来なくなったんです。
  でも私大ファンなので、今年札幌のライブに行ったんです!

僕:札幌って北海道じゃ…。
彼女:ああ、そうか。そうですね。アハハハハハ(=^o^=)
僕:ハハハ~(;^o^;)~……。

 話のなかで僕は愛媛県出身で、
実は母方の祖母が旭川の出身であることも話した。
いつのまにかお互い話し込んでいた。

ブブブブォォ~~♭(((●...
(*バスが走り去る音)

ゲゲゲッッッ\(◎o◎)/!!!
おいおい、あれは10:42発、
上富良野駅行きの町営バスでねぇかい?!



 僕たちは芝生のテント場の端にあるベンチに腰掛けて話していたが、
バス停は「白銀荘」の前にあり、30mほど離れている。
まだ40分以上あるので油断していたのだ。
バスは白銀荘の前の小さなロータリーを回ってもう通りへ出ようとしていた。

「あっ、あのバス!!そ、それじゃあ!!」

 僕はそそくさと挨拶をし、ザックを担いでバスを追った。

「えっ?!あ…」

 彼女は何か言いかけたが、僕はそれどころではない。
バスを追って駆けるがザックが重く、空身のようなスピードは出ない!
運転手は僕に気づかず、バスは徐々にスピードを上げていった。
20mほど走ったところで僕は、とにかくバスを停めなければならない
と思い、ザックを放り出して空身になった。
町営バスは一日3往復で、次のバスは14:21発。
それまでは待てないし、待っていたら今日の美瑛観光は出来ない。

「おーい!!待って!!」

 僕は大声で叫びながら全力でバスを追った。

 やがてバスはゆっくり停車した。
ラッキーだった。
通りは大きく左にカーブしており、そこに差し掛かったとき、
運転手の左手に、慌てふためきながら全力で走ってくる僕の姿が
目に入ったのだ。
僕は運転手に

「ザックを取ってくるのでちょっとだけ待ってください」

と言い、ザックを放り出したところへ戻った。

 そこには彼女がニコニコしながら佇んでおり、

「凄いですねっ!!バスを停めちゃうなんてぇ!!」

と、ちょっと興奮気味に笑顔で言った。

「いやぁ、どうなるかと思いましたよ。それじゃあお元気で。」

という僕に彼女は

「あっ、また北海道に戻ってきてくださいねぇぇーーっ!!」

と言ってくれた。

 息を切らしながらバスに乗り、運転手に詫びて発車した。
左を見るとバスが見えなくなるまで
ノンちゃんを抱いた彼女は手を振っていた。


 時が経つのは早いもの、とはよく言ったものだ。
スローな時間が流れる北海道で、
僕は秒単位の時間との闘いをしてしまった。

大雪山系大縦走!(おまけ1)~スローライフを実践する人々

2006年12月20日 | 山【mountain&climbing】
*吹上温泉無料露天風呂♪朝5時から入浴している!


 9月15日早朝、
テントを張った山麓の吹上温泉「白銀荘」近くに
無料の露天風呂があると聞き、早速行ってみた。
すると朝5時半だというのにもう地元の方と思われる数名が
入浴している

スローライフを実践する北海道の人々…♪


 温泉は適温で、長風呂できそうだったが、
脱衣所も無いような露天風呂では落ち着かない。
でも、30分以上のんびりした。
段々畑のように浴槽が二つあったが、どちらも同じ湯だった…。

 温泉から戻ってくると十勝岳から朝陽が昇り始めていた。


 今日は美瑛へ出て、レンタサイクルで市内を観光する予定♪
しかし、「上富良野駅行き」の町営バスは
なんと10:42にならないと来ない


朝食を食べて(*まだ食事は山行の続きのため、早茹でパスタ)、
シュラフを干したり、付近を散策したり、
テント場の芝生の上で寝転んだりして時間を潰した。
それでも時間はなかなか過ぎない。
余っていたレギュラーコーヒーを淹れて飲んだ。
まだ時間はある。
シュラフもテントも片付けてザックに詰めて、
あとはバスに乗るだけになった。
でもまだ10時前だった。

大雪山系大縦走!(32)~下界で“濃い”空気を吸う

2006年12月19日 | 山【mountain&climbing】
*9/15朝の白銀荘前のテント場。気持ちのよい北海道の朝♪


 白銀荘前のテント場は芝生の“絨毯”を敷いた
フカフカの寝心地のよい快適なテント場だった。
四日ぶりに下界の“濃い”空気を吸ったせいか
身体が軽かった♪



 9月14日の夕方、僕の今回の山行は終わった。

 テントの設営をする前に、ザックを放り出して僕は
通常五日間以上のかかる行程を四日間で走破した
喜びを疲れを噛み締めながら
そして、
意外と長い十勝岳避難小屋から白銀荘までの道のりを
腹立たしい思いで述懐しながら
(*しょっちゅうあることだが、某社の地図に表記されている
コースタイムが全くでたらめで、僕の足でその1.5倍の時間がかかった)
テントサイトの水場(もちろん水道よ♪)で
夕食のための水をプラティパスに満たしていた。
このとき次々に3人の男性に声をかけられた
いずれも

