フィギュアスケート全日本選手権が終わった。
そして同時に
トリノ五輪日本代表選手も決まった。
選考結果は妥当なものだと思う。
ただし昨日以降いろいろなメディア(マスコミからブログなどにいたるまで)
で議論がなされているだろうが、当然問題点も多い。
トリノ五輪のフィギュアスケート女子代表選手は
村主章枝(すぐりふみえ)、荒川静香(あらかわしずか)、安藤美姫(あんどうみき)
の三選手に決まった。
なお選考基準は、各大会の順位をポイント化し、その合計で争う。
対象となる大会は
「国際大会」と
「全日本選手権」。
そして前者の「国際大会」とは
世界各地で数試合行なわれる
「GP(グランプリ)シリーズ」と
その上位6選手(だったかな)のみが出場できる
「GPファイナル」(1試合)。
ちなみに
「NHK杯」(1試合)はGPシリーズだそうだ。
①昨季の国際大会の最高ポイントの70%に
②今季の国際大会で成績のよかった2大会
③全日本選手権を加えた
3大会の合計ポイントで決定する。
各大会のポイントは
①GPシリーズ、NHK杯、全日本選手権は同じで
1位600ポイント、2位が550ポイントと順位が一つ下がるごとに50ポイント減り
6位が350ポイント。
②GPファイナルは1位が800、2位が750…、6位が550。
ただし、
ポイント合計が10%以内の場合、“諸事情”を考慮して、
逆転させることもあるという。
上記の3選手以外に代表争いに加わる、あるいは注目される選手が三人いた。
浅田真央(あさだまお)、恩田美栄(おんだよしえ)、中野友加里(なかのゆかり)
である。
五輪出場が決定した前述3選手と合わせた6選手の
全日本選手権前の合計ポイントは上位から
①浅田、②安藤、③中野、④恩田、⑤荒川、⑥村主、の順。
昨日終わった全日本選手権の順位は
①村主、②浅田、③荒川、④恩田、⑤中野、⑥安藤、の順。
そして全ての合計ポイントの順位はというと
①浅田、②安藤、③村主、④荒川、⑤中野、⑥恩田、の順。
え、えーーーっっ??!!
どういうこと?!こんなに混沌としているとは…。
「ポイント合計の差が10%以内」じゃん!!
で、結局選ばれたのは1位の浅田に「出場資格がない」ということで
安藤、村主、荒川の上位三人。だから「妥当」かというと…。
一つずつ見ていこう。
浅田真央については11月27日の『日本の夜明け』でも述べたように、
五輪に出られないこと自体がナンセンスでくだらない!!
選考基準の合計ポイントでは1位の浅田が2451。2位の安藤が2215。
6位の恩田でも2014。接戦ではあるが、1位と2位の差は歴然である。
浅田はシニアデビュー戦の今年のGPシリーズの中国杯でいきなり2位。
その次のフランス杯では優勝。そしてGPファイナルでも優勝。
文句なく日本のトップであることは言うまでもなく、
世界トップの選手である。
それが五輪に出場できないとは…。
国際スケート連盟(ISU)の定める五輪出場資格年齢の理由は
「医学的な見地」という。しかしそれは建前で実際は
有望な若い選手を早くプロへ行かせたくないからであることは明白だ!
オクサナ・バイウル(ロシア、リレハンメル五輪金メダリスト、当時16歳)、
タラ・リピンスキー(アメリカ、長野五輪金メダリスト、当時15歳)
のような選手を作りたくないだけ。
彼女たちは『五輪金メダル』を手土産にさっさとプロへ転向してしまった。
プロ側も金メダリストの肩書きを持つ選手は魅力だ。
でも考えてみよう。
アマチュアってえらいの?!
そんなにアマチュアでやることは崇高なことで
プロはいけないことなのか?!
要はアマチュアもプロも
魅力的なものであればいいんじゃないの。
それは見る者にとっても競技をする者にとっても。
たしかに「金」は魅力的だ。
アマチュアにとって金でプロに対抗することは
難しいかもしれない。
でも
金をもらってアマチュアの試合に出場してはいけないの?!
