大江戸余話可笑白草紙

お江戸で繰り広げられる人間模様。不定期更新のフィクション小説集です。

のしゃばりお紺の読売余話23

2014年11月29日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「なあ、お紺ちゃん」。
 朝太郎が、猫なで声を出した時は要注意。良からぬ事を考えているのだ。
 「行きませんよ」。
 お紺は冷たく言い放つ。
 「何でい。未だ何も言っちゃしないじゃないか」。
 「言わずとも、分かっているというもんさ。どうせ金次ってえお人をひと目見ようって腹積もりだろう」。
 すると朝太郎は、月代をぺしゃりと叩き、「なら話が早い」とか何とか。折角深川くんだりまで足を伸ばしたのだから、是が非でもひと目お目に掛からなくては帰れないのだそうだ。
 「一緒に深川迄来ておくれ」と、頼んだ覚えはない。
 「駄目だよ、あたしはこれから昨日の娘さんが、どうして身投げしたのかを聞かなくちゃならないのよ。お父っつあんにそう言われているの」。
 「ふーん、ならあたしはひとりで行ってみるさ」。
 朝太郎は、ひとりで三組の火消しの屋まで行くのだと言ってきかないのだから仕方ない、お紺は番太の元へと足を運んだ。
 幸いな事に、向井の自身番には同心も岡っ引きも立ち寄ってはおらず、月番の差配と、書役が所在な気に将棋なぞを指している。
 「ご免んなさいよ」。
 お紺の訪いの声に人の良さそうな番太の女房が顔を出す。
 「お芋くださいな」。
 「はいはい。如何程でしょうか」。
 「ちょいと小腹が空いたので、一本で良いんだけど、ここで食べたいけど言いかえ」。
 ならばと、茶を入れてくれた。
 「おかみさん、昨日は大変な騒ぎでしたねえ」。
 大抵の女は、金棒引きだ。ちょっと水を向ければ乗ってくる。
 「そうだねえ。けど大事にならなくて良かったよ」。
 と言う事は、娘は助かった。
 「それは良かった。あたしもね、たまたま通りがかったもんで、どうなったのか気を揉んでいたところですよ」。
 通りがかってなんぞいない。
 「そうかえ。だったら金次さんも見たかえ。さすが火消しだ。ここが違うよ」。
 女房は、胸を掌で数度叩く。




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のしゃばりお紺の読売余話22

2014年11月27日 | のしゃばりお紺の読売余話
 そこに「ご免よ」と、庄吉が訪いを入れる。
 「やっぱり思ったとおりだ。お紺、いつも言ってるじゃねかい。読売ってえの早さが勝負なのよ。つまらねえとこで引っ掛かってるんじゃねえ」。
 「だって、お父っつあん、若頭の顔が似ていなくちゃ意味がないじゃないか」。
 「そんなもんはな、赤筋半纏を着せて、大きな字で名前を入れときゃ、そう見えるってもんだ」。
 「そうだ。そうだ」と、朝太郎が囃し立てる。
 「ですがね親方、あたしは深川三組の印半纏ってえのを知らないんですよ」。
 庄吉と朝太郎の視線がお紺に向けられる。
 「あ、あたしも知らない」。
 「たはーっ。お前ぇは何処に目を付けてるんだか」。
 だっら、飛び込もうと欄干に立ち、脱ぎ捨てた印半纏が宙を浮いている図柄にしろと庄吉。
 「半纏が翻って裏が見えてるようにすりゃあ良い。裏地は派手な龍の図柄にでもしときゃ良いだろう」。
 鶴のひと声で、ああでもないこうでもないの論争に終止符が打たれた。 
 「朝、こっちはもう出来て、版木彫りに回しとくから、お前ぇは、この空いたところの大きさに合わせて描いてくんな」。
 「あいよっ」。  

 翌日は講釈入りで読売を売り歩く。常なら神田から日本橋や浅草辺りを流しているが、この度は両国、深川で売り切ろうと朝から出庭っていた。売り子はお紺のほかに伝助と佐吉が受け持つが、たっての望みで両国、深川へはお紺と、そして何故か朝太郎の姿も合った。
 「だって、そんなに良い男なら、一度お目に掛かりたいじゃないか」。
 別に衆道でも念者という訳でもないのだが、「奇麗ぇなものは何でも好き」なのだそうだ。
 娘が何故に身投げをしたのかは元より、娘の素性も知れず、よくよく考えれば取り立てるような事柄でもないのだが、読売は、正に飛ぶように売れた。
 お紺は、改めて火消しの人気を思い知る。



