*強風吹きすさぶ安達太良山山頂
4月6日、午前6時のくろがね小屋前の気温は-9℃。
天気は「雪」。風は「猛烈」。
降雪量は少ないが、安達太良特有の強風が目を覚ましたようだ。
この小屋には掛け布団が無く、その代わりに一組の寝具に毛布が2枚付く。
“付く”というか、敷布団、枕、毛布2枚が畳んで整然と置かれていた。
前夜、寝床を作ろうと思ったが、これらのセットをどう使ってよいか
合点がいかず、そっとテレカーマー氏の寝床を盗み見して
毛布2枚を掛け布団として使うことを理解した。
寒いと思われる方もおられるだろうが、
僕には強い味方モンベル社のU.L.ダウンインナージャケットがあった。
加えて強酸性の温泉、
そして出発前日からの極度の寝不足が
快適な睡眠を助けてくれた。
僕は単独なので天気が悪ければ前日辿った道を引き返すつもりだったが、
朝食後(*僕は自炊)テレマーカー氏、佐藤さんと話し、
山頂を目指すことにした。
というのもテレマーカー氏は毎年安達太良に来ており、
この山域をよく理解している。そして
「“肩”まで一緒に行きましょう」
と言ってくれたからだ。
のんびりコーヒーを飲みながら談笑後の7時半に出発した。
ここからはGRIVEL社の12本爪アイゼン、
エアーテック・ニューマチックの世話になる。
テレマーカー氏はスキーにシールを取り付けている。
もうここからいきなりスキーで登るらしい。
佐藤さんは
「フツーの人ならこの天気なら下山を勧めるけどね」
と言いながら僕らを見送った…。
小屋前は吹き溜まりになっており、太ももくらいまでの深雪のラッセルに苦しんだ。
そこを過ぎると、今度は歩きやすいが、猛烈な風に襲われた。
3分に一度はピッケルを使った「耐風姿勢」を取らなければならないほどだ。
テレマーカー氏はスキー板のせいか、ときおりフワーッと風にあおられ
1~2mほど横に飛ばされながらも平然と歩を進める。
当然視界もよくない。20mほどか。
30分ほどで「峰の辻」にやってきた。
天気がよければ安達太良山頂を眼前に臨めるのだろうが
今は何も…。
テレマーカー氏は時々
あっちは山頂でこっちは篭山で…と何も見えないあちこちを指差して
教えてくれた。
さらに30分で山頂直下の肩に着いた。
「薬師岳に向かってはなだらかな稜線歩きです。
ゴンドラ手前で左の五葉松平へ向かって下りてください。
スキー場の上部に出ますので」
「ありがとうございました」
強風のなか握手を交わして別れる。
彼は何も見えない白闇へ向かって颯爽と滑っていった。
カ、カッコいい~!!
あとは“目の前にあるはず”の山頂を踏むのだ!
風はより一層強くなった。耐風姿勢を取りながらの前進。
あれ?!着いちゃった。
肩から1分ほどで山頂だった。
とてもじゃないが長居はできないし、早々に退散したいくらいの天気だが
“あれ”をやらねばならない。
ザックとピッケルを岩陰に置き、
風に飛ばされないようにグローブをくわえて外し、アイゼンを外す。
凍ったところを避け、ちょっと踏んで整地する。
少し腰をかがめて精神を集中させる。
強風とそれを受けるマウンテンジャケットのバタバタという音だけが聞こえた。
フンッ!*パッション屋良風の気合
『日本百名山山頂宙返り』見事に遂行!
