※参考記録

日本百名山山頂宙返りを敢行中の【雪崩★マン】が綴る社会学的山岳エッセイ!

『立山・剱岳登山』vol.3

2003年10月10日 | 山【mountain&climbing】
*写真は剣沢からの剱岳

 ここ「雷鳥沢ヒュッテ」は定員290名とかなりデカイ!
しかもほとんど個室。僕は大部屋希望でチェックインしたが、
結局大部屋に泊まった客は僕を含めて3人だった。
この小屋は山小屋とは思えない「五階建て」!!
とはいえ、斜面に建っているので入口から見て五階分の高さはない。
入口は二階。地下、いや一階には風呂。
さらに山小屋とは思えない「鉄筋コンクリート造り」!!
山小屋とは思えない「卓球台完備」!!
山小屋とは思えない「個室約20部屋」!!
しっかし、外から見るのと大違いで、中はかなりボロかった(T_T)…。
加えて大部屋は端の部屋で、
天井が高く(二階分の吹き抜け)、壁はコンクリート打ちっぱなしで
寒々しい雰囲気。そして実際寒いッ!!
夕食はフライものばかりで、僕の評価は100点満点中「40点」!
部屋は前述の通りなので「30点」。トータルで「35点」で、
今まで泊まった山小屋の中で最低ランクだった!!

 まず“企業努力”が足りない
室堂周辺の山小屋は水道が完備されているので、ほとんどの小屋には風呂がある。
しかも地獄谷から湧く温泉!!
しかし、雷鳥沢ヒュッテの風呂は古めかい。
さらに水道完備ならもっと食事のレベルを上げなきゃ!!
唯一の救いは、ご主人の人柄が温かそうだったこと。
僕は荷物を置いて、空身で小一時間ほど地獄谷周辺を散策した。

 大部屋の個人客は広島から来たという40歳過ぎの男性(話し好き)と、
三重から来た30代前半の男性(無口で食後、すぐに寝てしまった)と僕だった。
広島の男性はこの日、剱岳から戻ってきたところで
(後述するが、彼は前剱で引き返してきた)、
三重の男性は「剣は怖くて避けているんですよォ」と言い、明日は剣御前辺りまで登る予定だとか。
 広島の男性から、
①二日前(10/3)吹雪が吹き、剱岳、立山にかなりの積雪があった。
②その日、「剣山荘」(剱岳に一番近い山小屋)から剱岳を目指して出発した
男性二人組が遭難した(*深夜に救出された)。吹雪で道を見失ったらしい。
③剱岳手前の「前剱」の北側の鎖場が凍っており、大変危険。
そのため自分はそこで諦めて引き返した。
④さらに先(剱岳直前)の「平蔵の頭」の鎖場も凍っており、
岩に貼り付いて(凍り付いて)いるらしく、これまた危険。
⑤以上のため、前剱で引き返す人がほとんどである。
といった情報を得た。
彼はさらに酒を飲みながら話したそうだったが、僕は睡眠不足のため、
また明日は剱岳にアタックするロングトレイルになる予定のため、
誘いを断り、8時前には就寝した。
三重の男性はもう寝ていた。

10/6(月)
 5時過ぎに起きたとき、三重の男性はもう出発して居なかった。
広島の男性と話しながら朝食をとり
(僕はいつものようにご飯おかわり)、7時に出発。寒いッ!0℃くらいか。
天候は「曇り時々晴れ」といったところ。
「雷鳥坂」はかなりの急登できつい!浮石も多くて足を取られやすいが、
僕はいつものように
標準タイム(*昭文社の「山と高原地図」参照)の70%くらいのハイペースで歩を進める。
さすがに標高2000m超の地、今年はじめて、霜柱をいたるところで見かけた。

