虚無交換日記

神戸大学将棋部の住人たちによるブログ

ゆく年くる年②

2021-12-31 17:25:24 | Nの本

 本稿では前稿に続いて一軍戦の対局を振り返りたいと思います。三回戦は立命館大学と当たり、私のお相手は橋本氏でした。後手の橋本氏が角交換振り飛車を選択し、先手の私が地下鉄飛車で対抗して図の局面を迎えました。

 既に先手が少しリードしている局面ですが、この△6五桂が厄介。以下▲7六金△7五歩に何とか金を助けようと、①▲8五金としましたが、代えて②▲6五金とし△同歩に▲5三とで優位を拡大できていました。本譜は①▲8五金以下△8八歩▲7九飛(悪手)△7三桂▲7五金に△7八歩と打たれ誤算に気づきました。そう、この金は最初からどうやっても助からない金だったのです。

 以下▲2九飛と逃げましたが、それなら7九に途中下車せずにはじめから▲2九飛を選ぶべきでした。以下①△7九角も相当な迫力(以下▲5九玉で難解)でしたが、本譜は後手が②△8六角を選び、以下▲5八玉△7五角▲6六銀△8四角に▲2三飛成が実現し、好転を感じました。以下△5一飛に▲5三金!とねじ込んでいきました。絶対に勝ちたい、その一心でした。

 この手は後手の飛車の効きを止めながら後手陣に迫り、なおかつ△3三金に備えた手のつもりでしたが、図でそれでも△3三金としたのが好手。以下▲同馬△同桂で馬を取られてしまいました。そこで腹を立てて▲3二龍としましたが、これが悪手。代えて冷静に▲7五歩としていれば、負けにくい形でした。

 ここでは後手にチャンスが訪れていました。△6六角がその第一歩。以下▲同歩に△8五角▲7六歩△同角▲6七金△6九銀▲6八玉と進めば、そこで△5三飛が強烈。

 以下▲同と△7七金以下、3二の龍を取れば、もはや先手が勝てる将棋ではありません。本譜は後手がこれを逃し、先手がうまく流れに乗ることができました。そして迎えた次の局面。

 △7六角はハッとする手。この手は▲7三角△同玉▲8五桂以下の詰めろを消しながら、次に△6七角成以下の即詰みを見せた、詰めろ逃れの詰めろのように見えます。ところが、実際は▲7三角△同玉▲6三金△同玉▲7四銀以下、6六に銀が打てるので後手玉は即詰みだったようです。対局中は何となく詰んでいるように感じていましたが、ギリギリ逃れていたら目も当てられないので、30秒を読まれたときから受けの手を考え始めました。しかし、良さそうな受けが一向に浮かばず、かなり焦りました。そして50秒を読まれたときに慌てて指した▲4九玉が意外といい手で、結果的に勝利を手繰り寄せた一手となりました。

 以下、数手進んで次の図。

 ここで喜んで①▲8四歩と詰めろを掛けると△2九飛以下先手玉は頓死してしまいます(▲3九金は△4八銀、▲3九銀は△5八銀以下即詰み)。②▲2二飛が決め手。以下数手進んで後手の投了となりました。

 前稿の冒頭で登場した某院生は、相手がどれほど強敵でも「十回に一回」を取りに行くように、と仰っていました。一局を振り返って、私の将棋の改善点が散見される内容だったとはいうものの、「十回に一回」の高波にうまく乗れたのが負けなかった一つの要因だと感じました。

 

 

 次の四回戦は関西大学と当たり、私のお相手は岡田氏でした。角換わりの序盤から後手の岡田氏が右玉を選び、先手の私が雁木中住まいで対抗する戦型となりました。そこで迎えた次の局面。

 △2七歩で苦戦を覚悟。この筋を警戒するべきでした。以下▲同飛の一手に△3五歩とされて次の図。

 以下①▲4五歩と反発し、実戦はA,△同桂▲同桂△同銀と進行しましたが、代えてB,△3六歩でどうだったか。

 対局中は▲4四歩でも▲3六同銀でも先手耐えていると考えていましたが、▲3六同銀に△3五銀!を見落としていました。▲同銀は△3六角なので、これは先手いけませんね。よって▲4四歩ですが、これにも△2六歩が頭にない手で、以下▲同飛△3七歩成▲同金△1五角とすれば後手がわかりやすかったようです。

 戻って①▲4五歩では②▲2六飛で難解だったようです。危機管理能力が足りませんでした。

 本譜は▲4五歩△同桂▲同桂△同銀に▲5五桂が勝負手。

 ここでは①△3六歩と指されたときの対応がよく分かっていませんでしたが、本譜は後手が▲6三桂成~▲8二銀の筋を消す②△2三歩を選んだため、▲3五歩と取り返して虎口脱出。相手が一歩引けばこちらは一歩進めるので、これで先手有利となりました。しかし、後手も盛り返して次の局面。

 ここで①△6七歩成なら形勢不明かつ難解な終盤が続いており、先手自信ありませんでした。一例ですが、△6七歩成以下▲8九金に△8七飛成を入れるのが好手(△7七龍がある)で、以下▲6三桂成△同金▲8八銀△5八と▲同銀△8一龍▲5五角と進み、やはり混沌とした形勢です。実戦は②△6七角成だったので▲6三桂成△同金▲6七銀△同歩成▲6四銀と食いつける格好になり、先手が抜け出しました。そして進んで次の図。