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のしゃばりお紺の読売余話21

2014年11月25日 | のしゃばりお紺の読売余話
 お紺の住まいからほど近い、割り長屋の奥に朝太郎のやさはある。
 「朝さん、居るかえ」。
 油障子に手を掛ける前に声を掛けないと、機嫌が悪いのだ。「奇麗ぇな姐さんと睦まじい事をしていたら困る」が、朝太郎の言い分なのだが、雌猫一匹居た試しがない。
 「ああい、居るよ」。
 朝太郎の暢気な声が返ってくる。お紺は油障子を開け、通い慣れた朝太郎のやさに入った。相も変わらず、あちこちに子どもの下駄やら凧やらが散らばり、その隙き間に身を小さくして座り込んで絵付けの最中。
 「朝さん、少しは片付けたら」。
 「片付いているよ」。
 「片付いていないから、そんな隅っこに小さくなってしゃがんでいるんじゃないかい」。
 「嫌だねえ。ここが居心地が良いのさ」。
 こういうずぼらなところが歌川派の「性に合わなかった」のだろう。歌川派で修行をしてのが真ならばであるが。
 お紺は、永代橋の身投げの件を話しを身振り手振りを交えて、如何にも見て来たかのように伝えると、金次の顔形を伝える。
 「もっと、こう眉がきりりとして濃くもなく細くもなく。目は涼やかで切れ長のひと皮目で、そうそう。鼻筋は、すっとして。えっ、顔形かい、そうだねえ、細面だけれど長くはなく…。口元はきりりと端が上を向いて、程良い形で」。
 そう言いながらお紺は、眩しい層な目を宙に走らせる。
 「おい、お紺ちゃん。それじゃあ、ちっとも分からねえよ。でいち、永代橋から飛び込むとこを描きゃ良いんだろ。だったら赤筋入りの半纏を着せりゃあ良い話だ。何も似面絵にしなくても良いんじゃねえかい」。
 「駄目だよ。三組の若頭って言やあ、本所、深川の娘たちが放って置かない色男さ。その若頭が載ってこその読売じゃないか」。
 お紺も一枚欲しい。
 「じゃあよ、役者で例えるなら誰よ」。
 「そうさねえ、團十朗よりもすっとしていて、海老蔵よりも色気が合って、幸四郎よりも優男さ」。
 「何でぃそらあ。増々分からねえ」。
 朝太郎は、月代をぺしりと叩く。
 「だったら今から見に行くかい」。
 「おきゃあがれ。今から深川くんだりまで行ってたら版木彫りが間に合わねえじゃねえかい。でいと、お前ぇがしっかりと見とかねえから…」。
 言い掛けて止めた。






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のしゃばりお紺の読売余話20

2014年11月23日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「じゃあ、お父っつあんは、火消しの若頭が人助けをしたってだけじゃ、読売にならないってんだね」。
 「そうは言っちゃいねえ。その火消しってえのは大層な色男なんだろ」。
 「そりゃあ、滅法界良い男っぷりさ」。
 一度見ただけで鮮明に覚えているくらいだ。
 「だったら明日はそれでいってみな。だがよ、お紺、次はその娘がなでまた身投げしたんだってえのが気になるのが人情だ。そっちも調べて明後日には出しな」。
 とどのつまりが、お紺と同じ考えである。
 それにしても人の生き死にで大喜びするなぞ、お紺には到底出来そうも無いばかりか、その主が己の親かと思うと情けなくもなるのだ。
 だが、読売の親方には、そのような者でなければなれないのかも知れないと、ふと思う。
 (やっぱり読売を継ごうなんて考えないで、嫁入りした方があたしには似合っているのかも知れないね)。
 残念ながら嫁入り先の宛などない。
 「じゃあ、明日に間に合わせるからお父っつあん、書いといておくれよ。あたしは絵師の先生のとこ行って来るからさ」。
 父親の庄吉は、若い頃戯作者を目指した事もあり、読売は己の手で書いていた。早い話が戯作の夢が破れて読売稼業を始めたのだ。
 絵師の朝太郎は、歌川派で一時修行をしたと本人は言っているが、歌川某の雅号はない。本人は「性に合わなくておん出たのよ」と、言っているが、概ね、女でしくじったのだろうと、お紺は思っている。
 普段は、玩具絵や凧の絵つけなどを生業としているが、風景画も似面絵も腕は中々のもので、市井に埋もれさせるには惜しい逸材なのだ。
 だが、この男も庄吉同様にひと癖もふた癖もあり、それが災いしているのは言うまでもない。





