鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

<臨時版>カンヌ国際広告祭から2 

2009年11月21日 | ヨハネ伝解読
前回の続きです。もう一度CMを見てみましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=Wy52yueBX_s



                    

このバックラウンドソングとして使われているIn the Airの歌詞は、
全体として何を言っているか漠然としていて、様々な解釈を生んでいるようです。
友人(または家族)が溺れている現場にいながら見ているだけで助けることができなかった男の話だとするのもあり、
そうかといえば作者のPhil Collins自身は、前妻との結婚生活におけるフラストレーションを描いたもの、
と言っているとも伝えられていますが、
そういういろんな解釈が出来る多義的で意味深なところが大ヒットの一条件なのでしょう。
(簡単にわかってしまわれると簡単に飽きられるのです)


                    

 だが、CMでは、その冒頭にもってきたサビの部分
~冒頭で視聴者を惹き付けるべくサビを先頭にもってくるのを、「サビ頭」ともいうそうです~だけが使われている。
もう30年も前のヒット曲です。視聴者はその部分だけを独立に解釈する可能性が大です。
そして、そのように受け取ってCMの映像展開と組み合わせると、これはやはり
「ゴリラが創造主から創造的な精神エネルギーを受けて~ゴリラですらも~曲想をえて演奏する」
としか受容しがたいものでしょう。
 そして聖書文化圏の人々は、それにそった思想を意識の底に持っているのです。


                    


<L字型意識とハイフン型意識>

 西欧人の意識は、自分目線の人間世界に向かっている(これを「世的:secular」といいます)。
と同時に、自分の上方、すなわち「いと高きところ」にも向かっています。
そんなことが出来るか、と思われますが、人間にはこれが出来るのです。


                     

人間の意識は多重人格的です。
例えば、誰かに向かって感情をぶつけている時、
それを(俺は感情的になりすぎているかなあ~)と見ているもう一人の自分がいる。
 マックス・ウェーバーという社会科学者は、人間のそういう意識能力を前提にして、
追体験という認識手法を薦めました。
歴史上の人物の心情を理解する時、まず、自分がその状況にいると創造し、人物に感情的に同化してしまう。
すると自分の心が動きますが、それをもう一つの自分でもって観察し記述します。
これが追体験手法ですが、こんなこと人間が複数の人格を同時に働かせられるという前提なくしては、
言えないことなのですね。


                    



 話を戻しますと、ですから人間は意識を上方に向けながら同時に横一線方向にも向けていることが出来る。
でなかったら、西欧人はいと高き方向に意識を向けつつ街を歩いている時、
互いにバンバンぶつかり合うことになるでしょう。

 これを象徴的に、西欧人の意識はL字型になっていると言うこともできるでしょう。

                    

対して日本人は横一線のハイフン型となります。
横一線だけの世界意識は通常自分目線の「世的」(セキュラー)な人間世界だけに関するものです。
テレビドラマもバラエティー番組で交わされる会話も、日本ではセキュラー世界だけのものです。

 日本ではそれが当たり前としてなされていますが、これをL字型文化圏の人間が見ると、
「なんと世的なことか・・・(How secular・・・)」と言うことになる。
米国人には顔をしかめてそういう人が沢山います。(米国ではungodlyともいいます)

                    


<ずっとずっとマクセルCM>

 実はこの年確か、日本から日立マクセルのCMが候補参加作品として持ち込まれていたはずです。
日本の鹿児島の南方にある小さな離島で小学校が閉校になりました。
生徒は女子三人で、彼女たちが最後の卒業式に近づいていく状況を記録した
ドキュメンタリータッチの番組を同社は作りました。


                    

村の人々の感慨と共に描いた、涙なみだの映像で、
それを背景に用いた120秒のドキュメント風CMが作成された。
商品は日立マクセルのDVDディスク。思い出をず~と残せる記録媒体として、
「ず~と、ず~とマクセル」と最後に提示するものでした。

http://www.youtube.com/watch?v=TSLeih1tRkI


 このCMは心に「浸み込む」希なる作品として、
ACC賞(各年度のコマーシャルを表彰する日本では最も権威のある賞)グランプリを受賞しました。

 関係者の絶賛を浴びて受賞でしたので大きな自信と期待を伴ってのカンヌ参加でした。
ところが、英国のゴリラCMのグランプリ受賞となった。
日本広告マンが結果を聞いて不快感すら覚えたのは、そういう事情もあったともみられます。


