「渋谷AX」に続いて、行ってまいりました。エレカシのツアー『平成理想主義の旅』。渋谷(初日)から、名古屋 → 福岡 → 岡山ときて、本ツアー5回目となる公演。
それにしても、「平成理想主義の旅 @SHIBUYA-AX」で書いたように、なぜ私は、ここ5年くらいのエレカシの活動ぶりを振り返りたくなったのだろう。そんなことを思いながら、AXでのライヴを思い出してみて、ちょっと納得した。セットリストが、最新作『風』中心ではあるけれど、2002年の『DEAD OR ALIVE』からの代表曲的セットリスト、言わば、2002年後半からのエレカシの総括的なセットリストだったからだ。
エレカシは本気だった。ファンが心配するその何倍もの切実さと厳しさでもって、エレカシはエレカシに危機感を持っていたのだと思う。ファンは勝手に心配していれば良いだけの話だけど、宮本浩次・石森敏行・高緑成治・冨永義之の4人にとっては、“エレファントカシマシ”こそが「俺の道」なんですから。バンド・サウンドに回帰した『DEAD OR ALIVE』発表後、エレカシは対バン形式のツアー『BATTLE ON FRIDAY/BATTLE IN KOBE』を行い、ブラフマン、Syrup16g、モーサム・トーンベンダー、ハスキング・ビー、ザ・バックホーン、怒髪天、DMBQ、キング・ブラザーズといった勢いのある若手バンド(どれも濃い!)と対バンしていった。こんな企画を思いつく発想にもやろうとする勇気にも頭が下がるが、このツアーを終えての宮本の言葉にドキッとさせられた。「完敗」――。そう思えること、そうハッキリ言えることに、感服した。
その“敗北”が全ての始まりだったのかも知れない。一万回目の旅のはじまりだ。1曲目は「一万回目の旅のはじまり」だし(それはこじつけかも知れないが)、そこから始まった、バンドを鍛え上げる旅の成果を確認し総括するのが今回のツアー『平成理想主義の旅』の目的だったのかも知れない。だから、そこにはここ2年間のエレカシの軌跡がギュッと詰まっていて、それで私も、振り返りたくなったのだろう。
それと、この日記を読んでくれてる人の中には、特別エレカシのファンではないって人の方が多いから書いたってのもある(でも長くてゴメンなさい)。だから、ここを読んでくれてるエレカシ・ファンの人からすれば、「そんなこともう知ってるんじゃー! そんなことよりライヴのことを書けライヴのことを! どあほー!」って思っておられるかも知れませんが(笑)、お許し下さい。だって、自分だけにしか分からないことを自分だけにしか分からないように書いたって意味がないって思ってしまうからなんだもん。全ての説明だ!! それが DJ in my life。 しっかし、それも良し悪しなんだよなぁ。っと、いけない、これは独り言(笑)。
話を元に戻すと、しかしその2年の間に、ミニ・アルバム1枚、フル・アルバム3枚ですか…。さらぬだに(そうでなくてさえ)濃密な期間だったため、いま吃驚しちゃった。これ全部、たった2年間の出来事ですかい! 私が受け止めていた何倍もの重みがあったんだね、エレカシが感じたリアルな「完敗」には。<俺の両腕いまだ勝利無く されどこれという敗北も無く>と歌っていたのに…。敗北と死に至る道が生活ならば、エレカシはしっかりと前に進んでいるってことになるんだろうな…。