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のしゃばりお紺の読売余話19

2014年11月21日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「まあよ。どぼんと大っきな音がしてよ。見りゃあ若けえ娘が真っ逆さまよ。んでよ、おらぁ、取る物も取り敢えず船を漕いだって寸法よ」。
 船頭は鼻の下を人差し指で誇らし気に擦る。
 「さすがだねえ。それで兄さんが近付いている間に、三組の若頭が飛び込んだんだね」。
 「おう。おったまげたぜ。橋の欄干によじ上るとよ、そっからどぼんだ」。
 娘の方は真っ逆さまということは、欄干から身を乗り出して落ちたのだろう。金次は、欄干の上に立ち、足から飛び込んだ。
 (絵になるじゃないか)。
 お紺は小躍りしたいくらいだ。
 「で、川面に顔を出した時は、娘さんも一緒かえ」。
 「おうよ、娘を抱えてこう、持ち上げてよ」。
 船頭は身振り手振りで様子を再現する。娘を引き揚げたのは自分であり、その後に自分が手を差し伸べなければ金次は危うかったと話すが、ここは脚色もあるだろう。
 お紺の脳裏には、ぐったりする娘を船頭に預け、さっそうと船に手を掛ける金次の姿が浮かぶ。
 (水も滴る良い男ってこの事じゃないかい)。
 絵師に描いて貰うのは、金次が欄干を蹴って飛び込む瞬間だ。娘の飛び込みよりも、それを助けたのが火消しの若頭で、それがまた滅法界良い男だというのが売りだ。
 ここまで固まれば、一刻も早く帰って、明日迄に瓦版を刷り上げなくてはならない。幸いな事に一度会った金次の顔は鮮明に覚えている。絵師には金次の似面絵を描かせ、金次の男っぷりを売りにするのだ。

 「ふーん。そんでお前ぇは、喜んで帰ぇって来たってか」。
 だから女は甘いのだと、父親の庄吉は苦虫を噛み潰したかのような顔である。
 「どうしてさ、良いじゃないか。若い娘が大騒ぎするよ」。
 折角のねたをこけ下ろされ、お紺の小鼻がぷくっと膨れる。
 「良いか、読売稼業ってえのはな、そこで娘も助けに入ぇったお人もお陀仏になって、初めて大喜びしなくちゃなんねえのよ」。
 「そんなお父っつあん。それじゃあ、あんまりじゃないか」。
 「そうさ、あんまりだ。そんでもよ、情を挟んじゃなんえねのが読売ってえもんだ」。
 因果な稼業であると、庄吉は顔色も変えずに続ける。
 「それが嫌なら早ぇとこ嫁にでも行きな。おっと、明日嫁入りしてももう遅ぇくらいだけどな」。
 「本当に、お父っつあんの憎まれ口は天下一品だ。だけどあたしは未だ十九だよ」。
 「もう十九だ。年が明けりゃあ、年増って言われるぜ」。
 角の豆腐屋のお美代坊は十六で婿を取ったの、小間物屋のおとしは、十九の時には二人の子持ちだったの、よくもまあ、実の娘に言えたもんだと、お紺は呆れるが、庄吉の肉忌まれ口は居間に始まった事ではない。この気質合っての読売とも言えるだろう。




