鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

全政治家はマルクス理論の明確な理解を!

2017年10月31日 | 政治見識のための政治学




市場システムを否定し、計画生産をすれば、
人民は恐怖政治のもとで地獄の生活をせねばならなくなります。
前回それを理論的に明かしましたが、人々はその認識に至りませんでした。

マルクスの提示した夢の理想郷(の幻影)に目を奪われ、心を奪われたのです。
「共産社会になれば、人々は能力に応じて働き、必要に応じて取る生活が出来るようになる」
~マルクスはこうたたき込みました。

これは聖書『使徒行伝』にある聖句のパクりですね。
そこにはキリスト教の初代教会の状況を記録した次のような聖句があります~。



・・・・・・・・・・・・・・
「信徒たちは、みないっしょにいて、いっさいのものを共有にしていた。
そして、資産や持ち物を売っては、それぞれの必要に応じて、
みなに分配していた」(2章44-5節)
・・・・・・・・・・・・・・







人々はあの素晴らしい資本主義社会の分析をする大天才マルクスによるのだから、とその幻影を信じました。
その結果、20世紀半ばには、世界の半分が共産主義国家になりました。
驚くべきマルクスの扇情力です。

日本でも、共産主義国家実現のためにいのちを投げ出した若者が沢山でました。
彼らは、共産党という政党を、戦前に結成しました。

戦時中は特高警察によって逮捕投獄されましたが、敗戦になるとGHQによって解放され、
政治運動を続けた。
それがいまの日本共産党につながっています。




<ソビエト連邦の崩壊>

だが、ロシア革命が、70年が過ぎる1980年代になると、ソビエト国家の経済の生産機能が急低下を始めました。
そこにゴルバチョフが出現して、「みんな反省しよう」とグラスノスチ(情報公開)を認めさせると、
社会主義国家ソ連は自壊していきました。

情報公開の原則のもとでは、従来の共産党独裁支配は成り立たなくなるのです。

ソ連の変革につれて、従来その統制下で存続してきた東欧の社会主義国家も軒並み崩壊しました。
1990年代初頭に東西ドイツを分けていた「ベルリンの壁」が崩壊しました。

すると、世界の半分を占めていた共産主義国家は、中国と北朝鮮を残すのみとなりました。
(キューバは最初から原理的な共産主義国家ではないのでこの中に入らない)

その後中国も、米国に「市場経済化」の指導を受け、土地を除く財産の私有化を実施し、
残るは北朝鮮のみとなりました。




<政治家は常時勉強していないと>

政治に携わる者にとって大切なことは、このような社会実験の結果を知ったら、マルクスのユートピアは幻影であったことを理論的に認識することです。
必要なのは、プリンシプルの認識なのだ。

いまや共産制度では、生産における連携活動が出来なくなっていくことを示す経験事実がある。

この事実を、明確に認識し、その理論的根拠を謙虚に勉強することです。

+++

ところが日本の政治家は、そういう謙虚な勉強をしないのです。
自民・公明も、民進も維新も立憲民主も、基礎から理論を勉強しない。

ただ、時の社会勢力の流れだけをみて、「なんか、社会主義の国は衰退したなあ」と思うだけ。
そして優勢な流れに乗っかろうとするだけ。
マルクスのユートピアは事実に反していることを、明晰に認識すべきです。

認識して、目標とする国家ビジョンをあらためて作り直すことです。




<「欧州で変わったから・・・」ではない!>

日本共産党の政治家も党員もそうですよ。
マルクスのユートピアは幻影であったことを、理論的に自覚していない。

みんな漠然としたもやもやのなかで、ただ、やってるだけ。

欧州諸国で名前が変えられたから、日本でも変えたらどうかと、ついつい思うだけ。
変えるべき理由を論理的に理解していない。

だから、内部でぐずぐずとやってるだけとなっています。



<前原の試み>

ほとんどの政治家がそうした「もやもや」のなかで、共産社会をゴールとしない者だけの政党、新しい保守政党を造ろうと試みたのが、今回衆議院選挙における前原でした。
彼は小池百合子の人気を活かして、保守大政党を造ろうとした。