 9時、「剱御前小舎」到着。
ついに『剱岳』が威容を誇るように姿を現す
 剱岳は間違いなく“玄人好みの山”である。
何しろ低いところからは全く見えないのだ。
ほとんどの日本アルプスの山は下の町から見える。
ここの登山基地の室堂から立山連峰は真正面に堂々と見える。
しかし、剱岳はここ別山乗越(べっさんのっこし)、つまり「剱御前小舎」まで登ってきて
ようやくその姿を拝むことが出来るのだ。
ここまででも本格的な登山の装備と技術、体力が必要である。
 ここの標高は約2750m。稜線に立つ小屋で風が強い。
北東斜面のカールには巨大な雪渓が氷りついていた。
小屋の前で、俳優の木之元亮さんとテレビクルーに遭遇した。聞けば、
「仙人池ヒュッテ」の名物かあちゃん、志鷹静代さんを取材するためにやってきたらしい。
裏剣の名所、仙人池からの剱岳の眺めは格別だろう。
それにしてもここは剣への表コースの最高点「剱御前小舎」。
取材を終えて、室堂へ下りるところなのか、
室堂から別山乗越を越えて取材に行くところなのかは聞かずじまいだった。
仙人池ヒュッテの取材だけなら、黒部峡谷鉄道で欅平(けやきだいら)まで入り、
そこから登ったほうが楽で早いと思うのだが…。
雷鳥坂を登るシーンを撮りたいらしく、
20mくらい下から木之元さんは疲れてもいないのに、
息をハァーハァーさせながら二、三度登りを繰り返していた。
テレビで見るとおり、彼は背が高く、声が渋かった。
なお、取材した仙人池ヒュッテの模様は11/9にテレビ東京系で夜9時から放送されたが、
ご覧になった方はおられるだろうか。

 剱御前小屋からは三本のルートがある。
そのうち「剱御前」を経由するルートは一般的ではなく、ほとんど利用されていない。
残る二つは「剱沢小屋」を経由するものと“ショートカット”するもの。
ショートカットとはいえ、前者とのタイム差はほとんどない
(*「山と高原地図36剱・立山」昭文社参照)。
僕は高低差の少ないショートカットを選択した。
あとは次のポイント「剣山荘」を目指す!

 剣山荘までの途中、3組のパーティーに会った
(うち一組は女性二人、一組は男性の単独)。
彼らは皆僕が出会う、この日初めての『剱岳アタック組』だった!!
しかし、皆“失敗組”だった。女性達は「一服剱」で引き返し、
他は「前剱」で引き返した。
前剱の先の下りが積雪と凍結で危険と判断したという。
彼らのコメントが僕を不安にさせなかったというのはウソだが、
むしろ逆に闘志をかき立てられたというほうが偽りの無い本音である。
「登れないはずは無い!」という信念と、
「せっかくここまできて…」という無念を味わいたくない一心だった。

 「剣山荘」には予定通り10時に着いた。ここは剱岳アタックの最後の前線基地であり、
また剣岳までのルート中“最後の水場”なのである。
つまり、登山者は皆、ここから往復5時間弱(*前述の「山と高原地図」参照)の行程を
水を所持して行かなければならず、途中に幕営地(*テントを張れる場所)もないことから、
何が何でもこの「剣山荘」までは戻ってこなければならないのだ。
この程度の困難さは国内のほかの山でもいくつも経験するだろう。
しかし、ここは一般ルート本邦最難関の「剱岳」!
この先は岩場・鎖場の連続で気が抜けない。
肉体的にも精神的にも疲労することは必至!ゆえに最難関なのだ。

『立山・剱岳登山』vol.2

2003年10月10日 | 山【mountain&climbing】
*写真は室堂から眺める立山

 ケーブルカーは一気に高度を稼げるので、美女平に到着すると途端に気温は下がる。
美女平から核心部の「室堂」までは専用道路を走る高原バスで行く。
立山から先はマイカーの乗り入れは規制されているのだ。
僕は韓国人の団体(10名くらい)と一緒のバスになった。
彼らはバス前部のテレビ画面で紹介される立山の自然、観光案内に一喜一憂。
かなり盛り上がっていた。
しかもこのバス、かなり親切で、途中の名所では一旦停止や徐行運転をして、
乗客がゆっくりそれらを見られるような配慮をしてくれた。
また彼らは大盛り上がり!
特に「称名の滝」(名瀑100選、落差350mは日本一)では大歓声だ。
これだけ盛り上がると運転手もうれしいというより、困惑の表情。
「弥陀ヶ原」辺りまで来ると森林限界が迫り、高い木々が無くなり、
一気に視界が開けた。
言葉では表現できないほどの“秋色”の風景が広がり
ここを車で走っていることが信じ難いほど。
茶色やモスグリーンの“絨毯”の中に点在する池塘が美しい“染み”を作っている
景色に見惚れているといつのまにか室堂に着いていた。