 ここから▲5五桂△5二玉▲6三角△4二玉▲4三桂成(代えて▲6四角で合駒を一枚使わせる方が明快)△同金▲2三飛成で挟撃できる形になり、後手投了となりました。なお、後手に残された最後の手段として△5八銀があります。

 対局中は取っても逃げても詰まないと思っていましたが、これを取ると詰みます(▲5八同金△同と▲同玉△6六桂打▲6九玉△5八銀▲7九玉△7八金▲同金△同桂成▲同玉△6六桂▲8八玉△8七飛成以下詰み)ので▲3九玉しかありません。以下△4七桂(△2七桂はギリギリ詰みません)▲2九玉△2八歩▲1八玉△2七銀▲同龍△同銀成▲同玉△2一飛▲2六歩△2九歩成と進んで逆転かと思いきや、▲6四角が絶妙で先手の勝ちは揺らがなかったようです。終盤まで難しい将棋でした。

 一局を振り返って、私の将棋の脆弱性が露呈し、課題ばかりが山積した内容だったと言わざるを得ませんが、終盤が難しかったので、詰将棋を解いていてよかったと思いました。

 

 最後の五回戦は近畿大学と当たり、私のお相手は朝倉氏でした。後手の朝倉氏のノーマル四間飛車に対し、先手の私が居飛車穴熊で対抗する戦型になりました。

 今、後手が先手の▲1六歩を緩手と見て△5五歩と開戦したところ。本譜は以下▲5五同歩△同銀▲2四歩△同歩▲3五歩△5六歩▲同銀△同銀▲同金△5二飛▲5五歩△同角▲同金△同飛▲6五歩で先手が優勢になりました。

 以下、後手のしっかりとした粘りにより、一時は形勢が接近したものの逆転には至らず、最後は穴熊の遠さを活かして先手が一手勝ちを収めました。

 本局はA級残留を懸けた一戦であったため、一刻も早く勝ち星を挙げたいとの思いから、冷静さが失われた指し手もありました。反省点は少なくないものの、学生生活最後の一戦を白星で終われたのはラッキーでした。

 

 

 最後に、これほど白星が集まった要因について少し述べたいと思います。

 一つは、技術的側面から観て、戦型がいずれも複数回経験しているものであったということです。あまり時間を使うこと無くスムーズに指せたのは日頃の対局の経験値のおかげだったと思います。逆に、雲のジュウザのような我流終盤ゴリラほど、タチの悪い相手はいません。

 もう一つは、精神的側面から観て、私の立場上、プレイヤー的要素が大きかったということです。裏を返せば、錦織氏が部内をまとめ、一軍戦に向けての雰囲気作りもしっかりやっていたので、私は自身の対局に集中することができたのだと思います。彼には感謝しかありません。また、逆に言うと、チーム作り等で負担や責任が一点集中しないような体制も今後必要なのかなと感じました。

 改めて、私の一軍戦に悔いはありません。皆様ありがとうございました。

 

 

 

 

 (追記)

  やはり全部勝とうという気持ちが大事ですね。私がそのような基本的な姿勢を後輩達に示せなかったのもあまり良くなかったと思います。もちろん、団体戦には中学生の頃から出ているので、知識としてはその姿勢の重要性を理解しているつもりでした。ただ、その姿勢を裏付ける将棋の実力、自分のやって来たことに対する自惚れ、単純な努力の量、すべて足りませんでした。後輩の皆さんには是非、「強い将棋」を指して欲しいと思います。

 それではまた来年お会いしましょう。皆様良い新年をお迎えください。

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ゆく年くる年①

2021-12-31 16:51:27 | Nの本

 こんにちは、布本です。今回は令和3年度秋季一軍戦における私の対局を振り返りたいと思い、キーボードを執っている次第ですが、その前に、一軍戦のおよそ3ヶ月前から一軍戦に至るまでの話を少しだけさせてください。

 一軍戦のおよそ3ヶ月前、ようやく就活を終えた私には、一軍戦に通用するような将棋の実力もましてや将棋への情熱さえ露ほども残っておらず、新しく覚えた素人麻雀に明け暮れる日々を送っていました。もちろん、個人戦や一軍戦には少しだけ出たいという思いはありましたが、半年以上まともに指していない自分が、半年前の実力までまず回復できないだろうし、まして実力を取り戻したところでまず勝てない、だからもうやめようとさえ思っていました。そんな中で、部長の錦織氏がうまく部をまとめ、本当にありがたいことに、私たちが部室として使用している学生会館の和室の使用許可を取ってくださいました。久しぶりに赴いた部室で後輩と指すうちに、このまま終わるのは悔しいからもう一度最初からやってみようかという気になり、一軍戦を見据えてただひたすら実力を高める日々が始まりました。

 将棋を再開してからはじめのうちは、自分の研究を見返したりしていましたが、ソフト研究はその煩雑性ゆえに短期間の実力向上に対する費用対効果が非常に低いということを悟り、ソフト研究はきっぱりやめました。その代わりに重視したのが、ある程度の緊張感をもって指す対局の経験、すなわち、将棋倶楽部や将棋サロン、将棋部等における対面での対局、加えて将棋倶楽部24での対局です。とにかくこれらの場で指しまくり、すべての対局を持ち帰ってソフトにぶち込んで検討。これの繰り返しでした。