更に、今回のライヴは言葉を必要としないっていうか、ライヴの様子を事細かに語るよりも、ここ最近エレカシが辿ってきた軌跡を語る方が、もしかしたら伝えられることが多いんじゃないか、それがそのまま今回のツアーが物語っていたことに繋がるのではないかと思ったからだ。“敗北”を知って“バンド”を鍛え上げたエレカシ――それがよく出ていたし、今回のツアーはそれが全てと言っても良いのかも知れない。まだ終わってないけど。
さて、ここからはライヴの話。
AXにはAXならではの、あの会場の広さからくるスケール感と音響の迫力があったが、リキッドは会場が狭いため、より一体感がありパワーが凝縮されていた。回を重ねてきたからか、ミヤジもノッていたと思う。近いためAXのときよりよく見えたからってのもあると思うが、声もよく聴こえてきたし、良い意味でAXのときより幾分かリラックスしているように見えた。しかしそれとは対照的にバンドの演奏はより引き締まっていた。迫力が凄い。一体全体、この迫力はどこからくるんだろう。演奏力や雰囲気が凄いバンドなんて他にもいる。しかしエレカシの持つこの“気”は何なのだろう。年季なのだろうか。でも、同じ年くらいのユダとか、解散してしまったけどミッシェルとかには、この感じはないんだよなぁ。ユダとかミッシェルとかはさ、どーしたってカッコ良いじゃん。彼らのことをよく知らなくても、なんかカッコ良いって気がするじゃん。変な話、自分はカッコ良いって思わなくても、ああいうのをカッコ良いって言うんだろうなって気がするじゃん。素でカッコ良いっていうか、有無も言わせぬカッコ良さ。それはそれで何でなんだろうって思うんだけど、エレカシはどーしてそうなれないんだろう。ならなくて良いし、それがエレカシなのだからなって欲しくないけど、なんちゅーか、エレカシは、全然ロックじゃないのにロックなんだよ。そこにどうしようもないスリルを感じる。ワクワクするしゾクゾクする。私はこの迫力が好きなんだな。
冒頭、「パワー・イン・ザ・ワールド」 → 「生命賛歌」と続けてやっちゃうのって凄いと思う。どちらも締めで歌うような(あるいは1曲目とか)曲だもん。いきなりクライマックスが2回も!みたいな。次の「人間って何だ」から『風』の曲へ。トミの四つ打ちバスドラからの入りがカッコ良い! 『風』はライヴで聴いてこそ映えるというか、ライヴの方が断然カッコ良い。CDだけだとそんなに好きにはならなかったアルバムかも知れない。バンドを鍛え上げることを考えれば、作品よりもライヴにその真価が表れるのは必然的なことかも知れないし、ライヴが良いのならその成果の何よりの証と言えるのだが、CDだってライヴだってエレカシはエレカシだ。バンドは、ライヴとCDの追いかけっこを繰り返して成長するらしいから、こんなに頼もしいバンドとなったエレカシをCDにも刻まなければっ! 一万回目の旅は始まったばかりなのだ。
「風に吹かれて」をハンドマイクで。この曲のハンドマイクを初めて観た(と思う…「JAPAN CIRCUIT -vol.20-」のときはどうだったっけ?)。そして「友達がいるのさ」。これ、イントロある方が好きかもなぁ。クリスマスに合うって! 東京中が電気で彩られるクリスマスにね(笑)。「平成理想主義」を聴きながら、これ、ミヤジの歌がなくても(ない方が?笑)十分カッコ良いって思ってしまった。これは凄いよ。ストーンズでミックの歌がなくてもとか、クイーンでフレディの歌がなくてもとか、オアシスでリアムの歌がなくてもとか、そういうことなんだから(ちょっと違うか)。エレカシでそんなこと思える日がくるなんてね。後半ゆっくりになってバラード調になるところで泣きそうになってしまった。高い山を登り切って見えた朝焼けみたいな。ふと、この曲はエレカシ版「パラノイド・アンドロイド」(レディオヘッド)なんだ!とか思ってしまった。ジワジワと盛り上がり、ギターじゃかじゃーん!、そして、知らぬ間に小さな小さな奇跡が起こったかのように思いがけず静けさが訪れるところ! 一聴すると全然違う曲なのだが、「パラノイド・アンドロイド」は『OKコンピュータ』に入ってるんで良かったらドチラも聴いてみて下さい。
