《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

友への手紙――極右との対決は万国の労働者の焦眉の課題

2014-07-07 21:47:56 | 欧州の政治経済―世界の動きⅢ
友への手紙――極右との対決は万国の労働者の焦眉の課題

●はじめに――「警鐘の鐘」が鳴らされた

 5月27日、スウェーデンの教会で、社会に警鐘を鳴らす鐘が第二次大戦以来、初めて鳴らされました。鳴らしたのはフレデリック・ホレルツ牧師。「悲しいことだ。しかし傍観は許されない。社会への脅威を告げるため鐘を鳴らすことにした」と彼は鐘を2時間鳴らし続けました。
 彼はなぜ「警鐘の鐘」を鳴らしたのでしょうか? この前日の26日、ヨーロッパ議会選挙の結果が分かったからです。ヨーロッパ議会選挙は751議席をEU参加国28カ国に人口比例配分するもので、5月22日~25日に投票が行われました。その結果、フランス極右政党「国民戦線」が国内最多の24議席を獲得し第一党になったのを始め、イギリスの「独立党」、デンマークの「国民党」が国内第一党になりました。また、これまで議席を持たなかったギリシャ、ドイツでも議会初進出をはたしました。ロイター通信はそのコラムで「欧州に激震が走った」「EUは死の淵にある」と報じました。「移民排斥」「EU脱退」を掲げる極右が大きく議席を伸ばし、彼らのイスラム敵視・ロマ敵視のレイシズムのデモが街頭に進出しつつあるのです。この現象は一過性のものでしょうか? それともさらに大きな社会的勢力として進出し、1930年代的階級闘争の再現へと発展していくのでしょうか? そして日本の極右政党は?
 われわれは極右の台頭をいかに見据え、いかに闘うべきなのか。その問題意識で微力ながら書いてみたいと思います。

Ⅰ EU各国における極右の台頭
 
①  フランス

 フランスの極右政党「国民戦線」は、ヨーロッパ議会選挙で、これまでの3議席から一気に24議席にまで伸ばしました。「国民戦線」が支持を伸ばしているのはフランス全土ですが、とりわけ著しいのがフランス南部です。「アフリカからのイスラム教徒の移民が町を汚染している」との理由で移民排斥を唱え、排外主義で住民を組織しています。またギリシャ危機への対応から緊縮財政を余儀なくされているなかで、フランス経済は停滞し、多くの失業者を生み出しています。「EUからの脱退」「フランスの主権を取り戻せ」をスローガンに第一党にのし上がってきました。
 「国民戦線」創始者にして現党首の父であるジャン=マリー・ル・ペンは先月、「エボラウイルスなら欧州の移民問題を3カ月で片付けてくれるだろう」と発言しました。彼は「ナチスのガス室は第二次世界大戦の歴史では些細なことにすぎない」という発言もしています。

②  イギリス

 イギリスはEU加盟国でありながらEUに懐疑的な立場を取っており、EU共通の通貨であるユーロの導入を認めないなど一定の距離を置いてきました。とはいえ、「保守党」・「労働党」の二大政党が長く政権を担ってきたという歴史があります。そのイギリスで、極右政党の「独立党」がヨーロッパ議会選挙で29%の支持を得、25%の労働党、23%の保守党を凌駕し第一党に進出しました。彼らのスローガンはこうです。「EU加盟国である限り、自国を統治できず、国境を管理できない。直ちにEU脱退を」。

③  デンマーク
 デンマーク「国民党」は今回の選挙で27%の支持を得、国内第一党になりました。党首の元介護士のピア・キェアスゴーは徹底した排外主義者で、「ムスリムがヨーロッパに侵入し、ヨーロッパ人の民族浄化を企んでいる」「文明人はヨーロッパ人だけ、他は全て野蛮人」など激しい言葉で扇動し、高齢者や若者の間で支持を伸ばしています。さらに同党は、デンマーク刑法に記載されている「人種差別発言の禁止条項の廃止」も要求しています。