いけないのなら規定を変えるべきだ。
それからかつては
カタリナ・ビット
(旧東ドイツ出身。サラエボ、カルガリー五輪で連続金メダル獲得。
“ベルリンの壁崩壊”後にプロへ転向。)
のようにプロ転向後もアマチュアの試合に出場していた選手もいる。
彼女のことをもっと研究すればいいんじゃないの、ISUは。
彼女なりにアマチュアに魅力を感じていたからか、
彼女が人一倍責任感とサービス精神に溢れる
有能なスケーターだったからかはわからないが、
彼女がアマチュアの試合に出場し続けたわけを考えれば、
今後、プロ選手でありながらアマチュアの試合に出る魅力的な
スケーターを輩出できるだろう。
とにかく
ISUは能無しの汚い団体であるし、
浅田真央のようなスケーターを五輪の舞台で見ることのできない
我々は不幸であるといわざるを得ない。
安藤美姫は“貯金”がものをいった。
つまりこの大会までの持ち点が浅田に次いで高く、しかも
安藤1865、次の中野1643とかなりの開きがあった。
そしてこの大会中野は5位。安藤は崩れて上記6人中最下位の6位だったが
中野が大逆転で上がってこなかったので、
持ち点の低かった村主、荒川のベテランが今大会頑張って上位に入ってきたが
安藤の合計ポイントの順位は変わらなかった。
しかし彼女に
問題は山積である。
とにかく
最近の調子が悪すぎる!!
今回の全日本選手権を含めて最近の3試合の順位は
NHK杯4位、GPファイナル4位、そして今大会6位。
先の2試合については
NHK杯は浅田、荒川、恩田が、GPファイナルは村主、荒川、恩田が出場していない。
(*ご存知のようにGPファイナルは浅田が優勝!)
そして共に出場した中野に、NHK杯では村主に、GPファイナルでは浅田に
全て順位で下回っている。
つまり、
今日本人選手で一番調子が悪く、
成績を出せない選手は安藤だ!!
トリノ五輪まで時間はない。そのことも考慮しつつも
五輪選考規程に照らし合わせた結果、日本スケート連盟は安藤を選出したのだから
これは五輪でどういう結果になるか見ものである。
はっきり言って僕は安藤は五輪で結果を残せないと思う。
「唯一の4回転ジャンパー」と言われているが、
絶対に彼女は4回転ジャンプは飛べない!!
調子が悪いので「安全策」を取って3回転ジャンプに変えている、
というがその3回転すらまともに跳べず、転倒しそうになったり
アップアップの演技である。
村主、荒川に関しては安藤ほどの不安材料はないが全くないわけではない。
村主章枝は9月に股関節の怪我をしており、今季前半のGPシリーズの
スケートカナダでは8位と惨敗している。
たしかに彼女の“芸術性”は採点法云々を抜きにして、
大して見る目を持ち合わせていない僕の目にも「美しい」と感じる。
が、やはり「8位」が気になる。安定感に不安がある。
しかし安藤に比べれば安定感はあるが。
荒川静香は演技内容、構成に劣る点がある。
ただし、今季は「3-3-3回転」の大技を身につけ、
“点数の獲れる”演技もできるようになってきたし、
何より今季出場したGPシリーズの試合は世界の有力選手が
集まる大会にのみエントリーしてしまったので
ここまでの持ち点で他の選手に比べて不利な点が多かった。
しかし
2004年の世界選手権のチャンピオンである。
実績からすれば選ばれて当然かもしれない。
この二人に関しては最終順位がよかったこともあるが
国際大会や過去の
五輪出場経験などを考慮して
決定された部分も大きいだろう。
ちなみに荒川静香の「静香」の字はあの
亀井静香(元自民党、現国民新党)
と同じで、僕は彼女が演技中に「ここで踊っているのが亀井静香だったら…」
と想像してしまい笑わずにはいられない。
中野友加里は
心から残念だったと言ってあげよう。
昨年までは無名に近い選手。日本スケート連盟の
今年の
特別強化選手にも入っていない。
しかしスケートカナダで3位に入り(*前述の通り村主が8位の大会)
NHK杯ではとうとう優勝した。
GPファイナルでも3位(*浅田が優勝)。
つまり、今季安藤と共に出場した
全ての試合で安藤に勝っているのだ。
彼女はいかんせん他の選手に比べ
