
『夢』
裸婦像である。細密に描かれた一糸まとわぬ肉体は右手を岩石の上に置いている。不変の石と結びついているが、右の壁面には同じ角度からの映像が影として映っている。
もちろん有り得ない映像であり、異次元との併合である。
性的でもなく神々しいという印象でもなく、実にリアルな肉体そのものであるが、彼女は目を閉じている。こちらを見ておらず、一方的にこちらが見ているだけである。
この場面は相当に高い位置にあり、川や野原を遥か遠くに見下ろしている。空中飛行の裸婦、しかも地上の岩石がある。
切れ切れの時空、女の立ち姿の真正面、背後の疑似映像、重複の画面ではなく影という設定の不条理。
まさに精神現象であり、空想の域である。
面影・・・母への強い執着ではないか。自分を生んだ母への思慕、この裸婦像は『夢』であり《聖域》である。
写真は『マグリット展』図録より
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