虚無交換日記

神戸大学将棋部の住人たちによるブログ

令和3年度秋季個人戦振り返り②

2021-10-28 16:38:11 | Nの本
 こんにちは、N本です。本稿では、前稿に続いて、令和3年度秋季個人戦の予選3回戦を振り返りたいと思います。お相手の方はR大学のH水さんでした。彼は強豪だということもあり、御胸を拝借する気持ちで対局に臨みました。私が後手で戦型は角換わりとなり、先手のH水さんが早繰り銀を選択して、後手の私がカウンターを狙っていく展開となりました。



 図は先手に3五に銀を進出されて、一見早くも後手ピンチのようですが、ここで有名な切り返しがありますね。ここから後手は△8六歩▲同歩△8五歩としていきます。仮に▲8五同歩だと△同飛が十字飛車になります。



 先手は8六の歩を取り込まれるまでに何か手を作る必要がありますが、例えば、本譜には現れませんでしたが、①▲2四歩という手もあります。一例ですが、以下△2四同歩▲同銀△同銀▲同飛△2三歩▲2八飛△8六歩▲8四歩△8七歩成▲同金△8四飛▲8六歩△8二飛と進んでどうか。



 この変化は角換わりで一度は見る変化だと思いますが、難解としか言いようがないでしょう。本譜は②▲3四歩でした。



 この▲3四歩のタイミングも絶妙で、後手の手を△2二銀に限定して4四銀とぶつける変化を消しています。ちなみにこの局面で△4四銀とすると、以下▲4四同銀△同歩▲8五歩と冷静に手を戻されてしまいます。これは後手がいけませんね。進んで次の局面。



 今、△8五飛に▲4六銀と引いた局面ですが、ここで①△3三歩とするか非常に悩みました。狙いとしては、以下▲同歩成△同銀として壁形を解消するとともに、将来の銀や桂馬の活用を図ろうということですが、先手も3七に桂馬を跳ねて今度は3三の銀を目標にできるので、一長一短の手ではあります。しかし、後の展開を考えると△3三歩は十分有力だったと思います。また、仕掛けるならいきなり②△6五桂とするのも有力だったようです。    
 本譜は③△5二玉として相手に手を渡しましたが、そのまま両者仕掛けられず次の局面に。



 先手は▲5八玉と寄っているので後手の主張である8筋からは遠くなっていますが、その分右辺から迫ったときに玉が戦場に近くなっています。それに着目して、ここでは①△3六歩と戦う変化を選ぶべきでした。以下、▲4五桂に△4四歩と催促し、▲3三歩成△同桂▲同桂成△同銀▲5六角△4五桂▲4九桂△5四銀とすれば後手も戦えそうです。



 もちろん、対局中にこの変化について考えなかったわけではありませんが、手順に先手の桂馬を捌かせて攻めを呼び込んでいるように感じ、さらに、手順中の△4五桂や△5四銀のような当然の一着が全く見えておらず、結局選ぶことが出来ませんでした。そこで、本譜はとにかく壁形をなんとかしようと②△3三歩と打ちましたが、すかさず▲3五飛と寄られて頭を抱えました。



 ▲3五飛の意味としては、以下△3四歩▲同飛△3三銀に▲3六飛と引いて次に▲4五桂と跳ねようということですが、図では3二の金に紐を付ける①△4二玉やじっと飛車を引く②△8一飛などが有力だったようです。本譜は一番手堅い③△3四歩▲同飛△3三歩という順を選びましたが、どうやら疑問手だったようで、先手まずまずの分かれになってしまいました。進んで次の局面に。



 今、後手が銀をなんとか使おうと1三~2四へ進出し、先手の飛車を追い返したところですが、ここで手の方針が分からず、何を思ったのか勢い△5四銀とぶつけて局面を動かしに行きましたが、これが大悪手。以下▲5四同銀△同歩に▲2二歩とされて、一気に先手に形勢が傾きました。



 この歩を①△2二同金と取ると▲3一角△3二金▲6四角成△6三銀に▲8六馬や▲4六馬で後手が勝てない将棋になってしまいます。ここではとにかく駒をぶつけて勝負に行くしか後手に勝ち目はありません。本譜は以下②△1三桂▲2一歩成△2五桂と進みました。



 対局中は①▲同桂△同銀に(1)▲7五歩や(2)▲7五桂を主に読んでいて意外と大変な勝負ではないかと思っておりましたが、満を持して(3)▲5六角と打たれると後手は飛車を縛られて相当厳しかったようです。本譜は②▲2二と△3七桂成と進行しました。