そして、自民・公明党に対抗するもう一つの保守政党を造り、
日本に二大政党を実現し、
国民に常に政権選択の道を与えようとしました。




<百合子さんの勉強不足>

ところが小池百合子さんはそれを行うには、知識不足、勉強不足でした。
そのあたりの知識は幼稚であり、ブレーン不足なのに、百合子は人気にうぬぼれてしまった。

希望の党を作った彼女は、「選挙が終わらないうちに(ああ~!)」民進党からの
参加希望者から左翼、リベラルの人などを排除することもあり~と言い始めた!
なんと幼稚で愚かなことだったか・・・。

+++

しかし、その下地には、自民・公明も、民進も維新も立憲民主も、共産党でさえもが
マルクスのユートピアが幻影であることを明確に理解するに至っていない~これがある。

その結果、思想的にはほとんどがまだマルクス的・左翼「的」なユートピアのほとぼりをもっている。
議員の大半がそういう漠然とした心理状態にあるのです。

「百合子排除」に引っかからない議員も、マルクスの幻影の熱気を心に残存させている。
これが日本の政治家の現状。

要するに、みんな、勉強不足、知識不足、なままでいるのです。

だれか、この拙文を日本の全政治家、とりわけ野党の政治家に読ませてあげてくれないか。


(完)







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マルクス思想~その扇情力と浸透力~

2017年10月26日 | 政治見識のための政治学




前回鹿嶋は~、
 市場メカニズムを排除した共産社会は、「命令⇒服従」を基本ルールとする強制社会になり、
長期的には労働者の連携活動は減退し、生産力は低下していく、~と述べました。

+++

ところがマルクスは、私有財産を禁止すれば、やって来るのは豊富で平等なユートピア社会だと確言しました。

壮大なる幻影でした。
だが、この幻影は19世紀末の人類の心の琴線を激しく震わせました。
少し理論的に示しましょう。




<アダム・スミスの人間洞察>

「経済学の父」アダムスミスは、名著『国富論』を書く前に、もう一つの名著『道徳感情論』で人間の心理を深く探求しています。
彼は、人間の心には利己心と共感心が同居していると洞察しました。

①利己心とは、自分個人の利益を求める心です。

②共感心とは、他者の心理に共鳴し共感する心です。

 これは他者への哀れみ、同情を生み、さらに広く人間愛にも繋がってきます。

スミスは、こと財貨・サービスに関しては、利己心が人の心では優位に立つ、と洞察しました。
そして、この行動動機を主にしても、交換を自由にしてあげれば~そういう市場社会を保てば~生産力も成長し、同時に財貨分配の平等も実現する、と考えました。

もちろん、現実には、市場は十分に機能しない局面も出来て、不平等な局面も現れます。
スミスは、この局面が過大にならないように、賢くコントロールすれば生産力は成長していくとみていました。

+++

ところがマルクスは、この局面は部分的でなく、大半がそうだだと考えた。
それが市場経済の本質なのだ、ととらえました。

そこでもう、市場システムを否定するしかなくなっていきました。





<人間愛動機の経済システム>

そしてたどり着いたのが、上記②の共鳴心、同情、哀れみ、人間愛の動機を活かす道でした。

この心理局面は、不平等で苦しみを受ける側の人々への同情心を生みます。
他者の貧しさ故の苦しみをみるのは、辛いことです。

だがマルクスは、こちらの②の動機が直接働いて、他者の苦しみをみる辛さのない社会を実現する道を夢見ました。


実際彼は、私有財産を禁じた共産社会に、この夢を託しました。

前回述べたように、これは「賢人政治」に期待をかけるものです。

だがそれは壮大な幻影(イリュージョン)でした。

けれども、これは人心の琴線を激しく揺さぶりました。

人間は元々、愛と思いやりによって平等な理想世界を造りたいと切望する心を持っています。
マルクスはそういう社会が、手を伸ばせば実現できるところにある、と共産社会のビジョンを提供したのです。

