大江戸余話可笑白草紙

お江戸で繰り広げられる人間模様。不定期更新のフィクション小説集です。

百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~ 五十七

2011年12月03日 | 百花繚乱 夢の後 ~奥女中の日記~
 兄様。ついに慶応二年の師走五日に、一橋慶喜様が、二条城にて十五代将軍様の宣下をお受けになったそうにございます。
 これにて、大奥は一層ざわついてございます。
 九日には宮様が、御出家なされ、静寛院様とお名をお改めにございます。
 これにて、大奥には、十三代家定様の御正室天璋院様、御生母本寿院様。十四代家茂様の御正室静寛院様、御生母実成院様と、高貴な方々皆様が御出家あそばされ、大奥は火の消えたような寂しさにござます。
 慶喜様は京に非せられます故、御正室の省子様も大奥には入られない御様子にございまする。
 省子様は、天下人となられました慶喜様御正室に非せられ、大奥での御権勢も欲する侭かと思いまするが、先々代、先代様の御正室様、御生母様がおられます大奥に入られますよりも、お心安らかにございましょう。
 慶喜は、関白一条忠香の照姫様と御婚約をなさっておいでにございましたが、御婚儀直前になられ、照姫様疱瘡に罹患され御変貌なされましたが故に、代わりにお輿入れなされました美賀子様にございます。
 忠香様の御養女となられ、省子様とお名を変えられてございます。
 慶喜様との間には五人のお子をなされたそうにございますが、皆様御夭折なされました由。
 身に詰まされまする。
 この度の騒動を一刻も早く収められた慶喜様が、江戸にお戻りになられ、以前のような華やかな催しで台所様をお迎えしとうございます。



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