昨年のポイント(持ち点)が少なすぎた。
また、「技のつなぎ」などの評価が思いの外低く、国際的に評価されにくい
演技をしていることがポイントを稼げない原因。
今大会もトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をダブルアクセルと
判定されて点数が伸びなかった。
トリプルアクセルを跳べる選手はなかなかいないので貴重なのだが。
「高速ドーナツスピン」など、世界トップクラスの技を持っているので
今後名前が知られると共にポイントも上がるだろう。
ちなみに僕は6選手のなかでは彼女のスケーティングが一番好きである。
なお、フィギュアスケートの採点法についても
大いに述べたいが今回は対象にしない。
今季大幅に変更され、各選手の演技内容にも大いに影響を及ぼしている。
しかし、“へんてこ”でややこしく、つまらない採点法なので
これまた大問題だが。
恩田美栄は若手が台頭してきて
個性を埋没させてしまった可哀想な選手。
元々ジャンプが得意で、村主、荒川らと近年の日本の女子フィギュア界を
引っ張ってきたが、安藤、浅田ともっとすごいジャンパーが現れてから
なかなか上位へ顔を出さなくなった。
今大会いい演技をした。フリーだけなら浅田を上回る2位。
しかもほぼノーミスで技術点はトップだった。
でもやっぱり総合的に…。
中野、恩田は今大会「2位以上」に入らなければ、
五輪出場は無理だっただろう。
僕は他の選手に比べてこの2選手のほうが好きなので残念ではあるが
選考方法や結果は納得できる部分が大きい。
昨年の
アテネ五輪の女子マラソンの選考を覚えているだろうか。
東京国際女子マラソンで高橋尚子が失速し2位に終わり、
アテネ五輪出場を逃したことを。
このときも「高橋を出さないのか!」という抗議は
マスコミやインターネットなどでもなされたが、
結局は
野口みずきが金メダルを獲ったことで批判は立ち消えになった。
日本の女子マラソンのレベルは世界の陸上関係者の誰もが認めることだが
世界ナンバーワンである。
しかし、「メダル独占!」などという馬鹿げた論調は必ずある。
現在の日本の女子フィギュアスケートのレベルは世界ナンバーワンである。
というのは
メダル候補の選手が最も多い、ということであり
メダルを独占できるか(金、銀、銅の全てを獲る)というと
そりゃあ無理である。
選考基準に関してはこれは難しいところで
今の日本には
「メダルを獲れる選手」を選ぶことは重要だが、
一方で
「内容の透明性」も重要である。
先に述べたアテネのマラソンの選考でも
バルセロナ、アトランタの五輪の際だって揉めた。
「有森を選ぶか否か」という点で。
で、このときも結局有森はメダルを獲って結果を残した。
その一方で不透明な選考内容で涙を呑んだ
松野明美、山本佳子といった選手がいたし、
その不透明性ゆえに選ばれたシンデレラガール
小鴨由水もいた。そして五輪で彼女は惨敗した。
彼女たちはみな
日本陸連によって傷つけられた被害者だ。
その反省からアテネでは明確な基準が適応され、高橋は落選した。
これがシドニー以前の五輪選考で同じ状況なら
高橋は選ばれていただろう。
さあ、女子フィギュアはどうなる?
僕は前述の論調から察していただけると思うが、
安藤美姫というスケーターを評価していない!!
僕の評価では6選手のなかでは現在の実力は最下位である。
でもメチャクチャを言うが、
選考結果は「妥当」だと思う。
日本スケート連盟の立場ならこの結果は妥当だろうという意味だ。
ただし、今回はみな
「被害者」にはならないだろう。
最終選考会にあたる今大会、全日本選手権の演技内容に
選手自身がほぼ満足しているからだ。
中野、恩田もそう。浅田のような子供でもしっかりとした
目標と考え方を持っている。
陸連やスケート連盟の大人たちよりよっぽどしっかりしている。
ただ気になるのは五輪後、
マスコミによって彼女たちが被害者になる可能性はある、
ということだ。
それからあえて断言しよう。
安藤美姫はメダルを獲れない!!
4回転ジャンプはトライしないし、それでいて「転倒」するだろう。