そこからはラストに向かって畳み掛ける。「達者であれよ」は、テンポが遅くなったり速くなったりして、エレカシ、いつの間にこんな演奏できるようになっちゃったのぉ~!? 嬉しくなってニヤけちゃったよ。続いてAXではやらなかった「今だ!テイク・ア・チャンス」。私は「彼岸と此岸の狭間で」で書いたように「勝利を目指すもの」が聴きたかったのだけど、やっぱりライヴ映えするのはこの曲だーね。これこそ、CDよりライヴの方が良い! <サマータイムブルー>を<ウィンターブルー>に変えて歌ってました。<タイム>も入れてたかな? <今だ!テイク・ア・チャンス>と声を張り上げてコーラスしていた石君が印象的でした。
で、「化ケモノ青年」「俺の道」で本編終了。「俺の道」みたいな曲って珍しいと思う。サビらしきサビもないし。というかサビを放棄して、<でゅでゅでゅ でゅっでゅっでゅっ>って爆発してる感じ。ギターもなんか変わってる。コードを弾くんでもないし、リズムを刻むだけってんでもないし。かと思えば、ベースが結構歌ってたり。順番もなんも放棄してる感じ。「JAPAN CIRCUIT -vol.20-」で「何かが壊れていく音と何かが生まれる音を同時に聴ける」って書いたけれど、まさしくエレカシの「破壊と創造」が味わえるのはこういう曲なんじゃないかと思ってしまう。ロックじゃないエレカシがロックになる瞬間。やっぱり私はこの迫力が好きなんだな。
そういや、今日はほとんどMCがなかった。そんなことも忘れていた。もうその「音」だけで全てを物語っていたのだろう。
そしてアンコール。今にもリクエストしそうな客の勢い(エレカシはその場でアンコールの曲を決めることも多い)を前に、ミヤジ「やる曲決まってますから」と言っていたそうだ(聞き取れなかった)。よほど次やる曲に「どうだ!」という思いがあったに違いない。それもそのはず、アンコール1曲目は「凡人 -散歩き(そぞろあるき)-」! 4枚目『生活』収録の曲。も~~~、イントロのギターで頭を殴られ、出だしの<うらやま~しきは>、正確には<うらや>の時点で昇天ですよ昇天。すごいー。バンドとしてのカッコ良さに酔わされていた私ですが、思い出させられましたよ。宮本さんの歌の凄さを。<我が肉食えやと カラスどもに>って歌詞も凄いけど、それを放送コードぎりぎり(?)のこれは良いのか?ってくらいの裏声で…。もう宮本さん素敵すぎるー。おかしすぎるー。キレすぎー。奇人怪人変人……でもそれは凡人の五万倍ぐらい正常ってことなんだ! 正常すぎることが異常というか、正常なる異常。ちょうど読んだばかりの『彼岸先生』のこんな一節を思い出す――「小説家という人種はおかしなことをほんの少ししか考えられない普通人より何倍も普通でなくてはならない。ぼくや砂糖子がせいぜい九十パーセント普通なら、小説家は五百パーセントくらい正気なんだ」――そんなんで<俺は凡人よ~>って歌われちゃうもんだから、こんな嫌味な歌ってないわよ。最高。また、この曲をビシッと演奏できちゃう今のエレカシに感激。いやぁ、ヴォーカリストに感動し、バンドに感激し、ロックバンド・ファン冥利に尽きるわい!
