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 本は私の人生の友・・・

『 薄 暮 』

2009年08月10日 | 
著者 篠田 節子

封印されていた1枚の絵が脚光を浴びた時、「閉じられた天才画家」は妻の元を離れ、郷土の人々の欲望と疑心がうごめき始める・・・。
日本経済新聞夕刊連載を単行本化。

>何も県展だ、日展だと出す必要などない、画家が自分の画業を誇るようになってはだめなのだ・・・。

>ゴッホに憧れ、今更だれも注目しない厚塗り油絵をせっせと帝展に出品し、落選し続けていた棟方志功を見出したのは、日本の画壇ではない。
彼はある時いきなり国際版画ビエンナーレ展で入選する。
国内で無視され続けた偉大な才能が見逃され、海外で見出されるというパターンはもうたくさんだ。

>どっちにころんだって、絵なんて、所詮、自分が良いと思っているものが一番、良いんでね。
自分の懐から一千万出して買ったときに、その人にとって一千万の価値のある絵になるし、一億払えば一億の絵になる。
ただでもらって気にいらなけりゃ、ただの場所ふさぎだ。

私の好きな画家である田中一村と高島野十郎、先月私のブログで紹介させていただいた犬塚勉、そして、この本の中に登場する「閉じられた天才画家」、皆さん、没後、注目された画家です。
テレビの影響力は強く、「日曜美術館」などの美術番組で取り上げれば、視聴者は美術に関心がある人々なんですから、注目する人々は圧倒的に増えるでしょう。
美術に関心があると言っても専門家ではない人々にとって、専門家の称賛はその絵に対する見どころを教えてくれます。

この本の中の「閉じられた天才画家」の妻の葛藤は、読んでいて息苦しくなるものでした。
プライドのある妻だったからこそ、苦しい人生を歩むことになったように思いました。


他に最近読んで面白かった本は、『ともしびマーケット』(朝倉かすみ)等々ですよ。