
奥が見えないほど深く、空が透けるほど薄い。樹の上に住居があり、安定を欠いている場所がわたくし(マグリット)の居場所である。風(風評)にも揺れるが、数多の樹に支えられている。樹は普く真っ直ぐに立ち並び密集している、それは、わたし(マグリット)の信念でもある。
このものは大地に根付いているが、根(根拠)は見えず、必ずしも明確にできるものではない。
薄曇り、紅(紫)が懸った空はこの緑の林に離れがたく一体化している、なぜなら空は自然の空ではなく、わたくし(マグリット)の空だからである。きわめて個人的な世界観、個人的な律で構築された作品群は、この『エルシノア』が根拠である。
この平面的なバリアのような林に、他者が入り込む余地はなく、固い信念に崩壊はない。しかし、この信念への理解は無用である。直立の木々、葉の密集、人家の屋根が一枚に統合される滑稽ともいえる強引さは噓に違いないからである。
この虚偽こそが、現実と非現実を結ぶ媒体(通路)となりうるのではないか。ここに於ける必然はわたくし(マグリット)の胸中にあり、説明の義務もないと断言したい。
『エルシノア』、これはわたくし(マグリット)自身の表明である。
写真は『マグリット展』図録より
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