最後は「ファイティングマン」。やる前に、汗だくになったミヤジが「暑くないですか?」と客席に問いかける。「暑ーい!」と答える客。そのあと、ぽつりと一人呟くように「人が一杯いるから」と言っていたのがなんとも可笑しかった。<黒いバラとりはらい 白い風流しこむ>――やっぱり私はこのバンドが好きだぁ。
<セットリスト>
1. 一万回目の旅のはじまり
2. パワー・イン・ザ・ワールド
3. 生命賛歌
4. 人間って何だ
5. 定め
6. DJ in my life
7. 風に吹かれて
8. 友達がいるのさ
9. 平成理想主義
10. 達者であれよ
11. 今だ!テイク・ア・チャンス
12. 化ケモノ青年
13. 俺の道
――アンコール――
14. 凡人 -散歩き(そぞろあるき)-
15. ファイティングマン
それにしても、「平成理想主義の旅 @SHIBUYA-AX」で書いたように、なぜ私は、ここ5年くらいのエレカシの活動ぶりを振り返りたくなったのだろう。そんなことを思いながら、AXでのライヴを思い出してみて、ちょっと納得した。セットリストが、最新作『風』中心ではあるけれど、2002年の『DEAD OR ALIVE』からの代表曲的セットリスト、言わば、2002年後半からのエレカシの総括的なセットリストだったからだ。
エレカシは本気だった。ファンが心配するその何倍もの切実さと厳しさでもって、エレカシはエレカシに危機感を持っていたのだと思う。ファンは勝手に心配していれば良いだけの話だけど、宮本浩次・石森敏行・高緑成治・冨永義之の4人にとっては、“エレファントカシマシ”こそが「俺の道」なんですから。バンド・サウンドに回帰した『DEAD OR ALIVE』発表後、エレカシは対バン形式のツアー『BATTLE ON FRIDAY/BATTLE IN KOBE』を行い、ブラフマン、Syrup16g、モーサム・トーンベンダー、ハスキング・ビー、ザ・バックホーン、怒髪天、DMBQ、キング・ブラザーズといった勢いのある若手バンド(どれも濃い!)と対バンしていった。こんな企画を思いつく発想にもやろうとする勇気にも頭が下がるが、このツアーを終えての宮本の言葉にドキッとさせられた。「完敗」――。そう思えること、そうハッキリ言えることに、感服した。
その“敗北”が全ての始まりだったのかも知れない。一万回目の旅のはじまりだ。1曲目は「一万回目の旅のはじまり」だし(それはこじつけかも知れないが)、そこから始まった、バンドを鍛え上げる旅の成果を確認し総括するのが今回のツアー『平成理想主義の旅』の目的だったのかも知れない。だから、そこにはここ2年間のエレカシの軌跡がギュッと詰まっていて、それで私も、振り返りたくなったのだろう。
それと、この日記を読んでくれてる人の中には、特別エレカシのファンではないって人の方が多いから書いたってのもある(でも長くてゴメンなさい)。だから、ここを読んでくれてるエレカシ・ファンの人からすれば、「そんなこともう知ってるんじゃー! そんなことよりライヴのことを書けライヴのことを! どあほー!」って思っておられるかも知れませんが(笑)、お許し下さい。だって、自分だけにしか分からないことを自分だけにしか分からないように書いたって意味がないって思ってしまうからなんだもん。全ての説明だ!! それが DJ in my life。 しっかし、それも良し悪しなんだよなぁ。っと、いけない、これは独り言(笑)。
話を元に戻すと、しかしその2年の間に、ミニ・アルバム1枚、フル・アルバム3枚ですか…。さらぬだに(そうでなくてさえ)濃密な期間だったため、いま吃驚しちゃった。これ全部、たった2年間の出来事ですかい! 私が受け止めていた何倍もの重みがあったんだね、エレカシが感じたリアルな「完敗」には。<俺の両腕いまだ勝利無く されどこれという敗北も無く>と歌っていたのに…。敗北と死に至る道が生活ならば、エレカシはしっかりと前に進んでいるってことになるんだろうな…。
