《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

言論弾圧の張本人、ブルジョア独裁の権化=安倍晋三が悪行の報いを受ける

2022-07-09 21:01:43 | 日本の政治・軍事―日本の動きⅠ
言論弾圧の張本人、ブルジョア独裁の権化=安倍晋三が悪行の報いを受ける


安保法制反対国会デモ(2015年7月18日)

 
同(同年10月30日)

●問題を捻じ曲げてはならない
 7月8日、奈良市で参院選街頭演説中の安倍晋三が同市在住の山上徹也氏の銃撃によって殺されました。銃撃テロを実行した山上氏(41歳)は、現在無職、元海自隊員とのことです。マスコミが垂れ流す警察発表は断片的で、詳細はなお不明な点が多いです。だが、自公政権やマスコミが宣伝する「民主主義にたいする挑戦だ」「言論封殺のテロリズムを許すな」という大合唱には断固反対です。なぜなら、それはテロという手段性のみを切り離して、7・8銃撃テロがなぜ起こったのかの究明、そして安倍晋三がいかなる強権政治を行ってきたのかの説明を封殺するものであって、問題を捻じ曲げているからです。
 今の時点でいえることは、少なくとも相互に関連する四つの問題があるのではないでしょうか。


●安倍と安倍政治の数々の悪政を糾弾する
 一つは、「安倍晋三」といえば誰もがすぐさま数々の悪事を想起できますが、それを想起すれば、むごたらしく殺された安倍の死を悼む必要はさらさらないということです。安倍の死によってその悪行を免罪したり、塗り隠したりすること、ましてや安倍を「偉大な政治家」などと美化することに徹底的に反対します。改めて安倍とその悪政を糾弾しなければならないと思います。死屍(しし)に鞭打たれても当然の存在、それが安倍晋三なのです。
 したがって私たちは、安倍が殺された事実をその悪行の報いとして平然と受けとめればいいのであって、悲しむことなどないのです。
 安倍と安倍政権の悪政は今も続き、枚挙にいとまがありません。
・「戦後レジームからの脱却」を掲げ、何よりもまず戦後日本の議会制民主主義を骨抜きにすべく官邸主導の側近政治を押し通し、虚偽答弁を繰り返して議会を無視、同時に「こんな人たちに負けるわけにいかない」と叫んだように(2017年7月1日、秋葉原)、政権に少しでも不満や批判を持つ労働者民衆をまるごと敵視、文字通り民主主義の破壊者、ブルジョア独裁の権化としてふるまい続けた、
・「美しい日本」「日本を取り戻す」と極右ナショナリズムを扇動、天皇制イデオロギーを基軸とする日本会議を主導、
・靖国神社参拝、A級戦犯賛美、神社本庁を基盤として国家神道復活を策動、
・教育基本法を改悪、
・沖縄辺野古新基地建設の強行、共謀罪の制定、特定秘密保護法の制定、安保法制=戦争法の制定と集団自衛権行使の合法化、日米同盟の軍事同盟としての強化など戦争のできる国づくりを強行、
・釣魚台(「尖閣列島」)の国有化、反中国排外主義の鼓吹、インド太平洋構想の名で日本を中軸とする新たなアジア勢力圏化を策動、「台湾有事は日本有事」と発言、対中国侵略戦争をあおる、
・独島(「竹島」)占領の策動、反韓国排外主義の扇動、
・あくなき9条改憲策動、敵中枢を含む敵基地先制攻撃論、核共有論の押し出し、
・3・11福島原発事故の国家責任を否定、被災者・被ばく者の救済を放棄、原発行政を開き直り原発再稼働を推進、福島原発事故隠蔽のための東京オリンピック誘致、
・アベノミクスの名のもとに、むき出しの金融資本優先=独占資本優遇政策、全面的な民営化の強行、地方自治体の公共サービスの変質・劣化、
・労働者の非正規雇用化の拡大、1990年代後半以降約30年間、実質賃金が下がりっ放し、とくに第一次安倍政権登場の06年以降顕著に低下、合わせて裁量労働制を拡大し長時間労働が強制され、不払い残業が是認され、過労死が続出、
・とりわけ青年、女性の労働強化と低賃金化、不安定雇用化と首切り自由化、
・「障害者」切り捨て、保育など福祉切り捨て政治、
・森友・加計学園問題や「桜を見る会」問題や財務省決済文書改ざん問題に露骨に示される国家行政の私物化、
・COVID19対策での失敗、
・日本軍慰安婦制度の隠ぺいと報道機関への政治介入など数々の言論弾圧、
・在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチの誘発、
・行政独裁、数々の虚偽答弁など議会無視、
・その他多数、
~~それらによって、どれだけ多くの人々が苦しめられ、ついには過労死に至らしめられたことでしょうか。自死に追いつめられた人もいるのです。安倍政治によって数多の犠牲者、死者が生み出されたのです。だから、安倍と安倍政治に何とかして鉄槌を下したいと願ってきた人々は数多くいます。安倍は戦後日本の歴代首相のなかでももっとも居丈高で傲慢で、最凶悪の支配者だったのであり、その当然の報いを受けたのです。

