虚無交換日記

神戸大学将棋部の住人たちによるブログ

令和二年度秋季一軍戦振り返り(古田)

2021-01-03 22:47:14 | F

 皆様、お久しぶりです。神戸大学4回生の古田です。

 一軍戦の振り返りをしようと思って年が明けてしまいましたが、なんとか覚えているうちに振り返っていこうと思います。

~一軍戦に至るまで~

 まず、私自身の話をしますと、今年のコロナにより対面の将棋が一切できなかったうえ、秋は予備試験という試験の論文式試験、さらにそれが終わればロースクールの入試と、学業面で忙しかったため将棋に真剣に打ち込むことができませんでした。

 そんな中、一つ私の将棋に大きな変化がありました。それは四間飛車穴熊の採用です。

 四間飛車穴熊は私が中学時代に使っていた戦法です。中学時代はずっと級位者(ただし地元の道場のデフレ規準ですが)で、ろくに手の意味も分かっていなかったのですが、何となく使っていて愛着がありました。しかし、その後有段者になるにつれて居飛車を指すようになり、大学に入りたての頃は角換わり大好き人間になっていました。中飛車への浮気もあったものの、大学3年次修了時点ではまさしく本格居飛車党といった戦型選択をしていました。(ただし苦手な戦型はありました。これは後々言及します)

 しかし、4年の春先、学業面で多忙化していく中で角換わりや相掛かりなどの難しい変化についていくことの厳しさを悟り、もっと序盤をパターン化でき、分かりやすい戦型はないか、と探した結果、得られた答えが原点回帰、かつて愛用していた四間飛車穴熊でした。

 実際に四間飛車穴熊は戦法としての欠陥はありながらも、局面のバリエーションが比較的限定されていることから効率的な学習ができたほか、その道のスペシャリストに教わる機会にも恵まれ、実用に耐えうる戦法にすることができました。もっとも、四間飛車穴熊はあくまでレパートリーの一つとして居飛車と混ぜて使用しようと思っていました。

 さて、大会の話に戻ります。まず、今年はやはりコロナの影響ですでに春が中止になっており、秋も同様に一軍戦の開催自体が危ぶまれていました。引退試合の機会もないまま引退か、とふてくされていたところでしたが、開催に踏み切っていただいたことについては関係者の方々に感謝しかありません。私も関西の前年の理事なので通常の大会の開催だけでもそれなりに苦労があることを多少は理解しているつもりですが、今年はこの未曽有の事態にどれほどの苦労があったか、想像もつきません。お疲れ様でした。

 というわけでめでたく一軍戦の開催へと相成ったわけですが、今度はうちの将棋部としての問題が発生。なんと日程が合わず、一日目に主力2名が参加できないことが判明。しかもうちの1日目のあたりは阪大、立命館、京大。今回はこの穴の開いたオーダーでこの3校を相手に最低でも一つ、勝ち数次第では二つ勝利を挙げないと全国への道がほぼ絶たれるというわけで、当日を前にして、すでに絶望感が渦巻いていました。

~1R阪大戦~

 とはいえ奇跡の全国を目指して目の前の一局を頑張らなければいけないことには変わりありません。迎えた一軍戦1日目。消毒液を手に纏わせ、対局場へ向かいました。

 オーダーはこちらです。(なお、全て調べてれば容易に得られる情報かつ、名字だけのためイニシャルは使いません。)

1北谷ー笠原

2布本ー武内

3田和ー秋葉

4山本ー水谷

5古田ー村上

6北川ー松井

7白井ー吉村

 オーダーはまあまあ良くも悪くもないくらいで、格上相手とのあたりが多そうですが元々戦力的に劣っているので仕方ありません。ただ相手も主力を欠いているようで勝負にはなるかなと思っていました。阪大は私の入学前の代から相性が悪いといわれており、実際に毎回のように勝負所を落とす印象なので、なんとかしてこの呪縛を解き放ちたいと思っていました。

 私は村上氏との対局。過去に練習も指したことがあり、ネットでも当たったこともある相手です。本格派居飛車党で研究が深く、角換わりを始めとした最新の形に精通しており、大会などで結果を残している勝負強いプレイヤーという印象でした。