そこでこのビジョンを受け入れた人は、夢の共産世界を現実のものとすることを激しく求めました。




<目標が輝くと犠牲をものともしなくなる>

だが、これを実現しようとして働く現実の舞台は私有財産を容認する資本主義社会です。
これを私有財産を禁じる世界にするには、現政府を物的な力で転覆させねばなりません。
それを志向すれば、現体制から過酷な弾圧を受けざるを得ない。

だが彼らは、理想の共産社会実現のためには、命の危険を冒してもいいとさえ思うようになっていきました。

「輝く目標」のもたらす効果です。
人はその目指す目標世界のイメージがあまりに素晴らしく輝くと、そのために自らの命を危険にさらしてもいいと思うようになっていくのです。

同時に人は、他者にもいかなる犠牲を強いてもいいと思っていきます。
そのために多くの人間を殺戮し地獄の苦しみを味わわせるのもやむを得ないと思っていくのです。
こうして暴力革命への情熱は、ごく自然に彼らの心に育ちました。

+++

だが前回に明かしたごとく、賢人政治によるユートピア実現は幻影です。
けれどもそのことを認識するには、人類には壮大な社会実験の体験が必要でした。




<ソビエトロシアの出現と「インターナショナル」>

人類は共産国家(最初はソビエトロシアで1917年に実現)を実現しました。
さらに、ソビエトは他国も共産国家にし、共産主義世界の実現に向けて主導しようとしました。

この壮大な夢の世界を実現する世界革命機関がいわゆる「インターナショナル」でした。

現在これが流れた「熱い時期」を知らない若い人々の比率が高くなってきています。
そこで、そのテーマソングの歌詞を紹介しておきましょう。
(歌そのものは、YouTubeなどで検索すれば、聞かれるのではないかと思われます)

@@@@@@@@@@
「インターナショナルの歌」



立て飢えたるものよ、いまぞ日は近し。
  覚めよわが同胞(はらから)、暁は来ぬ。

暴虐の鎖(くさり)断つ日、旗は血に燃えて。
  海を隔てわれら腕(かいな)結びゆく。

いざ戦わん、いざ、奮い立て、いざ!
  ああ、インターナショナル、我らのもの。

いざ戦わんいざ、奮い立ていざ!
  ああ、インターナショナル、我らのもの。


@@@@@@@@@

力による革命を仕掛ける過程では、資本家への怒りと憎悪、闘争心、正義心などの感情を味わうことが出来ます。
この歌にはそうした心情が盛り込まれています。




<大逆事件と戦後全学連>

マルクス思想は日本にも入りました。
明治時代に早くも社会主義思想は入りました。
政府は、その代表者達を「大逆事件」をでっち上げて処刑しました。

だが、大正デモクラシーの時代にも、戦前昭和時代にも、この思想は人々の心をとらえ、共産党という政党と、多くの党員を生みました。
戦時中には、指導者達は投獄されましたが、敗戦後GHQは彼らを解放しました。
開放されたこれがいまの共産党になっています。

+++

その後、高度成長期にも、日本の若者、学生達の多くは運動家となって、この幻影の実現に身を投げかけました。

東大安田講堂を占拠した学生達が、警視庁機動隊に囲まれ、
ホースで水をかけられて一カ所に追い詰められ、
このインターナショナルを唄いながら逮捕されていきました。

その光景を報じるニュース映像も、ユーチューブで見られると思います。


(続きます)