更に、今回のライヴは言葉を必要としないっていうか、ライヴの様子を事細かに語るよりも、ここ最近エレカシが辿ってきた軌跡を語る方が、もしかしたら伝えられることが多いんじゃないか、それがそのまま今回のツアーが物語っていたことに繋がるのではないかと思ったからだ。“敗北”を知って“バンド”を鍛え上げたエレカシ――それがよく出ていたし、今回のツアーはそれが全てと言っても良いのかも知れない。まだ終わってないけど。
さて、ここからはライヴの話。
AXにはAXならではの、あの会場の広さからくるスケール感と音響の迫力があったが、リキッドは会場が狭いため、より一体感がありパワーが凝縮されていた。回を重ねてきたからか、ミヤジもノッていたと思う。近いためAXのときよりよく見えたからってのもあると思うが、声もよく聴こえてきたし、良い意味でAXのときより幾分かリラックスしているように見えた。しかしそれとは対照的にバンドの演奏はより引き締まっていた。迫力が凄い。一体全体、この迫力はどこからくるんだろう。演奏力や雰囲気が凄いバンドなんて他にもいる。しかしエレカシの持つこの“気”は何なのだろう。年季なのだろうか。でも、同じ年くらいのユダとか、解散してしまったけどミッシェルとかには、この感じはないんだよなぁ。ユダとかミッシェルとかはさ、どーしたってカッコ良いじゃん。彼らのことをよく知らなくても、なんかカッコ良いって気がするじゃん。変な話、自分はカッコ良いって思わなくても、ああいうのをカッコ良いって言うんだろうなって気がするじゃん。素でカッコ良いっていうか、有無も言わせぬカッコ良さ。それはそれで何でなんだろうって思うんだけど、エレカシはどーしてそうなれないんだろう。ならなくて良いし、それがエレカシなのだからなって欲しくないけど、なんちゅーか、エレカシは、全然ロックじゃないのにロックなんだよ。そこにどうしようもないスリルを感じる。ワクワクするしゾクゾクする。私はこの迫力が好きなんだな。
冒頭、「パワー・イン・ザ・ワールド」 → 「生命賛歌」と続けてやっちゃうのって凄いと思う。どちらも締めで歌うような(あるいは1曲目とか)曲だもん。いきなりクライマックスが2回も!みたいな。次の「人間って何だ」から『風』の曲へ。トミの四つ打ちバスドラからの入りがカッコ良い! 『風』はライヴで聴いてこそ映えるというか、ライヴの方が断然カッコ良い。CDだけだとそんなに好きにはならなかったアルバムかも知れない。バンドを鍛え上げることを考えれば、作品よりもライヴにその真価が表れるのは必然的なことかも知れないし、ライヴが良いのならその成果の何よりの証と言えるのだが、CDだってライヴだってエレカシはエレカシだ。バンドは、ライヴとCDの追いかけっこを繰り返して成長するらしいから、こんなに頼もしいバンドとなったエレカシをCDにも刻まなければっ! 一万回目の旅は始まったばかりなのだ。
「風に吹かれて」をハンドマイクで。この曲のハンドマイクを初めて観た(と思う…「JAPAN CIRCUIT -vol.20-」のときはどうだったっけ?)。そして「友達がいるのさ」。これ、イントロある方が好きかもなぁ。クリスマスに合うって! 東京中が電気で彩られるクリスマスにね(笑)。「平成理想主義」を聴きながら、これ、ミヤジの歌がなくても(ない方が?笑)十分カッコ良いって思ってしまった。これは凄いよ。ストーンズでミックの歌がなくてもとか、クイーンでフレディの歌がなくてもとか、オアシスでリアムの歌がなくてもとか、そういうことなんだから(ちょっと違うか)。エレカシでそんなこと思える日がくるなんてね。後半ゆっくりになってバラード調になるところで泣きそうになってしまった。高い山を登り切って見えた朝焼けみたいな。ふと、この曲はエレカシ版「パラノイド・アンドロイド」(レディオヘッド)なんだ!とか思ってしまった。ジワジワと盛り上がり、ギターじゃかじゃーん!、そして、知らぬ間に小さな小さな奇跡が起こったかのように思いがけず静けさが訪れるところ! 一聴すると全然違う曲なのだが、「パラノイド・アンドロイド」は『OKコンピュータ』に入ってるんで良かったらドチラも聴いてみて下さい。