「何処へ登っていたのですか?」
「何処から来たのですか?」

*こういうときの「何処から」って
居住地・出身地のことなのか?登り始めた登山口のことなのか?
文脈や雰囲気で判断するしかない。

というものだったが、
僕の荷物や風采を見て、日帰り登山者ではないと推察できるため
興味が沸くのだろうか?

 ここは十勝岳への登山口に近く、
富良野、美瑛を含む旭川周辺からは朝一で出発すれば
十勝岳は十分日帰りが可能な山だ。
しかも、十勝岳周辺は温泉だらけで
ここ白銀荘も素泊まり(自炊)のみの公共の宿で、
登山者よりも温泉目当ての人のほうが多く、
みな車で大勢やってきていた。
そんな人たちのなかで僕はちょっと異質だったのかもしれない。

 夕食後は白銀荘の綺麗な浴場(源泉かけ流しの温泉)
さっぱりした。

大雪山系大縦走!(31)~四日ぶりの下界

2006年12月13日 | 山【mountain&climbing】
*振り返ると十勝岳の火口から爆音と共に噴煙が上がっていた。


 不毛の大地を踏みしめながらひたすら下山した。
下界には上富良野の街が見えるが、
僕の周りは地獄図絵の様相で
街の緑と家々が僕を勇気付け、それを目指した。

 途中、壊れかけた十勝岳避難小屋(*使用不可)
の前で恐怖のため忘れていた“プロジェクト”を遂行した。
今回もまたプロジェクト遂行時は誰もいなかったので
写真は無しよ♪
まあそれより何より
今回は四日間を通じてほとんど人に逢わなかったので…。

 16時、今日のテント場
『吹上温泉・国民宿舎白銀荘』に到着した。


鎮魂街道

2006年12月09日 | 雑感【thoughts】
 僕は毎日
自宅のある練馬区から職場のある瑞穂町(西多摩郡、青梅市の近く)まで
バイクで通勤している
片道約一時間の長丁場。


 ここでよく見かけるのが
猫の死体

 今日も一匹、一昨日の帰りも一匹…。

 どんなに可愛い猫も死体は可愛くない。
特に“真新しい”死体は…。

 前を行く車たちが次々に蛇行していく。
それが死体がある合図。
僕は車ではないので大きくは蛇行せず、
死体を足元にかすめ、ちらりと眺めて走り去る。
あえて普通のことを書くが、やはり
心が痛むね

大雪山系大縦走!(30)~十勝をあとにして…

2006年12月06日 | 山【mountain&climbing】
*十勝岳の周囲は不毛の地。


 あまり長居したくない雰囲気に駆られたので
そそくさと下山することにした。
岩稜帯で、“プロジェクト”遂行も困難と判断したし…。


 写真の通り、活火山のため、周辺には草木が全く生えていない
この山域は通年遭難者が多いという。
山では植生やその彩りが目印となるが、
ここではそれらが全く無いため、
ガスに巻かれると途端に方向感覚を失うのだろう。
おまけに火山ガスも発生しており、
迷って火口付近へ向かうと危険!
天候が悪いと絶対に近づいてはいけない山だ。
もちろん火口付近は立ち入り禁止になっており、
看板も出ているが、ガスや吹雪では見えないだろう。

大雪山系大縦走!(29)~活火山の百名山

2006年12月03日 | 山【mountain&climbing】
*今回最後の百名山、十勝岳にて。


 14時、僕はついに不毛の大地の古城の城主となった。
今回の山行二つ目の百名山、
十勝岳(2077m)を制覇した。
午後から僕に悪戯をし続けていたガス(雲)は
晴れることなく、古城と僕を包んでいた。



 「恐い!」
そう感じる山だ。
ガスに包まれた閉塞感からかもしれないが、
長居したくない気持ちに苛まれた。
山頂の広さから、ここでも“プロジェクト遂行”は断念し、
早々に退散することにした。
はるか下方に上富良野の町と蒼い大地が見える。
それに多少救われたが、
ここは爆音が響き、硫黄臭の漂う不毛の地。
恐いけれども時々振り返り、自分が制した“城”を眺めた。
15分ほど下りると城の右のほうからモクモクと噴煙を上げる
火口が確認できた。