《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

沖縄からの通信~辺野古の浜が怒りの大波で埋めつくされた

2014-09-25 01:23:53 | 沖縄問題
沖縄からの通信~辺野古の浜が怒りの大波で埋めつくされた

●18年間の辺野古の闘いがついに島ぐるみに

 怒りの直接行動の第二波、「みんなで行こう、辺野古へ。止めよう新基地建設! 9・20県民大行動」が、8・23キャンプシュワープゲート前行動につづき、5500人(実数)の結集で、ボーリング調査海域を目の前にした辺野古の浜で開かれました。

 辺野古の浜は、名護の人たちが初日の出にウートートーする神聖な場所。近くにあるまなる岩は、久高島につながる聖地の伝説があるところです。地元辺野古のオジーやオバーたちによって、18年間の座り込みが行われてきたこの場所に、沖縄中から5500人の怒りの人波が押しよせ、浜全体が埋めつくされました。満杯のバスが着くたびに、そこから降りた人の流れがたえまなく押しよせ、会場を埋めつくしていきます。いつかはこの浜をたくさんの人波で埋めつくしたい、という思いが、今まさに実現されました。

 わずか数人しかない日もあった座り込み。人を集めようと開かれてきた「満月まつり」のコンサート。多くの人の努力と、ねばり強さによって維持されてきた辺野古の闘いが、いまそれとは対照的な人波で埋めつくされています。インタビューに答えて島袋のオバーがしみじみと言いました。「こんなにたくさんの人が来てくれて……。夢を見ているみたいだねー」。辺野古のテントで座り込みをはじめてから18年、9月20日で3807日。いまそれは、夢ではなく現実のものとなりました。名護の西側からも300人が乗ったバスが到着し、安次富浩ヘリ基地反対協代表が語った「この闘いは絶対に勝てる」は、地元の人たちの思いそのものです。



 大通りにズラーッと並んだ大型バスの列。何台あるか数えようとしましたが、数えきれません。新聞では70台と発表されています。前回は、13台を倍の23台に増やしても積み残された人たちがたくさんでました。そのため、こんどは各市町村ごとに大型バスがチャーターされ、県庁前広場だけでも12台だそうです。それでもバスが足りずに、積み残された人がたくさんいました。読谷でも2台のバスが用意されましたが、まったく足りず、多くの人は車で辺野古に向かいました。沖縄の県民大会は、それぞれの市町村が独自にバスをチャーターして参加するのです。

 琉球新報で記事となった一つのエピソードがあります。北谷町に住む91歳のおばあさんの話です。69歳の娘さんがおばあさんを誘おうとしましたが、暑いし、年齢のこともあるし、娘さん一人だけでバスに乗ったそうです。そうしたら、置いて行かれてしまった91歳のおばあさん、なんとタクシーを頼んで、バスを追いかけたのです。バスが辺野古に着いた時、そこには家に残してきたはずのおばあさんが。「あいえなー!!!  ……おかあさん」。
「艦砲ぬ喰えぬくさー」として生き延びた沖縄の高齢者の方々が、辺野古の新基地建設をどのような思いで見いてるのかが、ここに示されています。

 いま沖縄では、多くの人によって「辺野古決戦」という言葉が使われています。メディアですら「決戦」と言っています。今まさに、辺野古の新基地建設阻止は島ぐるみの闘いになったのです。12隻の巡視船を沖に浮かべ、無数の高速艇が大浦湾を埋めつくしていることに、高齢者たちは沖縄戦を想起するのです。「これは現代の“銃剣とブルドーザー”だという声が広がっています。「絶対に、ならん」という声が日ましに広がっています。

●辺野古の闘いは構造的沖縄差別を打ち破る

 9・20実行委員会は、前回に続き「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」、沖縄平和運動センター、県選出・国会議員でつくる「うりずんの会」と県議会野党4会派、県統一連、平和市民連絡会、ヘリ基地反対協で構成されています。