●大衆運動の力で安倍打倒を果たしたかった
 二つは、安倍晋三に下されるべき制裁は、今回のような銃撃テロによってであってはならなかったということです。日本の多くの労働者・農漁民・人民大衆は国会・首相官邸を揺り動かすような巨大かつ執拗な大衆デモによって安倍を政権の座から引きずり落ろしたかったのです。ブルジョア司直といえども安倍晋三と昭恵、それに連なる悪人どもを逮捕・起訴・投獄せざるをえないほどの階級的追及をしなければならなかったのです。それができないできたことは、ほんとうに残念でなりません。
 大衆的な安倍弾劾・追及のたたかいの弱さが、結果として7・8銃撃テロをもたらしたのではないでしょうか。もし7・8銃撃テロがなければ、その後も安倍は自民党の最大ボスとして君臨しつづけ、日本帝国主義の悪行を牽引しつづけたことでしょう。私たちは手段としてのテロをうんぬんする前に、生きているうちに安倍を打倒することができなかった私たちの無力さ、安倍をのさばらせてきた愚かさを改めて真摯に反省しなければならないと思うのです。


●極右・排外主義テロの蠢動と対決
 三つは、銃撃テロの実行者である山上氏の意図、動機はなお不明ですが、それがどのようなものであれ、7・8銃撃テロが戦前・戦後の日本社会の底流に流れる極右テロリズムの表面化を促す危険性があることに警戒し、その噴出と真正面からたたかう決意をすべきだと思います。
 過去の銃撃テロについてマスコミがいろいろ報道していますが、私たちがけっして忘れてはならないものは、最近の京都府宇治市ウトロ地区への放火(21年8月30日)、大阪府茨木市のコリア国際学園への放火(22年4月5日)を始めとして頻発する在日韓国・朝鮮人へのヘイトクライム、排外主義テロリズムです。さらに朝日新聞阪神支局の小尻知博記者を殺害した「赤報隊」による銃撃テロ(1987年5月3日)です。
 7・8銃撃テロを契機として日本の極右勢力が蠢動する危険性は満ちています。すでにSNS上では「犯人は在日だ」「銃撃犯は反日」というデマが流されています。まったく根拠がないヘイトスピーチなのです。
 ヨーロッパやロシアやアメリカでは、現下のウクライナ戦争によって浮き彫りにされているように、さまざまな極右、ネオナチが暗躍しています。安倍政権の登場とその長期政権化、ポスト安倍以降も続く安倍政治が、日本社会の深部にある極右的なナショナリズムを醸成していることは明らかです。天皇制がさまざまな延命措置をとおして継続・強化されているのですから、その天皇制を頂点とする帝国主義日本社会の排外主義・差別主義・権威主義の構造は根強く存続しているのです。
 そのなかで岸田政権は、安倍政治をも越えた非常に危険な策動に踏み切っています。ロシア・プーチン体制によるウクライナ侵略戦争の情勢に乗じて、日米安保同盟下での独自の軍事強国化の道に踏み込みました。とりわけ、岸田が6月29日、NATO首脳会議に参加し、「日本・NATO協力のアップグレード」「日本・豪州・ニュージーランド及び韓国のNATO理事会定期参加」「NATOのインド太平洋地域への関与歓迎」を打ち出したことはきわめて重大な事態です。
 詳しくは省きますが、日本帝国主義が内外する政治・経済危機に直面して、そこからの脱出口をいっそうの軍事強国化に求めていることは明らかです。今まさに戦争という国家的大量殺人を常態とする国家・社会へと日本を大転換させているのです。血なまぐさい、殺伐とした状況へと労働者人民を引き込むとき、社会の深部から非合理的で不条理な要素が噴き出し、その最先端で極右・排外主義が暴走することは避けられません。
 ロシア・プーチン体制のウクライナ侵略戦争とウクライナ・ゼレンスキー政権および米帝・NATO・日帝の対抗的戦争という情勢のなかで、日本の極右・排外主義テロ、あらゆるヘイトクライムの台頭という危機を見すえて、私たちはたたかいの戦列を備えなければならないと思うのです。


●なぜ7・8銃撃テロにいたったのか
 四つには、7・8銃撃テロの真実はいまだ不明な部分が多くありますが、その真実をしっかりと見すえなければならないということです。山上徹也氏は、前述した極右・排外主義とは系譜を異にしているのか、それとも関連しているのか、まだよくわかりません。
 第一に、山上氏が安倍殺害を決意した動機は何だったのでしょうか。
 第二に、最初は爆発物、次に銃の製造を発想した根拠は何だったのでしょうか。同じことですが、最終的に爆発物ではなく銃を使用した理由は何だったのでしょうか。
 第三に、身をさらしての実行、逮捕を覚悟ないし前提とした作戦、重罪重刑を受けることが明らかな行動は何を意味するのでしょうか。
 いずれにせよ、そこまで思いつめた行動にいたるには、よほどの深刻な事情があったと考えるべきでしょう。警察発表は、本人の発言をすべて警察・治安用語に置き換えるものですから、そのまま受け取ることはできません。山上氏に着いたであろう弁護士がしっかりと十全な弁護活動をされることを期待したいと思います。
 7・8銃撃テロの真実が明らかにされれば、このたびの安倍暗殺の歴史的な意味を確定することもできるでしょう。

 とまれ、安倍晋三は今回の参院選の演説でも、ウクライナ戦争を口実にして「戦争になって日本を守るのは自衛隊、その自衛隊を憲法に明記すべき」と改憲を主張しまくりました。自衛隊の国軍化を主導する安倍が、その自衛隊で銃撃の訓練を受けた人物に狙撃されて命を落としたとは、何と皮肉なことでしょうか。自衛隊が人殺し集団であることが白日の下にさらされたのです。安倍は戦争国家化がもたらすリスクを自ら払わされたのです。
 とりあえず以上とします。

2022年7月9日

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1 コメント

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なし (とおりすがり)
2023-04-30 16:24:11
ずっとブログが更新されていないが、この筆者死んだのか。ああー。
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