 室堂ターミナルはホテル立山、自然保護センター、レストラン、食道などがあり、
しかも今日は日曜日。標高2400mの巣鴨とげぬき地蔵前と化していた!
ジジ、ババ中心の人ごみはとっても居心地が悪い。
僕は屋上へ避難した。すると…さ、寒いッ!!気温は…んん?「5℃」だって?!
今朝は「-4℃」??!!ううぅぅ~…。
寒さを堪えて眼を転じると名峰「立山」が僕を見下ろしているではないかッ!!
目の前に3000mの山々が広がっている。しかも上部は雪化粧!
寒さか、武者震いか、俺は興奮に身体を震わせながら、
カメラを取り出し、夢中でシャッターを切っていた。
今回は3本フィルムを持ってきている。ええーい、撮りまくれ、撮りまくれ!!
ターミナルの建物から表に出ても、人ごみの多さは変わらず、再びウンザリさせられた。
ターミナル前は「玉殿湧水」(たまどの、名水100選)があり、
滾々と身を切るような冷たさの水が湧き出ていた。
SIGGの水筒に水を蓄え、いざ出発!!14:00過ぎである。
 今日は小一時間ほどの山行予定。
 
 室堂は観光客で溢れ返るほどなので道はよく整備されている。
おかげで、年寄りも標高2400mをテクテクと歩いている。
僕のスピードは10㎏以上のザックを背負っても彼らの倍は速いので、
案内板に表記されている標準タイムは当てにならない。
10分も歩かないうちに「みくりが池」に到着。
ここにある山小屋「みくりが池温泉」は日本最高所の温泉として有名。
その標高は2410m!
僕は八ヶ岳で、“露天風呂”としては日本最高所の「湯元本沢温泉」
(*みくりが池に次いで第二位。標高2150m)にも泊まったことがあるが、
この風呂は宿(山小屋)から10分以上歩き、河岸の斜面に張り付くように作られた、
大人4人も入ればいっぱいになるような風呂である。脱衣所などはなく、
登山道からちょいと覗けば見下ろせるところにあり、
ここに堂々と入れる女性はたいしたもんだ。
とにかく、まさに『秘湯中の秘湯』という感じだが、
みくりが池温泉は、山小屋といっても水道も完備され
(もちろん普通の温泉のようにシャンプー完備)、売店や、一般客用のレストラン、
水洗トイレがあり、誰でも快適に過ごせる宿である。そりゃそうだ。
だってここに泊まる客は『登山』を目的とした人はほとんどおらず、
室堂観光か湯治客である。
 みくりが池温泉を後にし、道は「地獄谷」へ下りて行く。鼻を突く硫黄の臭い!
まだ十数分しか歩いていないのに、室堂のうららかな風景は一変し、
辺りは硫黄臭と硫黄色!
そこかしこからシューシューと蒸気が噴き出している。
地獄谷を抜け、ちょっと登ったところ(まだ硫黄臭はしている)に
今日の宿「雷鳥沢ヒュッテ」がある。

 この周辺には「雷鳥沢ヒュッテ」をはじめ、地獄谷へ降りる手前にある、
先に紹介した「みくりが池温泉」、
雷鳥沢ヒュッテの向かいにある「ロッジ立山連峰」、
雷鳥沢の手前で、小高いところにある「雷鳥荘」と、
四つも山小屋が点在しており、
何処に泊まっても翌日の剱岳へのアプローチの時間は変わらない。
雷鳥沢ヒュッテに決めた理由は、若干だが、
①一番剱岳へ近い(*ロッジ立山連峰もほぼ同じ)。
②ロッジ立山連峰より400円安い8,000円(一泊二食)。
しかし、後日(10/7)「雷鳥荘」に泊まるのだが、ここが最高に良くて、
しかも雷鳥沢ヒュッテより200円安い7,800円だったので、正直な話、
「雷鳥沢ヒュッテ」ははずれだった…

 気のよさそうなおじさん(多分小屋のご主人)が応対してくれ、チェックイン。
三階建てで個室ばかり。

 ご存じない方のためにちょっと解説するが、
山小屋の個室というのはホテルの個室とはわけが違う。
基本は大部屋
5人くらいまで泊まれる部屋を俗に「個室」といい、
たいていの小屋には大部屋以外に数室(2~3部屋)個室が用意されており、
プラス3,000~5,000円くらいで泊まれる。大部屋のみの小屋もあるし、
また大部屋が無く、個室ばかり10部屋くらいの小屋もある。
後者の場合、例えば一部屋定員5名なら、宿泊者を一号室から順に入れていき、
6人目からは二号室、という具合のケースが多い。個室料は無し。
登山地図やガイドで紹介されている宿泊料金は基本的には「大部屋で一泊二食」の値段。