 当初は開幕戦は居飛車で行こうというプランだったのですが、今の自分が彼と定跡形に誘導して勝てるビジョンが見えず、むしろ研究されてなさそうな戦型が望ましいと考え、四間飛車を採用しました。対して相手は銀冠。四間飛車を採用するからには穴熊の予定でしたが当時の私は対銀冠の四間穴に自信が持てておらず、ここでも予定変更で美濃囲いからこちらも銀冠を目指しました。

 ただ勝負の場で経験の浅い銀冠を選んだのは愚策でした。中盤で経験不足から対応を誤り、作戦負け。さらにもうひと粘りという終盤で美濃の特質への理解の浅さを露呈するかのようなポカをしてしまい急転直下、受けなしに。敵陣に何も手を付けることすらかなわず投了に追い込まれました。

 チームとしてもこのオーダーでは一番若い北川君が勝ち星を挙げてくれましたが、あとは全員負けで1-6。

 私にとって最後の一軍戦は厳しいスタートとなってしまいました。

~1.5R サイゼリヤ戦~

 料理が運ばれてきたのはオーダー交換まで残り10分、対局開始まで残り15分。

 飢えた男たちは目を血走らせ、喰らい、そして走る。

~2R立命戦~

 次の相手は立命館大学。いうまでもない強豪校です。

 正直言ってここ相手に4つの白星を挙げることは難しく、ましてや万全ではない今のオーダーでは不可能に近いことから、新入生を出したオーダーで一つでも多くの勝ち星を目標としました。

1.布本ー大塚

2.田和ー野島

3.山本ー佐々木

4.古田ー武沢

5.北川ー木村

6.錦織ー田淵

7.吉村ー宮越

 今回はオーダーがどうこうはあまり気にしていませんでした。

 私の相手は武沢氏。全国レベルのプレーヤーでオール学生選手権優勝などの実績を残している本格居飛車党。立命の人の話では部内評価もかなり高く、特に研究量が半端ではないと聞いていました。

 そうなると、やはり私は角換わりをそんなプレーヤー相手に選ぶ自信がなく、四間飛車穴熊を採用することになりました。

 しかしさすがに相手も経験豊富なのでしょうか、個人的にかなり嫌な四間飛車穴熊対策をされ、早速作戦負けに陥りました。今の目で見ると序盤でこちらが少し変えるべきなのですが、当時はこれをされたら作戦負けは仕方ないと思っていた戦型なので仕方ないところです。

 中盤で少しチャンスが来ていたようですが、うっかりもあり一気に相手ペースへ。その後も相手の対応が正確でじりじりと悪くなり最後は大差で負けに。うっかりがあったとはいえはっきりとした実力の差を感じたので仕方ないところです。反省するとすればネームバリューに押されてか、普段よりも早い段階で時間を使いすぎたかもしれません。

 チームはわれらが主将やまりく(山本)が一矢報いるも残りはすべて取り切られて1-6負け。

~3R京大戦~

 個人戦績もチーム戦績もボロボロの中で最後のチャンスともいえる運命の京大戦。勝ち星が少なすぎるのがネックですが京大にさえ勝てばなんとか全国の可能性が残ります。

1.北谷ー石川

2.布本ー酒向

3.田和ー生川

4.山本ー野末

5.古田ー拾井

6.北川ー大久保

7.吉村ー上田

 オーダーはこちらの人数が少ないことから狙い撃ちにされてそうな割にはチャンスのあるあたりだと思いました。今年の京大は前年活躍されていた方を欠いているなど、うち同様万全でないように見えました(実際にはレギュラー争いの結果かもしれませんが)。特に、うちは先述した阪大とは逆に京大と相性が良く、実力差のわりに勝ち星を拾えることも多いイメージなのでなんとか4-3の目をつくれないかと期待していました。また、前回の一軍戦は3-4で煮え湯を飲まされているので今回はそのリベンジ戦ともいえます。

 さて、4-3の目を作るにあたって。対局相手への失礼を承知で言えば私の勝利はチームが勝つための最低条件、すなわちこのあたり方は勝ち計算をするぐらいの気持ちでした。そのため私はオーダーを確認後絶対負けられないという使命感に燃えていました。