 もう一つ、私が力を入れたのが、終盤力の強化です。詰将棋はもちろん解きましたし、『羽生善治の終盤術』にも大変お世話になりました。

 これらのささやかな頑張りもあってか、一軍戦の2,3週間前頃には対面で指す将棋の内容に好調を感じるようになっていました。

 ところが、一軍戦が近づくにつれ、一軍戦に対する恐怖心が徐々に芽生え始めました。それを紛らわせるために無心で詰将棋を解いているうちはまだ良いものの、何も手に付かずにただ横になっている日も増えていきました。そんな状態でも水曜日には和室に出掛けていくわけで、自分でも何をしているのか訳がわかりませんでした。その日も部活が終わってある大学院生と帰っていたときに、ふと何を思ったのか、一軍戦に対してはどのような心持ちで臨めばよいのか、と非常に高次元的で曖昧な問いかけをしてしまいました。答えづらいあまり変な空気になるのかと思いきや、その院生は、間髪入れずに、「自分はいつも全部勝つつもりでいたけどね。皆がそう思っていないと団体戦は勝てないし。」といった趣旨の返答をしてくださいました。確かにその通りです。しかし、自分にはその姿勢を裏打ちする実力が根本的に足りない。そのときはそう感じていました。

 それでも一軍戦の日は確実にやって来ました。あまり気が進みませんでしたが、私はちゃんと家を出て会場に向かいました。

 

 

 一回戦は大阪大学と当たり、私のお相手は村上氏でした。彼は高校時代の友人なので、彼と指せると分かったときは非常に嬉しかったです。新型コロナウイルス対策のためウェットシートで盤駒時計を拭い、室内も換気が行き届いて、寒空の下、対局開始。私が後手で一手損角換わりに誘導し、先手の村上氏が王道の早繰り銀で迎え撃つ形になりました。そして銀交換が行われた後、次の局面を迎えました。

 今、後手が▲5四歩△同歩▲3四歩△同銀▲7一角の筋を防ぐために持ち駒の銀を4三に打ったところですが、あとの展開を考えれば△6三銀が有力でした。いずれにせよ、先手の目指す▲5五歩+▲2六飛の形があまりにも好形なので、局面は互角ながらも後手自信がありません。なお、図で▲7一角△7二飛▲8二銀は、数手前に指した△7四歩の効果で△7三桂と跳ねることができるので、無効。数手進んで次の局面。

 図では、先手が▲4五歩△同歩▲5六角と勝負手で後手を揺さぶっています。対局中は生角を筋違いに打つなんて、と▲5六角を軽視していましたが、対応を間違えると後手も一気に形勢を損ねそうです。直接咎めるなら①△4四銀左ですが、以下▲2四歩から一歩交換されて少し癪。本譜は目には目を、勝負手には勝負手をということで果敢に②△6五桂と跳ねていきました。以下後手が8筋の歩を切ることに成功し、次の図に。

 ▲8七銀のとき飛車の引き場所で少し迷いました。①△8一飛は▲4五角が飛車当たりなので、本譜は②△8二飛としましたが、結論から申しますと、①△8一飛が勝りました。以下▲4五角△5四歩▲8六歩ならば△4四銀と指す手が逆に角に当たり、角が逃げれば△3五銀がさらに飛車に当たります(下図)。よく読まないといけませんでしたね。

 実戦は②△8二飛▲8六歩となって問題の局面に至りました。

 後手はのんびりとしていると▲6六歩から桂馬を取られてしまいますので、ここで何か手を作らなければいけません。本譜は①△8八歩▲同玉に意気揚々とA,△4六角と打って茶をすすってくつろいでいましたが、この△4六角が大悪手。

 以下▲2四歩△同銀(まだしも△5五角でした)で加速し、▲4六飛が好手。以下△同歩に▲7三角で満貫直撃!

 先手は、攻めては次に▲6四角成とすれば、6五で威張っている桂馬を根元から刈り取ることが出来ますし、受けては数手前まで駄角だった5六の角が2九の桂馬を守っていて、もはや無敵状態。私としては恥ずかしながら、先程の△4六角の感触が良すぎて、何故こんなに急に悪くなったのか理解不能でした。しかしながら形勢が芳しくないのは事実なのでとりあえず息長く指そうと思い、図で①△8一飛としましたが、これがまた悪手。代えて②△6二飛とあくまでも6四に角を成らせないのが肝要でした。

 戻って問題の局面では②△4四銀左が正着。対して▲7三銀なら△3五銀が成立し、以下▲2七飛も△8一飛▲6四銀成に△4六角とすれば後手が指せていました。また、①△8八歩▲同玉にB,△4四角とこちらから打つ手なら、まだ後手が良かったようです。いずれにせよ、先手の▲2四歩を恐れすぎて、大局を見誤った末、後手にこのようなミスが生じたのだと思います。

 本譜は先手が調子よく優位を拡大し、次の局面。

 ここで①△8一飛とまわって2九への馬の効きを消そうとしましたが、▲7二馬で次に▲5三歩成~▲6二馬が生じてしまい、それなら単に②△3一飛が勝るところ。本譜は①△8一飛に▲7二馬A,△3一飛ですが、代えてB,△5四歩▲3三馬△同桂▲8一馬なら依然としてかなり苦しいものの、本譜よりはマシでした。この後先手の流れるような美技を前に後手陣は跡形も無く崩れ去って行きますが、後手も何とか食らいつこうとして次の局面を迎えました。