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衆議院選挙後はマルクス思想学習を

2017年10月24日 | 政治見識のための政治学






衆議院選挙が終わりました。
フェースブックやツイッターでもって、懸命に、政権交代のために健筆を振るわれた方々は、深い無力感に沈まれました。

原因究明の意見も多く登場しています。

そのなかで意見対立が起きて、一寸したケンカのような状態になっている事例も出ています。
どちらもつよい閉塞感にさいなまれて、結果的に内輪げんかのようになるのです。

子どもの受験が失敗に終わって、内輪げんかに陥る夫婦と同じ心理です。




私がフォローしてきた金子さん(男性)に議論参加した広瀬さん(女性)、お二人の間にも、今朝それをみました。
お二人とも知的で誠実な方です。特に金子譲さんは、政権交代のために獅子奮迅の論説を発信してこられました。

これをみて、鹿嶋はいたたまれなくなりました。

これを政治見識を高める方向をたどる機会にするために、政治経済の基礎知識をここに提供する心を決めました。

なぜなら議論の行きづまりといらだちのケンカは、この基礎知識の希薄さが遠因になっていることが多いのです。

金子さん、広瀬さん、晋三君政権の暗雲の中でも、基礎を明確に認識しましょう。

早速始めます。

(なお、この議論には、前の投稿と重なる面があります)




まずはマルクス理論で理解があいまいなところを補填します。

これは、「サヨク」とか「リベラル」を排除するとか「共産党と組める」「組めない」といった現代日本の政治意見と関連しています。

みんな理解が曖昧なために、論者自らの意識が漠然としているのです。

+++

これらの意見はみなマルクス思想の理解をベースにしているものです。

マルクス思想の人間心理への影響は巨大なものがあります。
ベルリンの壁が崩れても、それはいまも人類社会の底辺に力強く潜在しています。

まずは、そのマルクスの社会経済理論の骨子をレビューしましょう。





<マルクスの経済思想>


マルクスは社会経済理論を、資本主義社会の「分析」から開始しました。

資本主義社会は、人民を自由にしておき、市場メカニズムの調整作用でもって生産活動を維持しようというシステムの社会です。

・・・・・・・・・・・・
たとえば、スマホ1台を造るにも、気が遠くなるほどの多くの部品を集めて組み立てます。
部品のどの一つが足りなくても、スマホは出来ません。
その部品もまた、数多くの原料を加工して造られています。
(以下、その連鎖は続きます)

これら材料、原料の供給量を調節するのが自由市場における価格なのです。
業界で不足気味になれば、価格は上昇します。
部品業者は「ならば」と供給量を増やします。

逆に過剰であれば、価格は低下します。
すると部品業者は「ならば」と生産を減らします。
すると、価格は上昇して、適正なところで止まります。
こうやって市場価格が需給量を調整するのです。

(これらには、強欲な人間の人為的価格操作も介入しますが、基本的には上記のごとくです)
・・・・・・・・・・・・・

だがマルクスは、このシステムは必ず行き詰まる,と考えました。
その論理は次のようになっていました~。

・・・・・・・・・・
~資本家は、生産手段を私有している。
彼らは労働者にしかるべき賃金を支払わない。
つまり搾取をしている。

資本家はその搾取分を独り占めし、その一部を自分たちの贅沢な生活に使い、残った分を、生産機械に再投資する。

すると、器械が増えて生産効率が上がり、その分労働者がいらなくなる。
削減された労働者は失業者となる。
すると、それだけ国家の総所得が減少し、商品需要も減る。

そうなればその分、生産も出来なくなり、また、雇用が減少し、需要が減る。

以下、同様のプロセスが進み、資本主義方式では、国家の経済はこういう縮小循環をしていく。
生産手段〔機会や原料)をたくさん持ちながら、それを発揮できない状態になっていく。

いわゆる「豊富の中の貧困」に陥っていく。
・・・・・・・・・・・・・




<根本原因は私有財産制度にあり>

マルクスは、この動きは必然的であるとし、その真因は私有財産制度にあると認識しました。

つまり~

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
資本家は、工場、機械を我が物にしているから、搾取が出来る。