                    

<究極の“癒し”とは?>

 鹿嶋は、実は、この「ず~と、ず~と」CMが「今年こそは」の意気込みで持ち込まれようとしている時、
「たぶんダメだろうなぁ・・・」と感じていました。
当事者たちの意気を削ぐことも避けたいと、口には出しませんでしたがそう思っていた。

                    

こういう人間世界だけの、人間相互の情感「だけを」深掘りして描くような作品は、
国際社会では異質なものなのです。(中国人にとってもおそらくそうでしょう)

 日本では、この情感、この涙こそが究極の“癒し”と信じて疑われませんが、
西欧社会ではこれは「なんと世的なことか・・・(How secular・・・)」ともなるのです。
このギャップは大きい。
 鹿嶋はこのことを1994年に、『聖書の論理が世界を動かす』(新潮選書)で書きましたが、
読者は限られた人々だったようです。


                    

<「異文化ストレス」最大の癒し>

前述しましたように、日本ではTV番組もみなこのセキュラーワールドのイメージ世界でもって作られ放映されています。
情報化時代と言いますが、実は、西欧文化の思想背景はほとんど日本のマスメディアでは情報化されていない。
対して世俗ワールドのイメージ世界は、テレビメディアを通してますます大量に発信されていきます。
ハイフン型世界意識はますます再造成・再補強されているのです。

 このままの状態で世界諸国が情報的に相互接近していけば、異文化ストレス増大の勢いが強くなるでしょう。
これは鬱状態を生みます。日本の対処策は、ただひとつ、
L字型精神文化を知的に「理解」することです。
理解は異文化ストレスへの最大の癒しです。
完全な癒しまでに行かないにせよ、不快感を抱かされるのは少なくとも避けることができるでしょう。



                    


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<臨時版> カンヌ国際広告祭から

2009年11月16日 | ヨハネ伝解読
                    


<日本広告マンの戸惑い>

 今回は、少し視点を変えて広告の世界から福音思想を覗いてみます。

                    

ページの右側上部に、文字サイズを変更できる機能を入れました。
「大」をクリックすると、文字が大きくなります。


                    


BGMは相変わらずmariさんのこれを感謝して使わせていただきます。

http://aiai.hukinotou.com/

(クリックして最小化し、もう一つエクスプローラ画面を開いて
春平太チャーチを開くとBGMのある状態で読むことが出来ます)


                    


さて南仏の地中海沿岸にカンヌという街があります。
国際映画祭で有名になったフランスの小都市ですが、ここでは同じ時期に毎年、国際広告祭というのも行われます。
その2008年フィルム部門グランプリに、英国のGorillaと題するCMが選ばれました。

 英国キャドバリー社チョコレートの90秒CMで(現在日本で流されているCMはほとんど15秒)、
フィル・コリンズというドラマー兼シンガーソングライターのヒット曲(1981年)の
冒頭部分に合わせてゴリラがドラムを叩き、
最後にデイリーミルクチョコレートが小さく提示され
 a glass and a half full of joy という商品スローガンが示されて終わるという作品で,次のようなものです。

http://www.youtube.com/watch?v=Wy52yueBX_s


                    


 これが日本から出向いた広告マンたちに大きな戸惑いと不満を生みました。
「意味がわからない」「どこが面白いかわからない」「クオリティが高いと思えない」
「美しい映像もない」「気の利いた捻りもない」「ゴリラがドラムを叩いているだけの作品だ」等々で、
不快感を抱いた人もいたということでした。

 ところがこれが英国で大ヒットの話題作となり、
デイリーミルクチョコレートブランドの売上は1割近くアップし、
おまけにキャドバリー社への好感度も大幅に高めたという。 
日本の広告人たちには、どうしてそんな成功がもたらされたのか、皆目わかりませんでした。