 ここでは先手にいくつか決め手がありました。まず、一見指しにくい①▲3二とは△同飛(6八金と7二馬の両取り)▲5四馬△6八成桂▲3二馬△1三玉(△同玉は▲5二飛以下詰み)▲3三銀で必至。②▲3三銀でも△1三玉なら▲2五桂!△同龍▲2二銀△同金▲同銀△2四玉に▲4二馬以下必至。本譜は③▲5七同馬△4三金で復活。しかし後手は依然として敗勢。対局中はなんとか形を作りたいという思いで指していました。進んで次の図。

 今、先手が後手玉の上部脱出を防ごうと▲3六桂と打った局面。私はこの局面で逆転したと思いました。なぜなら、この手は詰めろではなく、かつ、この手番で指す△5七金が詰めろであり、さらにそれを解除しながら先手が詰めろを掛けるには必ず▲3一飛△2二玉▲3三銀△3一玉▲5七金の手順を踏み、そして「その局面」における後手の持ち駒は飛角銀銀で、それだけあれば先手玉は詰まないはずがないと確信したからです。そして恐ろしいほどその通りに盤面は流れ、「その局面」はやってきました。

 改めて申しますと、後手は受けても一手一手の寄りなので、もう先手玉を詰ますしかありません。△7九銀▲同玉△5九飛▲6九桂(桂以外の合駒は詰み)に△6八銀が怪しい王手。

 実は先手玉が生き残る道はたった一つしかありません。今の目で見れば選べなくもないかもしれませんが、一軍戦という緊張感のある大舞台での60秒はあまりにも短いですね。

 ▲8九玉が唯一の生存ルート。これで先手が明快に勝ちでした。△6九飛成は▲9八玉で詰みません。(桂以外の合駒だと▲9八玉に△7八龍~△8七銀or金!以下詰み)両対局者は完全にエアポケットに入っており、私はこの筋をほとんど読みませんでした。なお、対局中は▲6八同金で足りないなと感じていましたが、▲6八同金は以下△同龍▲同玉△5七飛成に①▲同玉は△4六角!②▲同桂は△6六香!で以下なんと詰み。訳がわかりません。

 本譜は▲8八玉△7七銀成▲同玉△5七飛成▲同桂△6七金▲8八玉△7八金▲同銀と進み、次の図。

 一見すると①△7九角や②△7八龍から簡単に詰みそうですが、①は不詰み。②は以下▲同玉に△5六角と打てば簡単に詰んでいます。ところが対局中はなぜか△5六角について1秒も考えなかったので、おそらく5六に石か何か置かれていて打てなかったのだと思います。本譜は③△8七歩▲同玉△7五桂▲同歩△7八龍と何やら凝った手順で先手玉に迫りました。

 ここで先手玉に詰みがあります。(盤面反転しています)

 

 

 

 

 

 正解は△6七角(△5六角)▲8八玉△8七歩▲9八玉△8九角成▲8七玉△9八銀!▲同香△8八金▲7七玉△7八馬▲7六玉△6七馬です。実戦は△6七角▲6八玉のときの△7九銀を見落とし、初手を△6七銀から入ったので▲8九玉△7八角▲8八玉△8七金▲7九玉で不詰み。そこで投了しました。△7九銀をうっかりしたのはいけませんね。

 一局を振り返って、改めて詰将棋の大切さを確認できた一方で、悪手一発で将棋がほとんど終わってしまったことが残念でなりません。次に村上氏と当たるときは、もう少しいい将棋を指せたら良いなと思います。(実はこの振り返りを書くために棋譜を彼に送ってもらいました。彼には頭が上がりません。ありがとうございました。)

 

 一回戦が終わり昼食休憩となりました。ところが愚鈍な私は昼食を持参しておらず、(都会で育ったので近くにコンビニがあると思い込んでいました)結局、西氏や宮本氏が買ってきてくださった美味なおにぎりやパンをいただきました。大変失礼しました。

 

 さて、二回戦は京都大学と当たり、私のお相手は水原氏でした。先手の水原氏が四間飛車を選択し、後手の私が居飛車で対抗する形になりました。そして迎えたこの局面。

 図で一応聴牌なのですが、定跡に詳しい方なら後手は一体何をやっているのだと呆れてしまうかもしれません。それもそのはず、後手は△1四歩と△9四歩で手を消費しているので、もう居飛車穴熊に組みに行くことが出来ず、一見作戦負けだからです。ところが、後手にはある秘策があって互角の戦いに持ち込むことができます。後手はここから△7五歩▲同歩△4二金とし▲5六銀に△8六歩▲同歩△4五歩▲同桂△7七角成▲同桂△8六飛と進んで次の図。

 これで8筋炎上、8七の門突破間近で、後手戦えるというのが私の主張。しかし、以下▲5三桂成△同金寄に▲6六角が、大局観に優れかつ一局の命運を左右したほどの好手でした。

 以下、手筋とばかりに①△2二角とし、▲同角成△同銀と進みましたが、こうなると先手がゼロ手で2二に壁銀を建設したことになり、後手不満です。代えて意地でも②△4四歩とするのが正着。以下▲4五歩は△4六桂があるのでやりにくいです。

 先手としては次の△8九飛成が先手玉を捕捉するだけに、焦る局面であるはず。にもかかわらずこうした手で冷静にポイントを稼がれると、後手としては逆に焦らされているように感じました。以下少し進んで次の図。