そこで私有財産制をなくし、生産手段を公有化すれば、経済の桎梏(しっこく:手かせ足かせ)はとりのぞかれ生産力は全開する。

そうすれば人類は、豊かな理想郷に至ることが出来るだろう。

そのために労働者・民衆が革命によって生産手段を公有化すべきである。
(政府は警察、軍隊という暴力手段を持っているから、革命はこれを覆す暴力革命となる)

そうすればもう宇多田ヒカルの世界だ。
理想社会は「イッツ・オートマチック」に実現されるだろう。
・・・・・・・・・・・・・

~これがマルクスの社会思想であり、歴史観でした。

これは人類社会にぶち込まれた思想のダイナマイトでした。
マルクスは、「共産社会」という平等世界の夢を秘めた強烈極まりない理論を、人類社会に投げ入れたのです。





<革命後経済運営観における盲点>


だが、大天才マルクスも人間です。
やはり盲点があった。
それは革命後の組織運営面でのものでした。

+++

彼は、私有生産手段を公有化すれば、理想社会はオートマチックに実現すると思っていました。

だが「イッツ・オートマチック」は、宇多田ヒカルの歌の世界だけの出来事なのです。
実際には国家社会は暗黒の全体主義に入っていくのです。




これについては別の機会にもう少し詳細に述べるかもしれません。
が、とにかく骨子を言うと実体はこういうことです~。

・・・・・・・
資本家から企業をとりあげ国有化すれば、実際には、国家や地方政府の官僚・役人に、何百という企業を運営させることになります。

そしてこれを運営するのは、並大抵なことではないのです。

+++

革命前に一つの私企業を運営するだけでも、経営者〔資本家)は四苦八苦してきました。
なのにそれらの生産活動を、中央政府で一手に運営しようというのは至難の業なのです。

担当官僚は全国生産計画をつくるでしょう。
だが、これは本質的に大まかでアバウトなものにしかなり得ません。

そして、これに沿ってやろうとすれば、各生産活動にノルマを定めて、人民を命令=服従=懲罰の方式で管理するしかありません。
・・・・・・・・・・・・・・・

~マルクスの社会共産方式では、実際にはそうするしかなくなるのです。





<恐怖で動かすシステム>

もちろん、人間、やってやれないことはない。

けれども、これは恐怖ベースで人を従わせる方式です。

恐怖感で動かされれば、労働者は、時と共に自発性を失っていきます。

企業内でも企業間でも、自己保全のために臨機応変な相互連携行為をしなくなっていきます。

あちこちで原料不足が起き、欠陥生産物が発生します。





<秘密警察、思想警察>

だが中央政府は、いまさら後に引くわけには行きません。
(引いたら反対勢力に処刑されるのです)

