~ 三島屋変調百物語九之続 ~
著者 宮部 みゆき
行く当てのない女たちのため土から生まれた不動明王(『青瓜不動』)
悲劇に見舞われた少女の執念が生んだ、家族を守る人形(『だんだん人形』)
描きたいものを自在に描かせてくれる不思議な筆と その代償(『自在の筆』)
人ならざる者たちの里で育った男が語る故郷の物語(『針雨の里』)
です。
>江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、「黒白(こくびゃく)の間」という客間に人を招いて、風変わりな百物語を続けている。
一度に招く語り手は一人だけ。向き合う聞き手も一人で、語られる話は一つ。夜の闇にこだわらず、蠟燭を灯したり消したりの趣向もない。
「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」
語り手は語って思い出の荷を下ろし、聞き手は、受け取った荷を黒白の間の限りに収めて二度と口にしない。
>人は誰でも、一生に一つの物語を綴りながら生きている。時にはそれを語りたくなる。
幸福の儚(はかな)さを、情愛の美しさを、失われてゆく魂の尊さを、全てを焼き尽くしても
なお燻(くすぶ)って残る憎悪のしぶとさを、許し合う心の豊かさを。
それらを聞き取るためにこそ、三島屋の変わり百物語は続いてゆく。
宮部みゆきさんの本には根底に心の優しさがあり、大好きです。