 その僕の対局相手は拾井氏。角換わりなどを得意にされるイメージの本格居飛車党で角換わりの研究勝負は厳しいと感じたため、居飛車を採用したいところでしたが、四間飛車穴熊を採用しました。(三回目)

 将棋は僕の研究形で時間では大幅にリードしていました。しかし研究形ゆえの慢心か、一度選択を誤るとそこから指し手が乱れました。ひたすら自玉を埋めた終盤、どのような心理で指していたかははっきりと覚えていません。思い出したくもないくらいです。ただ自玉が詰まされる直前になって自分への苛立ちと悲しさがこみ上げてきたのを覚えています。

 一軍戦個人三連敗。大学生になって初めての一軍戦での時以来の3連敗を最後の一軍戦でやってしまいました。

 対局が終わって、チームの状況を知ると唖然となりさらに敗北の事実が重くのしかかりました。3-3残りで布本ー酒向という状況。その布本も(おそらく)劣勢が続き、やがて投了。

 3-4負け。私はこれもまた一回生以来となる、いわゆる戦犯になりました。一回生の頃に戦犯となったのは対局相手が明らかに私よりも格上であったことを考えると大学に入って初めての大戦犯ともいえるでしょう。自分のせいでチームが負けた、全国への道が絶たれたと考えると申し訳ないやらなんやらで相当落ち込んでいました。いまや京大の不動のレギュラー相手に、またのちに王座戦で活躍する新入生を相手にそれぞれ勝ち星を挙げてくれたやまりく、北川。そしてコロナで苦しむ中懸命に理事を頑張り、日ごろの行いの良さもあったのか、詰まない相手玉を詰まないまま勝利し、奇跡的なシチュエーションで初勝利を手にした北谷に頭が上がらない思いでした。

~3.5R 一日目を終えて

 大会が終わり家に帰った後、ソフトで検討するのも手につかず、数日後になってやっと検討する始末。2分切れ負けばかりやっていた自分を反省し、あてもなくもう一度自分の研究を見直しました。

 次の相手は関西大学と大阪市立大学。

 全国が絶たれた今できることは気持ちを切り替えて残留のための闘いへと備えることです。

 そんな中、大阪では大阪モデルの「赤信号」が点灯。その影響もあり、大学からストップのかかった大阪市立大学の不参加、不戦敗が確定しました。あまりにも酷で何とかならなかったのかという思いもありますがこのご時世致し方のないところでしょうか。チームとしては7-0価値が確定するので数字上は喜ばしいことかもしれませんが、大阪市立大学には親しい友人もいて、最後の対戦を楽しみにしていただけにとても残念です。もしよければ今度ネット団体戦でもしましょう。

 さて、これにより二日目に戦うべきは関大だけとなりました。そこで関大に向けたオーダーが話し合われた末、私の相手は永田氏の可能性が高いことが分かりました。

 そして、彼が元奨5級の強豪という情報も耳に。元なので伸びている可能性もあり、級位が参考になるかは微妙なところですが、とりあえず強いということはわかります。関大の中でもかなり上位の相手でしょう。とはいえ、自分も現役5級とならば五分くらいの戦績でやれていますし、このオーダーのあたり方は負けて言い訳できるようなものではないと思い、相手に怖気づかずに勝利打点を挙げるつもりで準備しました。それから私は関大のTwitterから戦型を拾い、三間または四間飛車を予想し、居飛車で対抗しようとかつての研究を洗い直しました。

 これは当時の自分が長い持ち時間での相振りを嫌っていたこともありますが、何より大学4年間を支えてくれた居飛車に感謝の意味も込めて、最後はともに歩んだ居飛車で引退を飾りたいという思いが強かったためです。

~4R 市大戦(不戦勝)~

 そして一軍戦二日目を迎えました。今日は河端君は前回に続いて来れなかったものの、前回来れなかったもう一人の主力、4年間一緒に戦い続けてチームを引っ張ってくれた井上も参加。そもそも会うのも久しぶりだったので、いろいろ話をすることができました。

 大会の方は不戦勝。不戦勝であることは知っていても実際に不戦勝となるのが午前であることを知らず、朝から集まっていたため、次の関大戦まで、時間を潰すことになりました。