そこで人民の不満をいち早く押さえつけるために、企業内に労働者の相互密告制度をつくります。

政治活動もそうです。

人間は不思議なことに、自由の中で精神が躍動し、活性化するように出来ているのです。

だから社会主義以外の思想や政党活動を赦すと、人民がそちらにいってしまいます。
そこで共産党以外の政党は認めないという、一党独裁制度を実施するしかなくなります。

この体制を維持するためには、各地点に思想警察を忍ばせねばなりません。

極端な場合には、家庭内にすらも相互密告制をしかねばならない。

社会主義方式での生産活動を続けようとすれば、ごく自然に、こうなっていくのです。



かといって市場経済方式がベストだなどと鹿嶋はいってはいませんよ。

鹿嶋は、竹中何とかさんが言われているような市場原理主義者ではありませんよ。

ドグマティックな新自由主義者でもない。

安易に極論に飛ばないでくださいよ。浅薄なレッテルを貼らないでくださいよ。




<市場方式にも弱点あり>

市場方式でも「貧富の差が拡大していく」などの現象が起きるのです。
これには賢く対処しなければなりません。

だが実際のところ、市場経済社会に生きてきた人間にとっては、計画経済社会、共産主義経済社会はほとんど地獄となるのです。

+++

繰り返しますが、単細胞的に悪口を言っているのではありませんよ。
マルクス思想の持つこの不気味な「暗」の側面を、人類はきちんと知らねばならないのです。

知れば、それを活かすことも出来ますからね。


だが、人類はその道が見えなかった。

それは、ほとんどひとえに、マルクス思想が平等と博愛の理想社会を求める人間の本能にとって、
あまりに魅力的な要素を含んでいたからです。

次回にはそれを考えましょう。

(続きます)









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翻訳権と「使える言葉」の問題

2017年10月04日 | 随想





「本場の本」に語らせようとすると次の壁が現れました。

翻訳権の問題がそれです。

原著書は、1934年に出版された本です。
鹿嶋の手元のものは、古本屋で探し出すようなボロボロになった本でした。

著者ミードは1982年に死んでもういなかった。
米国では著作権は著者の死後70年有効です。

権利は今も生きている。
ミードの親族がどうなっていて、著作権がどこにあるのかさがさなければなりませんでした。
筆者の知識不足もあって、試行錯誤しました。
苦労の末にやっと問題は解決しました。








そうすると、また次の壁が出てきました。

邦訳に使える日本語がないのです。



実情はこういうことです~。

~原著者ミードが書いていることは、これまで、政治権力によって「歴史記録に値しないものとされてきた」活動なのです。
言い換えれば、「存在しないものと扱われてきた活動」です。



このあたりをもう少し詳しく言うと~

キリスト教は発祥以来、、初代教会と呼ばれた教会の活動方式で100年余にわたってやってきました。

この方式では、信徒個々人に聖書解釈を自由にさせておきます。
そして信徒たちを数人の小グループを形成させ、そこで、互いの解釈を自由に議論・吟味させる、という方式をとる教派なのです。

初代キリスト教会は、発足後100年間、この方式だけでやりました。
(今も、米国南部のサザンバプテスト教会や北西部のメノナイト教会では、それを継承しています)

その方式で、発足してわずか30年のうちに、ローマ帝国全土に信徒の小集団が散在するほどに大発展しました。




<後発教団が急成長し国教に>

ところが紀元後2世紀中頃に、初代教会から後発したカトリック教団が、急成長した。

この教団は、教団の幹部が「正しいとする」聖書解釈を一つ造って、それを正統教理として信徒に与えて活動していくという、そういう方式で活動する教団でした。
この教団が急成長し、ローマ帝国の国教となって、政治権力を握り、公式歴史の作成権を握ったのです。

そして本家本元の教会活動を、公式歴史で「記するに値しないもの」と扱いました。
カトリック教団は本家本元を徹底的に迫害し、その存在を事実上、歴史記録から抹殺したのです。

そういう歴史が現在も人類社会では公式の歴史教科書となっています。
だから、今日までその存在が認知されないで来ています。

(その結果、人類は今も、キリスト教はカトリック(旧教)とプロテスタント(新教)よりなっている、と信じているのです)

+++


存在しないものとされた事柄には、人々はそれを説明する言葉もつくりません。
言葉とは、みんなが「存在を承認・同意する」ものを伝え合うために出来上がっていくものですからね。

鹿嶋は、その存在を説明する言葉を、一つ一つ造る必要に立たされました。




<そのままでは使えない言葉もあった>

また一見言葉があるように見えても、事実から外れた言葉で、そのままでは使い物にならない、というのもありました。

原著書の題名からしてそうだった。
原題は「ザ・バプテスト」です。

+++

「バプテスト」という日本語はありますよ。
だけどそれは公式の歴史常識では、キリスト教の中のプロテスタントの一派ということになってきています。

だが、真実はそうでないのですね。

プロテスタントというのは、カトリックと同じ方式で教会運営をします。
教団の幹部が「これは正しいとする」聖書解釈を一つ造って、それを正統教理として信徒に与えて活動していく、そういう方式で活動します。

