さて部屋の扉か壁かをすり抜けて、部屋に現れたイエスの復活の身体をどう物理的にイメージするか。
投影して理解できそうな物理学知識は量子力学のそれだ。
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量子力学(量子論)は、物質の根源に関する画期的な発見をしている。
従来の物理学では、究極の物質は「素粒子」だった。
原子を構成する、陽子、中性子、電子などの「つぶつぶ」の物質だと考えられてきた。
ところが、量子論は、根源は「振動(波動)」であると明かしたのだ。
今回は、その画期的な発見を証拠づけた、実験を紹介する。
<二重スリット実験>
それは「二重スリット実験」と呼ばれている。
実験は次のように行われた。
まず、下図のように、電球の光を、縦の二本のスリット(隙間、切れ目)のある板に当てて、光がその奥に立てかけてある壁に映し出される姿を見た。
電球の光は、物理学的には光子(こうし)という素粒子だ。
ちなみに光子は、我々の目に外部の物質の姿を認知させてくれる素粒子でもある。これが物質に当たって反射し、我々の眼球を通って網膜に影響を与える。我々はそれを受信し、脳の中で映像に変換して姿を認識している。
<粒子なら二本の縦線が壁に出来るはず>
さて、もしも光子が粒子(つぶつぶのもの)ならば、その奥に立てかけてある壁には、二本の縦線ができるはずだった。下の図のように。
<だが、縞模様(干渉縞)になった>
ところが実際にはなんと、縦線は下の図のようにタテの縞模様(しまもよう:干渉縞という)になった。
これは光子と呼ばれていた物質が、実は、つぶつぶの粒子だけではなかったことを示唆している。
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縞模様になるのは、光子が波動をも含んでいるからだ。
波は左右各々のスリットから出るとき、下の図のように、扇状に広がって出ていく。
すると左右の波の高い(濃い)ところが重なり合う。そこは、波は互いに増幅し合ってより高くなり、明るさが濃くなる。
逆に、高いところと低いところとが重なる部分は、波は打ち消しあって弱くなり、明るさは薄く(暗く)なる。
そこで、下の図のように、濃い部分が明るい縦の筋(縦線)となっていくのだ。
この実験で、従来素粒子と認識されていた光子は、実はつぶつぶの粒子と波動から成っている二重存在だったことがわかった。
<物質一般の根源も>
光子のこの性格は、電子など他の素粒子についても確かめられた。
さらにその性格が分子についての実験でもみとめられ、物質の根源が粒子と波動という二重存在であることは確定的になった。
研究者はその「振動(波動)でも粒子でもありそうな」不思議な存在に、量子(クオンタム:quantum)との名を与えた。
この思想の上で作り上げられてきている物理学知識が量子物理学だ。それは通常量子力学と呼ばれる。
<より根源的な方は波動>
その後、波動と粒子の内で、波動の方が根源的であると理解されるようになった。
従来素粒子だとみられてきたものは、実は波動の一部が凝集した部分だと考えられたのだ。
その凝集した波動を学者たち「波束(はそく:波動の束)」と呼んでいる。
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いまや量子力学の存在論は、従来の(粒子ベースの)物理理論の存在論よりも妥当性が高い。
そういう認識は日を追うにつれて増大してきている。
実際に超高速の量子コンピューターが造られるという事実もまた、量子理論の正しさを証拠づけている。
そうしたこともあって、今やそれ以前の物理学(ニュートンやアインシュタインの)は古典物理学と呼ばれるに至っている。
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この量子力学の思想は、復活のイエスの身体を物理学的に理解するに助けになりそうだ。
次回はそれを試みよう。
(続きます)