④  オーストリア

 オーストリアの国民議会(下院)選挙が2013年9月29日に行われました。この選挙の得票結果は、「社会民主党」が27・1%で第1党。保守系与党の「国民党」が23・8%で第2党。そして極右の「自由党」が大連立の2大政党批判で票を集め第3党に躍進しました。
 そして今年5月20日のオーストリア日刊紙「クリア」の世論調査で「次の日曜日に選挙があるとすれば、貴方はどの政党に入れますか」との問いに対し、「自由党」が29%でトップ。連立政権与党の「社会民主党」が28%、「国民党」が23%との結果でした。「緑の党」は13%。極右の「自由党」が連立政権の2大与党を初めて上回りました。
 「自由党」創設者のハイダー(2008年11月交通事故で死去)は札付きのナチス礼賛者で、ナチス賛美の発言で物議を醸した人物です。その主旨は彼の死後も受け継がれているといわれています。その発言は以下のとおり。

 1.第3帝国には秩序ある雇用政策があった
 2.ナチス親衛隊は旧ドイツ軍の一部であり、栄誉と尊敬を受けるべきだ
 3.わが国の兵士(ナチス親衛隊)は犯罪者ではなく、犠牲者であった

⑤  ギリシャ

 「黄金の夜明け」。これがギリシャの極右政党の名前です。この党は、2009年の総選挙では0・29%の得票しか得られませんでした。しかしギリシャの財政破綻による経済危機を背景に支持が広がり始めた2010年11月の地方選挙では、アテネ自治体で5・3%の得票を集め、市議会に議席を得ました。大きな移民コミュニティに隣接する地区では、その得票率は20%にさえ達しました。さらに2012年5月に行われたギリシャ議会総選挙では、「すべての移民を国外追放し、国境地帯に地雷を敷設する」という過激な公約にもかかわらず7%の得票率で、ギリシャ議会に18議席を獲得しました。2013年6月、連立政権の一翼を担っていた「民主左派」が連立離脱。これにより、一気に政局が不安定化し、総選挙も取りざたされる中、「黄金の夜明け」の支持率は14%と倍増(2013年6月現在)。仮に総選挙が行われた場合、議会第3党に躍り出ると言われています。2014年5月25日の欧州議会選挙でヨーロッパ議会初進出を果たしました。

⑥  オランダ

 オランダの「自由党」は2006年に結成されました。その年の総選挙で9議席を獲得し、議会において第5番目の政党になりました。4年後の2010年に行われた下院選挙では、「イスラム諸国からの移民受け入れ停止」「コーランの発禁処分」「スカーフを被っている人物に課税」などの反イスラム排外主義を公約に掲げ、選挙前の9議席から24議席にまで党勢を拡大し第3政党に躍進しました。

Ⅱ ヨーロッパにおける極右台頭の意味するもの

1)EU脱退の加速化→EU縮小・崩壊へ

 EU縮小・崩壊は避けられない趨勢となりました。ヨーロッパ議会選挙の結果、3割もの議員がEUの存在に異議を唱え、EUの解散あるいは様々な権限の停止を訴えています。今のところこの勢力は3割に過ぎませんが、今後さらに大きくなりヨーロッパ全体を席巻しかねないと考えています。なぜかといえば、世界経済全体の硬直化からくるEU参加各国の経済の停滞と不況、とりわけ失業者の増大、さらには欧州財務危機が背景にあるからです。EUの失業者は2600万人に上り、25歳以下の若者の失業率は戦慄すべきものです(ギリシャ=61・5%、スペイン=56%、ポルトガル=52%など)。したがって、極右の台頭は一過性のものでなく、今後さらに激しくなると予測されます。「移民のせいで失業者が増えている」「EUのためにわが国が苦しんでいる」「EUを脱退し自国の栄光を取り戻そう」の声は、今後ますます大きくなると見ています。