 集会のハイライトは、11月の県知事選に正式に立候補を表明した翁長雄志那覇市長が、辺野古新基地建設阻止を掲げて大衆の前に登場したことです。彼は、那覇市議会本会議でそのことを表明し、この集会が知事選のデビュー第一声となりました。ひときわ大きな拍手と指笛の中で、「このような美しい海へ新しい基地を作るのは絶対に許さない。阻止しなくてはいけない」「普天間の県外移設、オスプレイ配備撤回へスクラムを組んでひとつひとつ実現していこう」「今度の知事選は承認に対する県民の判断、われわれの公約に対する判断になる」と呼びかけました。

 稲嶺名護市長は、お気に入りとなったジュゴンのマントを羽織って登壇し、「ウチナーンチュは日本政府から大きな差別を受けているが孤立してない。自信と誇りをもって辺野古を止め、アイデンティティーを示していこう」「翁長新知事を誕生させ、日米両政府にオール沖縄で反対していることを見せつけよう」と呼びかけました。

 この日、東京、八丈島、京都、大阪などでも沖縄に連帯する集会やデモが行われ、沖縄で始まったうねりが全国へと広っています。思えば70年安保・沖縄闘争も、沖縄の復帰運動に本土として応えよう、ということからあのような歴史的な闘いになっていきました。
 
 司会者から「ミスター・ゲート前」と名づけられた沖縄平和運動センター議長の山城博治氏は、「この闘いは、大きな力をもって広がっている」「県民を代表する新しい知事に代わってもらおう」と、11月の知事選に立ち上がることを呼びかけました。平和運動センターを構成する最大組織の連合沖縄は、11月知事選に向けて翁長雄志氏を推薦することを正式に決定しました。知事選において個別候補の推薦を出すことは、連合沖縄始まって以来のことです。

 また、ヘリ基地反対協共同代表の安次富浩氏は、「この闘いは、完全に勝利できると断言できる」と確信を語り、「18年にわたる辺野古の闘いは政府による構造的な沖縄差別を打ち破る闘いに昇華した。沖縄の自己決定権を勝ち取るためにも勝利しなければならない」と語りました。平和市民連絡会を代表して辺野古テント村の初代村長として辺野古に命をささげた故當山栄氏とともに、家にも帰らず、雨の日も嵐の日も辺野古のたたかいの火を守り通してきた彼の言葉には、万感の思いが込められています。

 この日、初めて地元名護市の名桜大学の学生が発言に立ちました。「平和な未来を作り上げていくのは私たちです」と、オジーやオバーたちの意思を引き継いでいくことを力強く語りました。いま、若者たちの参加が目立つようになっています。ある高校生は、「思っているだけではだめだ。行動しなければ」とインタビューに答えています。

●非和解的対決が頂点に

 先月のキャンプシュワープのゲート前の3800人を大幅に上回り、わずか一か月で5500人に膨れ上がった辺野古新基地建設阻止の闘いは、工事そのものを止め、計画の撤回に向かって、燎原の火のごとく燃え上がりはじめました。10月には、沖縄防衛局が県に提出した埋め立て工法変更申請の不承認を求めて、県庁包囲行動が提起されました。政府は焦りにかられ、形ばかりのボーリング調査を強行し、仲井真知事は沖縄防衛局の岩礁破砕申請を独断で承認するなど、11月県知事選での辺野古新基地建設をめぐる対決は頂点に達しようとしています。

 政府は、「首相官邸前の反原発デモなど数万人規模の抗議集会を経験している。辺野古に数千人が集まったところで作業が中止されることはない」(高官発言)とうそぶきました。「埋め立て申請が承認された以上、行政上の手違いや瑕疵がない限り承認の取り消しはできない」というのが政府の基本的態度です。仲井真にいたっては、「もう認めてしまったんだから、今さらどういっても仕方ないでしょう」です。