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のしゃばりお紺の読売余話18

2014年11月20日 | のしゃばりお紺の読売余話
 その矢先に、目の前の自身番が急に慌ただしくなった。岡っ引きの伝蔵が飛び出して行ったのだ。それを目の当たりにしたら、人様の不幸うんぬんなど何処へやら。
 気が付けば岡っ引きの跡を追って走り出している自分が居た。
 息を切らせながらも見失わないように懸命に走り、辿り着いたのは永代橋。結構な距離である。そこには、既に人だかりの垣根が出来、割って入る岡っ引きに遅れを取るまいかとお紺も前へとしゃしゃり出る。
 が、そこには何もなく、ただ猪牙船がもやっているだけだった。
 耳をそばだて伝蔵の聞き込みを、付かず離れず聞いていると、飛び込みがあったらしい。
 「んで、身元は分からねえのけぇ」。
 「へえ。たった今、三組の若頭が玄庵先生のとこに担ぎ込んだのよ」。
 水夫が言うには、飛び込んだのは若い武家娘であった。そしてたまたま居合わせた本所・深川南組の火消し三組の若頭が、自らも橋の欄干から飛び込んで救い上げたと。そして、猪牙船の船頭を促して船を近付けると、その船に引き揚げたと言う。
 「んで、玄庵先生のとこってえ事は、助かったんだな」。
 「さあ。青ぇ顔してぐったりしていなすったんで」。
 「何でぇ頼りねえな」。
 (遅かった)。
 番太の見世で、焼き芋なんか頬張っている場合ではなかったのだ。ひと足早ければ、飛び込んだ瞬間を絵師に描かせ、大した読売ねたに成るところだった。しかも助けたのが火消しとあれば江戸っ子にはたまらない話だ。
 (んっ、三組の若頭)。
 「親分、三組の若頭ってえのは、苦みばしったお男ですかね」。
 「おう、そうさ。この辺りで金次を知らねえもんはいねえよ」。
 (しめた。これは売れる)。
 そうとなったらぐずぐずはしていられない。飛び込んだ時の様子を探らなくてはと、お紺の読売魂に火が付いた。こうなると、のしゃばりお紺の腕の見せどころだ。
 「ちょいと兄さん。兄さんが二人を助けなすったんでしょ」。
 幾ら飛び込んでも船がなければ助からなかったの、船を漕ぎ出した判断はさすがだの船頭を持ち上げる事仕切り。そうなると船頭とて悪い気はしない。自ずと口も滑らかになろうというものだ。




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のしゃばりお紺の読売余話17

2014年11月18日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「どうしておとっつあんは、こんな稼業をしているの」。
 子どもの頃、そう聞いた事も合った。
 「それはな、同じ事を繰り返さない為よ」。
 「繰り返さない」。
 「そうさ、悪い事をすりゃあお天と様が見てらあ。必ずお縄になるのよ。だからよ、それを世間様の知ら示して、同じ事をする者んが居なくなるようにさ」。
 父親の庄吉はそう言っていたが、悪事を働く者は一向に居なくならない。
 「おじさん。おじさんはどうして夜回りをしているのかって考えた事があるかい」。
 「どうしてって、火事を出さねえ為さ」。
 現に、付け火を見付け大事に至らなかった事もあった。付け火ではなくても不注意からの火事は多い。それを未然に防ぐ為にも夜回りは必要なのだ。また、町木戸が閉まってからの急な通行にそれを開閉するのも番太の務めである。
 「そうだねえ。でもさ、人様が寝静まった時刻まで働くのは嫌じゃないかい」。
 「嫌も何もねえよ。誰かがやらなきゃなんねえんだ」。
 (誰かがやらなくてはならないか。読売もそうだろうか。誰かがやらなくてはならないのだろうか。読売なんか無くても生きていくに障りはない)。
 どうしてそんな子を聞くのかといった顔を向けられ、お紺は深い溜め息をつく。
 「どうしてい、お紺ちゃんらしくもねえ」。
 元気だけが取り柄と言わんばかり。
 「あたしだって、たまにはさ、どうして読売なんかやっているのかって考えちまうのさ」。
 そう、他人の色恋沙汰に首を突っ込んでばかりで、己に浮いた話のひとつもないのは、年頃ともなれば寂しい限りである。
 お町とおえんの一件で、太助がおえんに言ったとされる、おえんと居ると時が流れるのが早く、お町と一緒だと、時の流れるのが遅いという言葉。言うなれば、おえんには楽しさを、お町には安らぎを求めているのではないか。だとすれば、男は遊ぶ分には見目形を気にするが所帯を持つとなれば、ほっと出来る女である。
 自分は男の目にどう写っているのだろう。
 「おじさん、おじさんはあたしと話をしていて楽しいかい。それともほっとするかい」。
 「何でぇ。薮から棒によ」。
 とまどいながらも番太は、「楽しいよ」と軽く言う。
 「時が流れるのが遅くはないかい」。
 「おう、遅きゃなぁ。そうすりゃ夜回りの刻限も遅くならぁ」。
 駄目だ、こりゃあ。話が通じていない。当たり前だけれど。