『立山・剱岳登山』vol.1

2003年10月10日 | 山【mountain&climbing】
10/5(日)
 “基本的には”晴れの天気が中途半端に僕の登山を歓迎してくれている。
今回は僕の登山史の中でも最長の「四日間」のロングトレイルになる予定。
仕事の都合上、毎日帰宅がだいたい0時頃になることを考えれば、
前夜2時過ぎに寝られたのは、準備が順調だったということである。
とはいえ8:40羽田発の飛行機に乗らなければならないので、
ギリギリの時刻を見積もって5:10。これが起床時刻だった。
睡眠時間は約3時間。登山前夜としてはよく寝たほうである。
だいたい、前回(今年7月の穂高登山。報告未だで許してぇ~)は
夜行バスで上高地入りし、一睡もしないまま初日から蝶ヶ岳の急登をクリアしたのだから、
それに比べれば、身体は『万全』といえよう。
 ここでちょっと『はなまるマーケット』的な便利なお話。(前回の日記と重複するが)
皆さん、飛行機を有効に利用しましょう!
今回の登山を計画した際、登山基地が室堂になるため、立山黒部アルペンルートを利用し、
行きと帰りの方法と方向を変えることを思いついた。
だってバリエーションがあったほうが楽しいでしょ。
で、行きを富山側から、帰りは大町(長野県)側へ下りることを考えた。
そこで、富山へのアクセスだが、
国内線空路に不案内な(かつ、電車には詳しい)僕はJRを利用し、新幹線で越後湯沢まで、
在来線を使って富山まで、そこからは富山地方鉄道を使ってアルペンルート内へ…と考えていた。
しかし、調べていくうち、アルペンルートの交通費がメッチャ高く、
またJRによるアクセスは時間がかかり、
初日は室堂にたどり着くまでにほぼ一日を要することが判明した。
「時間」と「お金」を減らす方法はないか?そこで飛行機ですよ、奥さん!!
羽田→富山は所要時間たったの一時間!!一方JRは東京→富山は三時間半。
飛行機の3倍だよ!
(*飛行機は搭乗手続きなどの時間がかかるため、実際はもうちょっと時間がかかるが)
しかも「早割り21」「チケットレス割引」
利用すれば、正規料金よりも40%ほど安い¥9,600!!
こりゃあ利用しない手はないぜぃ!

 余裕を持って到着。搭乗手続きは機械にマイレージクラブのカードを
差し込むだけでチケットが発券される。
これでOK。あとは手荷物検査っと。
「じゃあ、ここに荷物を入れてください。それからチケットを拝見します。」
「はーい。」
「(X線の画像を見ながら)こちらで荷物を出していただけますか。」
「はあ?(と言いながらテーブルの上でザックを開ける)」
「登山用のコンロのガスカートリッジをお持ちですね。
あれは機内へ持ち込めないんですよ。」
「えーーーッ??!!」
 そうなのだ。以前登山の雑誌で読んだことがあり(登山の失敗の典型例として挙げられていた)、
知っていたのだが、すっかり忘れていた。動揺を隠し、手続きをする。
「この書類に住所と電話番号を書いてください。いつ戻られますか?」
「8日です。」
「どの便で戻られますか?」
「えっ?飛行機では戻らないんですけど…。」
「あ、そうですか。じゃあ便名は不明ということで…。
でしたら8日までにこの書類を△△へ持ってきてください。
そうしましたらこの品(カートリッジ)と交換できますので、
こちらで預からせていただきます。」
 かくして、僕はガスカートリッジを没収され、
四日間(実質僕が山の中で昼食を作って食べるのは二日間)、
昼飯が食えなくなるかもしれない不安を抱えながら飛行機へ乗り込むのであった。

 富山行きは結構“迫害”されており、搭乗口から何分も歩かされた挙句、
さらにバスに乗って空港の端のほうに停められている飛行機だった。
つまり飛行機へはタラップを上って乗り込んだ。到着予定時刻は9:40。
出発は8:40。
定刻どおりに出発したが、滑走路が混んでいて、離陸は9時前くらいだったかな。久々の飛行機に大興奮(^0^)/!!
グングン上昇を続け、感じるGが心地よい。それにしても結構上がるなぁ。
富士山が見え始めてもまだ上昇を続けていた。
シートベルトのランプが消え、安定飛行に入ったときはもう秩父を越え、
富士山は真横から後方へ移動していた。
大好きな山々が眼下に見える!!山の形を眼で追いながら、
塩見岳、間ノ岳、北岳、仙丈ケ岳…と(つぶやきそうになるのを抑えて)楽しむ。
一寸下へ眼を転じると、八ヶ岳連峰を越えていた。
真下に赤岳頂上小屋が、赤い屋根とその形まではっきりと見えた。