気象条件的にはこれまで一番厳しい宙返りだった。
当然だが写真は無い。
プロジェクトを遂行したら途端に指先の感覚がちょっと鈍っていることに気づいた。
ヤ、ヤバイ!これって凍傷になる一歩手前じゃ…。
まあそんな簡単に凍傷になることはないだろうが、
プロジェクト遂行のための準備をしているうちに結構時間が経ってしまったようだ。
今朝小屋を経つ前に作った紅茶をテルモスから注ぎ、
手と身体を暖め、身支度を整え、長い長い下りが始まった。
4月6日、午前6時のくろがね小屋前の気温は-9℃。
天気は「雪」。風は「猛烈」。
降雪量は少ないが、安達太良特有の強風が目を覚ましたようだ。
この小屋には掛け布団が無く、その代わりに一組の寝具に毛布が2枚付く。
“付く”というか、敷布団、枕、毛布2枚が畳んで整然と置かれていた。
前夜、寝床を作ろうと思ったが、これらのセットをどう使ってよいか
合点がいかず、そっとテレカーマー氏の寝床を盗み見して
毛布2枚を掛け布団として使うことを理解した。
寒いと思われる方もおられるだろうが、
僕には強い味方モンベル社のU.L.ダウンインナージャケットがあった。
加えて強酸性の温泉、
そして出発前日からの極度の寝不足が
快適な睡眠を助けてくれた。
僕は単独なので天気が悪ければ前日辿った道を引き返すつもりだったが、
朝食後(*僕は自炊)テレマーカー氏、佐藤さんと話し、
山頂を目指すことにした。
というのもテレマーカー氏は毎年安達太良に来ており、
この山域をよく理解している。そして
「“肩”まで一緒に行きましょう」
と言ってくれたからだ。
のんびりコーヒーを飲みながら談笑後の7時半に出発した。
ここからはGRIVEL社の12本爪アイゼン、
エアーテック・ニューマチックの世話になる。
テレマーカー氏はスキーにシールを取り付けている。
もうここからいきなりスキーで登るらしい。
佐藤さんは
「フツーの人ならこの天気なら下山を勧めるけどね」
と言いながら僕らを見送った…。
小屋前は吹き溜まりになっており、太ももくらいまでの深雪のラッセルに苦しんだ。
そこを過ぎると、今度は歩きやすいが、猛烈な風に襲われた。
3分に一度はピッケルを使った「耐風姿勢」を取らなければならないほどだ。
テレマーカー氏はスキー板のせいか、ときおりフワーッと風にあおられ
1~2mほど横に飛ばされながらも平然と歩を進める。
当然視界もよくない。20mほどか。
30分ほどで「峰の辻」にやってきた。
天気がよければ安達太良山頂を眼前に臨めるのだろうが
今は何も…。
テレマーカー氏は時々
あっちは山頂でこっちは篭山で…と何も見えないあちこちを指差して
教えてくれた。
さらに30分で山頂直下の肩に着いた。
「薬師岳に向かってはなだらかな稜線歩きです。
ゴンドラ手前で左の五葉松平へ向かって下りてください。
スキー場の上部に出ますので」
「ありがとうございました」
強風のなか握手を交わして別れる。
彼は何も見えない白闇へ向かって颯爽と滑っていった。
カ、カッコいい~!!
あとは“目の前にあるはず”の山頂を踏むのだ!
風はより一層強くなった。耐風姿勢を取りながらの前進。
あれ?!着いちゃった。
肩から1分ほどで山頂だった。
とてもじゃないが長居はできないし、早々に退散したいくらいの天気だが
“あれ”をやらねばならない。
ザックとピッケルを岩陰に置き、
風に飛ばされないようにグローブをくわえて外し、アイゼンを外す。
凍ったところを避け、ちょっと踏んで整地する。
少し腰をかがめて精神を集中させる。
強風とそれを受けるマウンテンジャケットのバタバタという音だけが聞こえた。
フンッ!*パッション屋良風の気合
『日本百名山山頂宙返り』見事に遂行!
気象条件的にはこれまで一番厳しい宙返りだった。
当然だが写真は無い。
プロジェクトを遂行したら途端に指先の感覚がちょっと鈍っていることに気づいた。
ヤ、ヤバイ!これって凍傷になる一歩手前じゃ…。
まあそんな簡単に凍傷になることはないだろうが、
プロジェクト遂行のための準備をしているうちに結構時間が経ってしまったようだ。
今朝小屋を経つ前に作った紅茶をテルモスから注ぎ、
手と身体を暖め、身支度を整え、長い長い下りが始まった。