この点では、カトリックと同じで、カトリックの一派ともいえるものなのです。

+++

ところが、原著書で「バプテスト」と称される人々の「真実のところ」は、本家本元の初代教会の方式で活動していました。

その教会が、ローマ帝国の国教になって、政治権力をつかんだカトリック教団に黙殺されてきた。
だから、本来の意味での「バプテスト」という言葉は(いまもこの世に)存在していないのですね。





<原著者はジャーナリストだった>


で著者ミードはどうかというと、この黙殺された人々を(おおまかに)意味して「バプテスト」という語を使っていたのですね。


彼はキリスト教ジャーナリストでした。
(米国にはそういう職業があるのですね。日本の仏教ジャーナリストのようなものでしょうか)

つまり、神学者でなかったこともあって、その時その場の言葉を説明抜きに、直感的にざっくり使っていたのです。

だけど、その言葉をそのまま邦訳書で使えば、日本では、前述した「プロテスタントの一派」という意味でしか受け取られません。

さすれば、読者は誤解の波に流されていってしまうでしょう。
だからこの言葉はそのままでは使えなかった。

そこで、自由吟味者という語をくっつけて「バプテスト自由吟味者」という語を私は造りました。
理由も十分説明して使いました。

+++

ことほど左様に、新しく説明を加えて使わないとわからない用語が、沢山ありました。
鹿嶋は、ひとつひとつ新語を造り、邦訳文を造らねばならない、という用語の「壁」に直面したのでした。

この壁は厚かったな。






最後にアナウンスです。

これまでの本の10倍以上のエネルギーを注いだ
『バプテスト自由吟味者』は
10月5日からアマゾンで発売予定です。

(それ以前にも、注文は予約注文としてキープされます)


(完)







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隠された会派の人々が、快適生活制度を作ってくれている

2017年10月01日 | 随想



出版のための原稿を造り上げるにも、今回はこれまでに経験したことのない壁がありました。

現在人類は、キリスト教には「カトリック(旧教)とプロテスタント(新教)だけがある」と信じています。

中学・高校の学校教科書も、歴史学者が書く専門書も、そうなっている。
そういう常識が人類世界に出来上がっています。

+++

ところが鹿嶋が本で伝えようとしていたのは、もう一つの大きな流れがあって、その会派が実はキリスト教の本家本元だということでした。

のみならず、その会派の人々は、実は現在われわれがエンジョイしている近代社会の諸制度をあらかた造り上げてくれてきている。
民主制も、政教分離も、個人の精神生活の自由・言論の自由も、みなこの会派の人々が流血の活動によって実現してくれている。

それを米国の一般人民も、欧州諸国、日本、台湾、韓国などの人民もいま享受している。

~そういうことを伝えようとしたのです。











 だがその仕事を手がけようとして、鹿嶋は考えました~。



こういう人類の常識を越えた超常識のことを、しかもキリスト教世界のことを、一介の日本人が述べても人々は信用しないだろうな。
日本人だけでなく外国人も信用しないだろうな。

これは本場の米国人がこの流れを簡明に示している書物を邦訳して出すしかないな。

本場の人が書いたものなら、日本人もまあ、鹿嶋春平太が書くよりは信用するだろう。



 ~そう考えた鹿嶋は、これまで収集してきた英文資料の箱をひっくり返して調べました。
そして小さな冊子を見つけ出した。

それはミードという米国のキリスト教ジャーナリストが事態を概説した小さな本でした。

よし、これを邦訳して出版しよう!

ジャーナリストの著者であるが故に理論的な説明が不足しているところは、自分が<訳者解説>で補おう。

鹿嶋はそう決断しました。







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