兄様。春浅し未明に、千代の御主人様瀧山様の御部屋から火の手が上がり、千代も、大変に怖い思いをいたしました。
万が一、火元ともなれば、瀧山様にも御咎めがございます。部屋方は、火の元を探しましたが、全くもって心当たりもございません。
天ぷらを食べたい時には、御前膳所の御仲居に揚げてもらうくらいに、大奥では火には気を配っています。
お調べでも、火種がなかったことが明らかになり、どうやら、お咎めもなく、誰ひとり怪我もせずに事なきを得ましたが、逆に付け火の疑いがもたれています。
瀧山様がどなたかに恨まれているのではと思うと、それもまた、千代には恐ろしくてなりません。
瀧山様は証がない故、何も申すなとおっしゃっておられますが、先達て、朝な夕なに御酒を召し上がり、毎日が宴のごとき騒ぎの実成院様を瀧山様が嗜められたことがございました。実成院様とは公方様のお母上様にございます。
この度の火事と関わりがなければよろしいのですが。
兄様。間もなく公方様が御上洛なされます。二百三十年振りの将軍様御上洛ということです。
兄様のお働きお祈りいたしております。
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万が一、火元ともなれば、瀧山様にも御咎めがございます。部屋方は、火の元を探しましたが、全くもって心当たりもございません。
天ぷらを食べたい時には、御前膳所の御仲居に揚げてもらうくらいに、大奥では火には気を配っています。
お調べでも、火種がなかったことが明らかになり、どうやら、お咎めもなく、誰ひとり怪我もせずに事なきを得ましたが、逆に付け火の疑いがもたれています。
瀧山様がどなたかに恨まれているのではと思うと、それもまた、千代には恐ろしくてなりません。
瀧山様は証がない故、何も申すなとおっしゃっておられますが、先達て、朝な夕なに御酒を召し上がり、毎日が宴のごとき騒ぎの実成院様を瀧山様が嗜められたことがございました。実成院様とは公方様のお母上様にございます。
この度の火事と関わりがなければよろしいのですが。
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