 今、△7七歩成と桂馬を取った手に対し、▲6六飛と飛車を逃げた局面。後手としては指してみたい手がいくつかあり、かつ、持ち時間も大差で何でも出来そうな局面に思えました。対局中に考えていた候補手としましては①△7五角、②△8五角、③△3七桂、④△4四桂です。順に対局中の思考を整理していきます。

 まず、①△7五角ですが、以下▲6三と△同金▲6四歩△6六角▲6三歩成の局面をどう見るか。先手は美濃囲いがしっかりしているのに対し、後手陣は次の▲5三銀が詰めろ。これは後手いけません。次に②△8五角は▲6三とに備えつつ、美濃囲いの要の金を狙う攻防手で良さそうな手に見えます。ただ、懸念点としては▲2八玉のときにどうするかが分かりづらいです。また、③△3七桂は8九龍と協力して先手陣にクロスファイアを浴びせる攻撃力の高い手ですが、▲5九金と冷静に寄られたときに少し攻めが空振っている印象。最後に④△4四桂ですが、これも▲4五銀ではっきりしません。以上のようにあれこれ考えているうちに十数分を消費。慌てて②△8五角と打ちました。以下▲5九銀!△4四桂▲4五銀△4七歩▲2八玉△3三桂に▲6三とが好手で形勢を損ねたことに気づきました。

 これを取れないことを完全に失念していました。以下△4三金▲4四銀△同金▲6四角と進んで次の図。

 ここが最後の踏ん張り所でした。本譜は以下①△7六ととしましたが、▲8六歩が決め手。以下の私の手はすっかり自信を無くしており、戦う姿勢を失っていました。投了図は実力差がそのまま現われていたと思います。

 図では、②△2四桂がこの戦いを泥沼に引き込む唯一の勝負手。薄い方から攻めていくのが将棋の基本でしたね。このあと6三のと金を抜きさらに3一に銀を引きつければまだまだこれからの将棋。

 では少し前に戻って、どうすればリードを保てたのか、将棋ソフト(水匠)の意見を聞いてみましょう。

 結論から申しますと、ここは①△7五角か③△3七桂とすれば、後手がリードを保っていたようです。①なら以下▲6三と△同金▲6四歩△6六角▲6三歩成には△3七桂が詰めろで入り、▲5九金△6八と▲5三銀なら△3一銀が好手。こうすれば6六の角まで働き出し先手が僅かに届かない格好となるので後手が余していたようです。

 また、③△3七桂も有力で、▲5九金は△6七桂とし、以下▲同銀△同と▲同飛△4九銀でも▲同銀△6八とでも、とにかく先手陣に食らいついていけばわかりやすかったようです。

 こうして見ると実戦の後手の手順は、一手一手そのものはそれほど良くない手ではないのですが、総合するとちぐはぐで一貫性のない悪手になっていますね。

 一局を振り返って、勝負所を逃してから粘れなかったのがよくなかったなと思いました。どんな局面でも最善の頑張りが大切ですね。

 

 次局は立命館大学戦を振り返ろうと思いますが、今回は一旦ここで終わります。(続く)

 

 

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令和3年度秋季一軍戦結果報告

2021-11-21 20:28:27 | Nの本
 皆様、こんにちは。N本です。そして、二週間に渡る激闘、大変お疲れ様でした。残念ながら、神戸大学はA級残留を果たせませんでしたが、まずは共に戦ってくださった皆様に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 さて、本稿では記憶が薄れないうちに、簡単に、今回の一軍戦の結果報告をしておきたいと思います。なお、関西学生将棋連盟の理事の方々が大変な労力を注ぎ込んで、HPにオーダー表を掲載してくださっていますので、詳しい勝数や他の大学の結果についてご関心のある方はそちらをご覧ください。


令和3年度(2021)秋季一軍戦結果

(以下敬称略、数字は学年を示す)

一回戦 大阪大学戦

1 南野2 ― 白井4 ●
2 布本4 ― 村上4 ●
3 西3  ― 松村2 ●
4 中森1 ― 笠原4 ●
5 錦織2 ― 富本2 ●
6 山本4 ― 寺田1 ○
7 北谷4 ― 秋葉3 ●

1-6負け

 歴戦の猛者、山本は安定の一勝。他は取れそうなところもありましたが、力負けです。改めて阪大のレベルの高さを痛感しました。私が1回生の頃から相性が悪い相手だとは言われてきた阪大ですが、今回はもはや単純な実力不足による敗戦だったでしょう。組織的な強さにおいても、将棋へのモチベーションの高さにおいても、神大将棋部が見習うべきところは多いように感じます。

二回戦 京都大学戦

1 布本4 ― 水原2 ●
2 西3  ― 石川3 ●
3 中森1 ― 生川3 ●
4 錦織2 ― 金尾3 ●
5 山本4 ― 上田3 ○
6 北谷4 ― 酒向4 ○
7 青柳1 ― 原2  ●

2―5負け

 阪大戦の敗北を引きずるまもなくやってきた京大戦。抜群の安定感を誇る猛者、山本は快勝し、北谷も相手のエース級を破って、貴重な勝ち星2を得ることが出来ました。北谷は前年度と合わせ、京大戦2連勝。貫禄を感じますね。(今回は寄っている玉を寄せたようです)しかしながら1,2回生にとってはなかなか厳しい勝負だったようで、私も大局観を誤って、優勢な将棋を悪手連発で敗戦。結果は2-5負けでした。