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のしゃばりお紺の読売余話16

2014年11月14日 | のしゃばりお紺の読売余話
 お紺は相も変わらず読売のねたを拾うべく、江戸府中をあちこち出庭っていた。ねたの仕入れ先は、各町内にある番太郎。大体が自身番の前にある木戸番の店である。駄菓子・蝋燭・糊・箒・草鞋などの荒物や夏には金魚、冬には焼き芋なども売っていたので、商番屋とも呼ばれていた。
 自身番に出向いた方が話は早そうなものだが、詰めている大家や差配は口が堅いばかりか、岡っ引きは何かと読売を目の敵にしているのだ。その点、番太郎は目の前の自身番での出来事を見知っており、町木戸が閉まってからの見廻りが役目なので、口は滑らかである。
 「おじさん、焼き芋でも貰おうかね」。
 歩き疲れた身体に芋の甘さが有難い。顔見知りの番太郎では、店先で焼き芋を食べお茶を貰う事も出来る。
 「おじさん。このところ、急に冷え込んできたねえ。夜回りも大変だ」。
 「ああ、そうだな。年のせいかすっかり寒さも身に染みらあ」。
 「あら嫌だ。おじさんは未だ未だ若いですよ」。
 「世辞を言っても出涸らしの茶しかねえよ」。
 そんなやり取りも板に付いたものだ。
 「ねえ、おじさん」。
 「ほれ、きなすった」。
 「ほれ、きなすったって、あたしは未だ何も言っちゃいませんよ」。
 芋よりも目当てはそっちだろうと、言う木戸番のおやじは、店先に叩きを掛けながら軽口を叩く。
 「てえした事もねえが、この先の松の湯、知ってんだろう。あすこで板の間稼ぎがあったくれえなもんさ」。
 「松の湯ったら、伝蔵親分の湯屋じゃないか」。
 伝蔵は深川冬木町界隈を縄張りとする岡っ引きである。岡っ引きに給金は年四両。これだけでは到底生計(たつき)の足しにもならず、副業を持つのが常であり、伝蔵も湯屋を営んでいた。
 「ああ、そうだ。随分ととんちきな板の間稼ぎも居たもんさ」。
 「なら直ぐにお縄かい」。
 (何だ詰まらない)。
 直ぐさまそんな思いは不謹慎であると己を戒める。人様の不幸を飯のたねにしているおの稼業が時として嫌になる事もあった。巾着切りに掛け金を盗まれ命を絶ったお店者、勾引しに合った大店の娘、心中者。数え切れない涙を瓦版に刷ってきている。そして今も、そんな不幸を探し歩いているのだ。






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のしゃばりお紺の読売余話15

2014年11月14日 | のしゃばりお紺の読売余話
 初江は妹を可愛がっていた。周囲が言う程静江が不器量だとも思わない。それは、仕草や気質の良さも加味されての事だと思う。だが、己が静江の容姿だったら、そう思うと母親に似た事に感謝をするのだった。
 幼い頃より姉妹に着物を誂えると、母は決まって、「静江は、何を着せても似合いませんね」と、ぽつりと洩らすのを聞きとがめたものである。
 父が自分に似た静江を可愛がるように、母似の初江は母に可愛がられていたのだと思う。
 だが今は、本来継ぐべきの家名をその静江の為に、諦めろと言われたのだ。静江は家付き娘でなければ、嫁ぐのは難義だと父が言う事も分からなくはない。だがそれは初江が自身の運命を変えてまで従わなくてはならないのだろうか。
 静江の為に犠牲にはなれない。初江は胸から得体の知れない物が沸き上がるのを感じていた。
 「姉上、父上からはお話はどのような事だったのですか」。
 何も知らない静江の無邪気な声が癇に障る。
 「あなたには関わりのない事です」。
 冷ややかな声を返すと初江は、夜具の中に頭まで潜り込んだ。
 一夜明けても、静江の顔を見ると胸がつかえるようであった。静江は何も悪くない。それは良く分かっている。だが、静江さえ居なければ。 そう思ってしまう自身が嫌で溜まらない。 
 これまで静江が容姿をからかわれると庇ってきたが、心のどこかに哀れみや同情の思いはあった。そしてほんの少しのばかり、優位な気持ちも。だがそれが今、覆されようとしているのだ。器量良しに産まれたばかりに。
 夜具の中で、初江の目頭から熱い物が零れ落ちた。
 静江が事の次第を知ったのは、ひと周りも過ぎた頃だった。あの優しかった姉が急に冷たくなった訳も、姉から笑顔が消えた訳も悟ると、無邪気に姉の嫁入りを喜んでいた己が腹立たしくもあった。だが全てが遅過ぎた。姉は直に与力の家へ嫁ぐのだ。今更破談など出来よう筈もない。
 静江は、どうしようもない罪悪感に襲われ、己を責めていた矢先にお町とおえんのいざこざに出会したのであった。
 それはまるで、姉と自分の心の中を見透かしたかの様な、争いでもあった。



