『1-2-3』犬から出る蒸気
犬から出る蒸気・・・エネルギーの発散、呼 吸だろうか。
犬(生命体)から発せられる蒸気の形ということである。液体(汗)からの蒸発あるいは個体(身体)からの昇華が気体になったもの…その見えない空気中の揺れ(振動)を質量に還元して見せたものである。(もちろん質的に還元不能であるが)
あくまで精神的解釈による具体化であり、物理的な計測はできない。推論としての計測は万人には受容しかねるかもしれないが、可能な限り《実感》に基づいたものとして見ることが前提条件である。
気泡の上にさらに気泡の層があるが、傍らにそれを引き落とす力が働いている。重力は均等にかかるから、バランスを崩す部分的な引力は犬(個)の所有する負荷かもしれない。
犬(生命体)から発せられる蒸気(消費エネルギー)は、かくも重く非情であるが、即ち、生きるとはこういうことである。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館
するとみんなが一ペンに顔をこっちへ向けてゴーシュを見ましたがやはりまじめでべつにわらってゐるやうでもありませんでした。
「こんやは変な晩だなあ。」
ゴーシュは思ひましたところが楽長は立って云ひました。
☆逸(隠れた)信仰の講(話)が現れる。
遍(もれなく)番(組み合わせる)詞(言葉)の絡(つながり)がある。
調べる律(決まり)を運(めぐらせている)。
廊下そのものには、まだだれの姿も見えなかったが、各部屋のドアは、すでに、動きはじめていて、何度もすこしあけられたかとおもうと、すぐまたいそいでしめられるのだった。こうしてドアを開閉する音が、廊下じゅうかまびすしかった。天井にまで達していない壁の切れ目のところに、ときどき寝起きらしく髪のみだれた顔があらわれてはすぐ消えるのが見えた。
☆方法はなるほど空虚な小舟だったが、企てはすでに動いており、再び開閉装置は素早く閉じたり開いたりしていた。天井まで達する壁の裂け目では、モルグ(身元不明者の死体公示所)で頭をかきむしる一人が現れてはすぐに消えて行くのをKは見た。