三回戦 立命館大学戦

1 布本4 ― 橋本1 ○
2 鈴木4 ― 畑山1 ●
3 錦織2 ― 武沢3 ●
4 山本4 ― 木村4 ●
5 宮本2 ― 福田3 ●
6 横山2 ― 宮越2 ●
7 北谷4 ― 佐々木2●

1-6負け

 一軍戦の雰囲気を知ってもらおうといわゆる「育成オーダー」で迎えた立命館戦ですが、あわよくば一つでも勝ちたいところ。そんな中でエースの山本を木村孝太郎先生に当ててしまったのは、我がチームにとって痛恨のミスでしたが、山本にも勝ち筋があったようで、そこはさすがとしか言えませんね。北谷も終盤は難しかったようで、局後は悔しそうにしていました。私は何故か序盤で良くなり、中盤で悪手連発し差が急速に縮まりましたが、最後はギリギリの逃げ切り勝利。鈴木は強豪相手に中盤までは難しい将棋でした。また、2回生の皆さんは苦しい当たりだったと思いますが、よく戦ってくださったと思います。この経験を糧にさらなる飛躍を遂げて欲しいですね。

 一日目の上位校との対戦で、前年度勝ち星の「5」を取れれば合格かなと思っていましたが、結果的に勝ち星は「4」にとどまり、目標達成に至らず、一局一局の重みを感じました。あと一つ、これが本当に遠いです。

 一日目が終わり、一週間後の関西大学と近畿大学とのA級残留を懸けた戦いに向けて相手校のオーダーをチェックした瞬間、頭が真っ白になりました。そこで初めてオーダーミスに気づきました。冷静に考えればこのオーダーは奇をてらい過ぎており、相手を嵌めることしか考えていない薄弱な思考の産物でした。また自分がかなり積極的に関与して作成したオーダーだけに、申し訳なさでいっぱいでした。しかし相手校には誰が出るか100%絶対に分からないように仕掛けがしてあるので、その強みを信じ、仲間を信じ、絶望に身を委ねることなく、できる限りのことをして対局に臨みました。

四回戦 関西大学戦 

1 布本4 ― 岡田3 ○
2 中森1 ― 斎藤4 ●
3 錦織2 ― 上田1 ●
4 吉村4 ― 芦江4 ●
5 山本4 ― 永田3 ●
6 北谷4 ― 遠藤2 ○
7 青柳1 ― 西川3 ○

3-4負け

 オーダーは最悪の状況を免れたとはいえ、各々実力の拮抗するところに当たり、難しい戦いを強いることになってしまいました。その中で、北谷は強豪相手に攻守ともに素晴らしい指し回しを魅せ、快勝。青柳も難しい将棋をまとめ、彼らしいスタイルで一軍戦初勝利。吉村も並外れた構想力で盤上を意のままに操りかけていましたが、惜しい戦いでした。関大戦はどちらが勝ってもおかしくなかったと思います。

五回戦 近畿大学戦

1 布本4 ― 朝倉1 ○
2 中森1 ― 井堰2 ●
3 錦織2 ― 徳永1 ●
4 吉村4 ― 井上4 ●
5 山本4 ― 中村1 ○
6 北谷4 ― 増田4 ○
7 青柳1 ― 平野2 ●

3-4負け

 山本、北谷は安定の勝利。しかし、ここも3-4で負けてしまい、局後は茫然自失の状態でした。もうはやくどこかに逃げたくなりました。せっかく皆さんが頑張ってくださったのに、私は一体何を考えてオーダーを作っていたのか。


 令和3年度秋季一軍戦の結果はチーム戦績0―5でA級6位となりました。私個人の振り返りは近いうちに書こうかと思います。皆さんはまずは試験を乗り越えて、それからゆっくりと一軍戦の振り返りをしていただけたらと思います。

 改めてお疲れ様でした。それではまたお会いしましょう。
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令和3年度秋季個人戦振り返り②

2021-10-28 16:38:11 | Nの本
 こんにちは、N本です。本稿では、前稿に続いて、令和3年度秋季個人戦の予選3回戦を振り返りたいと思います。お相手の方はR大学のH水さんでした。彼は強豪だということもあり、御胸を拝借する気持ちで対局に臨みました。私が後手で戦型は角換わりとなり、先手のH水さんが早繰り銀を選択して、後手の私がカウンターを狙っていく展開となりました。



 図は先手に3五に銀を進出されて、一見早くも後手ピンチのようですが、ここで有名な切り返しがありますね。ここから後手は△8六歩▲同歩△8五歩としていきます。仮に▲8五同歩だと△同飛が十字飛車になります。



 先手は8六の歩を取り込まれるまでに何か手を作る必要がありますが、例えば、本譜には現れませんでしたが、①▲2四歩という手もあります。一例ですが、以下△2四同歩▲同銀△同銀▲同飛△2三歩▲2八飛△8六歩▲8四歩△8七歩成▲同金△8四飛▲8六歩△8二飛と進んでどうか。



 この変化は角換わりで一度は見る変化だと思いますが、難解としか言いようがないでしょう。本譜は②▲3四歩でした。



 この▲3四歩のタイミングも絶妙で、後手の手を△2二銀に限定して4四銀とぶつける変化を消しています。ちなみにこの局面で△4四銀とすると、以下▲4四同銀△同歩▲8五歩と冷静に手を戻されてしまいます。これは後手がいけませんね。進んで次の局面。