そこからはラストに向かって畳み掛ける。「達者であれよ」は、テンポが遅くなったり速くなったりして、エレカシ、いつの間にこんな演奏できるようになっちゃったのぉ~!? 嬉しくなってニヤけちゃったよ。続いてAXではやらなかった「今だ!テイク・ア・チャンス」。私は「彼岸と此岸の狭間で」で書いたように「勝利を目指すもの」が聴きたかったのだけど、やっぱりライヴ映えするのはこの曲だーね。これこそ、CDよりライヴの方が良い! <サマータイムブルー>を<ウィンターブルー>に変えて歌ってました。<タイム>も入れてたかな? <今だ!テイク・ア・チャンス>と声を張り上げてコーラスしていた石君が印象的でした。
で、「化ケモノ青年」「俺の道」で本編終了。「俺の道」みたいな曲って珍しいと思う。サビらしきサビもないし。というかサビを放棄して、<でゅでゅでゅ でゅっでゅっでゅっ>って爆発してる感じ。ギターもなんか変わってる。コードを弾くんでもないし、リズムを刻むだけってんでもないし。かと思えば、ベースが結構歌ってたり。順番もなんも放棄してる感じ。「JAPAN CIRCUIT -vol.20-」で「何かが壊れていく音と何かが生まれる音を同時に聴ける」って書いたけれど、まさしくエレカシの「破壊と創造」が味わえるのはこういう曲なんじゃないかと思ってしまう。ロックじゃないエレカシがロックになる瞬間。やっぱり私はこの迫力が好きなんだな。
そういや、今日はほとんどMCがなかった。そんなことも忘れていた。もうその「音」だけで全てを物語っていたのだろう。
そしてアンコール。今にもリクエストしそうな客の勢い(エレカシはその場でアンコールの曲を決めることも多い)を前に、ミヤジ「やる曲決まってますから」と言っていたそうだ(聞き取れなかった)。よほど次やる曲に「どうだ!」という思いがあったに違いない。それもそのはず、アンコール1曲目は「凡人 -散歩き(そぞろあるき)-」! 4枚目『生活』収録の曲。も~~~、イントロのギターで頭を殴られ、出だしの<うらやま~しきは>、正確には<うらや>の時点で昇天ですよ昇天。すごいー。バンドとしてのカッコ良さに酔わされていた私ですが、思い出させられましたよ。宮本さんの歌の凄さを。<我が肉食えやと カラスどもに>って歌詞も凄いけど、それを放送コードぎりぎり(?)のこれは良いのか?ってくらいの裏声で…。もう宮本さん素敵すぎるー。おかしすぎるー。キレすぎー。奇人怪人変人……でもそれは凡人の五万倍ぐらい正常ってことなんだ! 正常すぎることが異常というか、正常なる異常。ちょうど読んだばかりの『彼岸先生』のこんな一節を思い出す――「小説家という人種はおかしなことをほんの少ししか考えられない普通人より何倍も普通でなくてはならない。ぼくや砂糖子がせいぜい九十パーセント普通なら、小説家は五百パーセントくらい正気なんだ」――そんなんで<俺は凡人よ~>って歌われちゃうもんだから、こんな嫌味な歌ってないわよ。最高。また、この曲をビシッと演奏できちゃう今のエレカシに感激。いやぁ、ヴォーカリストに感動し、バンドに感激し、ロックバンド・ファン冥利に尽きるわい!
最後は「ファイティングマン」。やる前に、汗だくになったミヤジが「暑くないですか?」と客席に問いかける。「暑ーい!」と答える客。そのあと、ぽつりと一人呟くように「人が一杯いるから」と言っていたのがなんとも可笑しかった。<黒いバラとりはらい 白い風流しこむ>――やっぱり私はこのバンドが好きだぁ。
<セットリスト>
1. 一万回目の旅のはじまり
2. パワー・イン・ザ・ワールド
3. 生命賛歌
4. 人間って何だ
5. 定め
6. DJ in my life
7. 風に吹かれて
8. 友達がいるのさ
9. 平成理想主義
10. 達者であれよ
11. 今だ!テイク・ア・チャンス
12. 化ケモノ青年
13. 俺の道
――アンコール――
14. 凡人 -散歩き(そぞろあるき)-
15. ファイティングマン