2)ヨーロッパにおける階級情勢――その時左派は何をしていたのか

 極右台頭の客観的要因が、ヨーロッパ経済の停滞と失業率の増大、とりわけ移民問題にあることは上記したとおりです。では極右台頭の主体的要因はどうだったのでしょうか? 極右が台頭してきたこの時期に、「左翼陣営(左派)は何をしていたのか」を考えてみたいと思います。
 われわれは「中間階級の没落と左右へ分岐(二極分解)」という概念を知っています。社会体制が行き詰まり、体制の危機が進行してくると、それまで体制を支えてきた中間階級が没落すると同時に左右に分岐し、やがて左派と右派の階級激突が始まることを意味します。
 ヨーロッパにおいてもそのような「中間階級の没落」と「左右への分岐」があったのか否かを検証していきたいと考えます。ここでは、ヨーロッパ階級情勢の縮図としてフランスを取り上げました。極右の台頭が最も顕著であるという点と、今一つは「階級闘争が最も激しく闘われたがゆえに階級闘争が最も典型的に進んだ国」(カール・マルクス)であるからです。そういう意味でフランスを対象にして考察していきたいと考えます。
 方法はいたってシンプルです。前回(2009年)と今回(2014年)のヨーロッパ議会選挙の票の流れを見るだけです。どの政党が票を伸ばし、どの政党が票を失ったかを見ることを通して、仮説である「中間階級の没落」と「左右への分岐」が果たしてフランスでも生起したのかを検証していきます。

《2009年選挙結果》
*投票日:2009年6月7日
*投票率:40.63%(登録有権者44,282,823名/投票者17,992,161名)
*有効票数:17,218,614票(全投票総数中95.70%)

●党派別得票と議席数
党派及び政党連合                    得票数  得票率(%)  議席数
国民運動連合(UMP)-新中道(NC)-現代左派(GM) 4,799,908  27.88      27
社会党(PS)                          2,838,160  16.48       14
ヨーロッパ・エコロジー(Europe-Ecologie)        2,803,759  16.28       14
民主運動(MoDem)                      1,455,841   8.46       8
左翼戦線(Front de Gauche)+海外同盟(AOM)     1,115,021   6.48       5
国民戦線 FN                           1,091,691  6.34       3
反資本主義新党 NPA                     840,833   4.88      0
リベルタス(Libertas)                       826,357   4.80       1
独立エコロジスト同盟(AEI)                   625,375  3.63       0
立ち上がれ!共和国(DLP)                    304,585  1.77       0
労働者の闘争(LO)                       205,975   1.20       0

 【註】得票率が1%に満たない政党及び連合については除外しました。
    左翼戦線は、フランス共産党(PCF)や左翼党(PG)、ユニテリアン左翼(GU)など非PS系左翼諸党派による連合組織。
    リベルタスは「フランスのための運動」(MPF)と「狩猟、釣り、自然、伝統」(CPNT)による連合組織です。
    反資本主義新党は、革命的共産主義者同盟(第四インターナショナル統一書記局派フランス支部)を中心に、共産党・社会党・労働者の闘争
    などの離脱グループと労働運動家・市民運動家が合流して2009年に結成された政党です。

《2014年選挙結果》
*投票日:2014年5月25日
*投票率:42.43%(登録有権者数46,544,712名/投票者数19,747,893名)
*有効投票数:18,955,761票(全投票総数中95.99%)

●党派別得票と議席数
党派名                              得票数    得票率(%)  議席数
国民戦線(FN)                         4,711,339    24.86       24
国民運動連合(UMP)                     3,942,766    20.81       20
社会党-左翼急進党(PS-PRG)                2,649,202    13.98       13
独立民主主義者連合-民主運動(UDI-MODEM)     1,883,051     9.94        7
ユーロップ・エコロジー・緑の党(EELV)           1,695,914    8.95       6
左翼戦線(Front de Gauche)                  1,200,713    6.33       3
ウートゥルメールのための連合 (UOM)             52,033    0.27       1
立ち上がれ!共和国(DLR)                    723,956    3.82       0
Nouvelle Donne(ND)                       549,774    2.90       0
Nous Citoyens(NC)                        266,468     1.41      0
労働者の闘争 (LO)                        222,509    1.17       0
独立エコロジスト同盟 (AEI)                   212,100    1.12       0