 今、△8五飛に▲4六銀と引いた局面ですが、ここで①△3三歩とするか非常に悩みました。狙いとしては、以下▲同歩成△同銀として壁形を解消するとともに、将来の銀や桂馬の活用を図ろうということですが、先手も3七に桂馬を跳ねて今度は3三の銀を目標にできるので、一長一短の手ではあります。しかし、後の展開を考えると△3三歩は十分有力だったと思います。また、仕掛けるならいきなり②△6五桂とするのも有力だったようです。    
 本譜は③△5二玉として相手に手を渡しましたが、そのまま両者仕掛けられず次の局面に。



 先手は▲5八玉と寄っているので後手の主張である8筋からは遠くなっていますが、その分右辺から迫ったときに玉が戦場に近くなっています。それに着目して、ここでは①△3六歩と戦う変化を選ぶべきでした。以下、▲4五桂に△4四歩と催促し、▲3三歩成△同桂▲同桂成△同銀▲5六角△4五桂▲4九桂△5四銀とすれば後手も戦えそうです。



 もちろん、対局中にこの変化について考えなかったわけではありませんが、手順に先手の桂馬を捌かせて攻めを呼び込んでいるように感じ、さらに、手順中の△4五桂や△5四銀のような当然の一着が全く見えておらず、結局選ぶことが出来ませんでした。そこで、本譜はとにかく壁形をなんとかしようと②△3三歩と打ちましたが、すかさず▲3五飛と寄られて頭を抱えました。



 ▲3五飛の意味としては、以下△3四歩▲同飛△3三銀に▲3六飛と引いて次に▲4五桂と跳ねようということですが、図では3二の金に紐を付ける①△4二玉やじっと飛車を引く②△8一飛などが有力だったようです。本譜は一番手堅い③△3四歩▲同飛△3三歩という順を選びましたが、どうやら疑問手だったようで、先手まずまずの分かれになってしまいました。進んで次の局面に。



 今、後手が銀をなんとか使おうと1三~2四へ進出し、先手の飛車を追い返したところですが、ここで手の方針が分からず、何を思ったのか勢い△5四銀とぶつけて局面を動かしに行きましたが、これが大悪手。以下▲5四同銀△同歩に▲2二歩とされて、一気に先手に形勢が傾きました。



 この歩を①△2二同金と取ると▲3一角△3二金▲6四角成△6三銀に▲8六馬や▲4六馬で後手が勝てない将棋になってしまいます。ここではとにかく駒をぶつけて勝負に行くしか後手に勝ち目はありません。本譜は以下②△1三桂▲2一歩成△2五桂と進みました。



 対局中は①▲同桂△同銀に(1)▲7五歩や(2)▲7五桂を主に読んでいて意外と大変な勝負ではないかと思っておりましたが、満を持して(3)▲5六角と打たれると後手は飛車を縛られて相当厳しかったようです。本譜は②▲2二と△3七桂成と進行しました。



 先手はこの成桂を▲3七同金と取るよりありませんが、以下△2二金▲3一角に①△2五桂▲3八金△3五飛か②単に△5五角とするかで非常に悩みました。結局働きの悪い飛車を使う方がよいと考え、①△2五桂としましたが直後に▲3八金△3五飛には▲3六歩△同飛▲2七銀で受かることに気づきかなり焦りました。しかし、▲2七銀には後手に大変良い手があります。



 △3七桂成が感想戦で指摘された手。以下単純に進めると▲3六銀△3八成桂▲4二飛△6一玉▲2二飛成△2九成桂がなんと△3八飛以下の詰めろ。



 以下も▲4九金で難しいですが、後手も望みはある展開でしょう。戻って本譜は③△2五桂▲3八金に△5五角というあまり読みを入れていない展開を選んでしまいました。以下▲2二角成△3七桂成と進みました。



 ここでは①▲3九歩が好手で先手の優勢は揺るがなかったようですが、本譜は②▲同金△同角成▲4八金以下、両者にミスが多発する展開となりました。最終的に何故か後手が抜け出して、優勢を築いていました。進んで次の局面。



 この局面では一応先手玉には詰みがありませんので例えば、▲6三金(▲6三銀は△同金▲同角成に△5八銀から頓死)で後手玉に迫っても、先に△5五桂▲5六玉△2六飛成▲4六桂を入れて△7二金打とすれば▲6二金にも△同玉と取って後手玉に寄りはなく、後手が勝ちになります。そこで先手にはひとまず後手の早い攻めを消して手を稼ぐことが必要になりますが…。



 ▲8六銀!思考停止すること20秒。こうやって将棋は勝つのかと感銘を受けること10秒。とりあえず△4七成銀から王手が続きそうだから詰むか考えること30秒。1秒たりとも△8六同飛は考えませんでした。おそらく取れば寄らなくなるとと思い込んでいたのでしょう。ちなみにこの銀を取ると簡単な詰めろ(△7五桂以下)。本譜は△4七成銀▲8五銀△5八飛成からたくさん王手をかけましたが当然詰むはずがなく、投了。


 改めて一局を振り返って、最後にミスは出たものの、駒がぶつかってからはかなり難しい戦いだったと感じました。しかしながら、強い方と指せたので、得るものはあったかと思います。