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のしゃばりお紺の読売余話14

2014年11月12日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「初江、武家の娘が縁組を断るなど聞いた事が無いぞ」。
 「でしたら父上は、どうあってもわたくしに嫁げとおっしゃられますか」。
 「聞き分けよ」。
 「嫌でございます」。
 平静を装っていた平三郎だが、初江の頑さには内心驚いていた。
 「父上はやはり静江の方が可愛いのですね。それで邪魔者のわたくしを追い出し、静江に跡を取らせるのでございましょう」。
 初江の目からはぽろぽろと涙が溢れ、畳にぽとりと落ちている。
 「これ、初江。父上になんと言う物言いをするのですか」。
 細君も驚きを隠せずに、平三郎に目頭を合わせる。平三郎は、先程よりも大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出すと、こう言うのだった。
 「初江、お前には掃いて捨てるように縁組がある。だがな、静江にはせめて家でもなければ嫁には行けぬのだ」。
 家付きなら冷や飯食いの二男、三男の婿取りの望みがあると。ここは是が非でも聞き分けて欲しいと、平三郎は優しく諭す。これには細君も傍らで目を丸くするのだった。幾ら何でも実の親が、娘をいや娘の器量をここまで言うのか。そういった目であった。
 「旦那様、静江は良き気質の娘にございます。そう焦らずとも良縁もございましょう」。
 細君はそう言うものの、十七になろうとしていてもただのひとつも話はない。平三郎は、それが自分のせいでもある御神酒徳利の静江が不憫なのだ。これまで初江の婿取りを躊躇ってきたのもその為であった。
 「父上はやはり静江の方が可愛いのですね。然れど、田所の跡取りはわたくし。こればかりは嫌にございます」。
 奇麗な女が本気で怒った顔は、凄みのあるものだ。温和で妹思いの初江からは想像もつかない形相である。
 「初江、お前もしや…」。
 好いた人が居るのかと、細君は言い掛けてその言葉を飲んだ。平三郎の居ない所で聞いた方が得策である。





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のしゃばりお紺の読売余話13

2014年11月10日 | のしゃばりお紺の読売余話
 八丁堀亀島町近くの組屋敷に、田所平三郎の住まいはあった。四十半ばの平三郎は、跡継ぎを決めるのが遅いくらいであるのだが、未だ決め兼ねていた。
 なぜなら、子は娘が二人。長女に婿を取るのが全うではあるが、それを躊躇わせるものがあったのだ。幾日も考え抜いた結果はひとつであった。
 「初江を呼びなさい」。
 細君にそう命じると、居住まいを正し袖に手を入れ目を瞑る。
 「初江でございますか」。
 「左様、初江だ」。
 「でしたら縁組が」。
 細君の声が弾んでいるのは、これまでどのような良縁が舞い込もうと、平三郎が首を縦に振らなかったのだ。相手には初江の病弱を理由にしていた。
 そう、初江は平三郎には似ても似つかぬ、細君似の器量良し。十五にもなると縁組は後を引かなかったが、既に十八。もうこの辺りで嫁がない事には年増と呼ばれる年になる。
 初江が部屋に入ると、平三郎はすっと息を吸い込み、一気に話し出すのだった。
 「初江、そなた与力の片山様の御子息を存じ上げてておるか」。
 初江の顔が瞬時に固まるのだった。そして直ぐに俯き、かぶりを振る。
 「左様か。既に見習いとして奉行所に上がっておられるが、中々の人物である」。
 同心の家から与力に嫁ぐとなれば、目出たい出世である。それもこれも、初江の器量望みである事は言うまでもない。
 「父上、父上はわたくしに嫁げとおっしゃられますか」。
 「と申すは」。
 「わたくしは、この田所家の長女。跡取りにございます」。
 「これ以上の良縁はないと心得ておる」。
 初江は、常に父に口答えなどしようもない大人しい娘であった。それが、目に涙を溜て、唇を噛み締め、指先は微かに震えている。
 「何が不服なのだ」。
 平三郎にはその訳が分からずにいた。与力の家に嫁げば、三十俵二人扶持で貧乏所帯を切り盛りする事もない。何より相手から望まれているのだ。
 「父上、何故にわたくしに田所の家を継がせてはくださらないのです。わたくしは嫁になど行きたくはありません。田所の家を継ぎとうございます」。
 「旦那様、初江は丈夫ではございません。わたくしもこの家で婿を取った方がよろしいかと」。
 細君が言い掛けた言葉が終わらない内に、「口出し無用」と、平三郎の声が被さる。