 【註】ウートゥルメールのための連合は、レユニオン共産党(PCR)とマルティニーク進歩党(PPM)の連合で、左翼戦線支持。
    出典:“France Entière Sièges à pourvoir : 74 Résultats définitifs*”. フランス内務省 (2014年5月28日). 2014年5月31日閲覧。
    “Élections européennes     2014”. France-Politique. 2014年6月3日閲覧。
    上記では議席を得た政党と獲得得票率が1%以上の政党のみを掲載しました。

 まず注目したのは「ヨーロッパ・エコロジー(緑の党)」と「社会党」の凋落です。中道左派の両党は、それぞれ16・28%→8・95%、16・48%→13・98%へと大きく票を減らしています。緑の党は「ストップ環境破壊」「有機農業育成」などを掲げた環境政党であり、社会党は、「資本主義の歪み」を穏健に是正することを綱領とし、政権与党にもなった改良主義の党です。環境問題がブルジョアジーの環境ビジネスにその座を奪われ、改良主義が長引く世界経済の停滞のなかでその存在意義を失い、両党ともにその歴史的使命を失いつつあることがこの選挙で明らかになりました。
 この両党とともに長らく政権与党の中心にあった中道右派の「国民運動連合」も27・88%→20・81%と大きく票を失いました。中道右派ならびに中道左派の票が激減し、「中間階級の没落」が生じていることは間違いありません。
 他方、左翼陣営(左派)はどうでしょうか。「中間階級の没落」は左派の躍進に繋がったのでしょうか。極右が大きく台頭したのと同じように、左派も躍進したのでしょうか。これを見ていきます。
 共産党を中心とした「左翼戦線」は6・48%→6・33%と横ばい状態でどちらかといえば微減です。「労働者の闘争」も1・20%→1・17%と微減です。
 問題は「反資本主義新党」です。この政党の前身は革命的共産主義者同盟(フランス)で、同党は第四インターナショナル統一書記局派の最大組織であり、統一戦線形成と大衆運動の発展を綱領に掲げてきました。この革命的共産主義者同盟(フランス)を中心に、共産党、社会党、労働者の闘争などの造反グループと労働運動家・市民運動家が合流して2009年2月に結成されたのが「反資本主義新党」です。結党4ヵ月後の選挙で4・88%(約84万票)と大躍進し、選挙後の総括集会で「われわれは全国勢力として確認された」と意気高らかに宣言しました。事実、極右の「国民戦線」票が6・34%(約109万票)ですから、数的にもかなり「近い」と言えます。「労働者の闘争」(国際共産主義者連盟)を併せる(両党は異なる綱領を有する政党ですが、対「極右」の観点から括らせていただきました)と6・08%(約105万)ですから、この時点では、「極右」と「革命的左派」との力関係は拮抗していると言って過言ではありません。
 ところが5年後の今回選挙では、「反資本主義新党」は、得票率が1%以下と大幅に後退しました。財政的な理由で8選挙区のうち5選挙区でしか登場できず、選挙キャンペーンも不十分だったと言われています。「労働者の闘争」は辛うじて1・17%を確保したものの、「革命的左派」合わせての下降は否めません。代わって「Nouvelle Donne(ND)」と「Nous Citoyens(NC)」という新たな政党が登場しています。前回の選挙には無かった政党です。この政党が何者なのか、かなりの時間と労力を割いて調べましたが、掌握できませんでした。前者の政党名は「ニューディール」、後者のそれは「われわれ市民」という意味です。
 極右が労働者階級・人民を組織し大幅に票を伸ばしている間に、左翼陣営(共産党系・革命的左派系)は党勢を伸ばしていません。むしろ微減しています。
 中間階級の左右への分岐のはずが左派へは流れず、極右へのみ流れている現実。左派が伸びず、極右だけが一人勝ちしている現実。これは深刻なことです。階級情勢の原理である、「左右への分岐」が生起していない。

