鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

(また臨時版3)~運転感覚なしの理想郷思想~

2015年04月08日 | 米国への無知を正す





理想社会のビジョンをかかげて人々の社会感覚に与えた影響力で見ると、マルクスの社会思想のインパクトは群を抜いている。

この思想の構造はすでに「政治見識のための政治学」のなかで示したが、ここでその要点を再び示そうと思う。




<マルクス経済思想の骨子>

マルクスの大著『資本論』は、資本主義経済の特性を鋭く分析し、その前途は真っ暗闇だと展望した。
彼はこのシステムは必ず総需要不足に陥って行き詰まる、とした。

その論理は次のようになっていた。


~資本主義は、人民を自由にしておき、市場メカニズムでもって経済を運営しようという行き方だ。

だが、そこでは資本家が、生産手段を私有し、雇用する労働者に、しかるべき賃金を支払わない。
つまり搾取している。

資本家はその搾取分を独り占めし、その一部を自分たちの贅沢な生活に使い、残った分を、生産機械に再投資する。

すると、工場は機械化され生産効率が上がるので、その分、労働者がいらなくなる。
資本家は要らなくなった労働者を解雇するので彼らは失業者となる。

こういうことが社会のあちこちで起きるので、国全体の国家の総所得は減少する。

するとその分、国内の商品総需要需要が減り、ものが売れなくなる。
そしてその分また生産出来なくなるので、労働者を解雇する。

資本主義方式では、国家経済はこういう総需要縮小過程を必然的にたどる。
国全体としては有り余る生産手段を持ちながら、それを発揮できない状態に陥っていくのだ~と。


+++

彼はこの矛盾した状況を生み出す根底原因は、私有財産制度にあると認識した。
これがあるから、資本家は生産手段を占有でき、労働者の搾取が出来るのだ。

だから私有財産制をなくし、生産手段を公有化すれば、経済の桎梏(しっこく)はとりのぞかれるはずだ。
生産力は全開し、人類は、豊かな理想郷に直進できる。
理想社会は必然的に実現される。

~これがマルクスの社会経済理論だった。





<無産階級による暴力革命>

マルクスはさらに考える。

~しかし、資本家は自分たちの財産と豊かな生活を手放さないだろう。
だから、労働者が団結して力でもって取り上げ、公有化するしかない。

資本主義が成熟すればあちこちで暴力革命が起き、人類は理想郷に至るだろう~と。





<驚異的な扇動力>

この思想は驚異的な扇情力を発揮した。

まず人の心に、搾取という不平等な行為をなくそう、という正義感を燃え立たせた。

第二に、社会の全員が愛でもって結びあえる理想郷への夢を、人々の心に与えた。

そして、この理論は、骨子がとてもわかりやすかった。
説明は、大衆にも受容され、彼らの運動エネルギーも結集させた。

このエネルギーが戦後、世界の半分近くの国々を社会主義国家にした。
しかもこれらの勢力は、全世界を共産化しようという強い意図をも保持していた。




<運転者感覚なしの経済理論>

だが、この理論は革命後の社会を運転していく運営者の感覚を全く欠いていた。

すべての企業を国有化をすれば実際には、国家や地方の行政部門に何千という企業をまとめることになる。

それらを関係づけて国家規模での生産活動をさせるには、各企業に生産ノルマを与え、それを「命令 ⇒ 服従 ⇒ 懲罰」の原理で運営するしかない。

必然的にそれは、一党独裁による恐怖統治体制となる。

人民は、理想郷とは裏腹に、恐怖の中で働き生きることになった。





<マスコミ担当者の目も塞ぐ>

この事実に戦後も、世界のほとんどのマスコミ担当者は目が開かなかった。
彼らもまた、その強大な扇情力に圧倒されていたのだ。

驚くべきことであった。




<日本の知識人と学生への影響>

日本国家は戦後、米国に防御されることによって共産化はしなかった。
だが、いわゆる知識人や学生の社会観は、マルクス思想で占められた。
 
マルクス思想は、帝国主義論にも展開した。

~国内の総需要が不足すると、資本家は海外に売り先を求めるようになる。
彼らは国家権力を使ってそのための植民地を造り、それを自らの帝国圏とする。
 
こうして資本主義は、帝国主義に展開する。
米国はいますでに帝国主義国家の頭目だ。

~彼らの心は、この考えでいっぱいになった。

すると日米安全保障条約は、そういう米国の勢力維持手段とみえてくる。
これと戦って、共産社会を造ることが、最高に価値あること、となる。

かくして、言論家も学生も安保反対運動に突入した。
この条約が改正されると、反対運動の流れの中から、全共闘運動が出現した。




<ベルリンの壁崩壊以後>

1990年代にベルリンの壁が崩壊すると、日本社会でもマルクス思想は下火になった。
だが、上記に述べたマルクス思想における致命的な欠陥、運転当事者感覚の欠如、には知識人もジャーナリズムも依然として気付いていない。

ただなんとなく、マルクスの考えはもう古くなった、との感慨を漠然ともっているだけである。
恐怖政治体制の恐ろしさには、気付いていない。

それ故に、自由市場経済に問題が生じる毎に、マルクス思想は、理想郷の夢を伴って浮上する。

これが日本の現状である。

この問題は、もう少し論じよう。






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