 しかし、11月の知事選では仲井真の辺野古新基地建設承認そのものが最大の争点となります。仲井真知事が行った公約違反の承認を、沖縄の民意として審判を下すのが知事選です。辺野古新基地建設反対を掲げる翁長新知事が当選すれば、仲井真の承認の取り消しが沖縄の民意となり、いくら行政手続法での主張を行っても、民主主義の基本原理を否定することはできません。

 23日、就任後初めて沖縄に来た江渡防衛相は、「工事は順調に進んでいて、知事選で反対派が勝利しても強行する」と語りました。そうなれば、日本政府による沖縄への構造的差別への怒りの声は一層高まり、政府関係者は沖縄に足を踏み入れることすらできなくなるでしょう。かつて1965年8月19日、沖縄に来た佐藤栄作元総理は泊まっているホテルが1万人のデモ隊に包囲され、命からがらヘリコプターで脱出して宿舎を米軍基地内に移すという事態に直面しましたが、その時以上の事態になります。沖縄の自己決定権から沖縄の独立への歴史的転換のはじまりになっていきます。忍従の民が、腹からの怒りを爆発させればどのようになっていくのか、コザ暴動が示しています。

 今回の集会には鳩山由紀夫元首相が作業服姿で一人で参加しました。琉球新報社と新外交イニシアティブ(2013年、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、東大教授の藤原帰一氏、北大教授の山口二郎氏、元内閣官房副長官補で元防衛省防衛研究所所長の柳沢協二氏、マイク・モチヅキ氏らが理事になって結成された新しいシンクタンク。事務局長は弁護士の猿田佐世氏。略してND。)が招請したモートン・ハルペリン氏(沖縄返還時の米政府高官)の講演で来沖していました。あいさつはしませんでしたが、コメントで「保守革新を超えてオール沖縄でつながっている。これはすごい」「次の選挙で辺野古はノーという県民の意思が分かるだろう」と語りました。

●安倍政権の集団的自衛権容認を破綻へ

 安倍政権は、2015年、決定的なデッドロックに突き当たらざるをえません。沖縄問題、反原発問題、集団的自衛権の問題、そして消費税の10パーセント問題です。アベノミクスの化けの皮がはがれ、異次元の経済的破局がもたらされます。円安の流れはとどまるところがなく、不況下でのインフレという最悪の結果となって市民生活を直撃し、怒りの声は地に満ちることになります。原発の再稼働は、この極右政権の反国民的・反人民的な本質をさらけ出すことになります。集団的自衛権も、その根底にあるのは労働者民衆への見くびりです。沖縄は、何よりも沖縄戦を強制された島。その沖縄が立ちはだかれば、集団的自衛権行使容認は根幹において破たんせざるをえません。

 時代はますます1920年代ドイツ・ワイマール末期に似てきました。政治は腐敗し、政党は労働者民衆の信頼を失い、その中から直接民主主義が広がってきます。沖縄の闘いや、反原発のたたかいがそれを示しています。新たな政治的覚醒がはじまり、その中から新しい闘いがはじまっていきます。日本中が直接行動によって、時の政権と対峙・対決するときが来ているのです。選挙の票目当てにすり寄るだけの腐り切った野党など必要ありません。1930年代の人民戦線の息吹を全国において巻き起こしましょう。集団的自衛権との闘いは、あらゆる多様な運動が連帯と連携を深めて、今こそ立ち上がる時なのです。沖縄では91歳のおばあさんまでもが立ち上がっているのです。私たち団塊の世代も老け込んではいられません。

 九州から3人の仲間の参加をいただきました。いただいた資料を見て驚きました。9月9日街宣、9月16日街宣とデモ、9月30日街宣……。なんと、一週間ごとに沖縄と連帯する運動を続けています。このような地道な取り組みが、やがては大きなうねりを起こします。この場をお借りまして、心からの御礼と、敬意を表します。

 最後に、政府による名護での買収と利権争いとボス支配の実態が、『週刊金曜日』の1002号(2014年8月1日)~1004号(8月22日)において暴露されています。お近くの図書館のバックナンバーでお読みください。

2014年9月24日
S.嘉手納(沖縄在住)


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