《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

侵略兵士は地獄の苦しみを強いられる

2014-06-29 23:03:12 | 日本の政治・軍事―日本の動きⅠ
侵略兵士は地獄の苦しみを強いられる

(A)
 アジア・太平洋戦争で侵略軍=日本軍は厖大な死傷者を出した。その死は悲惨きわまりないものであった。中国本土や中国東北部において八路軍を始めとする中国人民、朝鮮人民のゲリラ戦争で苦しめられたことはよく知られている。太平洋諸島においても惨めな死を強いられている。
 日本政府の発表では、戦死者は310万人、そのうち軍人・軍属は230万人(朝鮮、台湾の軍人・軍属約5万2000人を含む)とされている。その実態は、戦闘による死者だけではなく、補給の途絶や現地で強制調達する食糧の不足から飢餓、栄養失調、マラリア、アメーバ―赤痢、デング熱、脚気などによる餓死者と病死者が非常に多いのである。大量の餓死者(病死者も含む)が戦死者を上回っており、230万人の約60パーセント強、140万前後と推定されている(藤原彰『餓死した英霊たち』)。
 天皇の名で戦場に駆り出され、侵略戦争の矢面に立った若者たちが、アジア・太平洋地域の各地で飢えながら生きたまま野垂れ死んだのである。その数、140万人‼ それは地獄の苦しみであっただろう。戦争で死ぬということが、犬死にであり、無駄死にであって、けっして「名誉の死」などではないことが、ここに凝縮して示されている。
 日本軍は、2000万人以上のアジア人民を殺りくした。南京大虐殺を強行し、重慶爆撃の無差別虐殺を繰り返し、いたる所で民間人を殺害し、日本軍「慰安婦」制度を朝鮮・中国・フィリピンなどアジアの女性に強制し、侵略軍として暴威を振るった。だが同時に、自らが無惨きわまりない死に陥ったのである。このことはすべての日本人の記憶に刻みつけなければならない。後の世代に意識的に継承しなければならない。

(B)
 沖縄戦は、沖縄の人々にとって「鉄の暴風」が吹き荒れる無差別殺戮の戦争であった。しかも沖縄の人々は日本軍からも切り捨てられ、殺され、あげくの果ては集団自決を強いられた。
 その一方、米軍側も甚大な被害を受けた。
 真嘉比と安里五二高地での激突は次のようなものだったと言われる。
「……以上の戦闘が続き、十八日ようやくアメリカ軍は『シュガローフ』(註 安里五二高地のこと)を攻略した。この『シュガローフ』攻防戦に要した十日間(註 正確には1週間)に、第六海兵師団は二千六百六十二名の死傷者と千二百八十九名の精神病者を出した。沖縄作戦中、アメリカ軍は万をもって数える多数の精神病患者を出した。それは自らの激烈な艦砲射撃、爆撃、砲撃に圧倒されアメリカ軍第一線将兵が半狂乱(ママ)状態に陥ったもので、いかにその大量の火薬の炸裂がものすごかったかを示す一証左である」(八原博道『沖縄決戦』、具志堅隆松『ぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤー」になったわけ。』から重引)
 この戦闘では約6000人の日本軍は壊滅状態になり、数千人の死傷者を出したと言われる。どちらの側の将兵も甚大な犠牲者を出した。勝者であるはずの米軍において死傷者だけでなく、死傷者を上回る数の精神障害者が生み出されたことは、戦争の非人間性、地獄の苦しみをもたらす戦争の特性を示してあまりある。

(C)
 アメリカは、だが自軍の惨状を総括せず、その後、朝鮮戦争、ベトナム戦争、さらにアフガニスタン戦争、イラク戦争、と侵略戦争の犯罪を重ねている。米軍は侵略地で民間人無差別殺害を繰り返している。その中で、米軍兵士は、民間人虐殺の罪の意識や自分たちが殺される恐怖、報復される不安から多くの自殺やPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発生させている。米軍の正式の統計はないが、ある調査によれば、帰還兵の15・6~17・1パーセントがPTSDでその後も苦しみ続けているという。じつに6人に1人の割合である。
 侵略戦争を担うということがいかに激しい人間性破壊の作用を受けるのかをはっきりと認識しなければならない。

(D)
 若者たちを戦場に送り出し、自分は安全地帯にいて、戦場の非人間的現実を見ようとも知ろうともせず、若者たちの死を美化して戦争=集団的自衛権行使をあおる安倍晋三、石破茂、高村正彦ら自民党の領袖たち。そして山口那津男、北側一雄ら公明党執行部たち。彼らには、それこそ地獄の苦しみを味あわせなければならない。
 「戦争反対、若者を戦場に送るな、朝鮮・中国・アジア人民を殺すな」の声をストレートに街頭に響かせ、何回でもデモを繰り返そう。

2014年6月29日
野口 碧(のぐち・みどり)

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