 この間は控室で対局する者、対局場をチラチラ覗く者、ラーメンを食べに出かける者、ANKOU_ODORIをスナイプする者など各自が思い思いの時間を過ごしていました。

~4.5R サイゼリヤ戦~

 料理が運ばれてきたのはオーダー交換まで残り20分、対局開始まで25分。

 飢えた男たちは若干の余裕に笑みを浮かべつつ、喰らい、そして念のため走る。

~5R関大戦~

 河端君がこれなかったことで当初から若干オーダーに変更が生じましたが、私の席に影響はない予定でした。

 そして、運命のオーダーが発表されました。

1.北谷ー柴崎

2.布本ー藤川

3.田和ー芦江

4.山本ー永田

5.古田ー斎藤

6.北川ー遠藤

7.井上ー塩見

 予想していたオーダーはおもいっきり外れました。

 とはいえ、なんだかんだ言ってうちにとっても悪いオーダーという印象ではなく、オーダーで2,4,6あたりを1つ、できれば2つ取れれば勝てそうという印象を持ちました。

 私の相手は斎藤氏(「斎」の漢字が間違ってたらごめんなさい。余談ですが私は「齊」が一番好きです。)。関大のレギュラー格です。

 確か2年ほど前に交流戦で対局したと記憶しているのですが、肝心の戦型が詳しく思い出せませんでした。しかし、なんとなく居飛車党のオーラを感じ取った私はやや居飛車よりの作戦を採ろうと決めていました。

 対象の振り駒の結果、私は後手に。そして▲7六歩に対し、なんとなくフラフラと△3四歩。これが負けたら敗着の一手で、▲2六歩と指されて困りました。そうです。私は横歩取りができないのです。

 こうして泣きながら△4四歩と止め、なんだかんだ四間飛車穴熊に引退試合を居飛車でという目論見はあっけなく崩れ落ちてしまったのでした。

 将棋はその後相手の方が右四間飛車に振り直す形になり、そこから相穴熊へ。相手が組み切る直前にこちらが仕掛け、ペースを握ったはずでした。

 しかし、△同飛と取ることを考えていた局面で無意識に(?)△同銀としてしまうミス。自分の手で相手の読みを外すことに成功しますが、自分の読みも外れてしまいずるずる悪くなってしまいました。こんなんで最後にしてしまってもいいのかとなる内容で劣勢で終盤を迎えましたが相手の方もミスがあり、逆転。その後も安全に勝てるところを、秒読みの中相手玉をつまさないと負けというミッションを自ら課してしまいましたがなんとか即詰みに討ち取ることができました。

 感想戦後、チームが4を取っての4-3勝ちというのを聞いてヒヤッとしましたが、これで無事神戸大学はA級残留を果たしました。

 

~一軍戦を終えて~

 というわけで今回の一軍戦はチーム1-3と不戦勝、個人も1-3で終えました。

 個人成績は今の自分よりも弱かった1回生以来の不振でしたが、とりあえず最後勝ってチームに貢献するという形で終われたので悔いはないです。

 チームとしては4位ということで言ってしまえば定位置ともいえるポジションになってしまいました。僕がいたこの4年間では3位が2回、4位が5回。安定しているともいえますがやはりもう少し3位の回数を増やしたかったですね。そして第二代表決定戦にも二回とも負けているので全国出場は西は関東に次ぐ激戦区であり、全国へのハードルが高いことは入学時から重々承知していましたが、一回くらいは出て見たかったなあというのが正直なところです。ただ、第二代表決定戦で私も二回とも敗れており、チームも完敗しているので客観的に見れば仕方ないですね。

 来年以降は私達の代は抜け(戦略的に見れば書かずに留年の可能性を匂わした方がいいかも、と一瞬思いましたがそこまでこの情報に意味があるとは思えないので書きます)、後輩達にバトンが託されます。部内事情もコロナ等で大変で、来年は場合によっては残留すら大変かもしれません。それでも上を見る心を忘れてほしくはないです。

 ただ一番に思うのは、今後も神大将棋部が将棋を、将棋に限らずとも部員同士つながりあって大学生活をより一層楽しめるような、そんな場でいてほしいです。

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