ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

社会福祉士の職域拡大と待遇改善への意見(1)

2008年11月14日 | 社会福祉士
 11月8日と9日にかけて、2008年度全国社会福祉教育セミナーが東海大学で開催され、「社会福祉専門職の職域拡大・待遇改善と社会福祉教育ーいかに危機をのりこえるか」のシンポジウムのコメンテーターとして参加した。この中で、私は「どうすれば、職域拡大・待遇改善ができるか」についてコメントしたが、今日のブログで、その時に話した内容を説明しておきたい。なお、私は(社)日本社会福祉士養成校協会会長という立場でのコメントであったため、社会福祉士という視点からの職域拡大・待遇改善であることを、お断りしておく。

 全米ソーシャルワーカー協会(National Association of Social Workers:NASW)が古く1957年年に出した「ソーシャルワークの枠組み」は、①ソーシャルワークの目的(object)、②ソーシャルワークの価値(value)、③ソーシャルワークの知識(knowledge)、④ソーシャルワークの技能・方法(skill/method)、⑤ソーシャルワークに対する社会の承認(social sanction)の、5つで構成されるとしている。 これは、英国ソーシャルワーカー協会(British Association of Social Workers : BASW)が1977年に出版した『ソーシャルワークの課業』でも,この五つの全体布置でもってソーシャルワークを構成するとしており,そのいずれもが欠落してもソーシャルワークを構成することがないとしている。

 これは以下のような図になる。


 このソーシャルワークに対する権限の委任は、逆に言えば、ソーシャルワークに対して社会全体からその存在について承認を得ていくことである。この委託してくれるなり、承認してくれるのは、一体「誰」であるのか。これについては、以下の5つがあると言う。①国や自治体、②雇用団体や個々の雇用機関・団体、③職能団体や養成団体、④利用者、である。(Elizabeth M. Timberlake, Generalist Social Work Practice : Strengths-Based Problem-Solving Approach)

 これら5つから権限の委任を得ていくことで、日本でのソーシャルワークの職域の拡大と待遇改善を図っていくべきである。これには、新たに参入していく部分と、従来の領域を充実していく部分がある。

①新たに拡大していくこととしては、教育、更生、労働の領域での職域の開拓と、行政での社会福祉士に限定した専門職採用の推進であると思っている。

②現状を充実していくこととしては、社会福祉施設および介護保険施設の相談員の配置の推進と社会的待遇の充実と、在宅サービスの相談員や社協職員等での配置の推進と社会的待遇の充実である。(例:加算を土台にした待遇の改善)

 以上のような職域拡大・待遇の改善に向けての具体的な展開について、社会福祉士の観点からは、権限を委託される視点から整理することができる。

 ①国や地方自治体からの権限の委任
 現状では、国は社会福祉士の国家資格を創設し、地域包括支援センターに社会福祉士の配置を義務化することで、まさに社会福祉士に権限の委任がなされてきた。地方自治体については、社会福祉士に限定して職員募集をする自治体が増加してきており、これも社会福祉士への権限の委任である。

 課題としては、国が司法領域、教育領域で新規にソーシャルワークに関わる事業が新規に始まっており、この事業について社会福祉士を基礎にすることの承認が得られるよう働きかける必要がある。労働領域についてはソーシャルワークが不可欠な領域であり、社会福祉士を基礎に制度化することの承認していくよう新たに働きかける必要がある。

 また、地方自治体については、社会福祉士に限定しての採用試験を実施するよう、実施していない自治体に働きかけることで、職場の仕事の一部を社会福祉士に権限を付与する仕組みを作っていく必要がある。さらには、都道府県や市町村が実施している相談事業での社会福祉士資格の要件をつけることで、社会福祉士の承認を得ていく。これには、例えば、大阪府がコミュニティ・ソーシャルワーク活動事業を実施しているが、これを社会福祉士に限定するよう働きかけることになる。
         

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