 なぜこうなってしまったのでしょうか? それは左派の停滞と混迷が長期にわたって続いているからです。誤解を恐れずに言えば、「極右台頭の主体的責任は左翼陣営(共産党系+革命的左派)にある」「左翼陣営の停滞と混迷が極右の台頭を許した」と言えないでしょうか? 2002年の大統領選挙では、「革命的共産主義者同盟」が4・24%(1,210,505票)「労働者の闘争」が5・72%(1,630,244票)獲得しました。両党併せると9・96%(2,840,749票)、約10人に1人が革命的左派に票を投じたという画期的な時代があったのです。それから12年。左派、とりわけ革命的左派の停滞と混迷が極右の台頭を許したのではないでしょうか?
 1968年パリ五月革命、パリ市庁舎占拠闘争のあの輝かしい闘い、ナチスとのレジスタンスで体現した「個に死して類に生きる」の精神、それらの内に宿った崇高な自己解放の思想……。フランス階級闘争の復権を心から願うものです。

Ⅲ 極右台頭の後に来るもの――ヨーロッパを震源地とする新たな戦争の危機について

 EU崩壊の危機が、長引く不況と失業者の増大にあり、そこから派生する移民問題が憂慮すべき深刻な事態になりつつあることは述べたとおりです。「EU脱退」と「イスラム排斥」を掲げた極右が大きく台頭したことも、そしてその主体的要因が左翼陣営の混迷と停滞にあることも考察してきました。
 問題は、この極右が国政選挙で第一党になり、もし国家権力を掌握するような事態になったとき何が生じるかです。失業問題の「秩序ある解決」と称して警察と軍隊を増やし、さらには失業者を中心とした「極右青年隊」が街頭を制圧するでしょう。そしてその不合理なレイシズムと暴力の行き先はムスリム人民です。かつてナチスが「ユダヤ人狩り」をしたのと同じく「ムスリム狩り」がヨーロッパ全土を席巻することは、想像に難くありません。他方イスラム諸国もこの「同胞の虐殺」を黙視・容認するはずが無く、ここに「ムスリム狩り」に端を発した、「ヨーロッパを震源地とする新たな戦争の危機」が生起しかねません。その構図は、ヨーロッパ帝国主義VSイスラム諸国・帝国主義下のムスリム人民の非和解的な対立を意味します。