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のしゃばりお紺の読売余話12

2014年11月09日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「また、お前ぇさんかい」。
 お町の住まいを覗き込んでいると、後ろから声がする。振り向けばあの時の豆だ。
 「いってえ何だってのよ」。
 豆、いや太助だそうその男は、お町とおえんの喧嘩騒動の折りにも、住まいを覗き込むお紺を見咎めていたのだった。
 「いえね。お町ちゃんはどうして居るかなと思いましてね」。
 「へっ、お前ぇさん、お嬢さんの知り合いで」。
 「えっ、ええ。昔手習いが一緒だったのですが、あたしが引っ越しちまいましてね。久方振りに深川に足を運んだので、お町ちゃんを思い出したのですよ」。
 つい先日も居た。
 「へえっ。だったら入えったら良いじゃねえですかい」。
 どうやら豆いや太助には幼友だちと言う言葉の印象が強いようで固い態度を和らげる。
 「ええっ、でも本当に久方振りなので、お町ちゃんが覚えているかなぁと思いましてね」。
 「それでこの前ぇも覗込んでいなすったのけ」。
 「はい。それにこの間は取り込み中でしたし」。
 お紺はちらりと太助の顔を覗き込む。その視線を感じた太助は人差し指で鼻の下を擦るのだった。
 「まあ、入えんなよ」。
 入れる訳がない。よしんばお町が忘れていると取り繕ったとしても共通する思い出なんかありゃしないのだ。手習いの師匠の名前だって分かりゃしない。
 「そうですが…。やっぱり出直しますよ」。
 これじゃあ不信者である。





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のしゃばりお紺の読売余話11

2014年11月07日 | のしゃばりお紺の読売余話
 お紺は白けていった。懸想していたのはおえんの方で、そして一方的に思いが膨らみ、太助の言葉尻を良いように解釈していっただけだ。茶汲み娘を生業にし終日男たちの目線を浴びていながらも、存外に初心(うぶ)なようだ。
 おえんの岡惚れと分かった以上長居は無用だが、それにしても思い込みって恐ろしいと、お紺はそう思う。すっかり白けて鼻の穴を膨らませたお紺とは裏腹に、おえんは良き聞き役を得たとばかりに、誰それに言い寄られた、自分に気が有る客が居る。待ち伏せされたと、あれやこれや自慢話が止まらない。
 おえんも「そうかい。それはそれは」。と相槌を打つが、既に心そぞろである。読売のねたどころか、のしゃばりも役に立ちそうも無い。お紺に持ってきた紅やら美人水に費やした銭が惜しくてたまらない程だ。
 「おえんさん。それじゃあ、太助さんの事はもう良いんですか」。
 そう切り出してみた。それで答えを聞いたら「さすがおえんさんだ」と、褒めて帰れる。
 「ええ、幾ら好き合っていても、あたいが身を引いた方が太助さんの為だと思いましてね。好いているからこそ、涙を飲んで別れたのさ」。
 (はいはい。そうですね)。
 「それはお辛かったでしょう。でもさすが、おえんさんだ」。
 「でもね、滅法辛かったんだよ。太助さんが、あたいと居ると時が流れるのが早いんだって。だからずっと一緒に居たいって事ったろう。それが、お町と一緒だと、時の流れるのが遅いんだそうだ。詰まらないって事ったろう。それであたいくらいの器量なら、器量望みの男が絶対居るからってさ。そうだよね。あたいなら、大店の若旦那や御武家さんだって夢じゃないんだから」。
 おえんの解釈はおかしいが、おえんと一緒だと時の流れが早く、お町となら時がゆったりと過ぎる。楽しみよりも安らぎを求めたと言う事だろう。それを、単に一方的に懸想された相手にも関わらず、丁寧な断りを入れる太助とは、存外に情のある男かも知れない。
 全くもって面白くも何ともない結末に、読売のねたにはほど遠いばかりか、決着が着いたならのしゃばる事も出来やしない。お紺は煮え切らない思いであった。
 (何処かに可笑白い話でも転がっていないもんかねぇ)。
 幾ら器量良しでも、興醒めなくらいに顔を涙でぐちゃぐちゃにしているおえんを尻目に、腰を上げたお紺。高橋を渡れば直ぐに本所だが、そのまま横網町まで帰るには少しばかり陽が高い。ついふらふらと佐賀町のお町の方へと足が向くのだった。