 先手はこの成桂を▲3七同金と取るよりありませんが、以下△2二金▲3一角に①△2五桂▲3八金△3五飛か②単に△5五角とするかで非常に悩みました。結局働きの悪い飛車を使う方がよいと考え、①△2五桂としましたが直後に▲3八金△3五飛には▲3六歩△同飛▲2七銀で受かることに気づきかなり焦りました。しかし、▲2七銀には後手に大変良い手があります。



 △3七桂成が感想戦で指摘された手。以下単純に進めると▲3六銀△3八成桂▲4二飛△6一玉▲2二飛成△2九成桂がなんと△3八飛以下の詰めろ。



 以下も▲4九金で難しいですが、後手も望みはある展開でしょう。戻って本譜は③△2五桂▲3八金に△5五角というあまり読みを入れていない展開を選んでしまいました。以下▲2二角成△3七桂成と進みました。



 ここでは①▲3九歩が好手で先手の優勢は揺るがなかったようですが、本譜は②▲同金△同角成▲4八金以下、両者にミスが多発する展開となりました。最終的に何故か後手が抜け出して、優勢を築いていました。進んで次の局面。



 この局面では一応先手玉には詰みがありませんので例えば、▲6三金(▲6三銀は△同金▲同角成に△5八銀から頓死)で後手玉に迫っても、先に△5五桂▲5六玉△2六飛成▲4六桂を入れて△7二金打とすれば▲6二金にも△同玉と取って後手玉に寄りはなく、後手が勝ちになります。そこで先手にはひとまず後手の早い攻めを消して手を稼ぐことが必要になりますが…。



 ▲8六銀!思考停止すること20秒。こうやって将棋は勝つのかと感銘を受けること10秒。とりあえず△4七成銀から王手が続きそうだから詰むか考えること30秒。1秒たりとも△8六同飛は考えませんでした。おそらく取れば寄らなくなるとと思い込んでいたのでしょう。ちなみにこの銀を取ると簡単な詰めろ(△7五桂以下)。本譜は△4七成銀▲8五銀△5八飛成からたくさん王手をかけましたが当然詰むはずがなく、投了。


 改めて一局を振り返って、最後にミスは出たものの、駒がぶつかってからはかなり難しい戦いだったと感じました。しかしながら、強い方と指せたので、得るものはあったかと思います。


 次の一軍戦が最後の大会になりますので、この将棋を超えるくらいのいい将棋が指したいと思っています。それではまたお会いしましょう。
 

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令和3年度秋季個人戦振り返り①

2021-10-18 11:06:18 | Nの本
 2年くらい前のことになりますが、かつてコロナが蔓延する前には、某大学将棋部様が他大学との合同合宿というものを企画しており、私もその合宿に参加させていただいたことがありました。
 その合宿では棋力順に、A級、B級、C級で参加者を分けてリーグ戦を行っていたのですが、(ちなみに私はB級で参加しました)A級でかなりの好成績を挙げたX大学将棋部のYさんのとある発言が、私を大変驚かせました。

 「このメンバーとの将棋、全敗しても全く不思議ではなかった。」

 彼ほどの実力者が、なんという謙虚さでしょうか。否、謙虚さというより油断も隙もない、ああ、私は彼に一生勝てないのだとそのとき悟りました。

 大学将棋に戦う人たちは、皆揃って実力者です。決して相手を侮ってはいけません。しかし、だからといって自ら萎縮する必要はありません。だってあなたも...。

 
 


 さて、こんにちは。N本です。今回は令和3年度秋季個人戦の振り返りをしていきたいと思います。今回は大学生活で最後の個人戦となりましたので、老害らしく、長々しく紙面を使って書こうと思います。

 1回戦はシードだったので2回戦からの出場となりました。

 2回戦のお相手はK大学のK田さんでした。K田さんは昨年の王座戦で大活躍されており、格上だという認識で挑みました。私が後手で戦型は角換わりに進み、先手のK田さんが右玉に囲っていくという展開となりました。



 ここでは、先手は▲4五桂からの攻めを狙っていますので、△4二玉としましたが、後の展開を考えると△4四歩もありそうです。以下、進んで次の局面。



 ここで恐れていたのは▲6六銀でした。以下△8六歩▲同歩△同飛に①▲5五歩や②▲7七桂とされると分かりませんでした。ちなみに①▲5五歩に△6五歩は▲9七角で王手飛車がかかってしまいます。これは後手の玉の位置がいけませんね。
 