                    


<繰り返されたBGMソング>

この話を聞いた鹿嶋は、その映像をゆっくり鑑賞する機会を得て次のことに気付きました。

90秒というのは1分半で、CMとしてはとても長いものです。
その前半にはゴリラがドラムを叩く前の結構長い沈黙の時間がありました。
まず、ゴリラの鼻の部分のアップから始まり、カメラが引かれてゴリラ全体の姿が現れます。
ゆっくりした映像展開です。
 それに並行して、BGM(背景音楽)の唄が流れます。歌詞は~

 ♪創造主よ、今宵気配を感じます
(I can feel it coming in the air tonight, Oh Lord)

   ♪主よ、この瞬間をどれだけ待ちわびたことか
(I've been waiting for this moment all my life, Oh Lord)

 ~です。これが2回繰り返されます。
次いで一瞬の沈黙の後、ゴリラの手が意を決したかのごとくに突然動き始め、ドラム演奏をしていました。
 その間、上記の歌詞のBGMがもう一度繰り返して流れ(三度目)、
デイリーミルクチョコレートが小さく提示され
 a glass and a half full of joy という商品スローガンが、さりげなく示されて終わっていました。


                    


 それを見た時、鹿嶋には、このCMに込められたコンセプト(思想)がよくわかりました。
聖書では創造的な精神エネルギーは音楽に限らず、すべて万物の創造主から来るという思想です。
創造主なる神こそが、創造エネルギーの源泉という思想が根底にある。
CMゴリラはその思想を視聴者に訴求するものであることが、手に取るようにわかった。
その思想を、ゴリラでさえも~人間だけでなく~精神エネルギーを受けると音楽を創り出すのだ、
という形で訴求していたのです。


                    


<評価されたのは>

 それが英国人に受け、カンヌ国際広告祭の審査員たちに評価されたのは、
欧米人の心の底にはバイブル思想が流れていることによります。
だが、欧米人とて多忙なこの世に生き、現在ではとりわけこの世的な情報過多の中で暮らしています。
その結果、いと高きところに意識されるべき創造主をついつい放念しがちな日々を送っている。
その彼らにCMゴリラは根底思想を再自覚させた。

人間には各々、幼いころから胸の内にはぐくまれた思想、情感があります。
それは忘却されていてもほんの一寸した働きかけによって心に浮上する。
そのとき、人は旧来の友に久しぶりにあったような懐かしさの感動と共に、それを味わいます。

この情感に企業、商品メッセージがつながり、長く心に浸み込むCM作品となったのです。

                    


 <サントリーCM「雁風呂編」>
 
 意識の根底に流れる思想を呼び起こし、心に残る作品となったCMは日本にもあります。
昭和48年に「雁風呂編」と題して放映したサントリー「角瓶」のCMがそれで、
これは日本人意識の根底に流れる無常感を呼び起こしました。

http://blog.livedoor.jp/cm_library/tag/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC

 冬の季節に北国から日本の津軽の浜にまでたどり着いた雁は、再び日本の南の空に飛んでいき、
冬が終わるとまた津軽に戻ってきて北国に去っていく。
そのとき生きて帰れなかった雁を津軽の漁師たちは供養した~という言い伝えを
作家山口瞳を登場させて描いた60秒CMは、
日本人視聴者の心に眠っていた無常感を揺り起こし、深い共感を得ました。

                    

 この作品のコンセプトなら、日本の広告マンは把握したでしょう。
だがゴリラCMに込められた聖書思想のコンセプトは読めなかった。
3度にわたって繰り返し流されたBGMの歌詞も、彼らには冗談めかした台詞程度のものにしか見えなかった。
ここには聖書思想を知らない人間の持つ、西欧文化に対する、どうしようもないほどの無明が現れています。


                    


 このことは、日本人に西欧文化を伝えることとはどういうことかを、深いところで考えさせます。
福音はそのベースになっていますからこれを正確に伝える仕事も容易なことではありません。
次回もうすこし考えてみようと思います。


                    



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