第四章 日和見 ~馬詰柳太郎~
「なんや、柳太郎はんに会いに来はったそうどす」。
「うち、柳太郎はんが留守居やって聞いて…」。
俯きながらも上目使いに様子を探り、顔を赤らめているのだろうが、地の黒さがただただどす黒く見えるだけである。
柳太郎は、折角奇麗なお梅と呑んでいただけに、憎々しさが倍増していた。
「柳太郎はんのええ女(ひと)なん」。
こういう時、女は残酷である。お梅とてひと目見れば分かるであろうに、そんな口先だけのことを口にする。
そしてもっと嫌なのが、それを真に受けるところだ。
「この方は南部さんの子守女です」。
蚊の泣くよなうな声で柳太郎はその娘のことを告げる。
「あんさん名ぁは」。
「へえ。米言います」。
お梅の問い掛けに嬉しそうに答えると、勧められるまま、膝を詰めた。
ほんの前まではお梅の匂うような美しさに、うっとりとしていた柳太郎だったが、お米が加わっただけで、真に居心地の悪い、尻がむずむずとする思いになった。
そんな柳太郎の思いを知ってか知らずかお米は、女房気取りで世話をやく。そしてそれが尚更、恥ずかしい柳太郎である。
「ほな後はお米はんに任して、うちは退散や。そろそろ糸里はんたちも来る頃でっしゃろ」。
お梅は薄く笑うと、席を立った。
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「なんや、柳太郎はんに会いに来はったそうどす」。
「うち、柳太郎はんが留守居やって聞いて…」。
俯きながらも上目使いに様子を探り、顔を赤らめているのだろうが、地の黒さがただただどす黒く見えるだけである。
柳太郎は、折角奇麗なお梅と呑んでいただけに、憎々しさが倍増していた。
「柳太郎はんのええ女(ひと)なん」。
こういう時、女は残酷である。お梅とてひと目見れば分かるであろうに、そんな口先だけのことを口にする。
そしてもっと嫌なのが、それを真に受けるところだ。
「この方は南部さんの子守女です」。
蚊の泣くよなうな声で柳太郎はその娘のことを告げる。
「あんさん名ぁは」。
「へえ。米言います」。
お梅の問い掛けに嬉しそうに答えると、勧められるまま、膝を詰めた。
ほんの前まではお梅の匂うような美しさに、うっとりとしていた柳太郎だったが、お米が加わっただけで、真に居心地の悪い、尻がむずむずとする思いになった。
そんな柳太郎の思いを知ってか知らずかお米は、女房気取りで世話をやく。そしてそれが尚更、恥ずかしい柳太郎である。
「ほな後はお米はんに任して、うちは退散や。そろそろ糸里はんたちも来る頃でっしゃろ」。
お梅は薄く笑うと、席を立った。
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