 次の一軍戦が最後の大会になりますので、この将棋を超えるくらいのいい将棋が指したいと思っています。それではまたお会いしましょう。
 

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令和3年度秋季個人戦振り返り①

2021-10-18 11:06:18 | Nの本
 2年くらい前のことになりますが、かつてコロナが蔓延する前には、某大学将棋部様が他大学との合同合宿というものを企画しており、私もその合宿に参加させていただいたことがありました。
 その合宿では棋力順に、A級、B級、C級で参加者を分けてリーグ戦を行っていたのですが、(ちなみに私はB級で参加しました)A級でかなりの好成績を挙げたX大学将棋部のYさんのとある発言が、私を大変驚かせました。

 「このメンバーとの将棋、全敗しても全く不思議ではなかった。」

 彼ほどの実力者が、なんという謙虚さでしょうか。否、謙虚さというより油断も隙もない、ああ、私は彼に一生勝てないのだとそのとき悟りました。

 大学将棋に戦う人たちは、皆揃って実力者です。決して相手を侮ってはいけません。しかし、だからといって自ら萎縮する必要はありません。だってあなたも...。

 
 


 さて、こんにちは。N本です。今回は令和3年度秋季個人戦の振り返りをしていきたいと思います。今回は大学生活で最後の個人戦となりましたので、老害らしく、長々しく紙面を使って書こうと思います。

 1回戦はシードだったので2回戦からの出場となりました。

 2回戦のお相手はK大学のK田さんでした。K田さんは昨年の王座戦で大活躍されており、格上だという認識で挑みました。私が後手で戦型は角換わりに進み、先手のK田さんが右玉に囲っていくという展開となりました。



 ここでは、先手は▲4五桂からの攻めを狙っていますので、△4二玉としましたが、後の展開を考えると△4四歩もありそうです。以下、進んで次の局面。



 ここで恐れていたのは▲6六銀でした。以下△8六歩▲同歩△同飛に①▲5五歩や②▲7七桂とされると分かりませんでした。ちなみに①▲5五歩に△6五歩は▲9七角で王手飛車がかかってしまいます。これは後手の玉の位置がいけませんね。
 


 本譜は▲6六銀に代えて▲6八銀から先手が雁木右玉に組んで行きました。



 上図は後手が手損ながらもなんとか雁木中住まいを目指そうとしている局面ですが、このタイミングで▲8五歩とされると嫌でした。以下△同桂▲8九飛△8四歩で局面は一応収まりますが、そこで▲4五歩と突く手があります。以下△同歩なら▲8五桂△同歩に▲4四桂が厳しいですね。



 この局面では堂々と①△4五同歩▲8五桂に△4三銀とする手や、②△1五歩と右玉の弱点である端を攻める手、③△7七桂成▲同金に堂々と△8五歩と突く手などがあったようですが、対局中は全く頭になく、上図の局面は後手厳しいかと思っておりました。しかし、本譜は先手が冷静に▲8七歩と収めたので一安心しました。以下、進んで次の図。



 今、先手が▲9八香と上がって9筋の端攻めを見せたところですが、ここで慌てて9筋を受けようと①△8四角とするとすかさず▲8六歩と突かれ、今度は打った角を目標にされてしまいます。ここは悪くなっても攻め合いになれば勝機はあるとみて、本譜は堂々と②△3三桂としました。



 ここでは▲9五歩△同歩▲9九飛を本線に読んでいました。さすがに①△1五歩とはいけませんので、②△8五桂に期待していました。以下、放っておくと△7七桂成▲同金△8八角がありますので、▲8五同桂と取りますが、△同飛▲7七桂と使わせて△8四飛でどうか。これは後手も戦えそうです。



 よって先手は▲9九飛と力をためるのですが、ここで△1五歩と攻めていきました。後手玉は1筋から遠いので思い切った攻めができるのです。以下▲同歩△1七歩としました。



 振り返ってみればこの局面が本局最大の山場だったと思います。ここではやはり▲9五歩と攻め合われる順を警戒していました。以下、単純に攻め合うと、△1五香▲9四歩△1八歩成▲9三歩成△1九と▲8二と△1一飛▲9一香成△2七成香に▲5九玉と引く手が好手で後手がまずそうです。



 そこで後手はどこかで変化しなければいけませんが、対局中は全く分かっていませんでした。有力な変化として、例えば△1五香と歩を取る手に代えて△1八歩成▲同香△2七角と打つ手があったようですが、これが見えたかどうか...。▲9五歩ならまずいなと対局中は悲観していました。戻って後手は△1七歩に代えて△1六歩とし、▲9五歩には△1七歩成とと金にして次に△2七ととする変化が有力だったようです。



 しかし、本譜は▲1七同香でしたので、△2六角と打つことができ好転を感じました。次に△2五桂が厳しい一着となります。



 進んでこの局面(盤面反転してあります)ですが、ここで決め手があります。






 銀を引いてもまだ後手優勢だと思いますが、甘い手を指し続けると大学将棋はいくらでも粘られます。-3000点からの逆転などざらにあることです。ここでは後手の陣形を支える7八の桂馬に目を付けて△7七歩としました。(銀を引く以外の手なら優勢を維持できます)以下▲同玉に△8五桂で後手の攻めが繋がりそうです。以下は無事に寄せきることができました。

 正直に申し上げると、この内容は出来すぎで、後手の駒組みには問題点が多いように思われます。仕掛けに関しても精彩を欠いており、自分の甘さが出なかっただけよかったと思います。その甘さは3回戦に露呈することになるのですが...。

 
 次項に続く。







 

 

 
 

 
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