こんにちわ。
「キリスト教の正しい学び方」、今日も進めてまいりましょう。
+++
前回、聖句自由吟味者の悲劇をリアルに見せてくれる一冊の小説を紹介致しました。
その際~、
ここで示されているカタリ派虐殺の事件は、実は、欧州全域で1200年にわたって起きてきたことの一つに過ぎない,
作者箒木氏はその視野はお持ちでないようだ、
~と申しました。
+++
するとこんな疑問もわくでしょう。
~だけど鹿嶋は、そんなこと、どういう根拠でいうのか?
公式の歴史教科書にも専門書にも記されてないようなことだというが、少なくとも、根拠とする何らかの資料があるはずだ。
全般的な情報を示した資料でなければならないだろう。
それは何で、どうやって入手したのか?
~今回はそれへの応答の一端を披露しておきましょう。
<邦訳冊子『血まみれの道』>
実は筆者にこの視野を与えた最初の資料は、一冊の小さな冊子です。
英語本の邦訳書で、タイトルは、『血まみれの道』です。
振り返れば、出会いはもう20年前のことであります。
+++
1900年代の中ごろのことです。
筆者は、一年間の米国での仕事を終えて帰国しました。
まもなくして、知り合いの牧師さんが一冊の冊子を知らせてくれました。
「なんか強烈な本があるよ」と、話題半分に小さな邦訳冊子を見せてくださった。
<トンデモ本か?>
宗教ジャンルの書物には、興味本位の「トンデモ本」がとても多いです。
その牧師さん自身も、そんな気分のようでした。
「帰国後の気分転換にもなれば・・・」といったムードで見せてくださいました。
案の定、そこには従来学んできたキリスト教史、西欧史、の常識とかけ離れた事柄が書いてありました。
+++
一読してみて、筆者はよくあるトンデモ本の類いを連想しました。
「血まみれ」とかいった題名の言葉も、どぎつい感じでした。
表紙のイラストからもそんな印象を受けました。
<著者に真摯な姿勢を感じる>
けれども、再度読んでいくと、この著者に、とても真摯な姿勢が感じられてきました。
さらに読み続けると、筆者のキリスト教知識を埋めてくれるような情報も、見つかりはじめました。
+++
筆者は、従来より、学校で学んだ西欧史、キリスト教史に、空白のような部分をいくつか感じてきていました。
たとえば、英国史で清教徒(ピューリタン)と呼ばれる人々が出てきます。
教科書、専門書の説明では、この人たちの革命行動の哲学がよくわかりませんでした。
いくら読んでもわからない。
だから関連した事柄、~たとえば、こういう人々が英国で何故出現したのか、何故あのような行動をとったのか~、なども漠然としたままでした。
こうした空白部分を、この冊子情報は埋めくれました。
+++
もちろん、それが歴史事実であるかどうかは、確かめる必要があります。
鹿嶋は、ともあれ原本に当たってみよう、との意を強めました。
<原典情報がない!>
邦訳冊子には原著者は、J.M.キャロルと書いてありました。
訳者は、田嶋浩次とあった。
当時筆者は、現役の流通経済学(マーケティング)の研究と教育を生業としていました。
そのせいか、有益そうな邦訳書を見ると、反射的に原典と照合しようとする習性ができていました。
特に、この資料は強烈に反常識的な内容の冊子です。
筆者はすべては原典をみてからだ、と考えました。
+++
ところが、この邦訳冊子には、原典の情報がいっせつ記されていませんでした。
あるのは著者名だけです。
翻訳本では原本の題名~この場合は英語~などの情報を示しておくのが当然です。
それも記されていない。
筆者は、訳者に直接尋ねてみようとしました。
だが、訳者の住所も電話番号もいっせつ記されていなかった。
ただ、発行者と印刷者が「バプテスト文書出版」とだけあり、私書箱の番号だけが記されていました。
(どうも、発行者は訳者ご自身らしいな・・・)
こう推測した筆者は、その私書箱あてに往復はがきを出しました。
「訳書に感銘を受けた。ついては原著書の情報をお教えいただきたい」との旨を「往信」側に書いて出した。
・・・ところが、「返信」は待てど暮らせど来ませんでした。
+++
しばらくして、この方は日本のバプテスト派教会の牧師さんらしいことがわかりました。
その筋の人を頼って接触を試みました。
だが、「離れ狼ないしは羊」のような存在らしく、牧師との接触もあまりしない人という。
<米国でも見つからない!>
やむなく米国の大学で教師をしている友人に調査を依頼しました。
彼は、中西部の私立大学で日本語担当の助教授をしつていました。
その一方で、牧師として日本人居住者のための日曜礼拝をボランタリーで開催している、という人でした。
筆者はメールを出しました。
「日本から米国の図書情報を提供する機関のページで検索したが、本が出てこない」
「ついては、米国でしらべてくれないか。J.M.キャロルという著者名と、題名におそらくBloodという語が入っていそうであることが、手がかりだ」
友人は、調べてくれました。
返事は、「米国でも見つからない」でした。
(やはり、よくある変な宗教書なのかなあ・・・)
そう思ってやりすごそうとしました。
だがその一方で、なぜか、筆者の心には「この本はいったい何なのだ…」という思いが残りました。
次回には、この冊子本の原典を探る旅と、それにまつわる様々な出来事のお話しを始めます。
(Vol.27 衝撃本『血まみれの道』の謎 完)
販売中でしょうか。購入できましたら私にも1冊。
参考バノン・C・ライオンズ師の「なぜバプテストはプロテスタントでないか」というリーフレットがあります。
原著者紹介サイトもあります。
よろしければどうぞ