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のしゃばりお紺の読売余話10

2014年11月05日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「だって、3年も待ったんだよ」。
 「えっ、3年…。ちょいとおえんさん、3年って、その間に太助さんとは」。
 「太助さんは、所帯を持つ為に銭を貯めるって、それで暫く会えないって」。
 雲行きが怪しくなってきた。
 「なら3年の間、一度も会っちゃいないのですか」。
 「そうだよ。太助さんも所帯を持つ為にあたいと会うのを堪えているんだ。だから、あたいも我慢してたのさ」。
 (あいたたたた…)。
 先程からおえんは、所帯、所帯と連呼しているが、本当だろうか? 
 「太助さんは、確かに所帯を持とうって言いなすったんですね」。
 おえんは「どうしてそんな事を聞くのか」といった目をお紺に返す。
 「口にださなくったって分かるさ。太助さんとは好き合っていたんだから、所帯を持つのは当然だろう。ねえ、そうだろう」。
 思わずお紺は眉根を寄せる。太助からは所帯を持とうとは言われていなかったのだ。なら好き合っていたとは、深間にはなったのだろうか。男は所詮きれえな女を一度抱きたかっただけだったのだろう。それでおえんは、思い込んでいた。だが、ここはおえんの見方をして話を聞き出す方が得策である。大げさに、太助は情がないとお紺は言う。
 「酷い話だねえ。好いているって言っときながら、片方じゃお町さんにも言ってなすったんでしょ」。
 「止めとくれよ。太助さんは悪くないんだ。勝手に懸想したお町が悪いのさ」。
 二股を掛けられた女の大多数は、件の男よりも相手の女を恨むのが不思議である。悪いのは二股を掛けた男であって、女の方はその事実も知らない事があると言うのに。
 「じゃあ太助さんは、おえんさんと所帯を持つ為に、3年もの間働いていたんですね。その間に傍に居た頭の娘が懸想して、太助さんは断れなくなったと」。
 お紺は「3年の間」ではなく、「3年もの間」と、「も」に力を込めて言った。
 「分かるかい。そうなんだよ」。
 (分かるものか。大体、3年もの間音沙汰がなければ、察しが付こうってもんだ)。
 こうなると好き合っていたというのも怪しい。
 「だって、毎日のように通って来てくれて、あたいが茶を持って行くと、“おえんちゃんの茶は滅法界旨い”って。“きれえな娘と話しながら茶を飲めて疲れも吹っ飛ぶ”って、そう言ったんだよ。それはあたいに気が有るって事だろう。あたいを好いているって事だろう。えっ、そうだろう」。
 (そうじゃない。それはお世辞、もしくは方便というものだ)。





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のしゃばりお紺の読売余話9

2014年11月03日 | のしゃばりお紺の読売余話
 「悪いけど、あたいの話を聞いちゃくれないかい」。
 (そうこなくっちゃ。聞きますと、聞かせてくおくれな。聞かなきゃ夜も落ち問い眠れない)。
 もはや読売はどこへやら、この金棒引きっぷりが、お紺がのしゃばりと言われる所以である。
 おえんの話は概ねは見たとおりで、夫婦約束をした太助に、頭の娘との縁組みが持ち上がると、そちらに寝返ったというものだった。
 (やっぱりね。男なんて所詮そんなものだ。待てよ、女だって棒手振りと大店の跡継ぎだったら、天秤は大店に傾こうってもんだ)。
 お紺だったら、傾き過ぎて引きちぎれる程だろう。
 「それで、太助さんってえお人は何と言っていなさるんです」。
 「あたいとは所帯は持てないって」。
 「んっまあっ。だって所帯を持とうって言ってなすったんでしょ」。
 おえんの目からほろほろと涙が零れ落ちるが、一向に構わずに鼻を啜り上げるのだった。
 「それは、お町さんと言い交わす前の話だと言うのさ」。
 「前の話…」。
 事の成り行きが若干の狂いを生じ、お紺は思わず前のめりに身を屈め、おえんを覗き込む。
 「なら、おえんさんとは切れて、それからお町さんと」。
 「うえーん」と、おえんが盛大に鳴き声を上げ、その声は長屋中を吹き飛ばすのじゃないかと思える程だ。
 「だって、だって…」。
 声に成らない。
 「ゆっくりとお言いなまし」。
 「あたい、あたい…」。
 「はい」。
 「あたいは、太助さんが、所帯を持つのは暫くまっとくれって言うから…」。
 「だから待っていたのでしょ」。
 おえんは、こくりと頷く。
 「おえんさんを待たせておいて、お町さんにちょっかいを出した。万が一お町さんと巧くいかなかったら、おえんさんに戻る気ずもりだったんですよ。そんな情のない男、熨斗を付けてあげてしまいないさいまし」。
 会った事も見た事もない太助に、お紺は腹立たしさを覚えていた。




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