絵を売り始めた頃、オリジナル作品を手放すことに抵抗があった。
100時間以上もかけて作る過程で、作品に対して愛着がわいてしまう。
しかし、少しずつ、その気持ちを乗り越えて手放してきた。
絵の具を使った絵ならば、同じような作品を再び作ることができるかもしれないが、染めた紙で作るコラージュは、同じ紙は2枚とてないので、似たようなものはできても、同じものは2度と作れない。
だから、これを手放したらもう二度と会えない、などと感傷的になってしまうのだ。
ありがたいことに、ギャラリーに置けば、誰かが買ってくださる。
家で飾る場所にも限りはあり、殆どは屋根裏で寝かせてあるだけ。
そう思って、いくつも手放してきたのだが、それでもどうしても残しておきたいものが、いくつかある。
先日、そのうちの一つを欲しい、というお客様がいるとギャラリーから連絡があった。
少し逡巡したあと、父のアトリエが頭に浮かび、さらにそれが私の好きなラティーシャのお客様だったこともあり、売る決心をした。
父が亡くなったあと、油絵のキャンバスで埋め尽くされたアトリエを見て、姉と呆然とした。
父はアマチュアの油絵画家で、作品を売るのはチャリティの展覧会のみだった。
60年も絵を描いていたのだから、その数は膨大なもの。
それを見て、私はしみじみ思ったのだ。
いくら私にとって思い入れがあっても、その私が死んだらただの絵。
だから、潔く手放していこう、と。
今回売ることにしたのは、うちの近所にあるハイク ガーデン。
ハレイワジョーズというレストランの席から眺めるこの景色が大好きで、
ふと思い立って作ってみた。
手放したくないからと溜め込んで、いつかゴミになってしまうよりも、
欲しいと思ってくれる人の家で可愛がってもらえたらそのほうがいい。
この作品はなくなっても、また新たに好きな作品を創ればいいのだ。
今朝、ギャラリーに作品を置いてきた。
娘をオヨメに出す親の気持ちに、これは似たところがあるのかな。
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