 本譜は▲6六銀に代えて▲6八銀から先手が雁木右玉に組んで行きました。



 上図は後手が手損ながらもなんとか雁木中住まいを目指そうとしている局面ですが、このタイミングで▲8五歩とされると嫌でした。以下△同桂▲8九飛△8四歩で局面は一応収まりますが、そこで▲4五歩と突く手があります。以下△同歩なら▲8五桂△同歩に▲4四桂が厳しいですね。



 この局面では堂々と①△4五同歩▲8五桂に△4三銀とする手や、②△1五歩と右玉の弱点である端を攻める手、③△7七桂成▲同金に堂々と△8五歩と突く手などがあったようですが、対局中は全く頭になく、上図の局面は後手厳しいかと思っておりました。しかし、本譜は先手が冷静に▲8七歩と収めたので一安心しました。以下、進んで次の図。



 今、先手が▲9八香と上がって9筋の端攻めを見せたところですが、ここで慌てて9筋を受けようと①△8四角とするとすかさず▲8六歩と突かれ、今度は打った角を目標にされてしまいます。ここは悪くなっても攻め合いになれば勝機はあるとみて、本譜は堂々と②△3三桂としました。



 ここでは▲9五歩△同歩▲9九飛を本線に読んでいました。さすがに①△1五歩とはいけませんので、②△8五桂に期待していました。以下、放っておくと△7七桂成▲同金△8八角がありますので、▲8五同桂と取りますが、△同飛▲7七桂と使わせて△8四飛でどうか。これは後手も戦えそうです。



 よって先手は▲9九飛と力をためるのですが、ここで△1五歩と攻めていきました。後手玉は1筋から遠いので思い切った攻めができるのです。以下▲同歩△1七歩としました。



 振り返ってみればこの局面が本局最大の山場だったと思います。ここではやはり▲9五歩と攻め合われる順を警戒していました。以下、単純に攻め合うと、△1五香▲9四歩△1八歩成▲9三歩成△1九と▲8二と△1一飛▲9一香成△2七成香に▲5九玉と引く手が好手で後手がまずそうです。



 そこで後手はどこかで変化しなければいけませんが、対局中は全く分かっていませんでした。有力な変化として、例えば△1五香と歩を取る手に代えて△1八歩成▲同香△2七角と打つ手があったようですが、これが見えたかどうか...。▲9五歩ならまずいなと対局中は悲観していました。戻って後手は△1七歩に代えて△1六歩とし、▲9五歩には△1七歩成とと金にして次に△2七ととする変化が有力だったようです。



 しかし、本譜は▲1七同香でしたので、△2六角と打つことができ好転を感じました。次に△2五桂が厳しい一着となります。



 進んでこの局面(盤面反転してあります)ですが、ここで決め手があります。






 銀を引いてもまだ後手優勢だと思いますが、甘い手を指し続けると大学将棋はいくらでも粘られます。-3000点からの逆転などざらにあることです。ここでは後手の陣形を支える7八の桂馬に目を付けて△7七歩としました。(銀を引く以外の手なら優勢を維持できます)以下▲同玉に△8五桂で後手の攻めが繋がりそうです。以下は無事に寄せきることができました。

 正直に申し上げると、この内容は出来すぎで、後手の駒組みには問題点が多いように思われます。仕掛けに関しても精彩を欠いており、自分の甘さが出なかっただけよかったと思います。その甘さは3回戦に露呈することになるのですが...。

 
 次項に続く。







 

 

 
 

 
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もうすぐ一軍戦

2021-10-09 15:02:24 | ts
お久しぶりです。M2の白河原です。

来月には、一軍戦が開催されますね。春季は中止でしたが、4回生にとって最後になる秋季は開催されることになり、良かったと思います。ただ、前年と同様に選手以外の人は立ち入れないので、観戦に行けないのが個人的には残念です。

コロナの影響で部室に行けない期間が長く続き、将棋部の存続自体どうなることかと思っていた時期もありましたが、2回生たちが精力的に活動してくれているおかげで、なんとかなりそうです。このブログ読んでくれたんですかね(たぶんそういうことではない、、、というか自分で書いたの忘れてた、)。

強かった世代が昨年卒業したため、一軍戦は厳しい戦いを強いられることになるとは思います。ただ、我々は幾度となくピンチを乗り越えてきたので今回も期待しています。皆さん頑張ってください!
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