 いま一つは、EU加盟諸国間の利害対立です。EUという政治的・経済的共同体が喪失することでタガがはずれ、むき出しの利害対立が生じ、軍事的衝突を含む紛争と内紛の激化が予測されます。長期不況下であるがゆえにこの対立は非妥協的であり、譲歩できない国益と国益の激突となり、愛国心の発動も伴った総力戦争へと発展する危険性すらはらみます。すなわち帝国主義間戦争の勃発です。しかもこの帝国主義間戦争がありうるとすると、帝国主義の心臓部であるヨーロッパを震源地とするがゆえに、その規模とその波及力において、他に類を見ない戦争になる可能性があります。
 最悪の構図を具体的に書いてみます。発端は「イスラム排斥」「ムスリム狩り」です。自衛のためのイスラム諸国ならびにムスリム人民の反撃。これを縦の糸とするなら、横の糸は「EU脱退」です。「EU脱退」を主張するフランス・イギリス帝国主義国。「EU維持・継続」を主張するドイツ帝国主義国。この両者が真正面から激突。さらには、「EU」を生命線とするアメリカ帝国主義国の参入。それを妨害し、ヨーロッパに権益を拡大しようとするロシア(中国)。そして「邦人救出」の名の下、「集団的自衛権」発動でヨーロッパに権益を拡大せんとする日本帝国主義国。……。これは第三次世界大戦と言って過言ではありません。正しく「第三次世界戦争」の火種が、今ヨーロッパに生み出されているのです。これは決して誇張ではなく、進行しつつある現実をリアルに分析すれば辿りつく結論だと考えます。
 とするならば、「極右台頭は戦争をもたらす」ことを危機感をもって訴え、反戦・反極右のたたかいを強力に巻き起こさなければなければなりません。何よりも最大の情勢決定要因である「反極右」を旗印とする国際階級闘争の高揚が必ずあります。「極右打倒」の荒々しい闘いが、ヨーロッパ―全世界を席巻するでしょう。二つの世界大戦で戦争の大惨禍を経験し、戦争とナチス・ファシズムへの怒りと反省をたえず確認してきたヨーロッパ人民は、現在の情勢の深刻な危機をつかめば必ず同じ過ちを繰り返さない決意をもって立ち上がるでしょう。その中から絶えて久しい国際階級闘争の司令部がうまれるかもしれません。否、創設しなければなりません。そしてその時、「反戦・反極右の旗の下、万国の労働者団結せよ」のスローガンが全世界で翻ることでしょう。極右の台頭と蠢動、それに抗して澎湃と沸き起こるであろう左翼陣営の闘い。これら主客の情勢の進展度合いで、第三次世界戦争を阻止する展望がこじ開けられていくと考えます。今後の情勢を注意深く見ていきたいと思います。

Ⅳ 1930年代階級闘争の敗北から何を学ぶべきか

 情勢は、1930年代的様相をおびつつあります。1930年代のヨーロッパでは、ドイツ、イタリアを中心として多くの極右政党が誕生しました。その中で、われわれが最も教訓とすべきは、ヒットラーが率いたドイツのナチス党をめぐる問題です。ナチスはなぜ権力を掌握しえたのか。ナチスと他の極右政党の「差」は何だったのか? 私は、「危機に瀕するドイツ帝国主義の救済」と「徹底した排外主義」と「エセ社会主義」だったと考えます。さらにはこれらを遂行するに必要な強力な「警察力と軍事力」。これらが合体してナチズムという不条理にして熱病的な未曾有の暴力が育まれたと考えます。箇条書きにすると、

  ユダヤ人への排外主義の扇動による一体化と求心性。
  エセ社会主義政策による「改革性」
  最も有効な失業者対策との位置づけでなされた「警察と軍隊」の増大。
  「嘘も百回言えば真実になる」式のデマゴーグと扇動。
  戦時国家独占資本主義的な方策を採用したナチス経済政策の展開。

 これらが客体的な主要要因だと思いますが、忘れてはならないのは主体的要因です。1928年のコミンテルン第6回総会で決定された社会ファシズム論。「社会民主主義とファシズムは同根である」「ファシズムはとるに足らない。むしろナチスに権力を取らせてやろう。そうすればナチスの無能さに気づいた労働者階級・人民はナチスを見限り、共産党に権力を与えるだろう」「今なすべきは、社会民主主義の打倒だ」との誤った方針(社民主要打撃論)で、当時のドイツ共産党は労働者階級・人民を組織していったのです。ドイツ共産党の武装組織「赤色戦線戦士同盟」が社会民主党員を襲撃したり、「ワイマール共和国打倒」を掲げてナチスの労働者組織と共にストライキを行ったりしました。ナチスの残虐さに警鐘を鳴らし、社会民主主義者との統一戦線を構築すべき共産党がナチスの前に屈服し、率先して武装解除していったのです。ここに1930年代階級闘争の悲劇があります。極右を決して軽視してはなりません。「反極右」で結集できる一大統一戦線を構築せよ。この1930年代階級闘争の血の教訓を、今こそ想起しなければなりません。

※今回はここまでとします。近日中に、日本の「極右」の現状と統一戦線のあるべき姿について書く予定です。

2014年6月18日、7月5日一部加筆
竜 奇兵(りゅう・きへい)

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