 さーて、そろそろ肝心の北アルプスを観察しておこうと思ったら、
早速機内サービスのドリンクが運ばれてきた。
んーと、オレンジジュースにしようかな。トロピカーナだし♪。
ちびちび飲んで、今度こそ北アルプスを!と思ったらもう日本海へ抜けていた…。
んん?ここは海上だぞ!おーい、乗客みんなまとめて“あの国”へ移送されるのかよ?!
でもすぐにシートベルト着用ランプが灯り、下降→到着。定刻どおり。
乗って移動した時間は40分間もないかも。
しかも安定飛行(水平飛行)していた時間は20分間くらいじゃないかな。
機内前方の画面では、「真珠夫人」の“ダーティークイーン”登美子の演技が印象的な
森下涼子がワインを飲みながらソムリエと談笑していた。

 日本海側まで来たという実感はまるでない。地方の空港はこういうものかもしれないが、
ちょっとした市役所のロビーみたいだ。
荷物を受け取り、ゲートを出たら、もう10m前はバス停だった。
10:00ちょうどのバスで富山駅へ。20分で到着。400円なりぃ~。

 駅前で僕は「買い物」を試みた。“あれ”を買うんだよ、あれを!ガスカートリッジは
登山口の室堂で買おうと思っていた(登山者用の品は売っているとの予想)。が、
もし無ければこの登山は中止の可能性も出てくる事態を招く
(*実はたいていの山小屋は「弁当」のサービスを行なっており、
予約しておけば、1,000程度で翌朝弁当を用意してくれる。
だから持っていった食材は無駄になるが、この問題はクリアできる目処はたっていたのだ)し、
室堂では標高に比例して値段も相当高いだろう。
富山の駅前に登山用品店があれば、そこで購入すればいい。
早速駅前の観光案内所で尋ねてみた。するとラッキー!!駅から3~4分のところに
『チロル』という登山用品店があるという。
立山行きの電車は一本遅らせて、いざGO!いかにも山男風の兄ちゃんが
暇そうに佇んでいた。
「すみませんが、プリムスのガスカートリッジはありますか?」
「はいッ!こちらです!」
風貌は山男風だが、愛想と声はガソリンスタンドの店員風だ。また400円なりぃ~。
いやァ、助かった。ありがとう、『チロル』!!

 富山地方鉄道の電車で「立山」へ向かう。
「室堂」まで通しの切符を¥3,530で購入。電車は徐々に郊外へ向かう。
のどかな田園風景が車窓に広がり、地元のおばちゃん達も乗り込んできた。
しかし、多くの乗客は立山へ向かう観光客。
僕の隣は70過ぎのおばあちゃん。彼女は大阪の富山県人会のメンバーで、
20名くらいの団体で立山へ旅行だそうだ。
昔の富山の話をしてくれたが、「東京は冷たい感じがして好かんねぇ」を何度も言った。
 おっ、いつの間にか辺りは樹林帯。うっそうとした木々の間を走っている。
終点の立山が近いことを予感した。

 約一時間で終点「立山駅」に到着。ここで昼食を取った。
予定通り、駅構内のレストラン「アルペン」で、とんかつ定食を!
舌の肥えた僕には満足できる味ではないことも予想通り。
東京で美味いものばかり食っていると、巷のレストランで満足できなくていかんねェ。
それより何より“サービス”が素人っぽすぎて情けない
いかにも高校生のバイトがやってます、って所作がいただけないし、微笑ましくもある。
まずだらしない服装と髪型を直さなくては!
と、食事そっちのけで彼らの動きを観察してしまった。

 続いてケーブルカーで「美女平」まで。所要時間は7分。あっという間。
ケーブルカーゆえに大人数は一度に乗車できないので、
整列して乗車待ちをしているとき、気づいたが、
乗客のほとんどは室堂辺りを散策するハイキング組。スーツや革靴の人もいる。
僕のような“アルペン的”な格好をしている、
つまり本格的な登山が目的らしき人は全く見られない
おかげで、僕のデカいザックは他の乗客の邪魔だということで
ケーブルカーの後部に連結されている荷物用の貨車に載せられた。
あーらくちん♪