ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

地域でのネットワーキング論?(5)<ネットワーキングができていない現状②>

2008年04月25日 | 地域でのネットワーキング論
 ここでは、昨日のブログで書いた、地域包括支援センターの社会福祉士の業務についての自己評価と同じような調査結果を報告したい。

 昨年度、大学院生数名と2つの調査対象者に対して職務内容に関する調査を行った。調査対象者は、1つは大阪府が独自で実施している「コミュニテイ・ソーシャルワーカー」であり、もう1つは介護保険制度の「ケアマネジャー」である。その際には、多くの皆様に調査にご協力を頂いたことを、心から感謝する次第である。

 職務内容については、30ほどの職務内容について、実施状況についての自己評価と自らの役割としての認識状況を尋ねるものであった。

 ここで3つの職務内容について、両職種での実践意識と役割認識度についての自己評価違いをみてみたい。それは極めて興味深く、かつ思っていたとおりの結果となったことである。ここで取り上げる3つの職務内容は、利用者への個別支援である「利用者への支援計画作成(プランニング)を行う」、「地域にある様々な団体や機関を組織化(ネットワーク)する」、「地域に存在しない社会資源を作り出す」についてである。

 その結果が、上記の図であるが、ケアマネジャー(CM)はコミュニテイ・ソーシャルワーカー(CSW)よりも、利用者への支援計画作成(プランニング)を行うことの実践度も役割認識度も高い。一方、地域にある様々な団体や機関をネットワーキングすることについては、CSWはCMよりも役割認識度が高いが、現実の実践度では有意差がでなかった。さらに、地域に存在しない社会資源を作り出すソーシャルアクションについては、CSWはCMよりも実践度も役割認識度も高くなっていた。

 この結果の意味であるが、コミュニテイ・ソーシャルワーカーはネットワーキングを自らの業務として認識しているにも関わらず、その職務が十分にはできておらず、現状ではケアマネジャーの実施している意識情況とあまり変わらないことが分かった。ソーシャルアクションについては、両者の実践情況や役割認識の自己評価に違いがあることが分かったが、現実の実施度では、8割のソーシャルワーカーが実施していないといった自己評価であった。

 以上の結果、ソーシャルワーカーの仕事をファジーにし、独自性を見えなくさせていることが分かった。我々が考えていた仮説の通りであるが、コミュニテイ・ソーシャルワーカーが地域でのネットワークを作っていくことができているという意識になるよう、どうすべきかを考えることが今回のテーマに応えることになるといえる。

 どのようなソーシャルワーカーの属性や特徴の場合には、ネットワーキングやソーシャルアクションをやっている意識になるのかについての本調査の詳しい分析も必要である。同時に、今後議論していくことになるであろう、どのような手順や方法でネットワーキングやソーシャルアクションが実施可能かについての教科書や手引き作りも重要である。そうしたことに示唆する議論を今後重ねていきたい。

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